むち打ち(末梢神経障害)

交通事故案件に携わっていて、最もよく見るお怪我が、頸椎捻挫は頸部捻挫等のむち打ち症です。

以下では、事故によってむち打ち症を負ってしまった被害者の方に向けて、加害者の保険会社から賠償を受けることができる慰謝料の金額や、後遺障害等級獲得のために注意すべき点についてご説明いたします。


むち打ち症とは?

むち打ち症とは、事故によって頸部に衝撃を受けたのち、骨折や脱臼はないものの頸部等に痛みやしびれなどの症状がでている状態の総称です。

正式な傷病名ではなく、診断書上は、外傷性頚部症候群、頸椎捻挫、頸部挫傷といった診断名で現れます。

症状は、頸部の痛みやしびれのみならず、背部や上肢の痛みやしびれ、頭痛やめまいなどがでることがあります。


むち打ち症の慰謝料額

事故に遭った場合、治療費や休業損害のほか、入通院慰謝料を請求できます。

その金額は、通院した期間や通院した実際の日数をベースに算定され、金額の低い順から、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準と3つの基準があります。

そのうち、裁判所基準でよく用いられる「赤い本」の基準では、慰謝料は別表Ⅰと別表Ⅱの2種類の表に基づいて算定されますが、むち打ち症で他覚症状がない場合は、別表Ⅱを用います。

以下で、別表Ⅱを見てみましょう。


別表Ⅱ(単位:万円)

むち打ち症の慰謝料額

この表の、入院と通院の月数が交差するところの金額が裁判所基準での慰謝料額となります。

例えば、入院なし(0か月)、通院6か月の場合、89万円になります。

入院2か月、通院10か月の場合は149万円です。

ただし、通院頻度が低いような場合には、実通院日数の3倍程度を通院期間として算定することもあります。

弁護士を入れて裁判所基準で交渉をすることで、慰謝料額を増額できるケースが多いです。


むち打ち症で後遺障害等級を獲得するために

治療期間を終えても症状が残ってしまった場合、後遺障害等級に該当すれば、後遺障害についての補償を追加で受けることができます。

したがって、むち打ち症の場合も、他の傷害と同様、症状が残ってしまった場合には、後遺障害等級の申請を検討します。

むち打ち症の場合、後遺障害等級としては、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」か、14級9号「局部に神経症状を残すもの」のいずれかの認定を目指すことになります。

具体的には、12級13号の場合は、画像所見や神経学的検査の結果等により神経症状の発生を医学的に証明できるか否かで判断されます。

画像所見とは主にMRIの所見、神経学的検査とはスパーリングテスト、ジャクソンテストなどの神経根症状誘発テストや、深部腱反射テスト、筋萎縮テストや徒手筋力テスト等になります。

14級9号の場合は、被害者の症状を医学的には証明できなくとも、単なる故意の誇張ではないと医学的に推定できるか否かで判断されます。

むち打ち症では、骨折などと異なり他覚所見に乏しいケースが多く、症状の把握は被害者の方の訴えに頼らざるを得ない部分が大きいです。

そのため、治療中の段階から、以下の点に注意して後遺障害等級申請の準備を進める必要があります。


①事故態様

事故態様が重いものであるほど、後遺障害等級認定の可能性は高くなります。

したがって、事故態様について詳細に主張することが必要です。

事故の大きさを主張するために、被害車両の修理見積書や、実況見分調書を提出することもあります。


②通院実績

通院の頻度として、週に2、3回病院に通院することが望ましいです。

というのも、むち打ち症は他人から見て本当に症状が残っているか判断することが困難なケースがほとんどです。

そのような場合に、通院の実績をもって、症状が本当に残っているという主張を補強することができます。

また、通院の頻度は、入通院の慰謝料額にも影響します。

特に、1か月間通院しないようなケースでは、その後の治療費の支払いを拒まれることもあるため、継続的に通院することが大切です。


③症状の一貫性・連続性

事故の後遺症は、通常、事故直後の症状が少しずつ良くなっていくものの、完治には至らず残ってしまった、という経緯をたどります。

したがって、事故から数か月もたっているのに、従前痛みを訴えていた部位と違う部位の痛みを訴えたと診断書やカルテに記載がある場合は、後遺障害等級を獲得することが難しくなります。

その他、MRI検査や、上記したジャクソンテスト等を実施して他覚所見が得られないか確認することも大切です。


まとめ

以上、事故によってむち打ち症を負ってしまった方に向けて、注意すべき点をご説明いたしました。

むち打ち症の場合、特に事故直後の通院期間の過ごし方によって後遺障害等級を獲得できるか否かが変わることも多いですので、早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。

優誠法律事務所では交通事故の初回ご相談は無料で承っておりますので、ぜひともご活用いただければと思います。

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