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手首(手関節)の可動域制限は何級?橈骨遠位端骨折の後遺障害と慰謝料を弁護士が解説

2026-10-11

交通事故で橈骨遠位端骨折の怪我を負い、治療が終わっても、手首(手関節)が思うように曲がらない、反らせない・・・。

こうした「可動域制限」が残ると、後遺障害等級が認定される可能性があります。

ただし、「手首の動く範囲が狭くなっていれば、等級が認定される」というわけではありません。

可動域制限で後遺障害の認定を受けるためには、その原因となる骨や関節の損傷が、X線・CT・MRIなどの画像で確認できること(画像所見による裏付け)が重要です。

この記事では、橈骨遠位端骨折による手関節(手首)の可動域制限について、等級の認定基準、画像所見の重要性、測定や診断書の注意点、慰謝料・逸失利益の考え方を解説します。

併せて、当事務所の弁護士が担当した10級10号の事例もご紹介します。

この記事のポイント

  • 手関節の可動域制限は、健側(ケガをしていない側)と比べて、可動域が1/2以下なら10級10号、3/4以下なら12級6号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
  • 可動域が制限されているだけでは後遺障害は認定されません。制限の原因となる器質的な損傷を、X線・CT・MRIなどの画像所見で裏付ける必要があります。
  • 画像を撮るだけでなく、主治医に画像所見を確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。
  • 10級10号の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で550万円(自賠責基準は190万円)です。慰謝料とは別に、逸失利益も請求できます。

1.手関節の可動域制限とは

⑴手首の構造と動き

手関節(手首の関節)は、前腕の橈骨(親指側の骨)と、手の付け根にある手根骨との間の関節です。

手首は、次のような方向に動きます。

動き内容参考可動域角度
屈曲(掌屈)(主要運動)手のひら側へ曲げる動き90度
伸展(背屈)(主要運動)手の甲側へ反らす動き70度
橈屈(参考運動)親指側へ倒す動き25度
尺屈(参考運動)小指側へ倒す動き55度

後遺障害の認定では、原則として、主要運動である屈曲と伸展の可動域が評価の中心になります。

⑵橈骨遠位端骨折で可動域制限が残る主な原因

橈骨遠位端骨折は、手首の可動域制限の原因として代表的な骨折です。

治療後に可動域制限が残る原因には、次のようなものがあります。

  • 骨が変形したままくっついた(変形治癒)、または骨が短くなってしまった
  • 関節の面にずれ(段差やすき間)が残った
  • 骨がうまくくっつかなかった(癒合不全)
  • 関節の周りの組織が固くなった(拘縮)
  • 靱帯やTFCC(三角線維軟骨複合体)などの損傷

2.手関節の可動域制限で認定される後遺障害等級

手関節の機能障害は、次の3つの等級に区分されます。

等級認定基準可動域の目安(健側との比較)後遺障害慰謝料(自賠責基準)※後遺障害慰謝料(弁護士基準)
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したものほとんど動かない(強直またはそれに近い状態)331万円830万円
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの1/2以下に制限190万円550万円
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの3/4以下に制限94万円290万円

※自賠責基準は、2020年4月1日以降の事故の場合です。

手関節では、屈曲と伸展を合計した可動域を、健側と比較します。

たとえば、健側が参考可動域角度どおり(屈曲90度+伸展70度=160度)であれば、合計が120度以下で12級6号、80度以下で10級10号が目安になります。

実際には、健側の実測値と比較して判断されます。

3.可動域制限だけでは等級は認定されない:画像所見による裏付けが必要

⑴「可動域制限あれば必ず認定される」は誤解です

「手首が動かないのだから、後遺障害に認定されるはずだ」と考える方は少なくありません。

しかし、可動域制限の後遺障害では、可動域が制限されているという事実だけでは足りず、制限の原因となる器質的な損傷(骨や関節などの物理的な損傷や変化)が、画像などで医学的に証明できることが求められます。

痛みや、動かすことへの不安などで動かせない場合や、画像で原因が確認できない場合には、可動域制限そのものは評価されず、痛みやしびれなどの神経症状(14級9号・12級13号)にとどまる可能性があります。

認定されるもの後遺障害慰謝料(弁護士基準)労働能力喪失率
手関節の機能障害 10級10号550万円27%
神経症状 14級9号110万円5%

このように、可動域制限が評価されるかどうかで、賠償額は大きく変わります。

⑵画像検査で確認される所見の例

橈骨遠位端骨折では、次のような検査で、可動域制限の原因となる所見を確認します。

どの検査が必要かは、骨折の状態や症状によって異なり、主治医の判断になります。

検査わかること確認される所見の例
X線(レントゲン)骨の位置や形、癒合の状態、関節の隙間など橈骨の短縮や傾きの変化(変形治癒)、癒合不全、関節面の不整、外傷後の関節の変化
CT骨や関節面の細かい形を、立体的に確認できる関節面の段差やすき間、骨片のずれ、癒合の程度
MRI靱帯・軟骨・腱など、骨以外の組織や、骨の内部の状態TFCC損傷、手根骨どうしをつなぐ靱帯の損傷、骨の内部の変化

なお、拘縮のように画像に写りにくい変化もあります。

その場合は、他の所見と併せて、可動域制限の原因を説明していく必要があります。

⑶画像所見を医師に確認してもらうことが重要

画像を撮影しただけでは十分とはいえません。

画像に写っている所見が、可動域制限の原因であることを、主治医に確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。

次の点に注意しましょう。

  • 症状固定の前に、主治医に確認する:可動域制限の原因が、画像でどのように確認できるかを、症状固定の前に相談します。
  • 症状固定の時期に近い画像を撮影してもらう:骨癒合の状態、変形、関節面の状態などが、現在どうなっているかを確認できる画像が必要です。事故直後や手術前後の画像とあわせて、経過を時系列で示せるようにしておきます。
  • 画像所見を診断書に具体的に記載してもらう:後遺障害診断書の「他覚症状および検査結果」欄に、骨折部位、癒合の状態、変形の有無や程度、関節面の状態など、可動域制限の原因となる所見を具体的に書いてもらいます。
  • 画像を申請書類に添付する:後遺障害等級の申請では、診断書だけでなく、X線・CT・MRIなどの画像(CD-Rなど)を提出します。相手方保険会社による事前認定では、提出される資料が必要最低限にとどまる可能性があるため、被害者請求を検討しましょう。

4.可動域の測定方法と診断書の注意点

⑴測定は「他動値」が原則、健側との比較で評価

可動域は、次の点に注意して測定します。

  • 他動値が原則:医師や理学療法士が手首を動かしたときの角度(他動値)が、評価の基準になります。自分で動かした角度(自動値)は、運動神経の麻痺や腱の断裂などで動かせない場合など、例外的に用いられます。
  • 角度計で測定:角度計(ゴニオメーター)を用いて、決められた方法で測定します。
  • 健側と比較する:ケガをしていない側の手首も測定し、患側と比較します。

主要運動の可動域が基準をわずかに上回る場合には、参考運動(橈屈・尺屈)も考慮され、参考運動が基準以下に制限されていれば、等級が認められることがあります。

そのため、参考運動も測定してもらうことが大切です。

⑵測定値の食い違いに注意

後遺障害診断書の測定値が、治療中の診療録や、保険会社から主治医への医療照会の回答に記載された測定値と食い違っていると、保険会社が測定値の信頼性を争い、示談が進まなくなることがあります。

診断書を受け取ったら、提出の前に、測定方法(角度計を使ったか)や測定値を確認しましょう。

5.10級10号の賠償額はいくら?

手関節の可動域制限で10級10号が認定されると、次のような賠償を請求できます。

項目内容10級10号の目安
後遺障害慰謝料自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)がある550万円(弁護士基準)
逸失利益基礎収入×労働能力喪失率(27%)×ライプニッツ係数年収400万円、喪失期間20年((47歳)の場合:約1,607万円※
自賠責保険からの支払い慰謝料と逸失利益を合わせた限度額461万円(自賠責基準は190万円)

※逸失利益は、400万円×0.27×14.8775(20年のライプニッツ係数)で計算した例です。

実際の労働能力喪失期間は、症状固定時の年齢によって変わります。

自賠責保険からは、等級ごとに定められた限度額(10級は461万円)が支払われます。

弁護士に依頼した場合は、裁判所基準(弁護士基準)と自賠責限度額の差額を、加害者側の任意保険会社に請求します。

6.解決事例:橈骨遠位端骨折で10級10号が認定され、合計1,561万円を獲得したケース

※この事例は、当事務所の弁護士が担当した事例です。個人が特定されないよう、内容を一部編集しています。結果は事案によって異なり、同様の結果をお約束するものではありません。

⑴事案の概要

項目内容
事故の状況福岡県内の交差点で横断歩道を歩行中に、右折してきたタクシーと衝突
ケガ橈骨遠位端骨折など
治療複数の医療機関を受診(入院含む)して約6か月後に症状固定
後遺障害手関節の可動域制限について10級10号が認定
主な争点①可動域の測定値の食い違い ②逸失利益(60歳以降の基礎収入)
結果自賠責保険(被害者請求)から461万円、訴訟上の和解で1100万円、合計1561万円(傷害部分は約180万円で先行示談しているので、賠償金合計額は1740万円)

⑵争点1:可動域の測定値の食い違い

本件では、10級10号の後遺障害認定を受けた後、加害者側の任意保険会社に損害賠償を請求しましたが、保険会社は5か月間、具体的な回答をしませんでした。

その理由とされたのが、可動域の測定値の食い違いです。

保険会社が治療中に主治医へ行った医療照会への回答書に記載された測定値と、後遺障害診断書の測定値が異なるため、慎重に判断する必要がある、というものでした。

そこで主治医に確認したところ、医療照会に回答した際の測定は目測で、器具を使って正確に測定したのは後遺障害診断書を作成したときだけであり、診断書の測定値が正確である、との回答を書面で得ることができました。

それでも保険会社が支払いに応じなかったため、訴訟を提起しました。

傷害部分は先に示談が成立していたため、訴訟では、後遺障害部分(逸失利益と後遺障害慰謝料など)のみを請求しました。

⑶争点2:逸失利益(60歳以降の基礎収入)

訴訟では、保険会社側から、逸失利益について「60歳以降の基礎収入を下げるべきだ」との反論がありました。

最終的に、裁判所が60歳以降については平均賃金を基礎収入として採用して和解を促すこととなり、1,100万円で訴訟上の和解が成立しました。

⑷結果

  • 自賠責保険への被害者請求(訴訟前):461万円(10級の後遺障害分)
  • 訴訟での和解:1,100万円
  • 合計:1,561万円

なお、この事案は事故当時の法定利率(年5%)で逸失利益を計算しました。

2020年4月1日以降の事故に適用される現在の年3%で計算し直すと、逸失利益は約1,591万円になります(事故当時の年5%では約1,352万円)。

⑸この事例のポイント

  • 可動域の測定値は、測定方法(角度計か目測か)や測定した時期まで含めて、診療録・診断書・回答書の間で整合していることが重要です。食い違いがある場合は、主治医に確認し、書面で明確にしておくことが有効です。
  • 後遺障害の等級が認定された後でも、逸失利益の基礎収入や喪失期間をめぐって争いになることがあります。
  • 認定後も交渉が進まない場合は、訴訟を選択することもあります。

7.保険会社が可動域の測定値を争ってきたときの対処法

  • 主治医に確認する:測定の方法(角度計か目測か)、他動か自動か、測定した日、測定した人(医師か理学療法士か)を確認します。
  • 書面で明確にしてもらう:食い違いの理由や、どの測定値が正確かを、診断書や回答書などの書面にしてもらいます。
  • 診療録・リハビリ記録を確認する:可動域の経過を、時系列で確認します。
  • 画像所見を整理する:可動域制限の原因となる器質的な損傷が、画像でどのように確認できるかを整理します。
  • 異議申立てや訴訟を検討する:後遺障害の認定結果に不服がある場合は、異議申立てができます。また事案によっては訴訟も選択肢になります。

8.後遺障害の認定に向けて治療中に気をつけたいこと

  • 通院とリハビリを続ける:医師の指示に従い、必要な治療とリハビリを継続します。
  • 早めに画像検査を受ける:症状や骨折の状態に応じて、X線に加えて、CTやMRIが必要かどうかを主治医に相談します。
  • 症状固定の前に主治医と相談する:後遺障害診断書に、可動域の測定値と画像所見を、それぞれ記載してもらいたい旨を伝えます。
  • 健側も測定してもらう:可動域は、健側との比較で評価されます。
  • 保険会社から治療費の打ち切りを打診されてもすぐに応じない:症状固定の時期は、主治医が医学的に判断するものです(ただ、訴訟では、裁判官が提出される証拠から妥当な治療期間を判断します。)。保険会社が早期に治療費を打ち切ろうとすることがありますが、症状が残存している場合には、主治医に相談して症状固定時期についての見解を示してもらい、保険会社と交渉するべきといえます。

9.弁護士に依頼するメリット

  • 診断書と画像所見の整合を確認できる:弁護士が、後遺障害診断書に可動域の測定値と画像所見が適切に反映されているかを確認して、必要に応じて医師に追記・修正を依頼します。
  • 被害者請求を任せられる:弁護士が、画像や必要書類をそろえて、後遺障害等級の申請を被害者請求で行います。
  • 認定結果に不服があるときに異議申立てができる:弁護士が、必要に応じて新たな医証を取り付け、異議申立てを行います。
  • 逸失利益を適切に主張できる:弁護士が、適切な逸失利益を算定し、後遺障害による仕事や収入への影響を具体的な資料で主張します。
  • 示談交渉や訴訟を任せられる:保険会社とのやり取りを全て弁護士に任せることで、負担が減り、治療に専念できます。

なお、弁護士に依頼すれば必ず後遺障害等級が認定されるというわけではなく、結果は事案によって異なりますが、相手方保険会社に手続きを任せる事前認定よりは認定される可能性が上がると考えられます。

ご自身やご家族が加入している保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、弁護士費用や法律相談料を保険会社が負担してくれます。

一般に、弁護士費用は300万円、法律相談料は10万円までが上限とされていますので(契約内容により異なります)、多くの場合で自己負担をすることなく、弁護士に依頼することができます。

10.よくある質問

Q1. 手首の可動域が制限されていれば、必ず後遺障害に認定されますか?

いいえ、必ずではありません。可動域制限の原因となる骨や関節の損傷が、X線・CT・MRIなどの画像で確認できることが重要です。画像で原因が確認できない場合は、可動域制限が評価されず、神経症状にとどまる可能性があります。

Q2. 可動域の制限が健側の1/2以下にならない場合は、どうなりますか?

1/2以下でなくても、健側の3/4以下に制限されている場合は、12級6号が認定される可能性があります。また、主要運動の可動域が基準をわずかに上回る場合には、参考運動(橈屈・尺屈)も考慮されます。

Q3. 自分で動かせる範囲と、医師が動かしたときの範囲では、どちらで評価されますか?

原則として、医師などが動かしたときの角度(他動値)で評価されます。運動神経の麻痺や腱の断裂などで自分では動かせない場合には、自動値が用いられることがあります。

Q4. リハビリを頑張って可動域が改善すると、等級に不利になりますか?

後遺障害の認定は、症状固定時の状態で判断されます。可動域を改善するためのリハビリは、治療として大切です。等級のことを考えて、リハビリを控えたり、測定のときにわざと動かさなかったりすることは避けてください。医師の指示に従って治療を続けることが、結果として適切な評価につながります。

Q5. 診断書の測定値が、保険会社の資料と違うと言われました。どうすればよいですか?

まず、主治医に測定の方法や時期を確認しましょう。その上で、どの測定値が正確なのかを、書面で明確にしてもらうことが有効です。対応に迷う場合は、早めに弁護士へご相談ください。

11.まとめ

  • 手関節の可動域制限は、健側と比べて1/2以下で10級10号、3/4以下で12級6号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
  • 可動域が制限されているだけでは認定されず、X線・CT・MRIなどの画像所見による裏付けが必要です。
  • 画像所見は、主治医に確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。
  • 10級10号では、後遺障害慰謝料(弁護士基準550万円)に加えて、逸失利益も請求できます。

手首の可動域制限や後遺障害の認定でお悩みの方は、弁護士法人優誠法律事務所にご相談ください

橈骨遠位端骨折で手首が動かしにくい方、後遺障害の等級認定に不安のある方、保険会社の提示額に疑問のある方は、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で大腿骨を骨折したら?後遺障害認定と適正な賠償を獲得するための完全ガイド

2026-08-09

交通事故で大腿骨を骨折した場合、「慰謝料はいくらが相場なのか」「後遺障害等級はどう認定されるのか」と不安を抱く方は少なくありません。

本記事は、交通事故案件に豊富な解決実績を持つ弁護士法人優誠法律事務所の弁護士監修の下、大腿骨骨折の基礎知識から治療、後遺症・後遺障害等級の認定基準、そして適正な賠償金(慰謝料や逸失利益など)を得るための具体的な手順や交渉術まで徹底的に解説いたします。

読者の皆様が泣き寝入りすることなく、納得のいく解決を迎えられるよう、私たちが全力でサポートいたします。

お悩みの際は、決して一人で抱え込まず、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。

1.交通事故による大腿骨骨折とは

⑴大腿骨骨折の定義と種類

大腿骨は、骨盤の股関節から膝関節までをつなぐ、太ももの中を通っている、人体の中で最も長く太い骨です。

上半身の体重をしっかりと支え、歩行や立つといった日常の基本的な可動を可能にする、極めて重要な機能を持っています。

交通事故においては、歩行中や自転車に乗っている際に自動車にはねられて転倒したり、バイク乗車中の衝突事故で太もも部分に直接大きな衝撃を受けたりすることで、この頑丈な大腿骨が折れてしまうことがあります。

大腿骨の骨折は、折れる箇所によって主に以下の種類に分類されます。

  • 大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ):股関節のボール状の部分(大腿骨頭)のすぐ下にある細い頸部の骨折です。血流が乏しいため骨がくっつきにくく、非常に治りにくいのが特徴です。
  • 大腿骨転子部骨折・転子下骨折:頸部のすぐ下にある太い部分の骨折です。
  • 大腿骨骨幹部骨折:太ももの中央部分(長管骨)の骨折であり、交通事故などの強い外力によって発生します。
  • 大腿骨顆上骨折・顆部骨折:膝関節に近い下端部分の骨折です。

このように、大腿骨骨折と一口に言っても折れる部位は大きく3つ以上の部分に分けられ、交通事故の強い衝撃によって引き起こされる重篤なケガです。

関節部分の損傷が激しい場合は、人工関節や人工骨頭への置換が必要になるなど、その後の生活が大きく変わってしまうケースも少なくありません。

⑵大腿骨骨折の主な症状

大腿骨骨折の主な症状は、骨折した部位周辺(股関節や太もも、膝関節など)に生じる非常に強い痛みと腫れです。

受傷直後から激痛が走り、ほとんどのケースで自力で立つことや歩行することが不可能となります。

下肢を動かすことができず、歩行という人間の基本動作に大きな機能障害を伴うため、日常生活や仕事に多大な支障をきたします。

また、強い衝撃により骨盤周りの筋肉や組織へのダメージも大きく、交通事故の中でも重傷に分類されるケガです。

さらに、症状の進行や治療の長期化によって、関節が拘縮(固まって動かなくなる)したり、寝たきり状態が続くことで高齢者の場合は認知症が進行したり、深部静脈血栓症などの深刻な合併症を引き起こすリスクも十分にあります。

人工骨頭への置換やプレート固定といった手術が必要になることが多く、足の長さが変わってしまうなど将来にわたって影響が残るリスクが高いケガであるため、適切な治療の継続と専門家による法的なサポートが不可欠です。

また、大腿骨骨折は、骨折部位や転位の程度によっては長期の入院を要し、治療後も関節の可動域制限や痛みなどの後遺症を残す可能性があります。

事故直後の症状だけでなく、その後の生活や仕事への影響も継続して記録しておくことが重要です。

2.大腿骨骨折の治療方法

⑴治療の流れと選択肢

大腿骨骨折の治療の流れとして、まずは救急搬送された病院でレントゲンやCT、MRIといった画像検査が行われます。

これにより骨折の部位や転位(骨のズレ)の程度を詳細に確認し、治療方針が選ばれます。

大腿骨骨折の場合、ギプスで固定して治癒を待つ非手術療法(保存療法)が選択されることは少なく、多くは早期の離床と歩行再開を目指して手術療法が選ばれます。

手術の選択肢としては、骨折部を金属のプレートやボルト、髄内釘などでつなぎ合わせて固定する「骨接合術(内固定)」のほか、頸部骨折などで骨の癒合が見込めない場合や関節へのダメージが著しい場合には、傷ついた関節を人工物に置き換える「人工骨頭置換術」や「人工関節置換術」が行われます。

手術以外にも、術後のリハビリテーションが極めて重要です。

関節の可動域を広げ、筋力を回復させるための歩行訓練などを早期から開始します。

⑵全治期間について

大腿骨骨折の全治期間は、骨折の種類や治療方法、患者の年齢や健康状態によって個人差がありますが、一般的な目安としては3か月から1年程度、場合によってはそれ以上の期間を要します。

骨の癒合(くっつくこと)やその後のリハビリテーションには長い時間が必要です。

また、1年程度を目途に固定のために入れたプレートなどを取り除く抜釘手術を行うことが多いです。

3.大腿骨骨折の後遺症・後遺障害等級と慰謝料相場

⑴後遺症の種類と影響

大腿骨骨折の治療を尽くしても、残念ながら後遺障害が残ってしまう被害者は少なくありません。

代表的な後遺障害には、股関節や膝関節の動きが悪くなる「機能障害」、骨が変形して癒合する、あるいは偽関節となる「変形障害」、左右の脚の長さに違いが生じる「短縮障害」、そして骨折部位周辺にしびれや痛みが残る「神経症状(神経障害)」があります。

これらの後遺障害は、歩行が不自由になったり、階段の昇降が困難になったりするなど、身体機能の喪失・低下をもたらし、被害者の日常生活や仕事に深刻な影響を与えます。

また、強い衝撃を受けた事故そのもののトラウマに加え、思い通りに体が動かない、痛みが引きにくいといった状況は、うつ病や不安感といった心理的な影響(精神的苦痛)を引き起こすことも特徴です。

さらに、頭部へのダメージを伴って負った事故であった場合、高次脳機能障害などを併発しているケースもあるため、目に見えにくい症状が残っていないかにも注意を払う必要があります。

⑵後遺障害等級の認定基準

後遺障害が残った場合、自賠責保険による「後遺障害等級」の認定を受けることで、適正な賠償金(後遺障害慰謝料や逸失利益)を請求できるようになります。

大腿骨骨折における後遺障害等級の認定基準は以下の通りです。

  • 機能障害:人工関節や人工骨頭を挿入し、可動域が健側(ケガをしていない側)の1/2以下に制限された場合は8級(8級7号)、人工関節等を挿入したのみの場合は10級(10級11号)、人工関節なしで可動域が3/4以下になった場合は12級(12級7号)、1/2以下は10級(10級11号)、完全強直等に近い場合は8級(8級7号)が認定されます。
  • 短縮障害:脚が5cm以上短縮した場合は8級(8級5号)、3cm以上で10級(10級8号)、1cm以上で13級(13級8号)となります。
  • 変形障害:大腿骨に癒合不全(偽関節)を残し、常に硬性補装具を必要とする場合は7級(7級10号)、不要な場合は8級(8級9号)、15度以上屈曲して不正癒合した場合などは12級(12級8号)となります。
  • 神経症状:画像所見等で痛みの原因を医学的に証明できる場合は12級(12級13号)、医学的に説明・推定できるレベルの痛みは14級(14級9号)となります。

等級によって慰謝料の金額は大きく異なり、例えば裁判所(弁護士)基準では、14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円程度となります。

高齢者の方を含め、労働能力の低下に対して適正な補償を受けるために、正確な等級認定の申請は非常に重要です。

なお、交通事故で大腿骨を骨折した場合に請求できる慰謝料は、主に、入院・通院に伴う精神的苦痛を補償する「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と、症状固定後に後遺障害等級が認定された場合の「後遺障害慰謝料」に分かれます。

実際の慰謝料相場や賠償金額は、治療期間、入院・通院日数、後遺障害の内容・等級、被害者の収入、過失割合などによって異なります。

保険会社から提示された金額が適正かどうかは、弁護士基準を用いて個別に計算し、判断する必要があります。

4.後遺障害認定の重要ポイント

⑴後遺障害診断書の重要性

後遺障害認定において最も重要となるのが、医師の作成する「後遺障害診断書」です。

審査は原則として提出された書面等で行われるため、診断書に記載されていない症状は認定の対象になりません。

そのため、正確な診断と詳細な記載が必要です。

関節の可動域制限や脚の短縮(SMDの測定など)、長管骨の変形(偽関節など)、残存する痛みやしびれといった症状が、適切なフォーマットで漏れなく記載されているかが、将来の賠償額を大きく左右します。

特に、後遺障害診断書の内容と画像所見が一致しているか、症状を残す医学的な理由が説明されているかは、認定結果に大きく関わります。

診断書を作成してもらう際は、痛みの部位、可動域制限、脚の短縮、日常生活への支障を具体的に伝えましょう。

医師は治療の専門家ですが、必ずしも後遺障害認定の基準に精通しているとは限りません。

したがって、被害者自身が日頃から自覚症状を正確に伝え、医師とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。

また、比較的早期から弁護士を利用し、弁護士を通じて医師に対してどのような記載が必要か、ケガによる症状が日常生活や仕事にどのように影響しているか等について説明しておくことも、適切な等級を獲得するためのカギとなります。

後遺障害診断書作成後も、弁護士に依頼していれば、診断書の内容を確認してもらい、必要に応じて診断書の修正や追記の助言を受けることができます。

⑵認定を受けるための注意点

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、いくつか注意すべきポイントがあります。

まず、必要書類を過不足なく確認し、準備することです。

後遺障害診断書のほか、レントゲンやCT、MRIなどの画像データ、診療報酬明細書などが揃っているかを確認します。

次に、症状固定のタイミングと申請の期限に注意することです。

治療を継続しても大幅な改善が見込めない「症状固定」の判断は慎重に行う必要があり、保険会社から提示された時期を鵜呑みにせず、主治医と適切に判断する必要があります。

そして何より、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」ではなく、被害者側で有利な証拠を集めて主体的に申請する「被害者請求」を行うべきですので、そのために交通事故に強い専門家(弁護士)に相談し、サポートを受けることが重要です。

後遺障害認定後に、認定結果を正当に評価し、必要であれば異議申立てを行うためにも、専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。

そのためには、早めに弁護士に相談することが第一歩です。

5.交通事故で大腿骨を骨折した場合の賠償請求の流れ

⑴賠償請求の基本的な手順

交通事故被害に遭い、大腿骨骨折などの損害賠償を請求する場合、基本的な手続きは以下の流れで進みます。

大腿骨骨折で請求できる主な損害の費目は、治療費・入院費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益・将来介護費・装具費・住宅改修費などです。

ただし、事故との因果関係や必要性を証明できる範囲が賠償の対象となるため、領収書、診断書、画像、休業損害証明書などの資料を残しておく必要があります。

  • 事故直後の対応:速やかに警察へ連絡して実況見分を行い、人身事故として処理してもらいます。また、加害者や保険会社の情報を確認し、目撃者がいれば証言や画像等の証拠を確保します。
  • 治療の継続:自覚症状の有無にかかわらず、すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従い必要に応じて通院を継続します。治療費などの領収書や診断書など、賠償請求の基礎となる証拠を保管します。
  • 症状固定と後遺障害申請:これ以上の改善が見込めなくなった段階で症状固定とし、後遺症が生じている場合は、自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請を行います。
  • 損害賠償額の算定と示談交渉:後遺障害等級が確定した後、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などの詳しい損害項目を算定した請求書(示談案)を作成し、加害者側の保険会社に提示して示談交渉を開始します。各手続きの詳細は、当事務所サイトの関連コラムでも解説しています。無料相談も随時対応しております。

⑵弁護士に相談するメリット

交通事故の損害賠償請求において、弁護士に相談・依頼することには大きなメリットがあるといえます。

まず、交通事故と法律に関する高度な専門知識を活用できる点です。

保険会社が提示してくる慰謝料は、自社の基準(任意保険基準)であり、被害者が本来受け取るべき裁判所(弁護士)基準に比べて著しく低額に設定されていることがほとんどです。

弁護士が介入することで、最も高額な裁判基準での交渉が可能になり、適正な賠償額を得やすくなります。

また、煩わしい保険会社とのやり取りや示談交渉をすべて弁護士に任せられるため、被害者の方は治療やリハビリ、生活の再建に専念でき、精神的な負担も大きく軽減されます。

ご自身の年齢や怪我の程度を問わず、「どう対応すべきか分からない」「無理な条件を言われた」と悩まれる方に対しても、弁護士が的確な検討とアドバイスを行い、サポートします。

6.交通事故に関するよくある質問

⑴交通事故後の通院先の選び方

Q: 大腿骨を骨折した場合、どのような病院に通院すべきですか?

A: 大腿骨骨折という重傷の場合、まずは手術設備やMRI等の高度な検査機器が整った総合病院や、整形外科の専門医の選定が重要です。
手術後は、リハビリテーションに特化した施設での継続的な通院が回復のカギとなります。
また、通院の継続性を考慮し、ご自宅からアクセスしやすい病院を選ぶことも必要です。
接骨院や整骨院でのリハビリを併用する場合は、必ず整形外科の医師に相談し、同意を得た上で通院してください。

⑵慰謝料の相場・計算方法と増額基準について

Q: 慰謝料を少しでも増額させるためには、どのような基準や要素が影響しますか?

A: 慰謝料の算定基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所(弁護士)基準」があり、弁護士を代理人として立てて裁判所基準を用いることで大幅な増額が見込めます。
具体的な増額要素としては、第一に「治療期間の長さ(入通院日数)」が影響します。適切な頻度で治療を継続し、症状固定までしっかりと通院することが重要です。
ただ、通院回数を不自然に増やせばよいわけではありません。
事故による症状の程度に応じた必要な治療を継続し、医学的資料と生活・仕事への影響を整合的に示すことがポイントです。
第二に「後遺症の有無と等級」です。大腿骨骨折で股関節の機能障害や短縮障害、神経症状が認定されれば、慰謝料だけでなく将来の減収分である逸失利益も加わり、数百万〜数千万円単位で賠償金が変わる(高額になる)可能性があります。
第三に「事故の過失割合」も考慮されます。被害者にも過失があると賠償金全体が減額されるため、正しい過失割合を主張・変更させることが重要です。

7.交通事故に関する法律相談の重要性

⑴法律事務所の役割と選び方

交通事故の被害者が適正な補償を受けるためには、法律事務所の専門性の確認が極めて重要です。

すべての弁護士が交通事故の実務に精通しているわけではありません。

大腿骨骨折のような重大な機能低下や労働能力の喪失が伴うケースでは、後遺障害認定に関する深い医学的知見や、保険会社との交渉実績が豊富な事務所を選ぶことが重要です。

優誠法律事務所は、所属弁護士全員が10年以上の交通事故案件の経験を持ち、累計2,000件以上の解決実績があります。

ご相談時の親身な対応や正確な見通しの説明を重視し、被害者のお悩みやご不安に寄り添った対応を行っていますので、弁護士への依頼をご検討されているのであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。

⑵解決事例の紹介

当事務所における具体的な解決事例を紹介します。

【事例】バイク走行中に自動車と衝突し、大腿骨骨幹部骨折等を負ったケース

本件の依頼者は、治療終了後、保険会社の事前認定で後遺障害12級13号(神経症状)のみが認定され、保険会社からこれを前提とする示談金が提示されていました。

ご依頼後、当事務所の弁護士が介入し、医療記録や画像データを詳細に分析した結果、脚の短縮(1cm以上)と、股関節の可動域制限が適切に評価されていないという問題の存在が判明しました。
そこで、医師に可動域の再測定と診断書の追記を依頼し、被害者請求による異議申立てを行った結果、短縮障害(13級8号)と機能障害(12級7号)が併合して認定されました(併合11級)。

その結果、逸失利益の計算に用いる労働能力喪失率が上昇し、最終的な賠償額が当初の提示額から1000万円以上も増額となり、被害者の方に大変納得いただける結果となりました。

⑶長期リハビリと生活の質向上のための対策

大腿骨骨折の場合、退院後も長期間にわたるリハビリが必要となることが多いです。

大腿骨骨折により歩行が困難になった場合、ご自宅のバリアフリー改修(手すりの設置や段差解消)や、車椅子の購入など、生活の質(QOL)を維持・向上させるための対策費用も、必要性が認められれば損害賠償として請求可能です。

家庭や職場への復帰に向けた社会的なサポート体制の構築についても、法的側面から最大限のアドバイスと交渉を行います。

8.まとめ

大腿骨骨折は、長期間の痛みを伴う治療と過酷なリハビリを強いられ、後遺障害が残りやすい重大なケガです。

保険会社からの治療費の不当な打ち切りや、自社の基準に基づく低額な示談金の提示など、被害者ご自身だけで対応するには非常に困難な問題が数多く立ちはだかります。

適正な後遺障害等級の認定を受け、本来受け取るべき正当な損害賠償金(慰謝料や逸失利益)を獲得するためには、事故直後の治療段階から交通事故に精通した弁護士のサポートを受けることが不可欠です。

優誠法律事務所では、大腿骨骨折をはじめとする重傷事故・後遺障害案件において、数多くの増額実績とノウハウを有しております。

ご自身の加入する自動車保険等に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、実質的な自己負担ゼロでご依頼いただけるケースも多いです。

「提示された示談金は本当に適正か?」「後遺障害等級は正しく認定されているか?」と少しでも疑問や不安をお持ちの方は、一人で悩まずに、まずは弁護士法人優誠法律事務所の無料相談をご利用ください。

全国どこからでも、お電話やメール、WEB面談でのご相談を承っております。

あなたの正当な権利を守り、新たな生活への第一歩を踏み出すために、私たちが全力でサポートいたします。

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投稿者プロフィール

牧野孝二郎 弁護士

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

交通事故による大腿骨骨折・後遺障害と慰謝料を徹底解説

2026-07-12

交通事故で負傷する部位のなかでも、大腿骨(太ももの骨)の骨折は特に重篤な損傷のひとつです。

手術やリハビリに長期間を要するうえ、後遺症が残るケースも少なくありません。

そのような事情もあり、交通事故で大腿骨を骨折した場合、治療期間に応じた入通院慰謝料に加え、後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求でき、受け取れる賠償金は大きくなります。

大腿骨骨折では、股関節や膝関節の可動域制限、下肢の短縮、変形癒合、偽関節、痛みやしびれなどが後遺障害として問題となります。

後遺障害慰謝料の目安は、等級により弁護士基準で110万円から1,180万円程度ですが、実際の賠償額は入通院期間、収入、年齢、仕事への影響、過失割合、他の怪我の有無によって変わります。

なお、後遺障害が認定されない場合でも、治療費、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費などは請求できます。

本記事では、交通事故による大腿骨骨折の基礎知識から、後遺障害等級の認定基準・慰謝料相場・弁護士に相談するメリットまでを、交通事故案件に注力している弁護士の監修の下わかりやすく解説します。

1. 交通事故による大腿骨骨折の基本知識

大腿骨の役割と重要性

大腿骨は人体最大かつ最強の骨であり、大腿部(太もも)に位置して股関節と膝関節をつなぐ重要な役割を担っています。

体重の支持・歩行・走行・立ち上がりなど、日常のあらゆる動作に不可欠です。

大腿骨は構造上、①大腿骨頭・頸部・転子部(股関節側)、②骨幹部(中央部)、③遠位端(膝関節側)の3つに大別されます。

大腿骨骨頭部イラスト

それぞれ骨折の様相や治療法・後遺障害リスクが異なります。

交通事故での大腿骨骨折のメカニズム

大腿骨骨折は、交通事故のなかでもバイク事故・自転車事故・歩行者と自動車の衝突などで多く発生します。

直接的な衝撃(相手車両への膝の激突など)や、転倒時の体重のかかり方によって骨折が生じます。

骨折部位主な受傷メカニズム特徴・リスク後遺障害で確認する主な点  
大腿骨頚部骨折側方からの衝突・転倒時の捻転力高齢者に多い。股関節の機能障害が残りやすい股関節の可動域制限、疼痛、人工骨頭・人工股関節置換後の機能
大腿骨転子部骨折直接打撲・転倒歩行困難となる場合や足が短縮する場合もある下肢短縮、股関節の可動域制限、歩行状態
大腿骨骨幹部骨折車両との正面衝突・強い外力大量出血リスク。髄内釘固定が一般的下肢短縮、変形癒合、偽関節、股関節・膝関節の可動域、神経症状
大腿骨遠位端骨折膝の強打膝関節の機能障害が残りやすい膝関節の可動域制限、膝痛、変形癒合、歩行への影響

2. 大腿骨骨折の症状と治療法

大腿骨骨折の主な症状

大腿骨骨折は骨折部位によって症状が異なりますが、共通して現れる主な症状は以下のとおりです。

  • 激しい疼痛
  • 大腿部の変形・腫脹(骨がずれると著明な腫れが生じる)
  • 患肢の短縮・回旋変形
  • 歩行・起立不能
  • 出血・血腫形成(骨幹部骨折では大量出血)
  • 神経・血管損傷症状(しびれ・冷感・チアノーゼ)

⚠️ 注意:大量出血について
大腿骨骨幹部骨折では、骨折部への出血だけで1,000〜2,000mLに達することがあります。救急搬送後の輸血・ショック対応が必要となるケースもあり、生命に関わる重篤な外傷です。

治療方法とリハビリテーション

大腿骨骨折の治療は基本的に手術療法が選択されます。骨折部位・年齢・骨折型によって術式が決まります。

治療法対象・特徴入院期間の目安
髄内釘固定術骨幹部骨折に最も多く用いられる。骨髄腔にチタン製の釘を挿入して固定する。2〜4週間
プレート固定術遠位端骨折など複雑な形状の骨折に有効。プレートとスクリューで固定。2〜6週間
人工骨頭置換術頚部骨折(特に高齢者)に対し、骨頭を人工物に置き換える。3〜6週間
人工股関節全置換術(THA)骨頭壊死・変形性股関節症が生じた場合に選択される。3〜6週間

術後はリハビリテーションが不可欠です。

早期から関節可動域訓練・筋力訓練・歩行訓練を行い、機能回復を目指します。

骨折の重症度・合併症の有無によって、リハビリ期間は数カ月〜1年以上に及ぶことも珍しくありません。

📋 リハビリの流れ(例)

STEP 1:術直後〜2週間(急性期リハビリ)→ ベッド上での関節可動域訓練・筋力維持・浮腫軽減

STEP 2:2〜8週間(荷重・歩行訓練)→ 部分荷重から全荷重へ段階的に移行。松葉杖・歩行器使用

STEP 3:2〜6カ月(機能回復訓練)→ 筋力強化・バランス訓練・日常生活動作(ADL)の回復

STEP 4:6カ月以降(社会復帰へ向けたリハビリ)→ 職場復帰訓練。症状固定の判断も行われる

3. 大腿骨骨折による後遺障害の種類

大腿骨骨折では、適切な治療・リハビリを行っても症状が残存するケースがあります。

これを後遺障害といい、自賠責保険の後遺障害等級が認定されると、慰謝料・逸失利益などの賠償額が大幅に増加します。

主な後遺障害は「短縮障害」「機能障害」「神経障害」の3つです。

短縮障害とその影響

骨幹部骨折などで骨がずれたまま癒合すると、患肢が健側より短くなる短縮障害が生じます。

短縮の程度後遺障害等級主な影響
5cm以上短縮8級5号跛行(はこう)が顕著。骨盤傾斜・脊椎側弯が生じる。長距離歩行が困難
3cm以上短縮10級8号跛行(はこう)
1cm以上3cm未満短縮13級8号軽度の跛行。靴底のリフトアップで対応できるケースも多い

機能障害の具体例

骨折後の関節拘縮・筋萎縮・骨癒合不全などにより、股関節や膝関節の可動域が制限される機能障害が残ることがあります。

障害の内容後遺障害等級
股関節または膝関節の用廃(まったく動かない・健側の10%以下)8級7号
股関節または膝関節の可動域が健側の1/2以下に制限10級11号
股関節または膝関節の可動域が健側の3/4以下に制限12級7号

神経障害の症状と影響

骨折に伴う神経損傷や手術による神経への影響で、下肢のしびれ・感覚障害・疼痛(神経障害性疼痛)が残存することがあります。

  • 坐骨神経障害:大腿後面から下腿にかけてのしびれ・感覚低下・筋力低下
  • 大腿神経障害:大腿前面のしびれ・感覚低下、膝伸展力の低下
  • 神経障害性疼痛(CRPS含む):持続する灼熱感・アロディニア
  • 足の変形:下垂足(腓骨神経麻痺)による歩行困難
神経障害の程度後遺障害等級
1関節の完全弛緩性麻痺等8級7号
1下肢の軽度の麻痺・神経症状(しびれ等)12級13号または14級9号

4. 交通事故で大腿骨を骨折した場合の慰謝料・賠償金の相場

大腿骨骨折で請求できる賠償金の内訳

交通事故で大腿骨を骨折した場合、請求できる可能性がある賠償金は後遺障害慰謝料だけではありません。

検索で「慰謝料」と調べる方の多くは、最終的に受け取れる賠償金全体を知りたいと考えていると思いますので、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、休業損害、逸失利益、治療費、通院交通費、装具費などに分けて確認することが重要です。

項目内容
入通院慰謝料入院・通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償
後遺障害慰謝料後遺障害等級が認定された場合の精神的苦痛に対する補償
休業損害治療のために仕事や家事ができず、収入等が減少した損害
後遺障害逸失利益後遺障害により将来の収入が減ると見込まれる損害
治療関係費等治療費、通院交通費、装具費、付添費など

後遺障害等級の認定基準

後遺障害等級は1級〜14級まであり、1級が最も重篤です。

大腿骨骨折で認定される等級は、後遺症の種類・程度によって異なります。

複数の後遺障害が残る場合は、併合によって等級が上がることがあります。

等級大腿骨骨折に関連する典型例
6級1下肢の膝関節及び股関節が用廃(複数関節)
8級1関節の用廃・5cm以上の短縮障害・完全弛緩性麻痺
10級1関節の可動域1/2以下制限・3cm以上の短縮障害
12級1関節の可動域3/4以下制限・変形癒合・神経症状(他覚所見あり)
13級1cm以上3cm未満の短縮障害
14級神経症状(他覚所見なし)

慰謝料の相場と計算方法

交通事故の慰謝料には①自賠責基準・②任意保険基準・③弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。

弁護士基準が最も高額になるため、弁護士に依頼することで慰謝料が大幅に増額するケースが多いといえます。

後遺障害等級自賠責基準弁護士基準(目安)
6級512万円1,180万円
8級331万円830万円
10級187万円550万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

具体例(機能障害に関する慰謝料・逸失利益)

機能障害(8級7号・10級11号・12級7号)に対応する後遺障害慰謝料は上記表のとおりですが、これに加えて逸失利益が算定されます。

📐 逸失利益の計算式

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 67歳までのライプニッツ係数

例:年収500万円・8級認定(喪失率45%)・45歳の場合

500万円 × 0.45 × 15.9369 ≒ 約3,586万円

5. 後遺障害認定を受けるためのポイント

症状固定の重要性

後遺障害として申請できるのは、症状固定(これ以上治療を続けても症状が改善しない状態)と医師が判断した後です。

  • 症状固定の判断は担当医師が行う。保険会社に促されても、症状の改善が見込まれる状況であれば治療継続を主治医に相談した方がよい
  • 症状固定日は後遺障害等級の認定に影響する。あまり早期に設定しないよう注意が必要
  • 症状固定後は、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼する

後遺障害診断書の確認ポイント

後遺障害診断書の記載内容が、等級認定の可否を大きく左右します。

以下の点を必ず確認してください。

  • 可動域の計測値:健側・患側の両方を正確に記載。数値が欠けていると適切な等級が認定されないリスクがある
  • 画像所見の記載:X線・MRIなどの画像所見が明記されているか。変形癒合・骨萎縮の有無を確認
  • 神経症状の他覚所見:しびれ・感覚障害を訴えるだけでなく、腱反射低下・MMT結果など他覚的所見が必要
  • 短縮の計測値:健側・患側の具体的な数値が記載されているか

⚠️ 後遺障害診断書は弁護士と一緒に確認を
後遺障害診断書の記載が不十分・不正確な場合、本来認定されるべき等級が認定されないことがあります。提出前に弁護士に確認を依頼することを強くお勧めします。

6. 弁護士に相談するメリット

適正な賠償金の獲得

保険会社は任意保険基準(自賠責基準に近い低い金額)で示談交渉を行います。

弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準(裁判基準)での請求が可能となり、慰謝料・逸失利益が大幅に増額するケースが多いといえます。

項目(具体例)弁護士なし(保険会社提示額の例)弁護士あり(弁護士基準)
後遺障害慰謝料(12級)約100〜140万円約290万円
後遺障害慰謝料(8級)約340〜400万円約830万円
入通院慰謝料(6カ月入通院)約80〜100万円約116万円〜

交渉のプロセスとサポート

弁護士に依頼することで、以下のサポートをすべて受けられます。

  • 事故直後からの証拠保全アドバイス:警察・保険会社への連絡方法、診断書・画像の保管方法などを指導
  • 後遺障害申請のサポート:後遺障害診断書の確認・被害者請求・異議申立て手続きの代行
  • 保険会社との示談交渉:弁護士基準での慰謝料・逸失利益等の請求。不当な過失割合の修正も対応
  • 訴訟・調停への対応:示談交渉が不調の場合、訴訟・ADRへの対応も一貫サポート

✅ 弁護士費用特約を活用しよう
多くの自動車保険には弁護士費用特約が付帯しています。
弁護士費用特約があれば、弁護士費用(着手金・報酬金)が保険でまかなわれるため、実質無料で弁護士に依頼できるケースが多くあります。
まずは加入中の保険を確認してください。

7. 大腿骨骨折に関するよくある質問

Q. 治療にかかる期間はどのくらいですか?

A. 大腿骨骨折の治療期間は骨折の部位・重症度・年齢・合併症の有無によって大きく異なります。
一般的には入院:1〜3カ月、リハビリ期間を含めた症状固定まで:6カ月〜1年以上かかることが多いです。
後遺症が残る場合、治療期間中から弁護士に相談しておくことが重要です。

Q. 大腿骨骨折で後遺障害が残る可能性はどのくらいですか?

A. 大腿骨骨折は人体最大の骨への重篤な損傷であるため、適切な治療・リハビリを行っても何らかの後遺症が残るケースは少なくありません。
症状を粘り強く医師に訴え、画像検査・神経学的検査を受けることが重要です。

Q. 後遺障害の認定に納得できない場合はどうすればよいですか?

A. 後遺障害の認定結果に納得できない場合は「異議申立て」を行うことができます。
新たな医学的証拠(追加の検査結果・医師意見書など)を添付して再審査を求めることが可能です。
弁護士に相談することで、適切な証拠収集・申立て書類の作成を任せることができます。

Q. 示談を急かされていますが、どうすればよいですか?

A. 症状固定前・後遺障害等級認定前に示談してはいけません。
示談が成立すると、原則として追加請求ができなくなります。
まずは弁護士に相談し、現在の状況を確認したうえで示談のタイミングを判断してください。

8. まとめと今後のステップ

交通事故後の行動指針

大腿骨骨折を負った場合、以下のステップで行動することで、適正な賠償金を受け取れる可能性が高まります。

  • すぐに医療機関を受診・記録を残す:事故直後の診断書・画像(X線・CT・MRI)を保管。受診記録・治療記録をしっかり残す
  • 早期に弁護士へ相談する:事故直後から弁護士に相談することで、証拠保全・治療方針へのアドバイスが受けられる。無料相談を活用しよう
  • 症状固定まで治療を継続する:症状が残っている間は治療を継続。保険会社に促されても主治医の判断に従う
  • 後遺障害診断書を確認・申請する:弁護士と一緒に後遺障害診断書を確認し、被害者請求で後遺障害等級の認定を申請する
  • 弁護士基準で示談交渉・訴訟:後遺障害等級認定後、弁護士基準(裁判基準)での慰謝料・逸失利益を請求し示談交渉を進める

優誠法律事務所では、交通事故被害のご相談は無料で対応しております。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で足を骨折した場合の慰謝料相場|後遺障害等級・請求方法を弁護士が解説

2026-06-28

交通事故で足を骨折してしまった場合、身体的な痛みはもちろんのこと、治療の長期化や仕事への影響、今後の生活に対する不安など、さまざまな問題が重なります。

そのような状況で「自分はどれくらいの慰謝料をもらえるのか」、「どうやって請求すればいいのか」と疑問を抱く方は少なくありません。

一般的に、相手方保険会社から示談金として提示される金額が、本来認められるべき適正な水準を下回っているケースは多く見られますが、特に骨折が伴う交通事故では、その差額が大きい傾向があります。

適切な補償を受けるためには、慰謝料の仕組みや相場、請求の手順についての正しい知識が不可欠です。

本記事では、足の骨折に関わる慰謝料の種類・相場・算定基準・請求方法を、交通事故を得意とする弁護士の視点からわかりやすく解説します。

最後まで読むことで、あなたやご家族が適正な補償を得るために必要な行動が明確になると思います。

1.交通事故で足を骨折した場合の慰謝料相場

交通事故で足を骨折した場合の慰謝料は、治療期間や入院の有無、後遺障害等級が認定されるかどうかによって大きく変わります。

たとえば、弁護士基準(裁判基準)では、通院6ヶ月の場合の入通院慰謝料は116万円程度が目安です。

また、後遺障害が残った場合は、14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円の後遺障害慰謝料が認められるのが一般的です。

そのため、保険会社から提示された金額だけで判断せず、弁護士基準で計算した場合にどの程度の損害賠償を受け取ることができるのかを確認することが重要です。

2.交通事故による足の骨折と慰謝料の基本知識

(1)交通事故による骨折の種類と症状

交通事故によって足に生じる骨折は、部位や骨折の状態によってさまざまな種類に分類されます。

主な骨折部位と代表的な症状を以下に整理します。

足首(足関節)骨折:足首は体重を支える重要な部位であり、足関節は脛骨、腓骨、距骨の3つの骨で構成されています。交通事故の衝撃で強くひねられたり圧迫されたりすると骨折が生じやすい箇所です。主な症状として激しい腫れ・痛み・歩行困難が現れます。靭帯損傷を伴うケースも多く、足関節の可動域制限が残ることもあります。

大腿骨(太もも)骨折:人間の体で最も長い骨である大腿骨が骨折した場合、歩行が著しく困難になることがあります。特に高齢者では寝たきりになるリスクも高く、後遺症が残る可能性が高い重篤な骨折です。

脛骨(すね)・腓骨骨折:膝と足首をつなぐ脛骨・腓骨の骨折は、交通事故における下肢骨折の中でも発生頻度が高い部位です。骨が皮膚を突き破る「開放骨折」となる場合もあります。脛骨の膝関節内の骨折(高原骨折)の場合、膝関節の可動域に制限が出ることもあります。膝関節に近い部位の骨折では、靭帯損傷を伴うことも多いです。

骨盤骨折:交通事故による高エネルギー外傷で生じやすく、内臓への影響や大量出血を伴う危険な骨折です。長期入院・手術が必要となるケースが多く、後遺症のリスクも高い骨折です。

いずれの骨折も、事故直後は痛みや腫れが目立ちますが、時間が経つにつれて症状の全貌が明らかになることがあります。

「大丈夫だろう」と放置せず、整形外科などで画像検査(レントゲン・MRI)を受けることが重要です。

(2)骨折の治療法と回復期間

足の骨折に対する一般的な治療法は、骨折の部位・程度・ずれの有無などによって異なります。

保存療法(ギプス固定など):骨のずれが少ない場合は、ギプスや副木で患部を固定し、安静を保ちながら骨の自然癒合を待ちます。固定期間は骨折部位によって異なりますが、一般的に4〜8週間程度が目安です。その後、リハビリによって関節の可動域や筋力を回復させていきます。

手術療法(観血的整復固定術など):骨のずれが大きい場合や粉砕骨折の場合は、金属プレートやボルトで骨を固定する手術が行われます。手術後はリハビリが必要となり、金属を抜去する再手術が必要になる場合もあります。

回復にかかる期間の目安:骨折が癒合するまでに要する期間は、骨折の部位・重症度・年齢・体の状態によって異なります。軽度の骨折でも2〜3ヶ月程度、重症例では半年以上に及ぶことも珍しくありません。さらに、骨癒合後もリハビリが続くため、社会復帰までにはより長い期間を要するケースがあります。

3.交通事故で骨折した場合の慰謝料の種類

(1)入通院慰謝料とは

入通院慰謝料(傷害慰謝料)とは、交通事故の受傷による入院・通院期間中の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

骨折による長期の治療や療養、日常生活の制限、仕事への影響など、受傷後から治療終了(症状固定)までの精神的負担が補償の対象となります。

慰謝料の金額は、主に入院期間と通院期間の長さをもとに算定されます。

なお、「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態のことです。

症状固定の時点で治療を終了し、その後に残った症状は「後遺障害」として別途認定・請求する流れになります。

(2)後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とは、症状固定後も痛みや機能障害などの症状が残り、後遺障害等級の認定を受けた場合に請求できる慰謝料です。

骨折の場合、治療が完了しても以下のような症状が残ることがあります。

  • 関節が正常な範囲まで動かなくなる(機能障害)
  • 慢性的な痛みやしびれが続く(神経障害)
  • 骨が正常に癒合せず、不安定な状態になる(変形障害)
  • 足の長さに左右差が生じる(短縮障害)

これらの症状が認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料の金額が決まります。

入通院慰謝料と比べて金額が大きくなるケースが多く、適切な後遺障害認定を受けることが適正な補償を得る上で非常に重要です。

4.骨折の慰謝料相場と算定基準

慰謝料の算定には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判基準)」の3つの基準が用いられます。どの基準を使うかによって、受け取れる金額に大きな差が生じます。

(1)自賠責保険基準による慰謝料

自賠責保険基準は、国が定めた最低限の補償を目的とした基準です。入通院慰謝料の計算式は以下のとおりです。

1日あたり4,300円(2020年4月以降)×対象日数

「対象日数」は、①実際に治療を受けた日数(実治療日数)×2 と、②入院・通院の合計期間(暦日数)のいずれか少ない方が採用されます。

たとえば、通院期間6ヶ月・実治療日数60日の場合、60日×2=120日と180日(6ヶ月)を比べ、少ない120日が対象となり、4,300円×120日=51万6,000円が慰謝料の目安となります。

ただし、自賠責保険には傷害部分の上限額(120万円)が設けられており、治療費や交通費なども含めてこの範囲内でしか補償されません。

(2)任意保険基準による慰謝料

任意保険基準は、各任意保険会社が独自に設定している基準です。

こちらの基準は、あくまで保険会社内部で運用している基準で公開されていませんが、自賠責基準よりは多少高い基準に設定されています。

(3)弁護士基準による慰謝料相場

弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例をもとに設定された基準で、3つの算定基準の中で最も高額な補償が得られます。

骨折のように客観的所見が明らかな場合は、「別表I」と呼ばれる高い方の基準が適用されます。

以下は弁護士基準(別表I)による入通院慰謝料の目安です。

通院期間通院のみの場合入院1ヶ月+通院の場合
1ヶ月28万円77万円
2ヶ月52万円98万円
3ヶ月73万円115万円
4ヶ月90万円130万円
5ヶ月105万円141万円
6ヶ月116万円150万円

自賠責基準と比較すると、弁護士基準の方が大幅に高額となることがわかります。

保険会社との示談交渉では、弁護士が介入することで弁護士基準の適用を主張できるため、弁護士への依頼を検討することが重要です。

5.後遺障害等級の認定とその影響

(1)後遺障害等級の概要

後遺障害等級とは、交通事故による後遺症の重さに応じて定められた1〜14級の分類制度です。

等級が高い(数字が小さい)ほど重篤な障害を意味し、受け取れる慰謝料や逸失利益の金額も大きくなります。

等級の認定は、相手方保険会社を通じて自賠責保険会社に申請する「事前認定」と、被害者自身が直接自賠責保険会社に申請する「被害者請求」の2通りの方法があります。

適正な等級認定を目指す上では、主治医が作成する後遺障害診断書の内容が極めて重要です。

症状や検査結果が漏れなく正確に記載されるよう、受診時に自覚症状を医師に詳しく伝えることが大切です。

(2)骨折による後遺障害等級の具体例

足の骨折によって認定される可能性がある主な後遺障害等級を、弁護士基準の慰謝料額とともに紹介します。

等級主な症状の例弁護士基準の慰謝料
14級局部に神経症状を残すもの(痛み・しびれが継続)110万円
13級1下肢を1センチメートル以上短縮したもの180万円
12級1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
局部に頑固な神経症状を残すもの
290万円
10級1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの550万円
8級1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの830万円
7級1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの1,000万円

足の骨折では、骨が癒合した後も、痛みやしびれ(神経障害)、関節の可動域制限(機能障害)などの症状を残すことがあります。

これらの症状が医学的に認められる場合、後遺障害等級が認定される可能性が高くなります。

特に、足関節・膝関節・股関節などの主要な関節に可動域制限が残った場合は、12級・10級・8級などの高い等級に該当する可能性があるため、後遺障害診断書に正確な検査結果を記載してもらう必要があります。

また、可動域制限が残らなかった場合でも、骨折部位に痛みが残っている場合は14級が認定されやすいため、症状固定前から医師に症状を詳しく伝え、診断書やカルテなどに適切に残してもらうことが重要です。

6.交通事故の骨折で慰謝料を請求するための手続き

(1)必要な書類と証拠

慰謝料を適正に請求するためには、事故の状況と損害を客観的に証明する書類・証拠の準備が不可欠です。

主に必要となる書類は以下のとおりです。

【事故を証明する書類】

  • 交通事故証明書
  • 事故車の損傷状況が分かる写真・修理見積書

【治療・傷病を証明する書類】

  • 診断書(骨折の診断内容が明記されたもの)
  • 診療報酬明細書(レセプト)
  • 治療費の領収書
  • 後遺障害診断書(後遺障害が残った場合)

【収入・生活への影響を証明する書類】

  • 休業損害証明書(勤務先に作成してもらう)
  • 源泉徴収票・確定申告書(収入を証明するため)

弁護士に依頼する場合は、書類収集のサポートも受けられます。

また、自動車保険に弁護士費用特約が付帯されている場合は、一般的に自己負担なく弁護士に依頼できるため、まず保険証券を確認することをおすすめします。

(2)請求の流れと注意点

交通事故による慰謝料の請求は、おおまかに以下の流れで進みます。

1. 事故直後の対応

警察への通報・相手方の情報確認・現場の記録を行います。
警察に届け出ないと「交通事故証明書」が取得できず、その後の請求が困難になります。

2. 医療機関での治療

整形外科などで骨折の診断を受け、医師の指示に従って治療を続けます。
通院の間隔が開きすぎると「完治した」と判断されるリスクがあるため、定期的な受診を維持することが重要です。

3. 症状固定・後遺障害の申請

治療を続けても改善が見込めなくなった段階で医師が「症状固定」を判断します。
後遺症が残っている場合は、後遺障害等級の認定申請を行います。

4. 保険会社との示談交渉

症状固定・後遺障害等級の確定後、保険会社と損害賠償額について交渉します。
提示額が適正かどうか、弁護士基準と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。

5. 示談書の締結・慰謝料の受領

双方が合意した内容で示談書を締結し、通常1〜2週間後に慰謝料が口座に振り込まれます。
なお、示談成立後は原則として追加請求ができないため、後遺症の状況が固まるまで安易に示談に応じないことが重要です。

(3)交通事故で足を骨折した場合の慰謝料事例

交通事故で足を骨折した場合の慰謝料や損害賠償額は、骨折の部位、治療期間、後遺障害等級、休業損害の有無によって大きく異なります。

たとえば、足関節の可動域制限が残り、後遺障害12級が認定されたケースでは、裁判基準では後遺障害慰謝料として290万円が目安となります。

関節の機能障害がさらに重い場合には、10級で550万円、8級で830万円が目安となります。

一方で、保険会社側から提示される金額は、弁護士基準より低いことがあります。

そのため、提示額をそのまま受け入れるのではなく、弁護士に相談し、適正な損害賠償額を確認することが解決への近道です。

7.慰謝料以外に請求できる損害

交通事故による足の骨折では、慰謝料のほかにもさまざまな損害を請求することができます。

損害の全体像を把握した上で、漏れなく請求することが大切です。

(1)休業損害の請求

休業損害とは、交通事故のケガによって仕事を休んだことで生じた収入の減少分を補う損害賠償です。

会社員・自営業・主婦(主夫)のいずれの場合でも請求が可能です。

計算の基本は「事故前の日収×休業日数」です。

日収は、会社員であれば事故前3ヶ月の給与をもとに算定し、自営業者は確定申告書などを参考にします。

主婦(家事従事者)の場合は、賃金センサスの女性全年齢平均賃金をもとに算定します。

骨折により長期間仕事を休む必要が生じた場合は、休業損害だけで数十万〜数百万円に及ぶこともあります。

勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、しっかりと請求しましょう。

(2)治療費やリハビリ費用の請求

骨折の治療に要した費用は、原則として相手方の保険会社が全額負担します。

請求できる費用の主な項目は以下のとおりです。

  • 入院・手術費用(手術費・入院室料・食事代など)
  • 通院治療費(診察料・検査料・薬代など)
  • 装具費用(松葉杖・装具・車いすなど)
  • 通院交通費(電車・バス代、タクシーが必要な場合はタクシー代)
  • 入院雑費(日額1,500円程度が目安)

治療費に関する書類(領収書・明細書)は必ずすべて保管しておきましょう。

また、将来的に追加の手術(金属プレートの抜去手術など)が見込まれる場合、将来の治療費も請求できる場合があります。

8.交通事故の骨折で適正な慰謝料を得るためのポイント

(1)医師の指示に従う重要性

適正な慰謝料を得るためには、治療中の行動が非常に重要な意味を持ちます。

特に以下の点には注意が必要です。

定期的な通院を続ける:通院の間隔が開きすぎると、保険会社から「症状が改善した」「治療の必要はなくなった」と判断され、治療費の打ち切りや慰謝料の減額につながるリスクがあります。医師の指示に従い、定期的に通院することが重要です。

自覚症状を正確に医師に伝える:骨折後に残る痛みやしびれは、後遺障害認定の重要な判断材料となります。診察時に「良くなった」と軽く伝えてしまうと、後遺障害診断書に症状が適切に記載されない可能性があります。気になる症状はすべて、正確に医師に伝えることが大切です。

安易に示談に応じない:保険会社から早期に示談を提案されることがありますが、症状が固まる前に示談すると、その後の治療費などが追加請求できません。治療が終了し、症状が固定してから交渉に臨むようにしましょう。

(2)弁護士に相談するメリット

交通事故の骨折事案は、医学的・法律的な知識が複雑に絡み合うため、弁護士に依頼することで得られるメリットは非常に大きいです。

弁護士基準で慰謝料を算定・交渉できる:弁護士なしで保険会社と交渉する場合、多くの場合で自賠責基準や任意保険基準の低い金額で示談になってしまいます。弁護士が介入することで、弁護士基準(裁判基準)に基づいた適正な金額を主張でき、慰謝料が増額される可能性が高まります。

後遺障害認定のサポートを受けられる:適切な後遺障害等級の認定を受けるために、後遺障害診断書の記載内容や医師への伝え方についてアドバイスを受けることができます。等級が1段階変わるだけで、慰謝料や逸失利益が大幅に変わるため、専門家のサポートは非常に重要です。

精神的な負担を軽減できる:ケガの治療で身体的につらい状況の中、保険会社とのやり取りを自分で行うことは大きなストレスです。弁護士に交渉を一任することで、治療に専念できます。

弁護士費用特約で自己負担ゼロのケースも:自動車保険の弁護士費用特約が使える場合、弁護士費用は保険会社が負担するため、多くの場合、被害者の自己負担はゼロになります(※)。加入している保険を確認の上、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

※得られた示談金が高額の場合には、特約の300万円の枠を超えて自己負担が発生する場合もありますが、その場合には不足分は示談金から充当されますので、いずれにしてもご自身で費用を捻出する必要はなく、負担は少ないといえます。

当法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を受け付けています。

保険会社から提示された慰謝料の金額が妥当かどうか、後遺障害等級の申請をどう進めるべきか、弁護士費用特約を利用できるかなど、状況に応じて具体的にサポートいたします。

足の骨折による慰謝料請求でお困りの方は、早めにご相談ください。

9.交通事故による骨折の慰謝料に関するQ&A

(1)通院期間による慰謝料の相場

Q. 骨折で6ヶ月通院した場合、慰謝料はどれくらいになりますか?
A. 弁護士基準(別表I)では、通院6ヶ月の入通院慰謝料の目安は116万円程度です(入院なし・通院のみの場合)。これに対し、自賠責基準での算定では40〜50万円前後となるケースが多く、基準によって受け取れる額に大きな差が生じます。

Q. 治療中に保険会社から「治療費の支払いを打ち切る」と言われました。どうすればよいですか?
A. 保険会社の打ち切り通知は、医学的な「完治」や「症状固定」を意味するわけではありません。まだ痛みや症状が残っており、主治医も治療継続が必要と判断している場合は、安易に同意する必要はありません。強引に打ち切られる場合には、健康保険に切り替えて通院を継続し、治療費は後から別途請求する方法もあります。打ち切りを打診された場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

Q. 骨折の慰謝料請求だけでなく、過失割合や物損についても依頼できますか?
A. はい、対応可能です。交通事故に関する損害賠償の問題はケガに関するものだけでなく、過失割合の争いや車両・物的損害(物損)についても一括してご相談・ご依頼いただくことが可能です。

(2)後遺障害が残った場合の慰謝料

Q. 後遺障害が残った場合、慰謝料はどれくらい増えますか?
A. 後遺障害が認定されると、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料と逸失利益が発生します。後遺障害慰謝料は、弁護士基準では14級(局部に神経症状)で110万円、12級(関節機能に障害または頑固な神経症状)で290万円、10級(関節機能に著しい障害)で550万円の後遺障害慰謝料となります。これに逸失利益が加算されるため、最終的な損害賠償総額は慰謝料だけでなく、年収や症状固定時の年齢によっても大きく異なります。

Q. 慰謝料はいつ支払われますか?
A. 原則として、治療が終了(症状固定)し、後遺障害等級が確定した後に保険会社との示談交渉を行い、双方が合意して示談書を取り交わしてから約1〜2週間後に口座へ振り込まれます。示談書への署名前に、弁護士にチェックを依頼することをおすすめします。

まとめ:交通事故で骨折した場合の対応

・適切なアクションを取るために

交通事故で足を骨折した場合、適正な慰謝料を得るために大切なことをまとめます。

事故後すぐに行うべき行動:まず警察に通報し、相手方の情報と現場の状況を記録します。その後、できるだけ早く整形外科を受診し、骨折の診断書を取得しましょう。事故に関係する領収書はすべて保管し、通院を定期的に継続することが重要です。

治療中に意識すること:自覚症状(痛み・しびれ・可動域の制限など)を毎回正確に医師に伝え、診療記録に残してもらいましょう。治療が一段落したら、後遺障害の有無を医師と相談した上で、後遺障害等級の申請を検討します。

保険会社との交渉で注意すること:提示された慰謝料が弁護士基準と比べて低い場合は、安易に示談に応じず、弁護士に相談した上で交渉を進めましょう。

・専門家への相談の重要性

交通事故による骨折は、適切に対応しなければ受け取れる補償が本来の水準を大幅に下回ってしまうおそれがあります。

特に後遺障害が残るような重傷事案では、弁護士への相談が適正な賠償を得るための最善策となります。

当法律事務所では、交通事故案件に対応している所属弁護士が、被害者側の慰謝料請求や後遺障害等級認定、保険会社との交渉をサポートしています。

「提示された金額が適正かわからない」「後遺障害の申請方法を知りたい」「痛みやしびれが残っているが認定される可能性があるのか不安」といった方は、無料相談をご利用ください。

一人で悩まず、まずは専門家にご相談いただくことをおすすめします。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で足を骨折した場合の慰謝料はいくら?相場と後遺障害を弁護士が解説

2026-05-22

交通事故によって骨折という大きな傷害が生じた場合、ケガを負った本人はもちろんのこと、サポートする家族や周囲の方々にとっても、今後の生活や手続きに関して大きな不安を抱えることとなります。

また、適正な賠償の仕組みをあらかじめ正しく理解しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

骨折を伴うケースでは、治療が長期化しやすく、痛みが引かない、関節が動かしにくいといった後遺症が残るリスクもあります。

しかし、示談の際に保険会社から提示される慰謝料は、本来の適正な基準(弁護士基準・裁判基準)よりも低く見積もられていることがほとんどです。

本記事では、適正な賠償金が算出される基礎知識や、解決までの適切な流れを弁護士が詳しく解説します。

以下の目次に沿って、具体的な請求の手順や、後遺障害認定を受けるための詳細な条件、知っておくべきポイントなどを分かりやすく紹介します。

当事者にとって公平で適切な解決を図るための正しい知識として、ぜひ最後までご一読ください。

1.交通事故で足を骨折した場合に請求できる慰謝料と流れ

交通事故で足を骨折した場合、請求できる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」です。

治療期間や入院の有無、後遺障害等級の認定結果によって金額は大きく変わります。

たとえば、足関節の可動域制限や痛み・しびれが残った場合には、10級・12級・14級などの後遺障害等級が認定される可能性があり、裁判基準では14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円が後遺障害慰謝料の目安となります。

⑴ 慰謝料請求の基本ステップ

交通事故の骨折で慰謝料を請求するにあたっては、基本的なステップを把握しておくことが重要です。

まず、交通事故の内容を記録しておきましょう。

事故直後は気が動転しているかと思いますが、事故状況、相手方の連絡先、事故現場(たとえば、どのビルの前だったかなど)を記録し、目撃者がいれば連絡先を控えておきましょう。

次に、医療機関で骨折の診断を受けた後、適切な治療を受けます。

慰謝料は通院回数や通院期間によって金額が定まる上、治療が長引くようなケースでは、後遺障害の申請を見据えて適切な治療を受けることが、適切な賠償をもらえるかどうかの分かれ道となります。

最後に、必要な治療を受けた後は、相手方の保険会社と慰謝料を含む示談金の交渉を行い、事故で生じた損害についての話し合いを進めます。

治療費については、治療中に保険会社が支払対応をすることが通常ですが、慰謝料については、基本的に治療が終了した後の交渉になります。

⑵ 必要な書類と証拠

慰謝料請求を円滑・適正に進めるためには、客観的な書類と証拠の準備が欠かせません。

まず、必ず医療機関を受診し、医師から骨折等について診断を受けることが必要です。

診断書の記載と実際の症状との間に齟齬がないようにするため、例えば著しい痛みがあるならば、その旨を必ず医師に申告しましょう。

次に、通院にかかる治療費の領収書は大切に保管しておきましょう(保険会社が直接医療機関に治療費を支払っているケースでは不要です。)。

これにより、実際にかかった費用を正確に証明することができます。

また、事故の発生を公的に証明する重要な書類として、警察署が発行する交通事故証明書を入手しておきましょう。

なお、弁護士に依頼することにより、書類や証拠の準備を、弁護士と協力しながら進めることも可能です。

加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯されていて、この特約が利用できる交通事故に該当する場合、多くの場合で弁護士費用を負担することなく弁護士に依頼することができます。

2.足の骨折で後遺障害が残った場合の慰謝料と等級認定

⑴ 後遺障害等級の認定方法

骨折の治療後も症状が残存している場合、自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請を検討することが重要です。

骨折の場合、骨が癒合しても痛みが残る「神経障害」や、関節の動く範囲が狭くなる「機能障害(可動域制限)」などが後遺障害等級認定の対象として考えられます。

後遺障害等級認定の申請をするにあたっては、担当医が作成する後遺障害診断書が極めて重要な役割を果たします。

例えば、骨折後の痛みが長引いて残る場合、後遺障害診断(症状固定)までの治療経過や、検査の結果について、後遺障害診断書を含む各診断書に適切な記載がなされていることが重要です。

これらの点を踏まえ、後遺障害別等級表のうち、いずれの等級に該当するのかについて審査が行われることになります。

後遺障害等級が認定されれば、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料を受け取ることができますが、どの等級が認定されるかによって、最終的な賠償額は大きく変わります。

⑵ 後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料がいくらになるのかについては、しっかりと理解しておくことが必要です。

損害賠償のうち、後遺障害に関する費目(後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益)は、認定された等級によって金額が大きく変動します。

最も高額となる弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料は、以下のとおりです(足の骨折に関する後遺障害のみ抜粋しています。)。

等級後遺障害の内容後遺障害慰謝料
14級局部に神経症状を残すもの等110万円
13級1下肢を1センチメートル以上短縮したもの等180万円
12級局部に頑固な神経症状を残すもの等290万円
10級1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの等550万円
9級1足の足指の全部の用を廃したもの等690万円
8級1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの等830万円
7級1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの等1000万円
6級1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの等1180万円
5級1下肢を足関節以上で失ったもの等1400万円
4級1下肢をひざ関節以上で失ったもの等1670万円
3級終身労務に服することができないもの等1990万円
2級随時介護を要するもの等2370万円
1級常に介護を要するもの等2800万円

3.交通事故で多い足の骨折の種類と後遺症

⑴ 足首骨折の症状と後遺障害

足首(足関節)の骨折は、激しい腫れや痛み、歩行困難などが主な症状として現れます。

足首は体重を支え、歩行の要となる関節であるため、通勤や家事など日常生活にダイレクトに支障をきたします。

また、足首(足関節)の骨折は後遺障害が残りやすいケガの一つです。

ギプス固定などの治療や長期間のリハビリを経ても、関節の動く範囲、いわゆる可動域が制限される「機能障害」や、慢性的なしびれ・痛みを伴う「神経障害」が残るリスクがあります。

症状の重さに応じて、10級や12級などの等級が認定される可能性があります。

⑵ 大腿骨骨折の後遺障害等級

大腿骨(太ももの骨)は、人間の体重を支え、歩行の要となる重要な部分(部位)であるため、大腿骨骨折は重篤な後遺障害を引き起こす可能性がある部位です。

歩行が著しく困難になり、車椅子や杖の生活を余儀なくされるなど、日常生活に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

後遺障害等級としては、骨が正しく癒合せず「偽関節」が残ってしまった場合や、足の長さが短縮してしまった場合、関節が曲がりにくくなった場合に関する等級があり、8級・10級・12級などの等級に該当する可能性があります。

また、歩行が完全に困難になるような上肢・下肢の複合的なケガや、脳へのダメージによる高次脳機能障害を伴うような重大なケースでは、1級、3級、5級、6級といった極めて高い等級が認定される可能性があります。

4.足の骨折で適正な慰謝料を受け取るためのポイント

⑴ 慰謝料相場の理解

適正な慰謝料を取得するためには、まず被害者ご自身(あるいはご家族)が、現在の正しい相場を調査し理解することが重要です。

そもそも交通事故の慰謝料には、入通院に対する「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」や、後遺症が残った場合の「後遺障害慰謝料」があります。

さらに、傷害慰謝料を算出する「弁護士基準(裁判基準)」には、2つの基準が存在します。

むちうち等の他覚所見がない場合は低い方の基準(別表Ⅱ)が用いられますが、骨折のようにレントゲン画像等でケガの程度が明らかなケースでは、高い方の基準(別表Ⅰ)が使われる可能性が高くなります。

インターネットの専門記事や過去の判例を参考にし、骨折でどの程度の金額が認められているのか、具体的な相場感をつかむことが大切です。

⑵ 弁護士に依頼するメリット

交通事故による慰謝料請求は、医学的知識と法的知識が交差する複雑なプロセスです。

そのため、弁護士に依頼することには非常に多くのメリットがあります。

まず、弁護士は法律の専門知識を持っているため、保険会社が低い金額を提示していた場合、最も高額な「裁判基準(弁護士基準)」を用いて適切な慰謝料を再計算・主張することができます。

また、相手方やその保険会社とのやり取りなどの精神的負担の大きい作業を任せることができます。

相手方やその保険会社が頑固で、裁判所外では適切な慰謝料が獲得できない場合、裁判所を利用した手続についても弁護士に依頼することができます。

このように、弁護士に依頼すると、自分で交渉する手間と不安を省き、時間と労力を大幅に節約しながら、治療や日常生活の再建に専念できるのです。

弁護士への依頼を検討する場合、まずは法律事務所に相談することをお勧めします。

5.交通事故の慰謝料計算に使う3つの基準

慰謝料の算定では、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料をそれぞれ分けて考える必要があります。

さらに、これらは自賠責保険基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)によって算出方法が異なり、治療期間、通院日数、入院の有無、後遺障害等級の認定結果によって、請求できる金額は大きく変動します。

⑴ 自賠責保険基準と弁護士基準の比較

交通事故の慰謝料には、主に「自賠責保険基準」と「裁判基準(弁護士基準)」の2種類が存在します(※保険会社が独自に用いる「任意保険基準」もあります)。

自賠責保険基準は、国が定めた最低限の補償を提供するものであり、上限が設けられています。

これに対して裁判基準(弁護士基準)は、損害や苦痛を正当に評価した基準であり、自賠責基準と比較して高額になります。

相手方の保険会社は、自社の支出を抑えるためもあってか、弁護士が就いていない場合は自賠責基準やこれに近い任意保険基準での示談を提案してくることが通常です。

被害者が適正な補償を受けるためには、原則として裁判基準(弁護士基準)での解決を目指すべきです。

⑵ 逸失利益の計算方法

「逸失利益」とは、交通事故の後遺症によって労働能力が低下し、将来得るはずであった収入を失ったことによる損害を指します。

この計算は非常に複雑で、主に以下の3つのデータを用いて算出します。

適正な計算には、専門的な判断が不可欠です。

・基礎収入:事故前の年収など

・労働能力喪失率:認定された後遺障害等級に応じた割合(例:14級なら5%、12級なら14%など)

・労働能力喪失期間:症状固定から原則67歳までの期間(将来の利息を引くための「ライプニッツ係数」を使用します)

例えば、「症状固定時の年齢が50歳で年収500万円のサラリーマンが、傷害を負い後遺障害等級12級(喪失率14%)が認定され、喪失期間を17年(ライプニッツ係数13.1661)とした場合」は、
約920万円(500万円×0.14×13.1661)の逸失利益が、慰謝料とは別に請求できる計算となります。

なお、労働能力喪失期間は原則67歳までとされていますが、実務上、12級13号は10年程度、14級9号は5年程度に制限されることが多いです。

6.交通事故後の対応と必要な行動

⑴ 事故後の初期対応

交通事故が発生した場合、まずは自分自身と周囲の安全を確保することが最優先です。

車を安全な場所に移動させるなどの措置を取りましょう。

次に、ケガの程度にかかわらず、速やかに110番して警察に報告し、臨場した警察官に事故の状況を正確に伝えます。警察に報告しないと「交通事故証明書」が発行されず、後々の請求が非常に厳しくなってしまうリスクがあります。

また、相手方の氏名、連絡先、車のナンバー、加入している保険会社などの情報を記録し、目撃者がいれば連絡先をメモしておきましょう。

可能であれば、スマートフォン等で現場の状況や車両の破損箇所の写真を撮っておくことも、重要な証拠保全となります。

⑵ 医療機関との連携

交通事故に遭った後は、少しでも違和感があれば、その日のうちに(遅くとも数日以内に)必ず整形外科などの医療機関で診察を受けることが必要です。

整骨院等については、受診前にまずは医師の診断を受けることが鉄則です。

骨折が疑われる場合はもちろん、目に見えない神経の損傷等がないか、専門医によるレントゲンやMRIによる正確な診断が重要です。

また、通院の間隔が空きすぎると「もう治った」と判断されるリスクがあるため、医師の指示に従って定期的に通院し、治療の過程や自覚症状の変化(改善傾向にあり治療効果が現れていること等)を医師に伝えることが重要です。

基本的には、治癒ないし症状が固定するまで通院することになります。

7.交通事故の骨折に関するQ&A

⑴ よくある質問とその回答

ここでは、交通事故による骨折に関してご相談者様から寄せられるよくある質問とその回答を簡潔にご紹介します。

Q. 骨折の治療中、保険会社から突然「治療費の支払いを打ち切る」と言われました。どうすればいいですか?

A. 保険会社の打ち切り打診は、必ずしも医学的な「完治」を意味しません。まだ痛み等があり主治医も治療継続が必要と判断している場合は、安易に同意せず、健康保険に切り替えて通院を継続し、後から請求する方法があります。

Q. 骨折の怪我に関する慰謝料の請求だけでなく、過失割合や物損の交渉についても依頼することは可能ですか?

A. 法律事務所によって対応方針は異なるかと思いますが、当事務所においては、これらについても一緒にご依頼いただくことが可能です。

Q. 慰謝料はいつのタイミングで支払われますか?

A. 原則として、ケガの治療が終了(症状固定となり後遺障害等級が確定する等)した後、保険会社と示談交渉を行い、双方が合意して示談書を取り交わしてから約2~3週間後に口座に振り込まれます。

⑵ 専門家に相談する重要性

交通事故による骨折のような重傷事案において、早期に専門家に相談することの重要性は計り知れません。

弁護士に相談することで、今後の治療の受け方に関するアドバイスや、後遺障害診断書を作成する際の医師への適切な伝え方など、「適正な賠償を獲得するための道筋」が明確になります。

保険会社とのやり取りにストレスを感じたタイミングや、治療費の打ち切りを打診されたタイミング、あるいは後遺障害認定の手続きに入る前など、少しでも不安を感じたら一人で悩まないことが大切です。

交通事故による足の骨折では、治療中の対応や後遺障害申請の進め方によって、受け取ることができる慰謝料・損害賠償額が変わる可能性があります。

保険会社から提示された金額に不安がある場合や、後遺症が残るかもしれないと感じている場合は、早めの相談が重要です。

当法律事務所では、交通事故の無料相談を実施しています。

電話でのご相談受付にも対応しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)

バイク事故で脊髄損傷|慰謝料・逸失利益が数百万円変わる分岐点とは

2026-01-11

今回のテーマは、バイク事故による「脊髄損傷」です。

交通事故の中でも、身体が剥き出しの状態であるバイク事故は、重篤な怪我につながるケースが少なくありません。

中でも脊髄損傷は、手足の麻痺や感覚障害など、被害者の将来にわたって深刻な影響を残す重大な傷害です。

脊髄損傷の被害者が適切な補償を獲得するためには、後遺障害の等級認定が極めて重要です。

認定される等級が1つ違うだけで、慰謝料や逸失利益が数百万円、あるいは数千万円単位で変わることもあります。

本記事では、交通事故・バイク事故を多く取り扱ってきた弁護士の視点から、脊髄損傷の基礎知識、賠償額が決まる仕組み、そして解決へのポイントを解説します。

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1.交通事故による脊髄損傷とは?症状・後遺症・被害者に生じる障害を解説

まずは、医学的な観点から脊髄損傷がどのような状態を指すのか、その症状と診断の基礎知識を確認しましょう。

・脊髄損傷が起きる仕組みと主な原因(交通事故事例を中心に解説)

脊髄とは、脳から背骨(脊椎)の中を通って伸びる太い神経の束のことです。

バイク事故では、転倒時の強い衝撃などにより、背骨の骨折や脱臼が生じ、その中の脊髄が圧迫されたり傷ついたりすることで損傷が起きます。

特にバイクは、ヘルメットで頭部は守られていても、首(頚椎)や腰(腰椎)は衝撃を受けやすい部位です。

事例としても、交差点での出会い頭の衝突や、ガードレールへの激突などで、頚髄(首の神経)を損傷するケースが多く見られます。

2.脊髄損傷の症状・種類・部位別の違い|頚髄損傷が重くなりやすい理由

交通事故による脊髄損傷では、損傷した部位や損傷の程度に応じて、様々な症状が現れます。

代表的なのは、麻痺・感覚障害・運動制限であり、これらの症状がどの程度残るかによって、後遺障害等級や慰謝料額が大きく左右されます。

脊髄損傷では、脳からの指令が神経を通じて伝わらなくなることで、手足が動かしにくくなる「麻痺」や、痛み・温度を感じにくくなる「感覚障害」が生じることがあります。

また、歩行や階段昇降が困難になるなど、日常生活や労務に支障をきたす「運動制限」が残るケースも少なくありません。

これらの症状は、損傷の程度だけでなく、どの部位の脊髄が損傷したかによっても大きく異なります。

特に頚髄(首の脊髄)を損傷した場合には、上肢・下肢の双方に障害が及びやすく、重症の場合には介護が必要となる後遺症が残ることもあります。

一方、胸髄や腰髄の損傷では、主に下半身に麻痺や感覚障害が現れ、歩行困難や日常生活動作の制限が問題となるケースが多く見られます。

さらに、脊髄損傷が「完全損傷」か「不完全損傷」かによっても、症状の重さや生活への影響は大きく異なります。

完全損傷では神経機能がほぼ失われるのに対し、不完全損傷では一部の運動機能や感覚が残ることがあります。

この違いは、後遺障害等級や賠償額にも大きく影響します。

次に、こうした症状や損傷の違いが、後遺障害等級としてどのように評価されるのかを解説します。

3.交通事故による脊髄損傷|後遺障害等級(1級〜12級)の一覧と認定ポイント

脊髄損傷による損害賠償において、最も重要なのが「後遺障害等級」です。

この等級によって、保険会社から支払われる金額の基準が決まります。

⑴ 後遺障害等級(1級~12級など)の違いと認定基準・理由

脊髄損傷の後遺障害は、麻痺の範囲や生活への支障の程度に応じて、主に以下の等級に分類されます。

等級状態の目安
第1級常に介護が必要な状態。
第2級随時介護が必要な状態。
第3級終身労務に服することができない状態。
第5級特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態。
第7級軽易な労務以外の労務に服することができない状態。
第9級服することができる労務が相当な程度に制限される状態。
第12級局部に頑固な神経症状を残す状態。

重い等級であれば、将来の介護費用も認定されやすくなるため、賠償額が非常に高額になります。

⑵ 等級認定に必要な資料・画像・診断書と申請手順

後遺障害認定の流れとしては、主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらい、自賠責保険(損害保険料率算出機構)へ申請を行います。

この際、単に診断書を提出するだけでなく、MRI画像や、日常生活に関する状況報告書(日常の困難さを伝える書類)などをセットで提出することが、適正な等級を受けるために有効です。

⑶ 等級非該当・低い等級と異議申立て|成功・解決のコツ

例えば、弁護士に依頼しないで自賠責保険に申請した際,非該当にされたり、想定よりも低い等級が認定されたりしてしまったとします。

この場合、手続上は「異議申立て」を行うことが可能です。

ただ、同じ資料で再審査しても、結果が変わる可能性は低いといえます。

そこで、有効な異議申立てを行うためには、新たな医学的証拠を用意したり、医師や弁護士による意見書を添えるなどの必要があります。

一般論としては、異議申立てで後遺障害等級が変更される確率は低いですが、新たな医学的証拠などを添付して再審査を求めることで、認定結果が覆るケースもあります。

4.脊髄損傷の後遺障害認定に必要な診断書・検査内容と医師の所見

交通事故による脊髄損傷で後遺障害認定を受けられるかどうかは、医師が作成する診断書と検査結果の内容によって左右されます。

実際、症状が残っていても、診断書の記載や検査結果が不十分な場合、後遺障害非該当や、想定より低い等級にとどまってしまうケースも少なくありません。

特に重要なのが、MRIや神経学的検査による客観的な所見です。

これらの検査結果がなければ、症状があっても医学的に裏付けられず、後遺障害として認定されないことがあります。

また、診断書に記載される医師の所見次第で、後遺障害等級が大きく変わる点にも注意が必要です。

5.自賠責保険と保険会社の対応|脊髄損傷はどこまで認められるか

交通事故による脊髄損傷で補償を受ける際、自賠責保険と任意保険会社がどこまで損害を認めるのかは、被害者にとって非常に重要なポイントです。

実務上は、
「症状があるのに認められない」
「後遺障害等級が想定より低い」
といったトラブルが多く発生します。

ここでは、自賠責保険の役割と保険会社の対応の実態、そしてなぜ認められないケースがあるのかを解説します。

(1) 自賠責保険とは|脊髄損傷で請求できる補償の範囲

自賠責保険は、すべての自動車・バイクに加入が義務づけられている保険で、交通事故被害者に対する 最低限の補償 を目的としています。

脊髄損傷の場合、自賠責保険では主に次の補償が対象となります。

  • 治療費・入通院慰謝料・休業損害などの傷害部分の損害
  • 後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

ただし、自賠責保険には 後遺障害等級ごとに支払限度額 が定められており、脊髄損傷のような重い後遺症では、補償額が実際の損害に比べて不足するケースが多いのが実情です。

(2) 脊髄損傷は自賠責保険でどこまで認められるのか

自賠責保険では、脊髄損傷が客観的資料によって裏付けられているかどうかが支払いの前提となります。

認定されるためには、

  • 事故と症状との因果関係が明確であること
  • 症状が将来にわたって残存していること
  • MRIなどの検査結果や医師の所見がそろっていること

が必要です。

一方で、

  • 「画像上、明確な損傷が確認できない」
  • 「症状が医学的に説明できないと判断された」

といった理由で、脊髄損傷と診断されていても非該当と判断されるケースもあります。

(3) 保険会社(任意保険)の対応と注意すべきポイント

任意保険会社は、自賠責保険で認定された等級を前提に、独自の基準で賠償額を算定・提示してきます。

実務上、保険会社の対応として問題になることが多いのが、

  • 労働能力喪失率や喪失期間を限定した逸失利益の提示
  • 「症状が軽い」「日常生活に支障が少ない」との主張
  • 治療費の早期打ち切り要請

といったケースです。

保険会社は、支払額を抑える立場にあるため、被害者に有利な判断を自発的に行うことはほとんどありません。

(4) 脊髄損傷が認められないケースと正当な補償を受けるためのポイント

脊髄損傷で補償が十分に認められない背景には、いくつか共通する理由があります。

例えば、

・診断書の記載内容が抽象的で、症状の程度が具体的に示されていない

・MRIや神経学的検査による客観的所見が不足している

・事故と症状との因果関係が弱いと判断されてしまう

・日常生活や労務への影響が十分に伝わっていない

といった点が重なると、実際には重い症状が残っていても、後遺障害非該当や、低い等級にとどまってしまうケースがあります。

そのため、正当な補償を請求するためには、必要な検査を適切な時期に受け、症状や生活上の支障が診断書に正確に反映されているかを確認することが重要です。

また、保険会社からの提示をそのまま受け入れず、内容が妥当かどうかを慎重に判断する姿勢も欠かせません。

(5) 弁護士に相談することでできること

交通事故・脊髄損傷に詳しい弁護士に相談することで、

  • 自賠責保険への適切な後遺障害申請
  • 保険会社との交渉・示談対応
  • 認定結果に納得できない場合の異議申立て
  • 裁判基準を前提とした賠償請求

といったサポートを受けることができます。

保険会社の提示額が適正かどうかを判断するためにも、一度専門家に相談することを強くおすすめします。

6.交通事故による脊髄損傷の慰謝料・逸失利益|請求額が変わる分岐点

なぜ後遺障害等級によって「数百万円変わる」と言われるのか。

その理由は、後遺障害慰謝料の基準と、後遺障害逸失利益の計算方法にあります。

⑴ 脊髄損傷で認定される後遺障害慰謝料・損害賠償金の相場と算定基準

交通事故の慰謝料には、大きく分けて3つの基準があります。

・自賠責基準:最低限の補償。

・任意保険基準:保険会社が独自に定める基準。

・弁護士基準(裁判基準):裁判所が採用している基準(最も高額)。

例えば、後遺障害の等級が12級である場合、自賠責基準では慰謝料が94万円ですが、弁護士基準では290万円と、基準が違うだけで金額が跳ね上がります。

脊髄損傷のような重い障害では、その差はさらに広がります。

⑵ 後遺障害逸失利益の計算の考え方|等級・年収・年齢ごとの増減額例

逸失利益とは、「事故がなければ将来得られたはずの収入」のことです。

計算式は以下の通りです。

逸失利益 = 基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(原則67歳まで)に対応する係数

ここで重要なのが「労働能力喪失率」です。

次のとおり、このパーセンテージは等級によって大きく異なります。

・第1級~3級:100%喪失(全く働けない)

・第9級:35%喪失

・第12級:14%喪失

例えば、36歳で年収500万円の方で、労働能力喪失期間に対応する係数を便宜上20とした場合,次のとおり,等級によって後遺障害逸失利益の金額には大きな差が生じます。

・第1級~3級:500万円×100%×20=1億円

・第9級:500万円×35%×20=3500万円

・第12級:500万円×14%×20=1400万円

⑶ 等級の分岐点:賠償が数百万円変わる認定・症状の境界線

争点になりやすいのが、9級(労務が相当制限される)と12級(頑固な症状)の境界線です。

画像上の明確な損傷所見の有無や、神経学的検査の結果が分岐点となります。

また,介護が必要か否か(1・2級かそれ以外か)の境界線は、(非常に高額となる)将来の介護費用が認定されやすくなるか否かに関わるため、極めて重要です。

7.交通事故の脊髄損傷は弁護士に相談すべき理由|法律事務所選びのポイント

脊髄損傷の事案は専門性が高く、保険会社との交渉を被害者自身で行うのは非常に困難です。

⑴ 弁護士に依頼するタイミングと費用|無料相談・事務所選び

依頼のタイミングは、事故直後または治療中の早い段階がベストです。

適切な検査を受けるアドバイスができるからです。

多くの法律事務所や弁護士法人では、交通事故の無料相談を実施しています。

費用についても「弁護士費用特約」を利用すれば実質0円になる場合が多く、特約がない場合でも、着手金無料で賠償金獲得後の後払い(成功報酬)とする事務所が増えています。

⑵ 交通事故・バイク事故対応で弁護士が行う交渉や裁判サポート事例

弁護士は、被害者の代理人として以下のサポートを行います。

・医師に対して診断書の作成を依頼する際のアドバイス等

・保険会社からの治療費打ち切りへの対応

・適正な後遺障害等級の申請手続き

・弁護士基準を用いた賠償金の増額交渉

⑶ 弁護士による高額解決事例

実際、弁護士が介入することにより、高額で解決できた事例は珍しくありません。

弊所においても、弊所弁護士が解決した「交通事故により脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例」を紹介していますので、ご参照ください。

8.脊髄損傷後の生活|介護・歩行困難・将来に必要な補償と支援

賠償金の問題だけでなく、被害者とその家族は、これからの生活にどう向き合うかという課題も抱えます。

⑴ リハビリテーション・治療法と回復の可能性

脊髄の神経は一度損傷すると完全な修復は難しいとされていますが、近年の再生医療の研究や、専門的なリハビリによって、機能の改善が期待できるとされています。

残された機能を最大限に活かすためのリハビリは非常に重要です。

具体的な治療方針やリハビリ計画については、必ず主治医の先生とよく相談してください。

⑵ 介護・車椅子・生活補償|被害者と家族の悩みへの対応策

車椅子生活になる場合、自宅のバリアフリー化や、介護用ベッドの購入などが必要になります。

これらの費用も、必要性・相当性が認められれば損害賠償として請求可能です。

また、家族の悩みを軽減するためにも、利用できる公的支援や補償内容も把握しておくことが大切です。

⑶ 病院・専門医の選び方と将来の生活設計

脊髄損傷の治療・リハビリに特化した病院や専門医を選ぶことは、その後の回復に影響します。

また、獲得した賠償金を将来の生活費や治療費としてどう管理していくかも含めた生活設計が求められます。

9.まとめ|バイク事故の脊髄損傷被害にどう向き合うか

バイク事故による脊髄損傷は、被害者の方の人生を一変させる重大な出来事です。

身体的な苦痛に加え、将来への不安は計り知れません。

しかし、適切な等級認定を受け、正当な賠償(慰謝料・逸失利益・介護費用など)を獲得することで、今後の生活の基盤を整えることは可能です。

保険会社の提示額を鵜呑みにせず、弁護士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。

優誠法律事務所では、脊髄損傷を含めた交通事故被害の相談を随時受け付けております。

無料相談も可能ですので、お気軽にご連絡ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で脊髄損傷を負った方へ|後遺障害等級の認定基準と慰謝料相場を弁護士が解説

2025-12-07

今回は、「脊髄損傷」に関する後遺障害等級について、解説いたします。

脊髄損傷は、交通事故や転落事故などによって引き起こされる重篤な損傷であり、その後の生活に重大な影響を及ぼします。

適切な後遺障害等級が認定されることは、正当な賠償を受ける上で非常に重要です。

しかし、「どのような基準で後遺障害等級が認定されるのか」「後遺障害等級認定の申請をするためには、どのような書類が必要なのか」など、脊髄損傷に関する後遺障害等級は難しいと感じる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

交通事故により脊髄損傷を負った被害者の方は、手足の麻痺や感覚麻痺など、日常生活に大きな制限が残る「後遺症」を抱える可能性があります。

こうした後遺症が残った場合には、自賠責保険や相手方保険会社に対して「後遺障害等級」の認定請求を行うことが極めて重要です。

適切な等級が認められれば、後遺障害慰謝料や将来にわたる介護費・生活補償など、相当額の賠償金を受けられる可能性があります。

しかし、認定される等級によって金額は大きく変わるため、認定の段階での対応が非常に重要となります。

この記事では、脊髄損傷に関する後遺障害等級の認定基準と、申請に必要な書類について詳しく解説します。

特に、画像所見の重要性についても掘り下げて解説しますので、現在、脊髄損傷による後遺障害でお困りの方、またはその可能性のある方は、ぜひご一読いただき、適切な補償を獲得するための一助としていただけますと幸いです。

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1.脊髄損傷とはどんな状態?後遺障害の基礎知識を深掘り

⑴ 脊髄損傷のメカニズムと症状の多様性

そもそも脊髄とは何かについて、ご説明いたします。

脊髄とは、脳から連なる中枢神経系の一部をいいます。

脊髄は神経であり、直径わずか1cmほどの細い組織の中に、運動神経や知覚神経の繊維が詰まっています。

脊柱管によって守られてはいますが、わずかな病変が生じても四肢麻痺などの症状が出現し得るため、脊髄は非常に繊細なものです。

そして、脊髄損傷とは、交通事故などによる外力が脊髄に加わって、脊髄が損傷された状態のことをいいます。

脊髄損傷は、脊椎(いわゆる背骨)の脱臼や骨折を伴って生じることが多いです。

このうち、脊髄全横断面にわたって神経回路が断絶したものを完全損傷、一部でも保たれたものを不完全損傷といいます。

脊髄損傷の症状は、「完全損傷」と「不完全損傷」で大きく変わります。

完全損傷の場合、脳からの命令が断たれるため、四肢・体幹の運動機能が失われるだけでなく、感覚機能も失われ、体温調節機能や代謝機能も困難になってしまいます。

一方、不完全損傷の場合、神経が完全には断裂していないため、症状の有無や程度には広範囲の差異があるとされています。

脊髄損傷によって生じる症状は、損傷した脊髄の「部位」によって大きく異なります。

・頚髄(首の脊髄)を損傷した場合:手足(上肢・下肢)の麻痺、呼吸機能低下など

・胸髄を損傷した場合:体幹の保持が困難になり、歩行障害や姿勢保持が困難になる場合がある

・腰髄を損傷した場合:下肢の運動障害や感覚障害が生じやすく、歩行に支障が出ることが多い

このように、損傷部位と神経の走行が深く関係しているため、症状の「程度」や「残る後遺症」は個人によって大きく異なります。

⑵ 後遺障害等級とは何か

後遺障害等級は、自賠責保険会社や裁判所等において認定がなされます。

等級が認定されることは、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった適正な賠償の支払いに向けた大きな前進です。

一方、等級が認定されない場合、後遺障害が残っていても基本的には賠償対象にならないことから、等級認定の重要性は極めて高いです。

2.脊髄損傷の後遺障害は「等級」がカギ! 具体的な認定基準と分類

このように、脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定は、その後の賠償額を大きく左右します。

ここでは、どのような基準で等級が判断されるのかを具体的に見ていきましょう。

⑴ 「神経系統の機能または精神の障害」としての評価

脊髄損傷の後遺障害は、主に「神経系統の機能または精神の障害」として評価されます。

その等級ですが、症状の程度や日常生活への影響、介護の必要性などによって細かく分類されています。

具体的には、別表第1と別表第2に分かれており、重度な麻痺を伴う場合、別表第1の等級(第1級、第2級)が認定される可能性があります。

これは、常時介護や随時介護が必要な状態を指し、非常に重いものとされています。

後遺障害の等級認定がされるのか、されるとしても等級は何かを判断する要素としては、麻痺の程度(徒手筋力テストの数値など)、麻痺の範囲(四肢、対麻痺)、感覚障害の範囲・程度、排泄機能の障害の有無・程度などが挙げられます。

⑵ 脊髄損傷で認定される等級の目安

【常時介護が必要な状態:別表第1の第1級1号】

広範囲な麻痺により、日常生活のほぼ全ての動作(食事、入浴、排泄、着替えなど)に常時介護が必要となる状態です。

【随時介護が必要な状態:別表第1の第2級1号】

運動能力や感覚機能が著しく低下し、歩行が困難で、日常生活の重要な動作に随時介護が必要となる状態です。

【労働能力に支障が生じた状態:別表第2の第3級~第9級】

脊髄損傷により、手足の麻痺や体幹機能の障害が残ることで、仕事に大きな制限がかかったり、今後仕事に就くことが困難になったりする状態です。

具体的な等級は、麻痺の程度や、どの程度の労働能力が失われたか等によって判断されます。

【局部に頑固な神経症状を残している状態:別表第2の第12級13号】

例えば、筋緊張の亢進が認められるもの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの等が挙げられます。

・後遺障害等級認定までの流れ

① 医師による診断書作成と画像検査(MRI・CT)

② 症状と画像所見に整合性があるかの確認

③ 自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請

④ 認定された等級に応じ、慰謝料・逸失利益・将来介護費などの損害賠償を請求

この「流れ」を正しく踏むことで、適正な賠償の獲得に繋がります。

3.等級認定の成否を分ける「画像」の全貌

脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定においては、医師の診断書や各種証明書のほか、特に重要なのがMRIやCTなどの「画像」所見です。

これらが認定の成否を分けると言っても過言ではありません。

その理由ですが、脊髄損傷は、外からは分からない神経の損傷であるものの、MRIやCTといった画像検査によって、この損傷を客観的かつ視覚的に捉えることができるためです。

画像は、骨折や脱臼の有無だけでなく、脊髄そのものの損傷部位、損傷の程度、脊髄がどの程度圧迫されているかといった重要な情報を提供します。

そのため、等級認定の審査にあたっては、MRIやCTなどの「画像」所見と、症状の内容や程度等との間に整合性はあるか否かが重要になります。

ここで、「画像」所見が重要であることを示す裁判例(京都地裁平成16年6月16日判決)をご紹介いたします。
この裁判例は、「画像」所見について次のとおり判示するとともに、結論として原告の頚髄(脊髄の一部)損傷を否定しました。

「頸髄損傷は、頸髄に対する器質的な損傷があり、頸髄実質内に出血や浮腫を伴い、事故直後から重度の麻痺を呈する傷害であって、その診断はMRI検査で頸髄に輝度変化があること、事故直後から四肢麻痺などの神経症状のあることが重要であり、さらに電気生理学的検査を総合して判断することになる(弁論の全趣旨、当裁判所に顕著な頸髄損傷の病態)が、(ア)原告には、受傷直後に四肢麻痺が発生したかについては、前記のとおり、事故の翌日に左上肢痛、挙上不可及び指尖の知覚異常を訴えたが、他の部位の知覚はあったのであり、上記麻痺があったとは窺えず、(イ)病的反射はみられず、エックス線写真、CT、MRI検査上頸髄損傷を疑わせる異常所見もみられず、(ウ)その他、頸椎第4・第5間、第5・第6間に突出部があったとしても、これが片麻痺の原因とはなり難く、麻痺、知覚異常を訴える部位は上記変性部の神経支配域とも一致しないことからすれば、原告が本件事故により頸髄損傷を受傷したと認めることはできず、この点の原告の主張は採用できない。」

保険会社は、被害者にとって「最も有利な等級」が認定されるように動いてくれるわけではありません。

むしろ、後遺障害が「軽い」と判断されることで、支払う慰謝料や逸失利益が低額で済むため、保険会社側としては被害者にとって不利な等級が認定される方が都合が良いともいえます。

そのため、後遺障害の等級認定は「保険会社任せにしないこと」が非常に重要です。

特に脊髄損傷は、画像所見の読み取りや診断書の記載内容、神経症状の証明など、医学的・法的な観点での整理が必要となるため、適切なサポートを受けずに申請すると本来認められるべき等級よりも低く評価されてしまうケースがあります。

当事務所では、脊髄損傷に関する後遺障害認定について

・診断書の記載内容の確認 

・MRI/CTなどの画像所見の分析 

・必要資料の収集 

・自賠責保険への申請手続き 

までを一貫してサポートいたします。

無料相談も随時承っておりますので、おひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

4.まとめ:脊髄損傷による後遺障害は、お一人で悩まず専門家にご相談ください

脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定は、賠償額を大きく左右する極めて重要なものです。

このとき、MRIやCTなどの画像所見は、あなたの症状を客観的に証明する強力な証拠となります。

しかし、その内容を適切に評価し、等級認定に繋げるための主張立証は、一般の方には難しいものと思われます。

優誠法律事務所では、脊髄損傷による後遺障害でお困りの方をサポートいたします。

無料相談も可能ですので、まずは一度ご相談ください。

専門知識を持つ弁護士が、これまでの解決事例も踏まえて親身に寄り添い、解決へと導きます。

弁護士費用についても、ご依頼いただく際に明確にご説明いたしますのでご安心ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故におけるむち打ちとその症状

2025-11-08

交通事故に遭われた際、身体には大きな衝撃が加わり、事故直後には自覚症状がなくても、時間が経ってから様々な不調が現れることがあります。

中でも「むちうち」は、交通事故被害者に特に多く見られる症状です。

むち打ちは、交通事故の衝撃で首に負担がかかることで生じる神経症状のことで、「外傷性頚部症候群」や「頚椎捻挫」とも呼ばれます。

主な症状は、首やその周辺の筋肉、靭帯、神経などの損傷によって引き起こされます。

被害者自身が軽傷だと考えていても、少し時間が経過してから症状が現れるケースも少なくないため、早めの受診と継続的な通院が非常に重要です。

この記事では、むち打ちの主な症状とその影響、慰謝料の種類と計算方法、そして診断書の重要性とその記載内容について詳しく解説します。

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1.むち打ちの主な症状と影響

むち打ちとは、交通事故などの衝撃により首に負担がかかって生じる神経症状のことを指します。

むち打ちの症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。

最も典型的な症状は、首や肩の痛み、こり、違和感です。

これは、事故の衝撃で首が前後左右に激しく揺さぶられ、頚部の筋肉や靭帯が過度に伸展したり、損傷したりすることによって生じます。

寝違えのような軽い症状から、頭を動かすことが困難になるほどの強い痛みまで、その程度は様々です。

また、痛みやこりだけでなく、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気といった症状を伴うことも珍しくありません。

これらは、頚部の損傷が自律神経に影響を与えたり、脳への血流に影響を及ぼしたりすることによって引き起こされると考えられています。

さらに、腕や指のしびれ、脱力感が生じることもあります。

これは、頚部から腕へと伸びる神経が圧迫されたり、損傷を受けたりすることによるものです。

場合によっては、集中力の低下や不眠といった精神的な症状が現れることもあり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

これらの症状は、事故直後には現れず、数時間後、あるいは数日経ってから徐々に現れるケースも少なくありません。

そのため、「事故に遭ったけれど、特に痛いところはないから大丈夫だろう」と自己判断してしまうのは非常に危険です。

被害者自身は軽傷だと思っても、後に症状が悪化することもあり、通院の継続や専門医による診断が重要です。

症状が軽いうちに適切な治療を開始しないと、慢性化して後遺症として残ってしまう可能性もあります。

また、事故直後に通院を行わないことによって、後の示談交渉の際に、事故と症状の因果関係を争われることにもなりかねません。

むち打ちは、レントゲン検査では異常が認められにくいことも多く、その診断が難しいとされています。

骨折や脱臼のように骨そのものに異常がないため、レントゲン画像では異常が見つかりにくいのです。そのため、症状の訴えと医師の診察が診断の重要な要素となります。

交通事故によるむち打ちは、単なる身体的な不調にとどまらず、精神的な苦痛や経済的な負担も伴います。

仕事に支障が出たり、趣味の活動ができなくなったりすることで、精神的なストレスも大きくなるでしょう。

また、治療費や休業による収入減など、経済的な負担も無視できません。

このような状況において、適切な治療を受けることはもちろんのこと、慰謝料や損害賠償といった法的な側面についても理解しておくことが重要です。

特にむち打ちの場合、その症状の特性から、適正な慰謝料の算定が争点となることも少なくありません。

2.慰謝料の種類と計算方法の違い

⑴ 慰謝料の種類と算定基準

交通事故の慰謝料には、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料:治療のために入院・通院した期間・日数を元に計算
  • 後遺障害慰謝料:後遺症が残った場合に発生
  • 死亡慰謝料:死亡事故に該当する場合

慰謝料の計算方法には”基準の違い”があります。

  • 自賠責基準(国の最低限保障)
  • 任意保険基準(各保険会社の独自基準)
  • 弁護士(裁判)基準(過去の裁判結果に基づく)

適正な金額を得るには、弁護士基準での請求が最も有利とされています。

慰謝料の内訳として「入通院慰謝料(入院・通院日数ベース)」や「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」があり、例えば【自賠責】では通院1日あたり4,300円(2023年4月以降の基準)、また弁護士基準では1ヶ月:約15〜20万円、3ヶ月:約53〜73万円、6ヶ月:約89〜116万円が目安です(すべて一例で、症状や日数、固定のタイミングにより増減)。

詳細な金額は表などで示されることも多く、被害者側の過失割合によって減額される場合があり、賠償金の計算には通院日数、症状固定日、後遺障害の有無など多くの要素が影響します。

また、保険ごとの対応の違いとして、

  • 【自賠責保険】:最低限の補償として入院・通院慰謝料、交通費、休業損害など
  • 【任意保険】:示談代行サービスや契約内容で補償範囲や金額に違いあり、自分に過失がある場合も一定額がもらえるケースあり
  • 【人身傷害特約】:自分が加害者でも一定の保険金を請求できる

といった特徴があります。

⑵ 実際の事例における任意保険基準と弁護士基準の慰謝料の差~当事務所の依頼者の事例~

各基準による慰謝料金額の具体的な違いについて、当事務所で実際に取り扱った事案から以下のAさんの事例をご紹介いたします。

Aさんは、北海道札幌市在住で、タクシー乗車中に後方からの追突を受け、頚椎捻挫・腰椎捻挫のいわゆる「むち打ち」と言われる症状を発症しました。

その後、コルセット着用や病院でのブロック注射、リハビリ等を経たうえで、事故から約6か月半が経過した時点で症状固定となりました。

症状固定となって間もなく相手損保から示談金額の提示がありましたが、慰謝料金額については60万円程度の提案でした。

この相手損保の慰謝料の提案額が低いのではないかとお考えになったAさんは、当事務所にご相談され、当事務所の弁護士が相手損保に対する示談交渉を行うことになりました。

幸いAさんは、ご自身が所有されている自動車の保険に弁護士費用特約を付けていましたので、弁護士費用のご負担なくご依頼いただくことができました(今回のように、弁護士費用特約は、保険契約している車両での事故でなくても使えるケースが多いです。)

本件をお引き受けした後、当方から、相手損保に対して最初に弁護士(裁判)基準の満額である93万円程度を提示したところ、相手損保からはその8割の金額である74万円程度の再提案がありました。

なお、相手損保が弁護士に対しても弁護士基準の8割の金額を提案してくることはよくあります。

この時点で、既にご依頼前の約60万円から約74万円に増額できていましたが、担当弁護士は増額交渉を継続しました。

そうしたところ、休業損害等の慰謝料以外の争点もあったため多少時間を要しましたが、1か月程度の交渉にて、最終的に慰謝料については90万円程度を獲得することができました。

この事案では、ご依頼前の約60万円から約90万円まで増額できましたが、このように任意保険基準と弁護士基準では30万円以上も金額の違いがあったことになります。

⑶ 症状固定前の治療費打切りには要注意!

交通事故の治療を続けていると、相手損保が治療の打切りを打診してくることが多いですが、この任意保険による「症状固定前の打切り」には注意が必要で、保険会社の治療費打切りの時点で通院をやめてしまうと、治療費や慰謝料などの賠償範囲がその時点までとなってしまいます。

適切な賠償金を得るためには、たとえ保険会社から打切りの打診があっても、医師が治療の必要性を認めている間は病院を継続受診することが必要です。

また、医師が症状固定の診断をするまでの治療費を認めてもらえるよう延長の交渉をするなどの対応も必要です。

交通事故の被害に遭った場合、弁護士への早期相談が勧められていますが、弁護士に相談すると、治療終了後の慰謝料や賠償金の増額交渉だけでなく、治療費の延長交渉や必要な診断書の取得の代行など多くのメリットがあります。

「弁護士費用特約」で弁護士費用が実質無料となる場合もありますし、着手金無料や成功報酬型の法律事務所も増えていますので、気軽に弁護士の活用を検討してみてください。

3.診断書の重要性と書き方

交通事故に遭い、むち打ちの症状が現れた場合、最も重要となるのが「診断書」です。

診断書は、ご自身の症状が交通事故によって引き起こされたことを医学的に証明する、場合によっては唯一の書類であり、加害者側や保険会社に対して損害賠償請求を行う上で不可欠な証拠となります。

⑴ 診断書の重要性

診断書の重要性は、以下の点に集約されます。

  • 因果関係の証明:診断書は、交通事故とご自身の症状との間に医学的な因果関係があることを証明します。これがなければ、「事故とは関係のない症状ではないか」と加害者側や保険会社に主張され、適切な補償を受けられない可能性があります。
  • 治療の必要性の証明:診断書には、医師が診断した傷病名や症状、それに対する治療方針が記載されます。これにより、行われる治療が交通事故による症状に対するものであることが明確になり、治療費の請求根拠となります。
  • 後遺障害認定の基礎:むち打ちの症状が長期化し、後遺症として残ってしまった場合、後遺障害の等級認定を申請することになります。その際、診断書の内容は後遺障害の有無や等級を判断する上で極めて重要な資料となります。症状の推移や治療経過が詳細に記載されていることが、適切な等級認定につながります。
  • 慰謝料算定の根拠:交通事故における慰謝料は、入通院期間や症状の程度によって算定されます。診断書に記載された傷病名、症状、治療期間などが、慰謝料の金額を決定する上で重要な要素となります。

⑵ 診断書に記載されるべき主要な項目

  • 傷病名:「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」など、医師が診断した具体的な病名が記載されます。
  • 初診日:交通事故後、初めて医療機関を受診した日が記載されます。事故発生から初診までの期間が短いほど、事故との因果関係が認められやすくなります。
  • 負傷の原因:「交通事故による」と明確に記載されていることが重要です。
  • 主要な症状:患者が訴える症状(首の痛み、頭痛、しびれなど)が具体的に記載されます。医師が客観的に確認できる所見(可動域制限、圧痛など)も記載されます。
  • 治療内容と期間:どのような治療が行われているか(投薬、リハビリ、物理療法など)や、今後の治療方針、治療期間の見込みなどが記載されます。
  • 全治の見込み:症状が完全に回復するまでの見込みが記載されます。症状が残存する可能性がある場合は、その旨も記載されます。

⑶ 医師への症状の伝え方と注意点

診断書の内容は、患者自身の訴えに基づいて医師が作成します。

特に、むち打ちの場合には、自覚症状が主となり、他覚的に確認できる可動域制限等の所見がないことも珍しくありません。

そのため、医師に正確かつ具体的に症状を伝えることが非常に重要です。

  • 発生時の状況を正確に伝える:交通事故がどのように発生し、ご自身の身体にどのような衝撃があったのかを具体的に伝えます。例えば、「追突されて首がガクンとなった」「横からぶつかられて身体が横に振られた」など、状況を詳細に説明しましょう。
  • すべての症状を具体的に伝える:痛みだけでなく、しびれ、めまい、吐き気、耳鳴り、不眠、集中力の低下など、自覚するすべての症状を具体的に伝えます。痛みの程度(ズキズキする、重い、ピリピリするなど)、頻度、症状が現れる時間帯なども詳しく伝えましょう。
  • 症状の変化を記録する:毎日、ご自身の症状の変化を記録することをお勧めします。痛みの強さ、症状が出た時間、改善したこと、悪化したことなどを記録し、診察時に医師に提示することで、医師はより正確な診断を下しやすくなります。
  • 遠慮せずに伝える:医師に遠慮して症状を軽めに伝えたり、伝え忘れてしまうことがないようにしましょう。ご自身の身体のことですから、気になる症状はすべて正直に伝えてください。
  • 既往歴や持病も伝える:以前からの持病や既往歴がある場合は、それがむち打ちの症状に影響を与える可能性もあるため、医師に伝えておきましょう。
  • 複数の医療機関を受診しない:原則として、診断書は一つの医療機関で作成されるべきです。複数の医療機関を受診すると、診断書の内容に矛盾が生じたり、治療の一貫性が失われたりして、保険会社から不当な評価を受ける可能性があります。ただし、専門医のセカンドオピニオンが必要な場合は、主治医と相談の上で検討しましょう。

⑷ 診断書が作成された後の確認

診断書が作成されたら、必ず内容を確認しましょう。

ご自身が訴えた症状がすべて記載されているか、病名や初診日、負傷の原因が正確に記載されているかなどを確認します。

もし、誤りや不足している点があれば、すぐに医師に申し出て訂正してもらいましょう。

交通事故の被害に遭われた方が、適切な慰謝料や補償や後遺障害等級の認定を受けるためには、正確で具体的な診断書が不可欠です。

4.弁護士に依頼するメリット

交通事故に関する手続きは、上でご説明した診断書の内容だけでなく、その後の示談交渉や後遺障害の申請など、非常に複雑で専門的な知識が求められます。

そして、多くの場合、加害者側の保険会社はできるだけ支払う慰謝料や賠償額を抑えようとします。

提示された金額が相場と比較して適切かどうか、ご自身で判断することは非常に困難です。

特にむち打ちの場合、自覚症状が中心となるため、その程度や慰謝料の相場を巡って争いになることも少なくありません。

そのような時に頼りになるのが、弁護士です。弁護士は、法律の専門家として、被害者の方の権利を守り、適正な慰謝料や賠償額を獲得できるようサポートします。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 示談交渉の代行:保険会社との煩雑な交渉を弁護士が全て代行します。これにより、精神的な負担が軽減され、治療に専念することができます。
  • 適切な慰謝料の算定:裁判例に基づく適切な慰謝料の相場を把握しているため、保険会社が提示する金額が不当に低い場合には、増額交渉を行います。弁護士基準といわれる高い基準で慰謝料を請求できます。
  • 後遺障害認定のサポート:後遺障害の等級認定は、非常に専門的な知識が必要です。弁護士は、適切な資料収集や申請手続きをサポートし、適正な等級認定が受けられるよう尽力します。
  • 訴訟対応:交渉が決裂した場合でも、民事訴訟を提起して適切な賠償を得られるよう尽力します。
  • 法律相談:疑問や不安な点をいつでも弁護士に相談できるため、安心して手続きを進めることができます。

5.まとめ

私たち弁護士法人優誠法律事務所は、これまで数多くのむち打ち事案を解決して参りました。

被害者の方々が抱える痛みや不安に寄り添い、適正な解決へと導きます。

もし、交通事故に遭われてむち打ちの症状でお悩みの場合、また、保険会社との交渉でお困りの場合は、一度、当法律事務所にご相談ください。

初回の相談は無料で行っております。

早期にご相談いただくことで、より有利な解決に繋がる可能性が高まります。

ご自身の権利を守り、事故の被害から一日も早く回復するためにも、弁護士のサポートをぜひご検討いただければと思います。

投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【弁護士が解説】むち打ち慰謝料の相場と交通事故後に取るべき正しい対応とは?(後遺症・通院・慰謝料増額のポイント)

2025-10-10

交通事故に遭い、むち打ち症(頚椎捻挫、頚部挫傷)と診断された場合、多くの方が気になるのは、今後どのように治療を進めたら良いかという点やその慰謝料の相場などでしょう。

後遺症が残る可能性や、通院にかかる負担への不安、そして被害に遭った訳ですから慰謝料を増額したいという思いは当然です。

慣れない交通事故の手続きや、今後への不安から、適切な判断ができずに悩んでしまう方も少なくありません。

本記事では、交通事故におけるむち打ちの慰謝料の相場について、多くの交通事故被害者の方のサポートをしてきた弁護士が詳しく解説いたします。

さらに、相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数や、交通事故後に取るべき正しい対応、そして慰謝料を増額するためのポイントについてもご紹介します。

むち打ちの症状にお悩みで、今後の対応に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてください。

【関連記事】

1.むち打ちとは?|事故後すぐに症状が出ないケースも

「むちうち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)」とは、追突事故などで首がムチのようにしなることで起こる外傷です。主な症状は以下の通りです。

・首や肩の痛み

・頭痛、めまい、吐き気

・手足のしびれや脱力感

事故直後は症状が軽くても、数日後に悪化するケースもあります。

放置せず、事故後は速やかに整形外科などの病院を受診しましょう。

2.慰謝料とは?|精神的苦痛に対する金銭的補償

交通事故における慰謝料とは、怪我によって被った精神的な苦痛に対して支払われる金銭のことです。むち打ちの場合、以下の2つが主に該当します。

①入通院慰謝料:通院期間や治療日数に応じて支払われる

②後遺障害慰謝料:後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる

3.むち打ち慰謝料の算定基準を理解する(自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の違い)

交通事故によるむち打ちの慰謝料は、一律に決められているわけではありません。

慰謝料の金額は、交通事故の状況、被害者の負傷の程度、治療期間、実通院日数など、様々な要素を基に検討します。

一般的に、慰謝料を算定する基準として、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」の3つが存在します。

それぞれの基準によって慰謝料の金額は大きく異なるため、その違いを理解しておくことが重要です。

(1)自賠責保険基準:最低限の補償

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。被害者の救済を目的としており、最低限の補償を行うための基準が定められています。

自賠責保険基準による慰謝料は、治療期間や実通院日数に応じて算出されますが、最低限の補償を目的にしていますので、その金額はどうしても低額になります。

具体的には、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×総治療期間」のいずれか少ない方が慰謝料として支払われます(2020年4月1日以降の事故の場合)。

なお、後遺障害等級が認定された場合には、別途後遺障害慰謝料(後遺障害保険金)が支払われます。

(2)任意保険基準:保険会社独自の基準

任意保険は、自賠責保険では賄えない部分を補填するために、自動車の所有者が任意で加入する保険です。

各保険会社が独自に慰謝料の算定基準(任意保険基準)を設けていますが、一般的には自賠責保険基準よりも高額になることが多いです。

ただし、その算定方法は公開されておらず、保険会社によって金額が異なる場合があります。

保険会社から提示される慰謝料は、この任意保険基準に基づくものですが(最低限の自賠責保険基準で提示してくる担当者もいます)、あくまで保険会社の都合で決められている基準ですから、被害者にとって適正な金額とは言えません。

被害者側が弁護士に依頼しなければ、保険会社は、この自社の基準である任意保険基準に基づいて示談交渉を進めてきます。

(3)裁判基準(弁護士基準):適正な賠償を目指す

裁判基準(弁護士基準)は、過去の裁判例に基づいて確立された慰謝料算定基準です。

3つの中で最も高額になる可能性が高い基準となります。交通事故に強い弁護士が示談交渉を行う際や、裁判になった場合に用いられます。

裁判基準では、基本的にむち打ちの症状の程度や治療期間に応じて慰謝料を算定しますが、慰謝料の目安としては、例えば、他覚所見のない神経症状の場合、3ヶ月の治療期間で53万円程度、6ヶ月の治療期間で89万円程度となります。

これはあくまで目安であり、個別の事案によって増減する可能性があります。

また、関西地方の裁判所では独自の基準があり、これより低い金額となることが多いなど、地方によっても若干の違いが出ることがあります。

後遺障害等級が認定された場合には、さらに後遺障害慰謝料が加算されます。

例えば、むち打ちで後遺障害等級14級9号が認定された場合、裁判基準の後遺障害慰謝料の相場は110万円、12級13号の場合は290万円となります。

このように、自賠責保険基準や任意保険基準よりも高額になりますので、慰謝料を増額するためには、この裁判基準で交渉することが重要になります。

ただし、弁護士に依頼せずに被害者ご自身が保険会社に裁判基準で慰謝料を要求しても、応じてもらえないことが多いようです。

4.慰謝料相場と相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数(適切な通院頻度と期間)

(1)むち打ち慰謝料の相場

交通事故被害者の方からご相談をお受けすると、「慰謝料の相場はどのくらいですか?」というご質問をよくお受けします。

交通事故の慰謝料は、お怪我の症状の程度や治療期間などを基に算定されますので、「慰謝料の相場」がどのくらいか?というのは一概には言えませんが、むち打ちの場合、一般的には治療期間が3ヶ月から6ヶ月の間の方が多いです。

そして、その場合の裁判基準の通院慰謝料(傷害慰謝料)は、53万円~89万円ですので、このくらいがむち打ちの慰謝料の相場と言えるかもしれません。

ご参考までに月10日程度通院した場合の自賠責基準と裁判基準の慰謝料の目安も載せておきます。

むち打ち慰謝料の金額例(目安)

通院期間通院日数自賠責基準の慰謝料裁判基準の慰謝料
1ヶ月10日8万6000円19万円
3ヶ月30日25万8000円53万円
6ヶ月60日51万6000円89万円

(2)必要な通院日数

自賠責保険基準の場合は、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×

一方、裁判基準で慰謝料を算定する場合、基本的には治療期間(通院期間)で算定します。

そのため、通院日数は慰謝料の計算にそれほど影響せず、週に2~3回通院した場合でも、週に4~5回通院した場合でも、慰謝料の金額は変わらないということになります。

なお、以前は、裁判基準でも、通院頻度が少ない場合、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とするとされていました(「3倍ルール」などと呼ばれていました。)。

例えば、通院期間は6ヶ月間でも、週1回(月4回)程度の通院で、合計の実通院日数が24回だった場合、通常の裁判基準では通院6ヶ月で慰謝料89万円になりますが、実通院日数の3倍程度とされてしまうと、「実通院日数24回×3=72日」で2ヶ月半程度の通院という評価になり、慰謝料が約43万円になってしまいます。

このように、以前の基準では、通院頻度が週2回以下の場合には通常の裁判基準よりも慰謝料が減額されてしまうことがありました。

これは、加害者側の保険会社にとっては有利な基準ですので、未だに年配の担当者が、この3倍ルールを持ち出して慰謝料を減額させようとするケースもあります。

しかし、現在の基準では、この3倍ルールが適用されるのは、「通院が長期にわたる場合」(概ね1年以上)に限定されることになっており、例えば加害者側が6ヶ月程度の通院期間の場合に3倍ルールの主張をしても、基本的には裁判所が認めていない印象です。

このように、特に裁判基準では、慰謝料算定の上で、必要な通院日数というものはありません。

また、そもそも慰謝料のために通院する訳ではなく、治療の必要に応じて通院したことの結果として通院を強いられた慰謝料を算定するということですから、医師の指示の下で必要な治療を受けていただくということが原則になります。

ただ、むち打ちの場合、一般的に他覚所見がないことが多いため、適切な頻度での継続的な通院が、症状の存在や治療の必要性を客観的に示す要素になり得ますので、自己判断で通院を中断したり、回数を減らしたりすることは避けるべきです。

特に、急に通院頻度が減ると、症状が改善したと認識されてしまう場合もありますので、注意が必要です。

そして、上でご説明した3倍ルールなども考えると、一般論としては、週に2~3回程度の通院が適切と言えるように思います。

なお、整骨院や接骨院への通院も、慰謝料の算定においては整形外科への通院と同様に扱われますが、事前に医師に相談して指示(同意)を得ておくことが必要です。

5.慰謝料額が変動する要因

むちうち事故における慰謝料額は、以下の要因で大きく変わります。

  • 通院日数・通院期間:実際に通った期間や日数によって算定される
  • 通院頻度:毎月の通院回数も考慮される可能性がある
  • 後遺障害等級の認定有無:14級9号などに該当すれば増額
  • 事故の状況(過失割合):過失があれば減額される

6.交通事故後に取るべき正しい対応(初期対応が重要)

交通事故に遭ってしまった場合、適切な初期対応を取ることが、その後の慰謝料請求や損害賠償請求において非常に重要になります。以下の点に注意して、冷静に対応しましょう。

  • 警察への連絡:交通事故が発生した場合は、速やかに警察に連絡し、事故状況の確認と届け出を行いましょう。また、お怪我をされた場合は、診断書を提出して人身事故に切り替える手続きをした方が無難です。
  • 加入保険会社への連絡:ご自身が加入している自動車保険会社にも、事故の状況を速やかに報告しましょう。保険会社からのアドバイスやサポートを受けることができます。弁護士費用特約が付いている場合は、弁護士費用を保険でまかなうことができますので、弁護士特約の使用の可否も確認しましょう。
  • 医療機関での受診:事故直後は症状がなくても、後からむち打ちなどの症状が現れることがあります。速やかに医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。交通事故から時間が経過してしまうと事故との因果関係を争われる場合がありますから、とにかく早く受診することが重要です(原則として、事故から2週間以内に受診しないと自賠責保険が適用できません。)。また、通院の際には、医師に症状を詳しく伝え、適切な治療を受けるようにしてください。事故直後に医師に症状を伝えていないと、カルテや診断書に記載されません。診断書に記載のない症状は、事故との関連性を認めてもらえませんので、全ての症状を伝えることが重要です。治療期間中も、医師にはなるべく症状を詳しく伝えることが重要です。後遺障害認定や裁判でカルテが提出されることもありますが、日々の診察で症状を訴えていないと症状が改善されているなどと捉えられてしまうこともあります。
  • 弁護士への相談:交通事故後の手続きや、相手方との交渉に不安を感じた場合は、早めに交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

7.弁護士による交渉のメリット(慰謝料増額と手続きの負担軽減)

(1)専門知識と交渉力:慰謝料増額の可能性

交通事故の被害者が、保険会社と直接交渉を行う場合、提示される慰謝料の金額が自賠責保険基準や任意保険基準に基づいたものになりますから、裁判基準と比較して低額になります。

一方、弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士は裁判基準で慰謝料の交渉をしますので、慰謝料を増額できる可能性が高く、大きなメリットがあります。

特に、交通事故に強い弁護士は、交通事故に関する豊富な知識と経験がありますから、適正な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。

(2)手続きの負担軽減:治療に専念できる環境

交通事故後の手続きは煩雑で、精神的な負担も大きいものです。

弁護士に依頼することで、保険会社との連絡や書類作成、示談交渉など、一切の手続きを代理してもらうことができます。

これにより、被害者は治療に専念することができ、精神的な負担も軽減されます。

(3)後遺障害等級認定のサポート:適切な等級認定を目指して

むち打ちの症状が長期間にわたり、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。

しかし、後遺障害等級の認定手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。医師に適切な内容で後遺障害診断書を作成してもらうことも重要です。

事前認定という手続きで加害者側の保険会社に手続きを任せることもできますが、交通事故に強い弁護士に依頼すれば、後遺障害等級の認定についてもサポートを受けることができ、保険会社に任せるよりも適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まるといえます。

(4)裁判になった場合の対応:適正な賠償金の獲得

示談交渉がうまくいかず、裁判になった場合でも、弁護士に依頼していれば、基本的に裁判所での主張・立証活動は弁護士が行いますので、被害者が裁判に出席する場面は少なく、弁護士に裁判対応を任せることができます。

逆に、保険会社としては、弁護士が付いていると、裁判を提起される可能性があることも考えて示談交渉を行わざるを得ず、慰謝料増額などの被害者側の要求を受け入れやすいという側面もあります。

弁護士に依頼する最大のメリットは、やはり適正な賠償金を獲得できる可能性が高まることです。

保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合や、今後の手続きに不安を感じている場合は、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。

無料相談を実施している法律事務所も多くありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

8.むち打ちの被害者が弁護士に示談交渉を依頼したことで大幅に慰謝料が増額した事例

さて、ここからは当事務所にご依頼いただいた依頼者様の具体的な事例をご紹介します。

⑴ 事案の内容~むちうちの治療終了後に保険会社基準で示談提示を受けた事例~

鳥取県在住のMさんは、自宅近くの道路を自動車で走行中、右折するために交差点内で停止して対向車の通過を待っていた際に、後方から走行してきた後続車に追突される事故に遭いました。

加害者は、事故当時、仕事中で急いでいてスピードを出していましたが、衝突の直前にカーナビを確認したため、Mさんが交差点内で停止していることに気が付くのが遅れ、相当なスピードで追突してしまい、Mさんの車両の後部は大きく損傷しました。

この交通事故で、Mさんはむち打ち(頚椎捻挫)の怪我を負い、整形外科で治療をしましたが、事故から5ヶ月強で加害者側保険会社から治療費を打切りの打診を受け、それを了承して治療を終えました。

そして、Mさんは、その後しばらくして加害者側保険会社から慰謝料などの示談提示を受けました。

このときの提示された示談金の金額は、総額で約42万円となっていました。

しかし、Mさんは、治療終了後も完全にむち打ちの症状が治った訳ではなく、首の痛みなどを感じていたこともあり、保険会社の提示額では少ないと感じました。

そこで、インターネットで交通事故の示談金の相場を調べていたところ、当ホームページを見つけていただき、当事務所にお問合せをいただきました。

⑵ 示談交渉で約2倍に増額

Mさんからご依頼を受け、担当弁護士は、加害者側保険会社からMさんの診断書や診療報酬明細書などの資料を開示してもらい、裁判所基準で慰謝料等を算定しました。

そうしたところ、裁判所基準では総額約82万円を請求できる計算となり、この金額を保険会社に請求して示談交渉を行いました。

なお、当初保険会社が提示していた約42万円の金額は、上で説明した任意保険基準だと思われますが、自賠責保険基準とほとんど変わらないような金額でした。

弁護士との示談交渉では、保険会社は裁判所基準の8割程度の金額を主張していましたが、交渉を続けた結果、最終的に80万円まで増額させることができ、示談が成立しました。

このように、Mさんの事例では、慰謝料を裁判所基準で交渉することで、当初の保険会社の示談提示から大きく増額させることができました。

また、Mさんは弁護士費用特約を使用できましたので、弁護士費用は全てご自身の保険会社に負担してもらうことができ、示談金全額を受け取ることができました。

9.まとめ(弁護士への相談が解決への近道)

交通事故でむち打ち(頚椎捻挫)の怪我を負ってしまった場合、少しでも症状が改善するよう医師の指示の下で適切な頻度で通院して治療を行うことが重要です。

それが結果的に適正な慰謝料を得ることにもつながります。

後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級の認定を受けることも検討しましょう。

また、交通事故によるむち打ちの慰謝料は、算定基準によって大きく異なります。

適正な慰謝料を得るためには、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉をする必要があります。

保険会社から早期解決を促され、免責証書(示談書の代わりになるもの)が送られてくることがありますが、一度署名してしまうと示談のやり直しはできませんので、安易にサインしないよう注意してください。

もし、交通事故後の手続きに不安を感じている場合や保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合は、迷わず弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしております。

投稿者プロフィール

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 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で腱板損傷|慰謝料相場・後遺障害等級・示談交渉の注意点

2025-09-22

今回は、「肩腱板損傷の示談交渉で気をつけたい慰謝料金額の落とし穴」について、ご紹介いたします。

交通事故で腱板損傷(肩腱板断裂など)を負った場合、日常生活や仕事に深刻な影響を及ぼします。

治療を終え、いざ保険会社との示談交渉が始まると、「提示された慰謝料が適正な金額なのか?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

このケガは、慰謝料や示談金の金額が後遺障害等級の認定によって大きく変わるため、早い段階で正しい知識と対策が必要です。

この記事では、交通事故による肩腱板損傷の被害者が、示談交渉で損をしないために知っておくべき慰謝料のポイントを解説します。

後遺障害の認定基準から、保険会社の提示額の落とし穴、そして弁護士に相談するメリットまで、被害者の方の解決に必要な情報が満載です。

適切な慰謝料を受け取り、安心して治療後の生活を送るためにも、ぜひ最後までお読みください。

1.交通事故における肩腱板損傷の慰謝料と示談金の基礎知識

⑴ 腱板損傷とは何か

肩の関節は、「上腕骨」「肩甲骨」「鎖骨」という3つの骨で構成されていますが、覆っている骨の部分が少なく非常に不安定です。

この安定性を保つ上で、腱板が非常に重要な役割を担っています。

腱板は、「棘上筋」「棘下筋」「肩甲下筋」「小円筋」という4つの筋肉の腱で構成され、上肢の複雑な可動を可能にする重要なものです。

腱板損傷とは、これらの腱の一部、または全てが損傷したり、裂けたりする症状を指します。

交通事故の強い衝撃によって、肩が不自然にひねられたり、直接的な打撃を受けたりすることで、腱板に過度な負荷が生じ、損傷することがあります。

損傷の程度は、部分的なものから完全に断裂するものまで様々です。骨折や脱臼を伴うケースもあります。

⑵ 肩腱板損傷の主な症状と事故による受傷例

腱板損傷の主な症状は、次のとおりです。

①肩の痛み:特に腕を上げたり、特定の動きをしたりする際に痛みが強まります。夜間に痛みが悪化することも少なくありません。

②腕が上がらない:腕を上げる動作が制限されたり、まったくできなくなったりすることがあります。

③可動域の制限:肩の動き全体が制限され、日常生活に支障をきたすことがあります。

交通事故による受傷例としては、バイク事故や自転車事故で肩を地面に強打したケースなどが挙げられます。

事故直後から肩の痛み等の症状が出たという被害者の方も多いですが、事故直後には「むちうち」による首の痛みと混同されやすく、腱板損傷が認められないまま見過ごされてしまう可能性もあります。

見過ごされている期間が長ければ長いほど不利になってしまうので、事故後、少しでも肩に違和感がある場合は、速やかに整形外科を受診し、MRI検査など精密な検査を受けた方が良いでしょう。

⑶ 慰謝料の計算方法と示談金の相場

腱板損傷に直接関連する慰謝料として、以下の2種類が挙げられます。

①入通院慰謝料(傷害慰謝料):事故による怪我の治療のために病院に通院・入院したことに対する精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

②後遺障害慰謝料:治療を継続しても完治せず、後遺障害が残ってしまった場合に支払われる慰謝料です。請求にあたっては、予め自賠責保険会社によって後遺障害等級の認定がなされていることが重要です。

腱板損傷の場合、治療期間や後遺障害の有無によって、これらの慰謝料が算定されることになります。また、慰謝料の計算には、以下の3つの基準があります。

①自賠責保険基準:自賠責保険会社が定める最低限の基準で、最も低い金額になります。

②任意保険会社基準:各任意保険会社が独自に定めている基準で、自賠責保険会社基準よりは高いものの、裁判所基準より低いことが殆どです。

③裁判所基準(弁護士基準): 過去の判例・裁判例に基づいており、最も適正な金額とされる基準です。弁護士に依頼した場合に適用されることが多く、示談の金額も高額になる傾向があります。

示談金は、これらの慰謝料に加えて、治療費、休業損害、後遺障害逸失利益などが含まれた総額となります。

腱板損傷の示談金の相場は、損傷の程度、治療期間、後遺障害等級、そしてどの慰謝料基準で計算するかによって大きく変動します。

⑷ 腱板損傷の後遺障害慰謝料相場早見表(等級別)

※この表は目安額です。実際の金額は症状・交渉内容で変動します。

後遺障害等級自賠責基準弁護士基準
10級187万円550万円
12級94万円290万円
14級32万円110万円

2.後遺障害認定:肩腱板損傷で注意すべきポイント

腱板損傷の治療を続けても症状が改善せず、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害として認定される可能性があります。

後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった補償が受けられますが、その認定には注意すべきポイントがいくつかあります。

⑴ 後遺障害等級と可動域制限の関係

後遺障害は、その症状の重さによって1級から14級までの等級に分類されます。

腱板損傷の場合、肩関節の可動域制限が問題となることが多いです。

肩関節の可動域が、健常な方の可動域と比較してどの程度制限されているかによって等級が診断されます。

例えば、「肩関節の機能に著しい障害(可動域が健常の方の2分の1以下に制限される状態)」を残した場合は10級10号、「肩関節の機能に障害(可動域が健常の方の4分の3以下に制限される状態)」を残した場合は12級6号が認定される可能性があります。

後遺障害の等級認定には、医師の作成する後遺障害診断書が非常に重要です。

この診断書には、肩の痛みだけでなく、具体的な可動域の測定値などを正確に記載してもらう必要があります。

⑵ 後遺障害が非該当になるケースとその対策

腱板損傷による後遺障害について後遺障害等級の申請を行っても、残念ながら非該当となるケースはあります。非該当となる主な理由としては、以下のようなものが考えられます。

①症状の一貫性がない:事故直後から症状が出ていなかったり、治療を中断していたりする場合。

②医師の意見書が不十分:後遺障害の症状を裏付ける客観的な所見や詳細な記載がない場合。

③他覚的所見の不足:MRIなどの画像検査で腱板損傷が確認できない場合や、神経学的検査で異常が認められない場合。

④事故との因果関係が不明確:事故以外の要因(加齢など)による腱板損傷であると診断される場合。

後遺障害等級が認定される確率を上げるためには、以下の対策が重要です。

・事故後、すぐに医療機関を受診し、継続して治療を受ける。

・医師に症状を正確に伝え、記録に残してもらう。

・MRI検査など客観的な画像検査を必ず受ける。

・後遺障害診断書の内容を精査し、不足がないか確認する。

⑶ 後遺障害等級の判例・事例紹介

裁判では、腱板損傷の後遺障害等級について様々な判例が出されています。

例えば、可動域制限が器質的損傷によるとは認められないが痛みの症状は医学的に証明しうる神経症状(12級13号)だと判断した事例や、明確な器質的損傷が認められないが機能障害(12級6号)として判断した事例などがあります。

これらの事例は、個別の症状や治療経過、提出された証明などによって判断が異なります。

自分のケースがどの等級に相当するかを知るためには、交通事故に詳しい弁護士に相談し、過去の事例を踏まえたアドバイスを受けることが有効です。

3 示談交渉で損をしないための保険会社対応術

交通事故の被害に遭い、治療が終わると、加害者側の保険会社から示談金の提示があります。

しかしながら、この提示額は、必ずしも適正な金額であるとは限りません。

損をしないためには、保険会社との交渉術を身につけることが重要です。

⑴ 保険会社が提示する慰謝料の落とし穴

保険会社が最初に提示する慰謝料は、多くの場合、任意保険会社基準または自賠責保険会社基準に基づいて計算されており、裁判所基準(弁護士基準)よりも低く設定されています。

保険会社は営利企業であるため、できるだけ支払う金額を抑えようとします。

特に注意すべきなのは、治療期間が長引いてしまったり、後遺障害が残ったりした場合です。

保険会社は、治療の必要性や症状固定の時期について異議を唱えたり、後遺障害の認定を否定したりして、低い金額を提示することがあります。

⑵ 適切な対応・主張・立証の方法

保険会社との交渉を有利に進めるためには、以下の点に注意して適切な対応をとることが重要です。

①医療機関での適切な治療:事故直後から症状が改善するまで、担当医の指示に従い治療を継続し、中断しないようにしましょう。

②症状を伝える:問診の際、痛みや可動域の制限などを適切に伝えましょう。

③客観的な証明の収集:診断書、診療報酬明細書、画像データ(MRI、X線など)など、怪我の状況を裏付ける全ての書類を取り寄せ、保管しておきましょう。

④保険会社とのやり取りの記録:電話や書面でのやり取りは、日時、内容、担当者名を記録しておくか、書面で行うようにしましょう。

これらの情報が、示談交渉におけるあなたの主張を裏付ける重要な証明となります。

⑶ 増額交渉のためのポイントと流れ

保険会社からの提示額に納得できない場合は、増額交渉を行うことになります。

増額交渉の主なポイントは以下の通りです。

①裁判所基準(弁護士基準)の適用を主張する:保険会社の提示額が低い場合は、裁判所基準での計算を求めましょう。ただ、弁護士に依頼していないケースでは、保険会社が裁判所基準を認めることは少ないのが実情です。

②後遺障害の適正な評価:後遺障害が残っているにもかかわらず認定されなかった場合や、等級が低いと感じる場合は、異議申立てを検討しましょう。

③具体的な根拠の提示:増額を求める際には、ただ「もっとほしい」と主張するのではなく、治療の必要性、症状の重さ、日常生活への影響などを具体的に示し、必要があれば証拠を提示しましょう。

④専門家への相談:示談交渉は専門的な知識が必要となるため、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

示談交渉は、通常、治療終了後または後遺障害認定後に行われます。

納得できない場合は安易に示談書にサインせず、専門家である弁護士のアドバイスを仰ぎましょう。

⑷ 示談交渉を有利に進める3つのチェックリスト

交通事故で腱板損傷を負い、慰謝料や示談金をできるだけ有利に獲得するためには、交渉の前段階での準備が何より重要です。

この3つを押さえるだけで、慰謝料増額の可能性が大幅に上がります。

1.治療継続

なぜ必要か:保険会社は「治療期間が短い=症状が軽い」と判断する傾向があります。途中で通院を中断すると、適切な期間継続した場合と比べて慰謝料額が大幅に下がる恐れがあり、後遺障害等級の認定も難しくなります。

そのため、痛みが軽くなっても自己判断で通院をやめず、医師が「症状固定」と判断するまで治療を継続しましょう。


2.診断書確認

なぜ必要か: 後遺障害等級の認定は、医師が作成する「後遺障害診断書」の内容に大きく左右されます。

しかし、医師は自賠責の認定要件までは熟知していないことも多く、重要な計測値や症状の記載が漏れるケースがあります。

診断書を受け取ったら、

・肩関節の可動域(健側との比較角度)が正確に記載されているか

・MRIやレントゲンの所見が反映されているか

を必ず確認し、必要なら追記依頼を行いましょう。

3.証拠保全

なぜ必要か:示談交渉では、口頭での主張よりも客観的な証拠の有無が金額に直結します。
腱板損傷の場合、以下の証拠をそろえておくと有利です。

  • MRIやレントゲン画像データ
  • 通院記録(診療明細書)
  • 日常生活での不自由さを示すメモや写真(例:家事・仕事ができない様子)
  • 保険会社とのやり取り記録(メール・書面・通話メモ)
    これらは後遺障害等級の申請や増額交渉の際、強力な裏付け資料となります。

4 弁護士に依頼するメリットと選び方

相手方保険会社との示談交渉は、専門知識が必要な上、精神的な負担も大きいです。

そのため、交通事故に強い弁護士に示談交渉を依頼することは、多くのメリットをもたらします。

⑴ 法律事務所選びの基準

弁護士に依頼する最大のメリットは、裁判所基準(弁護士基準)での示談金獲得の可能性が高まることです。

また、保険会社との煩わしい交渉を全て任せることができるため、精神的な負担が軽減し、治療に専念できます。

弁護士を選ぶ際には、以下の基準を参考にしましょう。

①交通事故案件の実績:交通事故、特に人身傷害案件の取り扱い実績が豊富であるかを確認しましょう。腱板損傷のような専門的な知識が必要なケースでの経験があるかどうかも重要です。

②専門性と得意分野:交通事故に注力している法律事務所を選びましょう。

③費用体系:弁護士費用特約が利用できるか、着手金や報酬料が明確かを確認しましょう。無料相談を受け付けているかも重要なポイントです。

④担当弁護士との相性:実際に面談や電話などで話してみて、親身になって相談に乗ってくれるか、信頼できると感じるかを確認しましょう。

⑵ 無料相談・初回面談時のチェックポイント

多くの法律事務所では、交通事故の無料相談を実施しています。この機会を有効活用し、以下の点をチェックしましょう。

①質問への明確な回答:疑問に思っていることに対して、分かりやすく具体的な回答がもらえるか。

②見通しの解説:慰謝料の見込み額、後遺障害認定の可能性、今後の手続きの流れなどについて、具体的な見通しを解説してくれるか。

③費用に関する解説:弁護士費用について、分かりやすい説明がなされているか。追加費用が発生する可能性についても確認しましょう。

④契約を急がせないか:相談だけで終わり、考える時間を与えてくれるか。無理に契約を勧めないかどうかも重要です。

交通事故による腱板損傷は、その後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

適切な損害賠償を受けるためにも、早期に交通事故に強い弁護士に相談し、解決に向けた対応をとることを強くおすすめします。

⑶ 弁護士法人優誠法律事務所について

当事務所(弁護士法人優誠法律事務所)では、交通事故のご相談は無料です。

所属している全ての弁護士が、交通事故事件について豊富な経験を有しており、その経験や知識を生かし、治療中のフォローから、後遺障害の申請、相手方との示談交渉、ADRや裁判まで、各場面で適切なサポートを致します。

弊所は全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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