後遺症の等級と慰謝料

事故の通院を終えて症状固定を迎えてもなお残ってしまった後遺症のうち、自賠責の等級に該当するものを特に「後遺障害」と呼ぶというお話を以前しました(後遺症の損害賠償の相場を知りたい方)。

ただ、後遺障害といっても、その等級には重いものから1級から14級があり、各級の中にも1号、2号…といくつかの種類があります。

後遺障害等級一覧

後遺障害等級の一覧を見てみましょう。

後遺障害等級の一覧は、自動車損害賠償保障法施行令の別表として定められていますので、その規定をご紹介します(一部簡素化しています。)。

なお、以下の一覧は、平成22年6月10日以降発生した事故に適用されるものです。

別表第1

等級介護を要する後遺障害保険金額
第1級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4000万円
第2級一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3000万円
備考

各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

別表第2

等級 後遺障害 保険金額
第1級 一 両眼が失明したもの
二 咀嚼(そしやく)及び言語の機能を廃したもの
三 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
四 両上肢の用を全廃したもの
五 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
六 両下肢の用を全廃したもの
3000万円
第2級 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの
二 両眼の視力が〇・〇二以下になったもの
三 両上肢を手関節以上で失ったもの
四 両下肢を足関節以上で失ったもの
2590万円
第3級 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になったもの
二 咀嚼(そしやく)又は言語の機能を廃したもの
三 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
四 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
五 両手の手指の全部を失ったもの
2219万円
第4級 一 両眼の視力が〇・〇六以下になったもの
二 咀嚼(そしやく)及び言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力を全く失ったもの
四 一上肢をひじ関節以上で失ったもの
五 一下肢をひざ関節以上で失ったもの
六 両手の手指の全部の用を廃したもの
七 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
1889万円
第5級 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの
二 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
三 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
四 一上肢を手関節以上で失ったもの
五 一下肢を足関節以上で失ったもの
六 一上肢の用を全廃したもの
七 一下肢の用を全廃したもの
八 両足の足指の全部を失ったもの
1574万円
第6級 一 両眼の視力が〇・一以下になったもの
二 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に著しい障害を残すもの
三 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
四 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
五 脊(せき)柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
六 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
八 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの
1296万円
第7級 一 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの
二 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
三 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
四 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
五 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
六 一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの
七 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
八 一足をリスフラン関節以上で失ったもの
九 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
十一 両足の足指の全部の用を廃したもの
十二 外貌に著しい醜状を残すもの
十三 両側の睾(こう)丸を失ったもの
1051万円
第8級 一 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になったもの
二 脊(せき)柱に運動障害を残すもの
三 一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの
四 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
五 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
八 一上肢に偽関節を残すもの
九 一下肢に偽関節を残すもの
十 一足の足指の全部を失ったもの
819万円
第9級 一 両眼の視力が〇・六以下になったもの
二 一眼の視力が〇・〇六以下になったもの
三 両眼に半盲症、視野狭窄(さく)又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
五 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
六 咀(そしやく)及び言語の機能に障害を残すもの
七 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
八 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
九 一耳の聴力を全く失ったもの
十 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
十二 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの
十三 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
十四 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの
十五 一足の足指の全部の用を廃したもの
十六 外貌に相当程度の醜状を残すもの
十七 生殖器に著しい障害を残すもの
616万円
第10級 一 一眼の視力が〇・一以下になったもの
二 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
三 咀嚼(そしやく)又は言語の機能に障害を残すもの
四 十四歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
六 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
七 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
八 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの
十 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
十一 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
461万円
第11級 一 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
四 十歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
五 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
六 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
七 脊(せき)柱に変形を残すもの
八 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
九 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
十 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
331万円
第12級 一 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
二 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
三 七歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
四 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
五 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
六 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
七 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
八 長管骨に変形を残すもの
九 一手のこ指を失ったもの
十 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
十一 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの
十二 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
十三 局部に頑固な神経症状を残すもの
十四 外貌に醜状を残すもの
224万円
第13級 一 一眼の視力が〇・六以下になったもの
二 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
三 一眼に半盲症、視野狭窄(さく)又は視野変状を残すもの
四 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
五 五歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
六 一手のこ指の用を廃したもの
七 一手のおや指の指骨の一部を失ったもの
八 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
九 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの
十 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
十一 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
139万円
第14級 一 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
二 三歯以上に対し歯科補綴(てつ)を加えたもの
三 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
四 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
五 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
六 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
七 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
八 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
九 局部に神経症状を残すもの
75万円
備考

一 視力の測定は、万国式試視力表による。屈折異状のあるものについては、矯正視力について測定する。

二 手指を失ったものとは、おや指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失ったものをいう。

三 手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節若しくは近位指節間関節(おや指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

四 足指を失ったものとは、その全部を失ったものをいう。

五 足指の用を廃したものとは、第一の足指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節以上を失ったもの又は中足指節関節若しくは近位指節間関節(第一の足指にあつては、指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいう。

六 各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする。

ご覧いただければわかるように、まず別表第1と別表第2に分かれています。

これは、残ってしまった後遺症が介護を要する後遺障害に該当するかどうかで分かれています。

また、備考欄には、「相当」という言葉も出てきます。

これは、上記の等級一覧には該当しないものの、障害に応じた等級を認定することを言います。

例えば、味覚脱失の場合は、等級一覧には記載がないものの、第12級相当とされています。

「保険金額」というものが各級に定められていますが、これは、各級が認定されたときに自賠責保険から支払われる金額になります。

例えば第14級が認定された場合は、自賠責保険から75万円が支払われます。

ただし、これは自賠責保険の基準にすぎません。

後遺障害が認定された場合、賠償法上、「後遺障害逸失利益」と「後遺障害慰謝料」を請求できますが、多くの場合、これらを合わせると自賠責保険の基準では足りません。

自賠責保険の基準を超える部分は加害者本人や加害者加入の保険会社に請求していくことになります。

後遺障害逸失利益の算定

「後遺障害逸失利益」とは、事故に遭い後遺障害が残らなければ得られたであろう収入のことです。

これは、「①基礎収入額×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算定します。

以下、この計算式の各要素についてご説明いたします。

①基礎収入額
「基礎収入額」は基本的に事故前年の収入を用いますが、若年の方の場合などは平均賃金を用いることもあります。
主婦、主夫の方の場合は、女性労働者の全年齢平均賃金額を基礎収入額とします。

②労働能力喪失率
「労働能力喪失率」は後遺障害の等級ごとに定められています。

その一覧を見てみましょう。

後遺障害等級労働能力喪失率
第1級100%
第2級100%
第3級100%
第4級92%
第5級79%
第6級67%
第7級56%
第8級45%
第9級35%
第10級27%
第11級20%
第12級14%
第13級9%
第14級5%

例えば、第12級の後遺障害が認定された方は、事故前と比べて14%の労働能力が失われているので、その分を補償する必要がある、ということになります。

③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
まず「労働能力喪失期間」とは、基本的には症状固定時から67歳までの年数を指します。

67歳を超える方や、67歳までの年数が「簡易生命表」の平均余命の2分の1より短くなる方については、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。

また、むち打ち症の後遺障害の場合は、12級の場合は10年程度、14級の場合は5年程度とすることが多いです。

上記のように労働能力喪失期間が決まりますが、後遺障害逸失利益は本来将来にわたって発生するべきものです。

それを一括で支払いを受ける以上、将来の利息分を控除する必要があり、そのために用いるのが「ライプニッツ係数」です。

ライプニッツ係数は年数ごとに決められており、例えば、5年に対応するライプニッツ係数は4.5797、10年に対応するライプニッツ係数は8.5302です。

なお、2020年4月1日に民法改正があり、利率が5%から3%に変更になりました。

そのため、ライプニッツ係数も2020年4月1日の前後で変わっていますので、注意が必要です(上記の例は2020年4月1日以降の数字です。)。

以上の組み合わせで後遺障害逸失利益を算定します。

たとえば、事故前年の収入500万円、症状固定時40歳の方が膝の可動域制限のために後遺障害等級第12級の認定を受けた場合、次のようになります。

後遺障害逸失利益=基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入額=500万円
労働能力喪失率=14%
労働能力喪失期間=27年
労働能力喪失期間(27年)に対応するライプニッツ係数=18.3270

500万円×14%×18.3280=1282万8900円

この方の場合、後遺障害逸失利益で1282万8900円の賠償を求めることになります。

保険会社は、労働能力喪失期間を短期間しか認めなかったりといった理由で低額な後遺障害逸失利益を提案してくることがあります。

安易に応じてしまうのではなく、一度ご自身でも計算し、不明点等は弁護士に確認されることをお勧めします。

後遺障害慰謝料の算定

後遺障害の等級が認定された場合、入通院の慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」を求めることができます。

これは、等級ごとに、裁判所・弁護士基準の慰謝料額がおおよそ定められています。

地域によっても若干違いがあるところですが、最も用いられているいわゆる「赤い本」の基準ですと、以下の通りとなります。

後遺障害等級慰謝料額
第1級2800万円
第2級2370万円
第3級1990万円
第4級1670万円
第5級1400万円
第6級1180万円
第7級1000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

保険会社の提案してくる金額は、これらの金額よりも低額であることがほとんどです。

弁護士をいれることで裁判所基準をベースにした交渉が可能になります。

まとめ

後遺障害の等級と、後遺障害等級が認められた場合に請求できる費目についてご説明しました。

後遺障害等級が認められた場合、弁護士を入れることで示談金の増額が強く見込めますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

優誠法律事務所では交通事故の初回ご相談は無料で承っておりますので、ぜひともご活用ください。

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