後遺障害認定と弁護士に依頼するメリット

1.症状固定とは

後遺障害認定と弁護士に依頼するメリット

交通事故被害者の方が事故で怪我をしてしまった場合、しばらく治療を続けることになりますが、ある程度治療を続けても治らない場合、主治医の先生が「症状固定」の診断をすることになります。

この症状固定の診断を受けた時点で残ってしまった症状が交通事故の損害賠償における「後遺障害」ということになり、自賠責保険に対して後遺障害認定の申請をして、後遺障害が認定されれば、相手方に後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

逆に、交通事故の治療は症状固定日までということになりますので、症状固定の診断を受けると、それ以降に治療を継続しても治療費や休業損害、通院慰謝料などを加害者側に請求することはできません。

この症状固定というのは、これ以上治療を続けても症状が改善する見込みがなく、文字通り症状が固定した状態という意味です。症状固定は、本来医学的な判断ですので、担当医師の判断によって時期が決められることになります。

ただ、裁判では必ずしも主治医の診断したとおりに症状固定の時期が認定されるという訳でもなく、例えば、主治医が交通事故から1年後を症状固定日として診断していても、交通事故と因果関係のある治療は半年後までと認定されることもあります。

そして、一般的には交通事故から半年後くらいを症状固定日とする裁判例が多いため、保険会社は主治医が症状固定という判断をしていなくても、事故からある程度経過すると治療費を打ち切ろうとしてくることがあります。保険会社に治療費打切りと言われてしまうと、主治医もそれに合わせて症状固定と診断してしまうことが多いように思います。

ですから、症状固定は医学的判断であるものの、実際には、保険会社から治療費を打ち切られたことで主治医が症状固定の診断をするという流れが多いかもしれません。

2.後遺障害認定手続きの流れ

症状固定の診断の時点で後遺症が残っている場合、後遺障害認定手続きをすることができます。

後遺障害認定手続きの流れは、主治医に後遺障害診断書という独自の診断書を作成してもらうことから始まります。ここでの注意点は、自覚症状をしっかり主治医に伝えて、後遺障害診断書の「自覚症状」の欄に書いてもらうことです。

後遺障害認定手続きは、この後遺障害診断書に記載された内容しか審査の対象になりませんので、いくら痛みが残っていても、実際に診断書に記載してもらわないと後遺障害が認定されることはありません。

主治医に後遺障害診断書を作成してもらったら、それを自賠責保険に提出します。そして、自賠責保険の調査事務所(損害保険料率算出機構)が後遺障害に該当するかどうか、該当する場合は何級に該当するかという調査をします。

この際、外貌(顔)や手足に瘢痕や線状痕が残ってしまった場合の醜状痕の後遺障害認定では、一度被害者の方が調査事務所に面接に出向いて、傷の長さや大きさなどを測定してもらうことになります(なお、コロナ禍によって面接をせずに認定される場合もあります。)。

それ以外の後遺障害の場合は、書類の提出後は1~2ヶ月ほどの調査を待つということになります。

そして、自賠責保険の調査事務所での調査が終了すると、その結果が保険会社から被害者に通知されます。

3.事前認定と被害者請求

この後遺障害認定手続きは、申請の方法が「事前認定」と「被害者請求」の2通りあります。事前認定とは、完成した後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社に提出して、任意保険会社に手続きを任せる方法です。

被害者請求は、文字通り被害者ご自身や被害者の依頼した弁護士が必要資料を揃えて申請する方法です。

実際には、後遺障害認定手続きに詳しい交通事故被害者の方は少ないですから、加害者側の任意保険会社に任せる事前認定で申請する方が多いと思います。

しかし、加害者側の保険会社としては、後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料などを支払う必要がありますので、基本的に後遺障害等級が認定されるように尽力してくれるということは期待できず、必要最低限の書類を揃えて提出するだけと考えた方がいいでしょう。

一方、被害者請求では、被害者側が提出書類を揃えますが、特に提出してはいけないものはありませんので、後遺障害認定に有利だと考えられる資料があれば何でも提出することができます。

例えば、疼痛(痛み)などは、後遺障害診断書に「頚部痛」などと記載されていても、どのように痛いのか、どの程度痛いのか、どの程度生活に支障があるのか、詳しいことは調査事務所で把握することができません。

そこで、被害者側で症状を詳しくまとめた陳述書を作成して添付すると、調査事務所も被害者の方の実情を知った上で調査をすることができます。

もちろん、被害者側でそのような資料を出せば必ず後遺障害が認定されるという訳ではありませんし、どの程度効果があるのかは分かりませんが、少なくとも加害者側保険会社に任せてしまうよりは、被害者の状況をより詳しく伝えることができますので、妥当な後遺障害認定を受けられやすいのではないと思います。

ただ、交通事故被害者の方がご自身で後遺障害認定手続きを調べながら申請するのは大変ですし、かなり手間がかかります。

ですから、症状固定の際に後遺症が残ってしまって、後遺障害認定手続きをお考えの場合は、弁護士にご依頼されることをお勧めします。なお、この弁護士を選ぶ際には注意点があります。

弁護士にも得意不得意がありますから、あまり交通事故に詳しくない弁護士を選んでしまうと適切な対応をしてもらえない可能性があります。弁護士によっては、後遺障害等級が決まってから依頼してくださいと案内される場合もあるかもしれません。

後遺障害認定手続きは、あまり法律とは関係ありませんので、普段から交通事故を取り扱っている弁護士でないと適切な対応をすることは難しいですから、弁護士選ぶ際には、交通事故に詳しい弁護士を選ぶようにしてください。

4.後遺障害認定に不服がある場合

後遺障害認定手続きが終わり、結果が通知された際、予想していた後遺障害等級が認定されないこともあるかもしれません。例えば、首のお怪我で痛みが残っていて「14級9号」が認定されると考えていた方が、「非該当」の結果を通知される場合などが多いと思います。

このように、自賠責保険の判断に不服がある場合、異議申立てという手続きを取ることができます。

異議申立てについては、特に決まった書式などはありませんので、初回の後遺障害認定手続きの際に通知された認定の理由に記載されている内容に対し、不服のある部分を指摘して申請することになります。なお、この異議申立てに回数制限はありませんので、不服があれば何度でも申立てをすることができます。

ただ、同じ資料だけで再提出しても、結果が変わることは期待できないでしょう。異議申立てで後遺障害を認定してもらうためには、医師の意見書や再検査の結果など何か後遺障害を裏付ける新しい証拠を追加で提出する必要があります。

ちなみに、異議申立てによって結論が変わるケースは全体の5%程度とされていますから、かなり可能性が低いことは理解していただけるかと思います。ただ、これまで私たちがご依頼いただいてきた依頼者の場合、約半分が異議申立てによって後遺障害が認められています。

このような点からも、後遺障害認定手続きは交通事故に詳しい弁護士に依頼するべきということがお分かりいただけるかと思います。

なお、異議申立てでも結果が変わらなかった場合、「自賠責保険・共済紛争処理機構」という第三者機関に自賠責保険の認定が正しいか審査してもらうこともできます。

こちらは1回しか申立てができませんので、ここでも後遺障害が認定されなかった場合には、裁判で後遺障害の認定を求めるしかありませんが、裁判所も自賠責保険の認定結果は重視しますので、このような場合は裁判でも極めて厳しい戦いとなってしまいます。

5.まとめ

これまで後遺障害認定手続きの流れや注意点をご説明してきましたが、やはり後遺障害認定手続きは交通事故に詳しい弁護士に任せることによって適切な後遺障害が認定される可能性が高まるといえます。

適切な後遺障害等級が認定されないと、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求などにも影響が出て、相手方から受け取れる示談金が大幅に少なくなってしまいます。そのような結果になる前に、ぜひ弁護士にご相談ください。


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