交通事故を裁判以外で解決する方法

1.はじめに

交通事故の被害に遭った方は、加害者に対して、交通事故によって被った損害の賠償を求めることができます(民法709条)。

したがって、加害者から適切な賠償金の支払いを受けることが目的となります。

では、加害者から適切な賠償金の支払いを受けるために、どのような手続きを採ることが考えられるでしょうか。

この記事では、裁判(訴訟)以外の方法で交通事故を解決する方法について解説します。

2.交通事故の解決までの流れ

交通事故によってけがを負った被害者が、交通事故の解決に至るまでは、通常次のように進んでいきます。


(1)治療

まずは、けがを治さなければなりませんので、病院や整骨院・接骨院での治療を行います。

治療は、「治癒」に至るか、「症状固定」に至った時に終了します。

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(2)後遺障害の認定手続

治療が「症状固定」を理由に終了した場合、症状が残存していますから、当該症状が後遺障害に該当するかどうかの認定を受ける手続きをへることがあります。

後遺障害に該当する場合、後遺障害が残存したことに対する損害(後遺障害慰謝料・逸失利益など)を加害者に対して請求することができます。

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(3)損害の計算等

治療が終了し、また後遺障害の認定手続きが終了しましたら、交通事故の被害に遭った方の損害額を算出することができます。

一般的には、治療費、交通費、休業損害、慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などの損害項目を算出していきます。

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(4)交渉

損害の算出ができましたら、いよいよ加害者(ないし加害者の加入する保険会社)に対して、その損害を支払うよう請求します。多くの場合は、各損害項目と合計額が記載された損害賠償通知書という書面を送付する方法によって請求します。

この請求に対して、相手方が当該金額を支払うのか、その全部または一部を争うのかを返答します。

請求額全額を支払うという回答であれば、それによって示談ということになります。この場合には、別途「示談書」や「免責証書」といった合意内容を記載した書面を取り交わします。

請求額の全部または一部を争う場合には、再度こちらから争いとなっている部分についての意見を述べ、交渉します。その結果、合意に至った場合には、上記と同様に示談に至ります。

この段階は、あくまで交渉なので、相手方と合意に至ることができない場合があります。


3.裁判(訴訟)以外の解決手段

示談交渉によって示談に至ることができなかった場合、一般的には次の法的手続きを採ることを検討します。これらは、第三者(機関)を交え、当事者間の紛争を解決しようというものです。


(1)交通事故紛争処理センターに対する申立

裁判外紛争解決手段として、交通事故紛争処理センターにあっせんを申し立てるという方法があります。

この交通事故紛争処理センターは、民間の公益財団法人が運営するセンターで、交通事故被害者の中立・公正かつ迅速な救済を図るために、自動車事故による損賠賠償に関する法律相談、和解あっせん及び審査業務を無償で行っているという機関です。

訴訟による解決を図るよりも早く、またその費用を抑えることができるというのが最大の特徴です。

他方で、利用することができるセンターの拠点が相談室を含めて11か所と少なく、また利用することができない保険会社や共済があること、そして後遺障害に関する紛争や複雑な争点があるものなど取り扱いができないものがあるという難点もあります。


(2)調停

調停は、裁判所で行われる手続きですが、訴訟とは異なり、調停委員を交えて話し合いによる解決を図るものです。

訴訟のように厳格な立証が求められないことや比較的早期の解決を図ることができることがメリットです。

他方で、調停はあくまで話し合いによる解決を目指すものですので、合意に至れない場合には、結局訴訟等による解決を目指さざるを得なくなってしまうという難点があります。


4.まとめ

以上のように、交通事故の解決手段は、一般的には示談交渉によってはかられます。しかし、示談交渉は、話し合いで合意に至るものですから、すべての交通事故を示談交渉で解決することはできません。

訴訟は、裁判所が最終的に判決の形で支払いを命じるものですので、示談交渉で解決できなかった時には有効な解決手段です。

しかしながら、訴訟は、時間やコストが多くかかってしまうという難点もあります。

そこで、示談交渉によって解決できない場合には、訴訟以外の解決手続きを検討することが重要です。

治療や後遺障害の認定手続きが終了したら、示談交渉をどのように進めていくのが良いのか、訴訟以外の解決手段をとるべきか否などついて、専門家である弁護士に相談してみてください。

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