過失割合

1.はじめに

「今回の事故は、あなたにも20%の過失があります。」

自分としては十分に注意を払っていて、避けられないと思っていたのに、過失があると言われてしまった。

このようなご経験や思いをされた方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、そもそも「過失」「過失割合」とは何なのか、過失があるとどのような効果があるのか、過失割合の決め方などについてご説明いたします。

2.「過失(割合)」とは

過失とは、むずかしく言えば「結果予見可能性及び結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反」であると考えられています。

交通事故に関して、簡単に申し上げれば、「注意をすれば交通事故の発生を防ぐことができたのに、不注意のために交通事故を発生させてしまった」ということです。

交通事故は、追突事故のように専ら一方の過失によって発生するものと、出合頭の事故のように双方の過失によって発生するものがあります。

双方の過失によって発生する交通事故の場合、双方の過失の程度を表すのが、過失割合です。

3.過失割合が示談交渉に及ぼす影響

交通事故の被害者の方が、自らにも過失がある場合、どのような影響があるのでしょうか。

この点、民法722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めています。

つまり、被害者の過失は、被害者に発生した損害の公平な分担という観点から、その損害賠償の額に影響します。

たとえば、ある交通事故被害者の方の治療費が100万円、交通費が10万円かかり、その慰謝料の額が90万円であったとしましょう。

そうすると、その方の損害額は、合計200万円です。

その被害者の方に、過失がなければ、損害賠償額は200万円ということになります。

他方で20%の過失がある場合、200万円の損害のうち、加害者に請求することができるのは、160万円ということになります。

4.過失割合の決め方

上記のように、過失の有無は、被害者の方が加害者に対して請求することができる損害賠償の額に大きな影響を及ぼすため、しっかりと決めていかなければなりません。

ただ、他方で、交通事故は2020年でもまだ年間30万件を超える件数があり、その1件1件について被害者と加害者の過失割合を1から決めていくことは、被害者の迅速な救済の観点からも好ましくありません。

そのため、交通事故実務上では、交通事故の状況を一般化・類型化し、ケース毎に基本的な過失割合とそれを修正すべき要素が定められています。

たとえば、四輪車同士の交通事故で、先行車が車線変更を行ったときに後続車と衝突したという場合、先行車と後続車の運転手の過失割合は、基本的には70%:30%であるとされています。

ただし、例えば進路変更禁止場所であったり、合図なくして先行車が進路変更をした場合には、先行車に+20%の過失を加重し、反対に後続車が制限速度を15km/h以上超過している場合には後続車に過失を+10%加重するなどの修正を行います。

5.過失割合のポイント

⑴ 事実の争い

過失割合については、まず、どのような交通事故が発生したのかを事実ベースで確定できるかがポイントです。どのような事故状況であったのかに争いがあれば、上記の典型的なケースへのあてはめや修正要素の有無などを判断することができないためです。

この点、ドライブレコーダー等が搭載されている車両であれば、客観的に事故状況を確認することができます。

他方で、ドライブレコーダーがない場合には、客観的にどのような事故状況であったのかわからなくなってしまう場合があり、この場合には、自分に有利な事故状況を立証することができなければ、それは過失割合の前提にすることができなくなってしまいます。

そのため、事故状況を客観的にどこまで立証することができるのかが、まずは大きなポイントであると言えます。

⑵ 評価の争い

事故状況に争いがない場合であっても、当該事故状況を前提とした場合にどのような過失割合とするのが良いのか(評価としてのパーセンテージの振り分けをどうするのか)が、問題となることがあります。

上記のように典型的なケースであれば、大きな問題となることは少ないと言えますが、特殊な事故状況等では問題となることが多いです。

このような場合には、これまでの裁判例等から類似の交通事故を調査し、参考にしながら解決を図ることとなります。

しかし、一般的に過去の裁判例を調査することは簡単ではありませんので、このような場合には弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

6.まとめ

過失割合は、最終的には、加害者に請求することができる損害賠償の金額を左右する重要な事項です。

しかしながら、その決定方法については専門的な知見を要する場合が少なくありません。過失割合で不安になったら、弁護士への早期のご相談をお勧めします。

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