無保険の加害者と事故に遭った時の知識

車を運転される方のほとんどは、事故を起こしてしまった場合に備えて、対人賠償保険や対物賠償保険等の任意保険に加入されています。

しかし、中には、これらの保険に加入しないまま車を運転している方もいます。

さらには、自賠責保険にすら加入していないケースもあります。

今回は、加害者が対人賠償保険や対物賠償保険、自賠責保険に加入していない場合、被害者の方が行うべき手続をご説明いたします。


加害者が対人・対物保険に未加入の場合

加害者が対人・対物保険に未加入の場合でも、強制加入保険である自賠責保険に加入していることがほとんどです。
(自賠責未加入で道路を走行すると刑事罰が科されます。)

この場合、まずは加害者の自賠責保険に治療費や慰謝料の請求を行うことを検討します。

自賠責保険からは、治療費、慰謝料、休業損害等で上限120万円の補償が受けられます。

また、後遺障害等級が認定されれば、その等級に応じた金額が支払われます。

例えば、5級であれば1574万円、12級であれば224万円、14級であれば75万円が支払われます。

各等級ごとの支払額は「後遺症の等級と慰謝料」で説明していますので、そちらもご覧ください。

ただし、注意が必要なのは、自賠責保険は人身損害のみを対象としている点です。

事故車の修理費等、物的損害は対象外ですので、加害者等に請求するか、ご自身加入の車両保険を利用する必要があります。


ご自身加入の人身傷害保険等を使う

対人・対物賠償保険だけでなく、人身傷害保険や搭乗者傷害保険、車両保険などに加入されている方は多いと思います。

これら保険に加入されている場合、保険金額を限度としてですが、ご自身加入の保険から補償を受けることができます。

加害者が保険に加入していない場合は、ご自身の保険を確認されるとよいでしょう。


労災保険・健康保険の利用

事故がお仕事中や通勤中に起きた場合、労災保険が利用できます。

労災保険からは、治療費の支払いを受けることができます。

また、休業損害の一部として、休業補償給付と特別支給金併せて給与の8割の支払いを受けることができます。

ただし、労災保険からは慰謝料の支払いを受けることはできません。

慰謝料の補償はないものの、補償額の上限なしに治療費・休業損害の負担を軽減できるため、加害者が保険に未加入の場合は積極的に労災保険を利用すべきです。

労災保険を使用することのメリットについては、こちらのページもご覧ください(どのような場合に交通事故で労災保険を使うべきか?~労災のメリット~)。

事故が労災・通勤災害に当たらない場合は、健康保険を利用できます。

健康保険は、基本的には治療費の負担を軽減するのみで慰謝料の補償などはありませんが、療養のために4日以上お仕事を休んでおり、給与の支払いがない場合、傷病手当金を受領できることもあります。

交通事故で健康保険を使うには、「第三者行為による傷病届」を保険組合等に提出して利用します。


不足部分は加害者本人等に請求

以上いくつかの方法をご説明いたしました。

ただし、いずれの方法によっても、賠償法上の裁判所基準の金額には及ばないケースがほとんどです。

そもそも自賠責保険は最低限の補償を定めたものですし、ご自身加入の人身傷害保険も、その支払基準は賠償法上の裁判所基準の額よりも低額になります。

したがって、本来支払いを受けられるはずの金額と実際に補償を受ける金額の差額が生じてしまいます。

加害者が任意保険に加入していれば、この差額は加害者加入の任意保険会社から支払いを受けることになります。

しかし、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者本人や、その他賠償法上責任を負う者と交渉、あるいは裁判を行い、差額の補償を受ける必要があります。

その際には、以下の点に注意する必要があります。


請求先に注意

交通事故による賠償請求は、場合によっては数百万、数千万になることもあります。

保険会社が入っていれば「お金がなくて払ってもらえない」ということはありませんが、加害者が保険に加入していない場合、「お金がなくて払ってもらえない」というケースが起こりえます。

そのような場合に備え、可能な限り多くの相手に請求する必要があります。

請求先として真っ先に思いつくのは、車を運転していた加害者本人です。

加害者本人は当然賠償請求先になりますが、これは、民法709条の不法行為による損害賠償の相手方です。

また、自動車損害賠償責任法3条では、「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)の責任を認めています。

難しい言葉ですが、例えば車の所有者などが該当すると考えられています。

したがって、加害車両の運転者と所有者が違う場合などは、所有者に賠償請求ができる可能性があります。

さらに、民法715条は、使用者の責任を定めています。

これは、簡単に言うと、仕事中の事故については加害者の雇い主や会社も被害者に対して責任を負う、というものです。

したがって、加害者が仕事中に事故を起こした場合、加害者の雇い主や会社に対しても賠償請求ができる可能性があります。

会社は個人に比べれば資力の不安のないケースが多いので、仕事中の場合は加害者の勤務先会社への請求は検討すべきです。


それでも交渉が難航、裁判になるケースは多い

思いつく限りの請求先と交渉を行ったとしても、加害者が保険に加入していないケースでは、交渉が難航したり、裁判になったりといったケースは経験上多いです。

これは、資力面で加害者が対応できないというケースに加え、加害者に交通事故についての知識がないため、交渉に対応できない、というケースが相当数あるためです。

加害者が自身で事故による賠償について調べる、弁護士に相談する等誠意ある対応をしてくれればいいですが、そうでない場合、知識がないために交渉に応じることができず、裁判になるというケースがあります。

また、裁判が終わって判決が出たとしても、その内容を履行せず強制執行となるケースも少なからずあります。

加害者が保険未加入のケースに限りませんが、そのようなケースでは特に、将来の裁判、さらには強制執行を見据えて行動する必要があります。

したがって、加害者が任意保険に加入していない場合、被害者側の弁護士としてお手伝いできる部分が多くあります。

ぜひ一度弁護士へ相談されることをお勧めいたします。


加害者が自賠責保険にすら加入していない場合

ひき逃げ等加害者が不明だったり、加害者が判明していても自賠責保険に加入していない場合は、「政府保障事業」へ補償を求めることになります。

政府保障事業からの支払内容は、基本的に自賠責保険と同様ですが、健康保険や労災保険を利用する必要があるなど細かい違いがあります。


まとめ

以上、加害者が任意保険に加入していないケースについてご説明いたしました。

裁判を見据える必要があるなど、弁護士のお手伝いできる部分が大きいですので、ぜひ弁護士へのご相談をご検討いただければと思います。

優誠法律事務所では交通事故の初回ご相談は無料で承っておりますので、ぜひともご活用いただければと思います。

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