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1.はじめに
令和3年2月18日付で警察庁交通局から発表された「令和2年中の交通事故発生状況」によれば、発生件数は減少しているものの、それでもなお、1年間に6万7000件を超える自転車関連交通事故が発生しています。
自転車には、自動車と異なり、自賠責保険の加入義務がありませんから、自転車に乗車していた者が交通事故加害者となった場合、加害者側に使用することができる損害保険がないという事態が生じることがあります。
このように自転車事故には自動車事故とは異なる点がありますので、この記事では以下に自転車事故の被害に遭ってしまった場合について解説します。
2.加害者が保険に加入している場合
上記のとおり、自転車には、自賠責保険の加入義務はありません。
しかしながら、都道府県が定める条例において、一部地域では、特に人身損害に関してその加入を義務付けています。
そのため、自転車事故であっても、加害者が使用することができる損害保険に加入していることもありますので、まずはその付保の有無を確認しましょう。
もし、加害者が使用することができる損害保険があるのであれば、基本的には自動車事故の場合と同じように進めていくことが可能です。
すなわち、多くの場合では加害者の加入する損害保険会社が治療費を負担しながら、治療を継続することができ、治療が終了した段階で、その保険会社に対し、当該交通事故によって被った損害の賠償を請求するということになります。
3.加害者が保険に加入していない場合
加害者が保険に加入していない場合であっても、自らが加入している損害保険に「人身傷害保険」その他の保険が付保されている場合には、当該保険を使用することによって保険契約に基づく保険金を自分の保険会社に請求することが可能です。
ただし、この場合には、保険契約に基づく保険金が支払われるにすぎず、当該交通事故によって被った損害の賠償がなされるわけではありませんので、支払われた保険金の額が被った損害を補償するのに足りない場合には、その差額を加害者本人に対して請求することになるでしょう。
また、加害者に使用することができる損害保険が存在しない場合、交通事故の被害者は、自らが負った傷害に対する治療を自らの負担で行っていかなければなりません。
そして、治療が終了した段階で、加害者に対して、それまでに負担した治療費及び交通費や、休業損害、慰謝料等の損害の賠償を請求します。
4.加害者に対して直接損害の賠償を請求するときの問題点
加害者に対して直接損害の賠償を求める場合には、以下の点が問題となります。
(1)請求額
まずは、請求額です。例えば、慰謝料を請求しようと思ったとしても、いくら請求するのが適切なのかを判断することができる方は多くないと思います。少なすぎては、十分な損害の補填を得ることができませんし、多すぎては不当な請求であるなどの反論を許すことになってしまうでしょう。
(2)手続き
請求額を決めたとしても、次は具体的にどうすればよいでしょうか。
一般的には、証拠資料とともに加害者に対して、損害額を具体的に記した書面を送付し、その支払いを求めます。
相手方から反論や返事があれば、交渉を継続し、交渉がまとまれば示談書を作成して取り交わします。示談書のとおりに、示談金が支払われれば、解決です。
しかし、相手方から返事がなく、また金額がまとまらないことが考えられます。その場合には、加害者からの任意での損害の補償を期待することができませんので、強制力のある紛争解決手段である裁判等の法的手続きをとることを検討しなければなりません。
(3)回収
加害者が任意で支払いに応じない場合、最終的には強制執行の手続によって権利を実現しなければなりません。
しかしながら、強制執行手続きは、原則として債権者(被害者側)において、債務者(加害者)の差押財産を具体的に特定しなければなりませんが、その特定が容易でない場合も少なくありません。
5.まとめ
自転車事故であっても、交通事故の被害に遭った場合には、加害者に対して、当該交通事故によって被った損害の賠償を請求することができます。
しかしながら、自転車事故の場合には、双方保険会社が介入しない場合もあり、その場合には、当事者間で解決しなければなりません。
最終的に加害者から回収することができるのかということもありますので、弁護士に依頼するかどうかは悩ましいところはあるかもしれませんが、まずは無料相談を行っている弁護士事務所も多くありますので、相談してみることをお勧めします。
特に、ご自身に使用することができる保険があり、弁護士費用特約に加入している場合には、積極的に弁護士への依頼を検討してみるのが良いでしょう。