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1.カウザルギー・RSDとは?
交通事故被害者の方からご相談をお受けしていると、稀に交通事故で負った外傷(骨折等)が治癒した後でも強い痛みなどが続いているというお悩みをお聞きすることがあります。
このような外傷の治癒後にも残ってしまう感覚障害については、複合性局所疼痛症候群(CRPS)が疑われます。
複合性局所疼痛症候群は、疼痛、膨張(腫れ)、関節拘縮、骨萎縮、皮膚の変化(皮膚色の変化、皮膚温の低下など)、発汗異常などの症状が見られ、末梢神経の損傷を伴うものがカウザルギー、神経損傷を伴わないものがRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)と分類されます。
いずれも治療が難しい上、疼痛が元々の骨折等の外傷部位よりも広がることが多く、疼痛等の原因となる他覚的な所見も乏しいことから、そもそも正確な診断も難しいという特徴があります。また、「皮膚が焼けるように痛い」(灼熱痛)などと表現されることもありますが、元々の外傷からすると不釣り合いともいえる強い症状が残ることもあります。
このカウザルギーやRSDも、交通事故における後遺障害認定の対象になります。ただ、自賠責保険での後遺障害認定はかなり厳しい基準があり、等級認定は容易ではありません。以下では、カウザルギー、RSDの認定基準等についてご説明します。
2.カウザルギー・RSDの後遺障害等級
(1)カウザルギーの後遺障害等級
カウザルギーについては、疼痛(痛み)のある部位、症状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間及び変動、疼痛の原因となる他覚的所見などによって、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して以下の等級を認定することになります。
- 第7級4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの - 第9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの - 第12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
(2)RSDの後遺障害等級
RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)については、神経の損傷がないため、
- 関節拘縮
- 骨の萎縮
- 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
という慢性期の主要な3つの症状のいずれもが健側(怪我をしていない方)と比較して明らかに認められることが条件となり、この3つの要件を満たす場合に限って、カウザルギーと同様の基準で第7級4号、第9級10号、第12級13号が認定されます。
3.後遺障害認定には専門家のサポートが必須
特に、RSDで後遺障害等級の認定を受けるためには、上記の①~③の3つの要件を立証する必要がありますが、正直なところ、これはかなり難しいため、RSDに詳しい医師に診断してもらうなど専門家のサポートが必要といえます。
私たちが以前ご依頼をお受けした被害者の方は、左足開放骨折の怪我を負ってしまい、骨折自体はその後の治療で治ったものの、骨折部分からその周りにかなり強い痛み(灼熱痛)が残ってしまい、皮膚の変色、発汗異常などの症状がある状態でした。
この依頼者の方は、RSDと診断されていましたので、症状固定時には主治医に疼痛の程度、知覚測定、腫脹・浮腫の程度(周囲径の測定、圧痕の有無、指尖容積脈波)、発汗の程度(櫻井式測定紙)、皮膚の血流状態(サーモグラフィー、レーザードップラー検査)、骨委縮の程度(単純XP、三相性骨シンチグラフィー検査)、神経障害・筋肉の活動状態(筋電図検査)などの様々な検査を依頼して、後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害申請をしました。
しかし、それでも自賠責保険の認定では、上記の3要件のうち、画像上で②骨の萎縮が顕著ではないと判断されてしまい、第12級13号(他の部位の怪我と合わせて併合11級)の認定に留まりました。
ただ、上記のRSDの3要件は、あくまで自賠責保険での認定の基準ですので、自賠責保険の認定で否定された場合でも、裁判手続きで争えば後遺障害等級が認定される可能性もあります(一般論としては、裁判所も基本的には自賠責保険の認定を重視しますので、自賠責保険の認定より上位の等級を認めさせることはかなり難しいことではあります。)。
特に、②骨の萎縮が見られないケースでもRSDによる後遺障害を認めた裁判例は存在します。
そのため、この依頼者の方にも、裁判手続きをご案内しましたが、併合11級前提での示談交渉で総額約2000万円の示談金が確保できたことから、裁判での長期戦を希望されず、そのまま示談となりました。
4.まとめ
上でご紹介したカウザルギーやRSDは後遺障害認定がかなり難しい傷病ですので、加害者側保険会社に後遺障害申請を任せる事前認定では十分な証明をして適切な等級認定を受けられる可能性は低いと思われます。必要な検査をして要件を満たしていることを証明しなければ後遺障害が認定されることはありません。
また、上記の事例のように、自賠責保険の認定基準では等級が認定されない場合でも裁判で争えば認定されるケースもありますが、このような対応は交通事故に詳しい弁護士でなければ難しいといえます。
ですから、カウザルギーやRSDのような難しい傷病の疑いがある場合には、早めに交通事故に詳しい弁護士に相談をして、サポートを受けることをお勧めします。
私たち優誠法律事務所でも、ご依頼をお受けしておりますので是非一度ご相談ください。