事故によって衝撃を受けた場合、脊髄損傷という傷病を負ってしまうことがあります。
脊髄損傷を負ってしまった方は、今後の生活や賠償がどうなるか、ご不安に思っておられることと思います。
今回は、脊髄損傷を負ってしまった方に向けて、脊髄損傷を負った場合の後遺障害等級や、示談金の額についてご説明いたします。
このページの目次
脊髄損傷とは
脊髄損傷とは、脊椎の中をはしている脊髄が損傷を受けることです。
症状としては、損傷した部位や程度により、損傷部の痛みや四肢等の麻痺、呼吸障害や膀胱直腸障害等があり得ます。
脊髄損傷の後遺障害等級認定基準
事故によって脊髄損傷を負い、治療を行った場合、慰謝料や休業損害の請求ができます。
さらに、治療によっても症状が残存してしまい、後遺障害等級の認定を受けた場合は、後遺障害についての補償を追加で受けることができます。
脊髄損傷の後遺障害等級認定の基準は以下の通りです。
別表第1
等級 | 内容と具体的症状 |
第1級1号 | 「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に介護を要するもの」 ①高度の四肢麻痺が認められるもの ②高度の対麻痺が認められるもの ③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの ④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの |
第2級1号 | 「せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」 ①中等度の四肢麻痺が認められるもの ②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの ③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの |
別表第2
等級 | 内容 |
第3級3号 | 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの」 ①軽度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの ②中等度の四肢麻痺が認められるものであって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要しないもの |
第5級2号 | 「せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの」 ①軽度の対麻痺が認められるもの ②一下肢の高度の単麻痺が認められるもの |
第7級4号 | 「せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの」 一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの |
第9級10号 | 「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」 一下肢に軽度の単麻痺が認められるもの |
第12級13号 | 「通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの」 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの |
以上の症状が残存してしまった場合、各等級が認定される可能性があります。
脊髄損傷の場合、後遺障害認定にあたり、残存してしまった症状と事故との因果関係を問われるケースが多いです。
したがって、後遺障害等級申請の際には、事故による受傷態様や、症状とCT検査、MRI検査、神経学的検査等の他覚所見との整合性などを丁寧に主張する必要があります。
申請時の資料を弁護士が確認することもできるので、一度ご相談されることをお勧めいたします。
脊髄損傷の後遺障害逸失利益
後遺障害等級が認定された場合、将来得られるはずだった収入の補償として、「逸失利益」を請求できます。
逸失利益の算定方法は「後遺症の等級と慰謝料」にて解説しましたが、「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算定します。
この計算式の要素のうち、「労働能力喪失率」は後遺障害の等級ごとに定められています。
脊髄損傷で認定される可能性のある等級の労働能力喪失率は、以下の通りです。
別表第1
等級 | 労働能力喪失率 |
第1級1号 | 100% |
第2級1号 | 100% |
別表第2
等級 | 労働能力喪失率 |
第3級3号 | 100% |
第5級2号 | 79% |
第7級4号 | 56% |
第9級10号 | 35% |
第12級13号 | 14% |
上位等級が認定されるほど、労働能力喪失率も大きくなります。
しかし、保険会社の提案では、労働能力喪失率が低く見積もられ、そのため逸失利益が低額となっていることがあります。
また、労働能力喪失期間を短く見積もってくるということもあります。
したがって、保険会社の提案を鵜呑みにするのではなく、きちんとご自身で計算をし、ご不安であれば弁護士に相談することが必要です。
脊髄損傷の後遺障害慰謝料
後遺障害が認定された場合、入通院の慰謝料とはまた別の「後遺障害慰謝料」の請求ができます。
これも後遺障害等級ごとに基準がありますが、基準の中にも、金額の低い順から、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準と3つの物があります。
後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料の基準は以下の通りです。
なお、任意保険基準は確定的なものがあるわけではないので割愛しますが、自賠責保険基準よりやや高額なものになります。
別表第1
等級 | 自賠責基準の 後遺障害慰謝料額 | 裁判所基準の 後遺障害慰謝料額 |
第1級1号 | 1650万円 | 2800万円 |
第2級1号 | 1203万円 | 2370万円 |
別表第2
等級 | 自賠責基準の 後遺障害慰謝料額 | 裁判所基準の 後遺障害慰謝料額 |
第3級3号 | 861万円 | 1990万円 |
第5級2号 | 618万円 | 1400万円 |
第7級4号 | 419万円 | 1000万円 |
第9級10号 | 249万円 | 690万円 |
第12級13号 | 94万円 | 290万円 |
このように、後遺障害慰謝料の金額は、自賠責保険基準と裁判所基準で大きな差があります。
弁護士を入れて裁判所基準で交渉を行うことで、大幅な増額が見込める部分です。
脊髄損傷のその他の賠償請求
上記の後遺障害等級認定基準をご覧いただければわかるように、脊髄損傷の場合、ご家族の介護が必要になるケースがあります。
また、自宅や自動車をバリアフリー化する必要があるケースもあります。
そのような場合、必要性を立証することで、相当な範囲について賠償を求めることができます。
まとめ
以上、事故によって脊髄損傷を受けた方に向けて、注意すべき点をご説明いたしました。
症状が残ってしまった場合には、残存症状について明確に説明し後遺障害等級を獲得した上で、適切な額の補償を得ることが必要になってきます。
身体の自由が利かない中で交渉を行うことの負担もあるため、早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。
優誠法律事務所では交通事故の初回ご相談は無料で承っておりますので、ぜひともご活用いただければと思います。