今回のテーマは、バイク事故による「脊髄損傷」です。
交通事故の中でも、身体が剥き出しの状態であるバイク事故は、重篤な怪我につながるケースが少なくありません。
中でも脊髄損傷は、手足の麻痺や感覚障害など、被害者の将来にわたって深刻な影響を残す重大な傷害です。
脊髄損傷の被害者が適切な補償を獲得するためには、後遺障害の等級認定が極めて重要です。
認定される等級が1つ違うだけで、慰謝料や逸失利益が数百万円、あるいは数千万円単位で変わることもあります。
本記事では、交通事故・バイク事故を多く取り扱ってきた弁護士の視点から、脊髄損傷の基礎知識、賠償額が決まる仕組み、そして解決へのポイントを解説します。
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このページの目次
1.交通事故による脊髄損傷とは?症状・後遺症・被害者に生じる障害を解説
まずは、医学的な観点から脊髄損傷がどのような状態を指すのか、その症状と診断の基礎知識を確認しましょう。
・脊髄損傷が起きる仕組みと主な原因(交通事故事例を中心に解説)
脊髄とは、脳から背骨(脊椎)の中を通って伸びる太い神経の束のことです。
バイク事故では、転倒時の強い衝撃などにより、背骨の骨折や脱臼が生じ、その中の脊髄が圧迫されたり傷ついたりすることで損傷が起きます。
特にバイクは、ヘルメットで頭部は守られていても、首(頚椎)や腰(腰椎)は衝撃を受けやすい部位です。
事例としても、交差点での出会い頭の衝突や、ガードレールへの激突などで、頚髄(首の神経)を損傷するケースが多く見られます。
2.脊髄損傷の症状・種類・部位別の違い|頚髄損傷が重くなりやすい理由
交通事故による脊髄損傷では、損傷した部位や損傷の程度に応じて、様々な症状が現れます。
代表的なのは、麻痺・感覚障害・運動制限であり、これらの症状がどの程度残るかによって、後遺障害等級や慰謝料額が大きく左右されます。
脊髄損傷では、脳からの指令が神経を通じて伝わらなくなることで、手足が動かしにくくなる「麻痺」や、痛み・温度を感じにくくなる「感覚障害」が生じることがあります。
また、歩行や階段昇降が困難になるなど、日常生活や労務に支障をきたす「運動制限」が残るケースも少なくありません。
これらの症状は、損傷の程度だけでなく、どの部位の脊髄が損傷したかによっても大きく異なります。
特に頚髄(首の脊髄)を損傷した場合には、上肢・下肢の双方に障害が及びやすく、重症の場合には介護が必要となる後遺症が残ることもあります。
一方、胸髄や腰髄の損傷では、主に下半身に麻痺や感覚障害が現れ、歩行困難や日常生活動作の制限が問題となるケースが多く見られます。
さらに、脊髄損傷が「完全損傷」か「不完全損傷」かによっても、症状の重さや生活への影響は大きく異なります。
完全損傷では神経機能がほぼ失われるのに対し、不完全損傷では一部の運動機能や感覚が残ることがあります。
この違いは、後遺障害等級や賠償額にも大きく影響します。
次に、こうした症状や損傷の違いが、後遺障害等級としてどのように評価されるのかを解説します。
3.交通事故による脊髄損傷|後遺障害等級(1級〜12級)の一覧と認定ポイント
脊髄損傷による損害賠償において、最も重要なのが「後遺障害等級」です。
この等級によって、保険会社から支払われる金額の基準が決まります。
⑴ 後遺障害等級(1級~12級など)の違いと認定基準・理由
脊髄損傷の後遺障害は、麻痺の範囲や生活への支障の程度に応じて、主に以下の等級に分類されます。
| 等級 | 状態の目安 |
| 第1級 | 常に介護が必要な状態。 |
| 第2級 | 随時介護が必要な状態。 |
| 第3級 | 終身労務に服することができない状態。 |
| 第5級 | 特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態。 |
| 第7級 | 軽易な労務以外の労務に服することができない状態。 |
| 第9級 | 服することができる労務が相当な程度に制限される状態。 |
| 第12級 | 局部に頑固な神経症状を残す状態。 |
重い等級であれば、将来の介護費用も認定されやすくなるため、賠償額が非常に高額になります。
⑵ 等級認定に必要な資料・画像・診断書と申請手順
後遺障害認定の流れとしては、主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらい、自賠責保険(損害保険料率算出機構)へ申請を行います。
この際、単に診断書を提出するだけでなく、MRI画像や、日常生活に関する状況報告書(日常の困難さを伝える書類)などをセットで提出することが、適正な等級を受けるために有効です。
⑶ 等級非該当・低い等級と異議申立て|成功・解決のコツ
例えば、弁護士に依頼しないで自賠責保険に申請した際,非該当にされたり、想定よりも低い等級が認定されたりしてしまったとします。
この場合、手続上は「異議申立て」を行うことが可能です。
ただ、同じ資料で再審査しても、結果が変わる可能性は低いといえます。
そこで、有効な異議申立てを行うためには、新たな医学的証拠を用意したり、医師や弁護士による意見書を添えるなどの必要があります。
一般論としては、異議申立てで後遺障害等級が変更される確率は低いですが、新たな医学的証拠などを添付して再審査を求めることで、認定結果が覆るケースもあります。
4.脊髄損傷の後遺障害認定に必要な診断書・検査内容と医師の所見
交通事故による脊髄損傷で後遺障害認定を受けられるかどうかは、医師が作成する診断書と検査結果の内容によって左右されます。
実際、症状が残っていても、診断書の記載や検査結果が不十分な場合、後遺障害非該当や、想定より低い等級にとどまってしまうケースも少なくありません。
特に重要なのが、MRIや神経学的検査による客観的な所見です。
これらの検査結果がなければ、症状があっても医学的に裏付けられず、後遺障害として認定されないことがあります。
また、診断書に記載される医師の所見次第で、後遺障害等級が大きく変わる点にも注意が必要です。
5.自賠責保険と保険会社の対応|脊髄損傷はどこまで認められるか
交通事故による脊髄損傷で補償を受ける際、自賠責保険と任意保険会社がどこまで損害を認めるのかは、被害者にとって非常に重要なポイントです。
実務上は、
「症状があるのに認められない」
「後遺障害等級が想定より低い」
といったトラブルが多く発生します。
ここでは、自賠責保険の役割と保険会社の対応の実態、そしてなぜ認められないケースがあるのかを解説します。
(1) 自賠責保険とは|脊髄損傷で請求できる補償の範囲
自賠責保険は、すべての自動車・バイクに加入が義務づけられている保険で、交通事故被害者に対する 最低限の補償 を目的としています。
脊髄損傷の場合、自賠責保険では主に次の補償が対象となります。
- 治療費・入通院慰謝料・休業損害などの傷害部分の損害
- 後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
ただし、自賠責保険には 後遺障害等級ごとに支払限度額 が定められており、脊髄損傷のような重い後遺症では、補償額が実際の損害に比べて不足するケースが多いのが実情です。
(2) 脊髄損傷は自賠責保険でどこまで認められるのか
自賠責保険では、脊髄損傷が客観的資料によって裏付けられているかどうかが支払いの前提となります。
認定されるためには、
- 事故と症状との因果関係が明確であること
- 症状が将来にわたって残存していること
- MRIなどの検査結果や医師の所見がそろっていること
が必要です。
一方で、
- 「画像上、明確な損傷が確認できない」
- 「症状が医学的に説明できないと判断された」
といった理由で、脊髄損傷と診断されていても非該当と判断されるケースもあります。
(3) 保険会社(任意保険)の対応と注意すべきポイント
任意保険会社は、自賠責保険で認定された等級を前提に、独自の基準で賠償額を算定・提示してきます。
実務上、保険会社の対応として問題になることが多いのが、
- 労働能力喪失率や喪失期間を限定した逸失利益の提示
- 「症状が軽い」「日常生活に支障が少ない」との主張
- 治療費の早期打ち切り要請
といったケースです。
保険会社は、支払額を抑える立場にあるため、被害者に有利な判断を自発的に行うことはほとんどありません。
(4) 脊髄損傷が認められないケースと正当な補償を受けるためのポイント
脊髄損傷で補償が十分に認められない背景には、いくつか共通する理由があります。
例えば、
・診断書の記載内容が抽象的で、症状の程度が具体的に示されていない
・MRIや神経学的検査による客観的所見が不足している
・事故と症状との因果関係が弱いと判断されてしまう
・日常生活や労務への影響が十分に伝わっていない
といった点が重なると、実際には重い症状が残っていても、後遺障害非該当や、低い等級にとどまってしまうケースがあります。
そのため、正当な補償を請求するためには、必要な検査を適切な時期に受け、症状や生活上の支障が診断書に正確に反映されているかを確認することが重要です。
また、保険会社からの提示をそのまま受け入れず、内容が妥当かどうかを慎重に判断する姿勢も欠かせません。
(5) 弁護士に相談することでできること
交通事故・脊髄損傷に詳しい弁護士に相談することで、
- 自賠責保険への適切な後遺障害申請
- 保険会社との交渉・示談対応
- 認定結果に納得できない場合の異議申立て
- 裁判基準を前提とした賠償請求
といったサポートを受けることができます。
保険会社の提示額が適正かどうかを判断するためにも、一度専門家に相談することを強くおすすめします。
6.交通事故による脊髄損傷の慰謝料・逸失利益|請求額が変わる分岐点
なぜ後遺障害等級によって「数百万円変わる」と言われるのか。
その理由は、後遺障害慰謝料の基準と、後遺障害逸失利益の計算方法にあります。
⑴ 脊髄損傷で認定される後遺障害慰謝料・損害賠償金の相場と算定基準
交通事故の慰謝料には、大きく分けて3つの基準があります。
・自賠責基準:最低限の補償。
・任意保険基準:保険会社が独自に定める基準。
・弁護士基準(裁判基準):裁判所が採用している基準(最も高額)。
例えば、後遺障害の等級が12級である場合、自賠責基準では慰謝料が94万円ですが、弁護士基準では290万円と、基準が違うだけで金額が跳ね上がります。
脊髄損傷のような重い障害では、その差はさらに広がります。
⑵ 後遺障害逸失利益の計算の考え方|等級・年収・年齢ごとの増減額例
逸失利益とは、「事故がなければ将来得られたはずの収入」のことです。
計算式は以下の通りです。
逸失利益 = 基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(原則67歳まで)に対応する係数
ここで重要なのが「労働能力喪失率」です。
次のとおり、このパーセンテージは等級によって大きく異なります。
・第1級~3級:100%喪失(全く働けない)
・第9級:35%喪失
・第12級:14%喪失
例えば、36歳で年収500万円の方で、労働能力喪失期間に対応する係数を便宜上20とした場合,次のとおり,等級によって後遺障害逸失利益の金額には大きな差が生じます。
・第1級~3級:500万円×100%×20=1億円
・第9級:500万円×35%×20=3500万円
・第12級:500万円×14%×20=1400万円
⑶ 等級の分岐点:賠償が数百万円変わる認定・症状の境界線
争点になりやすいのが、9級(労務が相当制限される)と12級(頑固な症状)の境界線です。
画像上の明確な損傷所見の有無や、神経学的検査の結果が分岐点となります。
また,介護が必要か否か(1・2級かそれ以外か)の境界線は、(非常に高額となる)将来の介護費用が認定されやすくなるか否かに関わるため、極めて重要です。
7.交通事故の脊髄損傷は弁護士に相談すべき理由|法律事務所選びのポイント
脊髄損傷の事案は専門性が高く、保険会社との交渉を被害者自身で行うのは非常に困難です。
⑴ 弁護士に依頼するタイミングと費用|無料相談・事務所選び
依頼のタイミングは、事故直後または治療中の早い段階がベストです。
適切な検査を受けるアドバイスができるからです。
多くの法律事務所や弁護士法人では、交通事故の無料相談を実施しています。
費用についても「弁護士費用特約」を利用すれば実質0円になる場合が多く、特約がない場合でも、着手金無料で賠償金獲得後の後払い(成功報酬)とする事務所が増えています。
⑵ 交通事故・バイク事故対応で弁護士が行う交渉や裁判サポート事例
弁護士は、被害者の代理人として以下のサポートを行います。
・医師に対して診断書の作成を依頼する際のアドバイス等
・保険会社からの治療費打ち切りへの対応
・適正な後遺障害等級の申請手続き
・弁護士基準を用いた賠償金の増額交渉
⑶ 弁護士による高額解決事例
実際、弁護士が介入することにより、高額で解決できた事例は珍しくありません。
弊所においても、弊所弁護士が解決した「交通事故により脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例」を紹介していますので、ご参照ください。
8.脊髄損傷後の生活|介護・歩行困難・将来に必要な補償と支援
賠償金の問題だけでなく、被害者とその家族は、これからの生活にどう向き合うかという課題も抱えます。
⑴ リハビリテーション・治療法と回復の可能性
脊髄の神経は一度損傷すると完全な修復は難しいとされていますが、近年の再生医療の研究や、専門的なリハビリによって、機能の改善が期待できるとされています。
残された機能を最大限に活かすためのリハビリは非常に重要です。
具体的な治療方針やリハビリ計画については、必ず主治医の先生とよく相談してください。
⑵ 介護・車椅子・生活補償|被害者と家族の悩みへの対応策
車椅子生活になる場合、自宅のバリアフリー化や、介護用ベッドの購入などが必要になります。
これらの費用も、必要性・相当性が認められれば損害賠償として請求可能です。
また、家族の悩みを軽減するためにも、利用できる公的支援や補償内容も把握しておくことが大切です。
⑶ 病院・専門医の選び方と将来の生活設計
脊髄損傷の治療・リハビリに特化した病院や専門医を選ぶことは、その後の回復に影響します。
また、獲得した賠償金を将来の生活費や治療費としてどう管理していくかも含めた生活設計が求められます。
9.まとめ|バイク事故の脊髄損傷被害にどう向き合うか
バイク事故による脊髄損傷は、被害者の方の人生を一変させる重大な出来事です。
身体的な苦痛に加え、将来への不安は計り知れません。
しかし、適切な等級認定を受け、正当な賠償(慰謝料・逸失利益・介護費用など)を獲得することで、今後の生活の基盤を整えることは可能です。
保険会社の提示額を鵜呑みにせず、弁護士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。
優誠法律事務所では、脊髄損傷を含めた交通事故被害の相談を随時受け付けております。
無料相談も可能ですので、お気軽にご連絡ください。
投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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