Author Archive
高速道路の過失割合まとめ|合流事故・車線変更・追突事故の基準を解説
お盆や年末年始の帰省、休日のレジャーや日々の業務など、長距離移動に欠かせない高速道路。
交差点や急なカーブをなくしたり、対向車線との間に中央分離帯を設けてあったりと、高速道路は車の流れがスムーズになるように設計されています。
しかし、その一方で、制限速度が高く設定されていることや、つい速度が出やすくなってしまうことから、ひとたび交通事故が起こってしまったときの被害の大きさは、一般道路とは比較にならないほど甚大なものになる危険があります。
このように、高速道路での事故は、車両の大破、生命に対する危機や重篤な後遺障害を伴うケースが多く、損害賠償金も高額になりがちです。
それゆえに、相手方の保険会社から一方的に提示される過失割合に納得がいかない被害者の方は多くいらっしゃるものと思われます。
実は、保険会社が提示する過失割合は「絶対的な決定事項」ではありません。
本記事では、高速道路における過失割合の決まり方から、実際の算定基準、そして不利な過失割合を示された場合に適正な割合に修正するための具体的なポイントまでを詳しく解説します。
1.高速道路とは何か~高速道路における特例について~
高速道路とは、高速自動車国道と自動車専用道路をいいます。
高速道路は、一般道路と分離されており、立体交差にしたり、カーブをゆるくするなど、ルールやマナーを正しく守れば安全で快適に走行できるように設計されています。
一般道路については、人や車両の混在が予定されており、人と車両または車両同士の接触を回避することが中心に考えられています。
一方、高速道路については、一般道路と異なり自動車のみの通行を予定する道路であり、一般道路よりも高速での走行が許容されていることから、例えば、次のような特例が定められています。
⑴ 最低速度を維持する義務(道路交通法75条の4)
標識や標示で、最低速度が指定されているところでは、最低速度に達しない速度で運転してはならない。
⑵ 横断・転回・後退の禁止(道路交通法75条の5)
本線車道では、中央分離帯を横切ったり、転回したり、後退したりしてはならない。
⑶ 本線車道通行車の本線車道進入車に対する優先(道路交通法75条の6第1項)
本線車道に入ろうとする自動車は、当該本線車道を通行する自動車の進行を妨害してはならない
⑷ 本線車道出入時の加速車線・減速車線通行義務(道路交通法75条の7)
本線車道に入ろうとするときは、加速車線がある場合、加速車線を通行しなければならない。
本線車道から出ようとするときは、減速車線がある場合、減速車線を通行しなければならない。
⑸ 駐停車の原則的禁止(道路交通法75条の8第1項)
高速道路では、駐車や停車をしてはならない。ただし例外はあります(危険防止や故障のため停止するなど)。
⑹ 燃料・冷却水・オイルの量、貨物の積載状態を点検する義務(道路交通法75条の10)
高速道路を走行するときは、燃料切れや冷却水、エンジンオイルの不足などにより停止することのないよう点検しなければならない。
積載している物については、転落・飛散しないように点検しなければならない。
⑺ 本線車道等に停止したときに停止表示を行う義務(道路交通法75条の11第1項)
故障などで路肩や路側帯に駐車した場合は、後続車の運転者に停止していることがわかるように表示しなければならない。
⑻ 本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(道路交通法75条の11第2項)
故障などにより運転することができなくなったときは、速やかに自動車を安全な場所へ移動させるために必要な措置をとらなければならない。
2.「別冊判例タイムズ39号」の基準と高速道路上における四輪車同士の事故
交通事故における過失割合を検討するにあたっては、実務上、「別冊判例タイムズ39号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」における基準が用いられています。
高速道路上の事故については、「第7章 高速道路上の事故」として、一般道路上の事故とは別に過失割合の基準が定められています。
これは、高速度での走行が許容されている高速道路においては、法に従って走行することが強く要求されることから、法に従わないで走行した場合の過失を一般道路の場合よりも重く評価しているためです。
もっとも、速度違反については、事実上、車線の流れに沿って走行することが一般道路以上に要請されることもあるため、その過失相殺率に与える影響は慎重に評価する必要があるとされています。
また、高速道路上の交通事故であっても、渋滞などで高速走行が不可能な道路状況下で発生した事故については、そのまま適用せず、事案に応じて適宜修正して適用する必要があります。
以下、高速道路上における四輪車同士の事故に関する基準を紹介いたします。
⑴ 合流地点における事故
【基本過失割合】 本線車30% : 合流車70%
先程ご紹介したとおり、本線車道に入ろうとする自動車(合流車)は、当該本線車道を通行する自動車(本線車)の進行を妨害してはならないという規定があります(道路交通法75条の6第1項)。
他方、本線車としても、減速等の措置をとることによって合流車との衝突を回避することが可能であるため、上記割合とされています。

⑵ 進路変更に伴う事故
① 走行車線から追越車線へ進路変更する場合
【基本過失割合】 後続直進車20% : 進路変更車80%
追越車線を走行する後続直進車の速度は、通常、走行車線を走行する自動車よりも高速です。
そのため、走行車線から追越車線へ進路変更する自動車は、一層の注意をすべきであるという観点から、上記割合とされています。

② その他の場合
【基本過失割合】 後続直進車30% : 進路変更車70%
追越車線から走行車線に進路変更する場合や、片側3車線以上の道路で走行車線から走行車線に進路変更する場合に伴う事故の場合です。
ここでの基本過失割合は、一般道路における進路変更に伴う事故と同様、30%(後続直進車):70%(進路変更車)とされています。

⑶ 追突事故
① 過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故
【基本過失割合】 追突車60% : 被追突車40%
被追突車に何らかの落ち度が認められる事情(事前の整備不良によるガス欠・エンジントラブルなど)により運転に支障を来して駐停車し、これに前方不注意の追突車が追突した場合です。
高速道路においては、駐停車の原則的禁止(道路交通法75条の8第1項)や本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(道路交通法75条の11第2項)があり、一般道路よりも駐停車による事故発生の危険が高いことから、駐停車中の被追突車であっても過失が相当大きいものとされています。

② 過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故(駐停車後の過失あり)
【基本過失割合】 追突車80% : 被追突車20%
被追突車が自己に過失のない先行事故によって本線車道等に駐停車した後、退避や停止表示器材の設置について過失がある場合です。
被追突車には駐停車したこと自体については過失がないため、上記①(過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故)よりも、被追突車の過失割合は小さいものとされています。
③ 過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故(駐停車後の過失なし)
【基本過失割合】 追突車100% : 被追突車0%
被追突車が自己に過失のない先行事故によって本線車道等に駐停車した後、退避や停止表示器材の設置について過失がない場合です。
被追突車には、駐停車したことについて過失はなく、駐停車後の対応にも過失はないため、被追突車の過失は0%とされています。
④ 路肩等に駐停車中の自動車に対する追突事故
【基本過失割合】 追突車100% : 被追突車0%
路肩等は、原則として車両の通行が禁止されている部分です。
そのため、走行中の追突車が、路肩等に駐停車中の被追突車に追突した場合には、全て追突車の責任であり、被追突車の過失は0%とされています。

3.【重要】基本割合だけで諦めないための「修正要素」
以上が、各事故類型の基本過失割合になります。
もっとも、基準は基本過失割合だけでなく、事故態様ごとによって設けられている「修正要素」との組み合わせによって、過失割合が決定されます。
そのため、保険会社から、「基本過失割合」がそのまま提示された場合には、「修正要素」を考慮すべきケースであるかについては検討が必要です。
例えば、走行車線を走行していた四輪車(A)が、追越車線へ進路変更したことによって、後方から追越車線を走行してきた四輪車(B)と衝突した事故を例に挙げます。
先程ご紹介したとおり、この場合の基本過失割合は後続直進車20%(B):進路変更車80%(A)ですが、Aが「ウインカーを出さずに、進路変更禁止区間で進路変更していた」場合、修正要素として「合図なし」-10%、「進路変更禁止区間」-10%の減算修正がなされます。
これにより、Bの過失割合は0%(基本過失割合20%-修正要素20%)となります。
このように、修正要素の存在を立証することができれば、過失割合を有利に修正することが可能となるのです。
4.過失割合を覆すためのカギは「客観的な証拠」
保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合、被害者自身が「相手の方が悪かった」と口頭で主張しても、残念ながら保険会社が譲歩することは少ないです。
修正要素の主張をするにあたっては、客観的な証拠が不可欠です。
強力な武器となるのが「ドライブレコーダーの映像」です。
ウインカーのタイミング、相手車両の速度、車線変更を開始した位置などを詳細に分析(コマ送りでの秒数計算など)することで、修正要素を客観的に証明できます。
また、警察が作成する「実況見分調書」も過失の立証において非常に重要です。
5.まとめ
保険会社から提示される過失割合は、必ずしも最終決定ではありません。
相手の不当な主張を覆し、適正な過失割合と賠償金を獲得するにあたっては、法律の専門家である弁護士のサポートが有効です。
弁護士に依頼することで、客観的な証拠(ドライブレコーダーや実況見分調書など)の分析から、煩わしい保険会社との交渉まで任せることができます。
これにより、治療に専念できる環境が整うだけでなく、最終的な賠償金が「裁判所基準(弁護士基準)」で計算されるため、慰謝料等が大幅に増額する大きなメリットがあります。
一度示談書にサインをしてしまうと後から覆すことは極めて困難になるため、サインをする前にご相談いただくことが重要です。
ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、実質的な費用負担なしで弁護士に依頼できるケースがほとんどです。
高速道路での事故は被害が大きくなりやすいため、一人で抱え込まず、ぜひお早めに当事務所の無料相談をご利用ください。
全国からご相談いただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
手首(手関節)の可動域制限は何級?橈骨遠位端骨折の後遺障害と慰謝料を弁護士が解説
交通事故で橈骨遠位端骨折の怪我を負い、治療が終わっても、手首(手関節)が思うように曲がらない、反らせない・・・。
こうした「可動域制限」が残ると、後遺障害等級が認定される可能性があります。
ただし、「手首の動く範囲が狭くなっていれば、等級が認定される」というわけではありません。
可動域制限で後遺障害の認定を受けるためには、その原因となる骨や関節の損傷が、X線・CT・MRIなどの画像で確認できること(画像所見による裏付け)が重要です。
この記事では、橈骨遠位端骨折による手関節(手首)の可動域制限について、等級の認定基準、画像所見の重要性、測定や診断書の注意点、慰謝料・逸失利益の考え方を解説します。
併せて、当事務所の弁護士が担当した10級10号の事例もご紹介します。
この記事のポイント
- 手関節の可動域制限は、健側(ケガをしていない側)と比べて、可動域が1/2以下なら10級10号、3/4以下なら12級6号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
- 可動域が制限されているだけでは後遺障害は認定されません。制限の原因となる器質的な損傷を、X線・CT・MRIなどの画像所見で裏付ける必要があります。
- 画像を撮るだけでなく、主治医に画像所見を確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。
- 10級10号の後遺障害慰謝料は、弁護士基準で550万円(自賠責基準は190万円)です。慰謝料とは別に、逸失利益も請求できます。
1.手関節の可動域制限とは
⑴手首の構造と動き
手関節(手首の関節)は、前腕の橈骨(親指側の骨)と、手の付け根にある手根骨との間の関節です。
手首は、次のような方向に動きます。
| 動き | 内容 | 参考可動域角度 |
| 屈曲(掌屈)(主要運動) | 手のひら側へ曲げる動き | 90度 |
| 伸展(背屈)(主要運動) | 手の甲側へ反らす動き | 70度 |
| 橈屈(参考運動) | 親指側へ倒す動き | 25度 |
| 尺屈(参考運動) | 小指側へ倒す動き | 55度 |
後遺障害の認定では、原則として、主要運動である屈曲と伸展の可動域が評価の中心になります。
⑵橈骨遠位端骨折で可動域制限が残る主な原因
橈骨遠位端骨折は、手首の可動域制限の原因として代表的な骨折です。
治療後に可動域制限が残る原因には、次のようなものがあります。
- 骨が変形したままくっついた(変形治癒)、または骨が短くなってしまった
- 関節の面にずれ(段差やすき間)が残った
- 骨がうまくくっつかなかった(癒合不全)
- 関節の周りの組織が固くなった(拘縮)
- 靱帯やTFCC(三角線維軟骨複合体)などの損傷
2.手関節の可動域制限で認定される後遺障害等級
手関節の機能障害は、次の3つの等級に区分されます。
| 等級 | 認定基準 | 可動域の目安(健側との比較) | 後遺障害慰謝料(自賠責基準)※ | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) |
| 8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | ほとんど動かない(強直またはそれに近い状態) | 331万円 | 830万円 |
| 10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 1/2以下に制限 | 190万円 | 550万円 |
| 12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 3/4以下に制限 | 94万円 | 290万円 |
※自賠責基準は、2020年4月1日以降の事故の場合です。
手関節では、屈曲と伸展を合計した可動域を、健側と比較します。
たとえば、健側が参考可動域角度どおり(屈曲90度+伸展70度=160度)であれば、合計が120度以下で12級6号、80度以下で10級10号が目安になります。
実際には、健側の実測値と比較して判断されます。
3.可動域制限だけでは等級は認定されない:画像所見による裏付けが必要
⑴「可動域制限あれば必ず認定される」は誤解です
「手首が動かないのだから、後遺障害に認定されるはずだ」と考える方は少なくありません。
しかし、可動域制限の後遺障害では、可動域が制限されているという事実だけでは足りず、制限の原因となる器質的な損傷(骨や関節などの物理的な損傷や変化)が、画像などで医学的に証明できることが求められます。
痛みや、動かすことへの不安などで動かせない場合や、画像で原因が確認できない場合には、可動域制限そのものは評価されず、痛みやしびれなどの神経症状(14級9号・12級13号)にとどまる可能性があります。
| 認定されるもの | 後遺障害慰謝料(弁護士基準) | 労働能力喪失率 |
| 手関節の機能障害 10級10号 | 550万円 | 27% |
| 神経症状 14級9号 | 110万円 | 5% |
このように、可動域制限が評価されるかどうかで、賠償額は大きく変わります。
⑵画像検査で確認される所見の例
橈骨遠位端骨折では、次のような検査で、可動域制限の原因となる所見を確認します。
どの検査が必要かは、骨折の状態や症状によって異なり、主治医の判断になります。
| 検査 | わかること | 確認される所見の例 |
| X線(レントゲン) | 骨の位置や形、癒合の状態、関節の隙間など | 橈骨の短縮や傾きの変化(変形治癒)、癒合不全、関節面の不整、外傷後の関節の変化 |
| CT | 骨や関節面の細かい形を、立体的に確認できる | 関節面の段差やすき間、骨片のずれ、癒合の程度 |
| MRI | 靱帯・軟骨・腱など、骨以外の組織や、骨の内部の状態 | TFCC損傷、手根骨どうしをつなぐ靱帯の損傷、骨の内部の変化 |
なお、拘縮のように画像に写りにくい変化もあります。
その場合は、他の所見と併せて、可動域制限の原因を説明していく必要があります。
⑶画像所見を医師に確認してもらうことが重要
画像を撮影しただけでは十分とはいえません。
画像に写っている所見が、可動域制限の原因であることを、主治医に確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。
次の点に注意しましょう。
- 症状固定の前に、主治医に確認する:可動域制限の原因が、画像でどのように確認できるかを、症状固定の前に相談します。
- 症状固定の時期に近い画像を撮影してもらう:骨癒合の状態、変形、関節面の状態などが、現在どうなっているかを確認できる画像が必要です。事故直後や手術前後の画像とあわせて、経過を時系列で示せるようにしておきます。
- 画像所見を診断書に具体的に記載してもらう:後遺障害診断書の「他覚症状および検査結果」欄に、骨折部位、癒合の状態、変形の有無や程度、関節面の状態など、可動域制限の原因となる所見を具体的に書いてもらいます。
- 画像を申請書類に添付する:後遺障害等級の申請では、診断書だけでなく、X線・CT・MRIなどの画像(CD-Rなど)を提出します。相手方保険会社による事前認定では、提出される資料が必要最低限にとどまる可能性があるため、被害者請求を検討しましょう。
4.可動域の測定方法と診断書の注意点
⑴測定は「他動値」が原則、健側との比較で評価
可動域は、次の点に注意して測定します。
- 他動値が原則:医師や理学療法士が手首を動かしたときの角度(他動値)が、評価の基準になります。自分で動かした角度(自動値)は、運動神経の麻痺や腱の断裂などで動かせない場合など、例外的に用いられます。
- 角度計で測定:角度計(ゴニオメーター)を用いて、決められた方法で測定します。
- 健側と比較する:ケガをしていない側の手首も測定し、患側と比較します。
主要運動の可動域が基準をわずかに上回る場合には、参考運動(橈屈・尺屈)も考慮され、参考運動が基準以下に制限されていれば、等級が認められることがあります。
そのため、参考運動も測定してもらうことが大切です。
⑵測定値の食い違いに注意
後遺障害診断書の測定値が、治療中の診療録や、保険会社から主治医への医療照会の回答に記載された測定値と食い違っていると、保険会社が測定値の信頼性を争い、示談が進まなくなることがあります。
診断書を受け取ったら、提出の前に、測定方法(角度計を使ったか)や測定値を確認しましょう。
5.10級10号の賠償額はいくら?
手関節の可動域制限で10級10号が認定されると、次のような賠償を請求できます。
| 項目 | 内容 | 10級10号の目安 |
| 後遺障害慰謝料 | 自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)がある | 550万円(弁護士基準) |
| 逸失利益 | 基礎収入×労働能力喪失率(27%)×ライプニッツ係数 | 年収400万円、喪失期間20年((47歳)の場合:約1,607万円※ |
| 自賠責保険からの支払い | 慰謝料と逸失利益を合わせた限度額 | 461万円(自賠責基準は190万円) |
※逸失利益は、400万円×0.27×14.8775(20年のライプニッツ係数)で計算した例です。
実際の労働能力喪失期間は、症状固定時の年齢によって変わります。
自賠責保険からは、等級ごとに定められた限度額(10級は461万円)が支払われます。
弁護士に依頼した場合は、裁判所基準(弁護士基準)と自賠責限度額の差額を、加害者側の任意保険会社に請求します。
6.解決事例:橈骨遠位端骨折で10級10号が認定され、合計1,561万円を獲得したケース
※この事例は、当事務所の弁護士が担当した事例です。個人が特定されないよう、内容を一部編集しています。結果は事案によって異なり、同様の結果をお約束するものではありません。
⑴事案の概要
| 項目 | 内容 |
| 事故の状況 | 福岡県内の交差点で横断歩道を歩行中に、右折してきたタクシーと衝突 |
| ケガ | 橈骨遠位端骨折など |
| 治療 | 複数の医療機関を受診(入院含む)して約6か月後に症状固定 |
| 後遺障害 | 手関節の可動域制限について10級10号が認定 |
| 主な争点 | ①可動域の測定値の食い違い ②逸失利益(60歳以降の基礎収入) |
| 結果 | 自賠責保険(被害者請求)から461万円、訴訟上の和解で1100万円、合計1561万円(傷害部分は約180万円で先行示談しているので、賠償金合計額は1740万円) |
⑵争点1:可動域の測定値の食い違い
本件では、10級10号の後遺障害認定を受けた後、加害者側の任意保険会社に損害賠償を請求しましたが、保険会社は5か月間、具体的な回答をしませんでした。
その理由とされたのが、可動域の測定値の食い違いです。
保険会社が治療中に主治医へ行った医療照会への回答書に記載された測定値と、後遺障害診断書の測定値が異なるため、慎重に判断する必要がある、というものでした。
そこで主治医に確認したところ、医療照会に回答した際の測定は目測で、器具を使って正確に測定したのは後遺障害診断書を作成したときだけであり、診断書の測定値が正確である、との回答を書面で得ることができました。
それでも保険会社が支払いに応じなかったため、訴訟を提起しました。
傷害部分は先に示談が成立していたため、訴訟では、後遺障害部分(逸失利益と後遺障害慰謝料など)のみを請求しました。
⑶争点2:逸失利益(60歳以降の基礎収入)
訴訟では、保険会社側から、逸失利益について「60歳以降の基礎収入を下げるべきだ」との反論がありました。
最終的に、裁判所が60歳以降については平均賃金を基礎収入として採用して和解を促すこととなり、1,100万円で訴訟上の和解が成立しました。
⑷結果
- 自賠責保険への被害者請求(訴訟前):461万円(10級の後遺障害分)
- 訴訟での和解:1,100万円
- 合計:1,561万円
なお、この事案は事故当時の法定利率(年5%)で逸失利益を計算しました。
2020年4月1日以降の事故に適用される現在の年3%で計算し直すと、逸失利益は約1,591万円になります(事故当時の年5%では約1,352万円)。
⑸この事例のポイント
- 可動域の測定値は、測定方法(角度計か目測か)や測定した時期まで含めて、診療録・診断書・回答書の間で整合していることが重要です。食い違いがある場合は、主治医に確認し、書面で明確にしておくことが有効です。
- 後遺障害の等級が認定された後でも、逸失利益の基礎収入や喪失期間をめぐって争いになることがあります。
- 認定後も交渉が進まない場合は、訴訟を選択することもあります。
7.保険会社が可動域の測定値を争ってきたときの対処法
- 主治医に確認する:測定の方法(角度計か目測か)、他動か自動か、測定した日、測定した人(医師か理学療法士か)を確認します。
- 書面で明確にしてもらう:食い違いの理由や、どの測定値が正確かを、診断書や回答書などの書面にしてもらいます。
- 診療録・リハビリ記録を確認する:可動域の経過を、時系列で確認します。
- 画像所見を整理する:可動域制限の原因となる器質的な損傷が、画像でどのように確認できるかを整理します。
- 異議申立てや訴訟を検討する:後遺障害の認定結果に不服がある場合は、異議申立てができます。また事案によっては訴訟も選択肢になります。
8.後遺障害の認定に向けて治療中に気をつけたいこと
- 通院とリハビリを続ける:医師の指示に従い、必要な治療とリハビリを継続します。
- 早めに画像検査を受ける:症状や骨折の状態に応じて、X線に加えて、CTやMRIが必要かどうかを主治医に相談します。
- 症状固定の前に主治医と相談する:後遺障害診断書に、可動域の測定値と画像所見を、それぞれ記載してもらいたい旨を伝えます。
- 健側も測定してもらう:可動域は、健側との比較で評価されます。
- 保険会社から治療費の打ち切りを打診されてもすぐに応じない:症状固定の時期は、主治医が医学的に判断するものです(ただ、訴訟では、裁判官が提出される証拠から妥当な治療期間を判断します。)。保険会社が早期に治療費を打ち切ろうとすることがありますが、症状が残存している場合には、主治医に相談して症状固定時期についての見解を示してもらい、保険会社と交渉するべきといえます。
9.弁護士に依頼するメリット
- 診断書と画像所見の整合を確認できる:弁護士が、後遺障害診断書に可動域の測定値と画像所見が適切に反映されているかを確認して、必要に応じて医師に追記・修正を依頼します。
- 被害者請求を任せられる:弁護士が、画像や必要書類をそろえて、後遺障害等級の申請を被害者請求で行います。
- 認定結果に不服があるときに異議申立てができる:弁護士が、必要に応じて新たな医証を取り付け、異議申立てを行います。
- 逸失利益を適切に主張できる:弁護士が、適切な逸失利益を算定し、後遺障害による仕事や収入への影響を具体的な資料で主張します。
- 示談交渉や訴訟を任せられる:保険会社とのやり取りを全て弁護士に任せることで、負担が減り、治療に専念できます。
なお、弁護士に依頼すれば必ず後遺障害等級が認定されるというわけではなく、結果は事案によって異なりますが、相手方保険会社に手続きを任せる事前認定よりは認定される可能性が上がると考えられます。
ご自身やご家族が加入している保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、弁護士費用や法律相談料を保険会社が負担してくれます。
一般に、弁護士費用は300万円、法律相談料は10万円までが上限とされていますので(契約内容により異なります)、多くの場合で自己負担をすることなく、弁護士に依頼することができます。
10.よくある質問
Q1. 手首の可動域が制限されていれば、必ず後遺障害に認定されますか?
いいえ、必ずではありません。可動域制限の原因となる骨や関節の損傷が、X線・CT・MRIなどの画像で確認できることが重要です。画像で原因が確認できない場合は、可動域制限が評価されず、神経症状にとどまる可能性があります。
Q2. 可動域の制限が健側の1/2以下にならない場合は、どうなりますか?
1/2以下でなくても、健側の3/4以下に制限されている場合は、12級6号が認定される可能性があります。また、主要運動の可動域が基準をわずかに上回る場合には、参考運動(橈屈・尺屈)も考慮されます。
Q3. 自分で動かせる範囲と、医師が動かしたときの範囲では、どちらで評価されますか?
原則として、医師などが動かしたときの角度(他動値)で評価されます。運動神経の麻痺や腱の断裂などで自分では動かせない場合には、自動値が用いられることがあります。
Q4. リハビリを頑張って可動域が改善すると、等級に不利になりますか?
後遺障害の認定は、症状固定時の状態で判断されます。可動域を改善するためのリハビリは、治療として大切です。等級のことを考えて、リハビリを控えたり、測定のときにわざと動かさなかったりすることは避けてください。医師の指示に従って治療を続けることが、結果として適切な評価につながります。
Q5. 診断書の測定値が、保険会社の資料と違うと言われました。どうすればよいですか?
まず、主治医に測定の方法や時期を確認しましょう。その上で、どの測定値が正確なのかを、書面で明確にしてもらうことが有効です。対応に迷う場合は、早めに弁護士へご相談ください。
11.まとめ
- 手関節の可動域制限は、健側と比べて1/2以下で10級10号、3/4以下で12級6号の後遺障害等級が認定される可能性があります。
- 可動域が制限されているだけでは認定されず、X線・CT・MRIなどの画像所見による裏付けが必要です。
- 画像所見は、主治医に確認してもらい、後遺障害診断書に反映してもらうことが大切です。
- 10級10号では、後遺障害慰謝料(弁護士基準550万円)に加えて、逸失利益も請求できます。
手首の可動域制限や後遺障害の認定でお悩みの方は、弁護士法人優誠法律事務所にご相談ください
橈骨遠位端骨折で手首が動かしにくい方、後遺障害の等級認定に不安のある方、保険会社の提示額に疑問のある方は、お気軽にご相談ください。
【関連記事】
投稿者プロフィール

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
【弁護士が解説】会社役員の休業損害・逸失利益とは?役員報酬の「労務対価部分」の判断基準と裁判例
今回は、事故による損害賠償請求において争点となりがちな、「会社役員の休業損害と逸失利益」について、裁判例も交えて掘り下げます。
役員の休業損害・逸失利益を請求する上では、「労務対価部分」という言葉がキーワードとなり、いかにその割合が大きいことを立証できるかが問題になります。
保険会社は、杓子定規に「役員報酬の場合は減収はない」として裁判外では役員の休業損害・逸失利益を認めないことが多いため、これらを認めさせるためには裁判にせざるを得ないことも多いです。
そして、裁判になった場合には、労務対価部分についての主張や立証が尽くされているか否かで結論が大きく変わることもありますので、本記事を参考にしていただければと思います。
1.休業損害・逸失利益とは
事故によって怪我をしてしまって仕事を休んだ場合、収入が減ってしまうことがあります。
これを補償するのが、「休業損害」です。
休業損害は、症状固定や治癒までの通院期間の減収を補償するものですが、後遺障害が残ったり、被害者が亡くなった場合は、その後も収入の減少が生じてしまうことになります。
この部分を補償するのが、「後遺障害逸失利益」、「死亡逸失利益」です。
2.会社役員の休業損害・逸失利益の問題点
被害者が会社役員の場合、休業損害・逸失利益の部分が大きな争点となるケースが多くありますが、それはなぜでしょうか。
理由として挙げられるのが、役員報酬額についての証拠がサラリーマンの場合と異なり、曖昧な場合がある、ということです。
サラリーマンの場合、収入額は事故前年の源泉徴収票で明確ですし、休業した日についても勤務先に休業損害証明書を記載してもらうことで明らかになります。
これに対して、会社役員の場合は、特に個人事業主と変わらないような業態の小規模法人では確定申告をしていないケースなどもあり、これらに関する資料が曖昧なものになってしまう場合があります。
確定申告書などがあったとしても、小規模な会社などでは役員報酬を自由に決められるため、法人税負担軽減のために役員報酬を高額に設定していることもあります。
また、役員報酬中には、労務対価部分のみではなく、実質的な利益配当部分が含まれていることもあります。
そのため、休業損害・逸失利益の算定の基礎とすべき金額をいくらとするかが問題になります。
3.会社役員の休業損害・逸失利益についての実務上の扱い
以上のような問題意識から、会社役員の休業損害・逸失利益については、役員報酬から利益配当の実質を有する部分や法人税負担を軽減する目的で加算されている部分を除いた「労務対価部分」のみを基礎として算定する、という扱いが実務上なされています。
最高裁昭和43年8月2日判決(民集22巻8号1525頁)も、「企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事することができなくなったことによって生ずる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべき」であると判示しています。
したがって、会社役員の休業損害・逸失利益の請求については、役員報酬中の「労務対価部分」がいくらなのか、いかにその割合が大きいことを立証できるか、が問題になります。
4.労務対価部分の判断方法
それでは、役員報酬中の労務対価部分について、何を基準に判断すべきでしょうか。
いわゆる赤い本(平成17年民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準下巻(講演録))においては、裁判官から以下の点が判断要素として示されています。
・会社の規模(及び同族会社か否か等)、利益状況
・当該役員の地位・職務内容
・年齢
・役員報酬の額
・他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額(親族役員と非親族役員の報酬額の差異)
・事故後の当該役員及び他の役員の報酬額の推移
・類似法人の役員報酬の支給状況
以下で、各要素について見ていきます。
⑴ 会社の規模・利益状況
一般に、大企業の雇われ社長であれば労務対価部分が大きく認定される一方、小規模な会社で被害者自身が会社のオーナーである場合は、役員報酬中に利益配当部分が含まれている可能性があると考えられます。
もっとも、会社のオーナーであっても役員報酬に利益配当部分が含まれておらず、労務対価のみを受け取っているというケースも当然あり得るため、他の要素も含めた総合判断が必要になります。
例えば、従業員が長年勤務して実質的なオーナーになった場合は、労務対価部分の割合が大きいこともあると考えられます。
利益状況に関しては、会社の業績が良い場合には役員の報酬が高くても不自然とは言えず、労務対価部分が小さいと判断されることがあります。
また、事故後に会社の利益が減少している場合は、被害者である役員が稼働できなかったことが会社の利益に影響を与えているとして、労務対価部分が大きいと判断されることがあります。
⑵ 当該役員の地位・職務内容
立場上は会社役員ではあるものの、その地位が名目的なものにすぎない場合は、役員報酬が出ていたとしても労務対価部分が認められず、休業損害・逸失利益は認められません。
東京地裁平成12年5月24日判決は、同族会社の監査役の78歳女性について、名目的監査役である疑いが否定できないとして、役員報酬の労務対価部分を認めず、家事労働と年金収入について死亡逸失利益を算定しています。
その他、職務内容が他の従業員とほとんど変わらず報酬額も他の従業員の給与とさほど変わらない場合や、小規模会社で役員が実質的に1人で会社の利益をあげている場合には、労務対価部分が大きいと判断されます。
東京地裁平成28年11月17日判決は、印刷機器販売等会社代表者について、いわゆる一人会社であり、親族が経理事務等を手伝うほかは本人が単独で印刷機器の販売等を行っていたとして、1080万円の役員報酬全額を労務対価部分と認定しています。
⑶ 役員報酬の額
被害者の役員の年齢、経歴、会社の業績等からして役員報酬が高額である場合には、報酬中に利益配当部分が含まれ、労務対価部分の割合は低いと判断されやすくなります。
役員報酬が高額か否かの判断に際しては賃金センサスを参照している裁判例も多く、神戸地裁平成12年2月17日判決は、月額55万円の役員報酬が賃金センサスと比較して高額ではないことも理由として、報酬全額を労務対価部分と認定しています。
⑷ 他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額
例えば、他の役員や従業員と職務内容にほとんど変わりがないにもかかわらず、被害者の役員の報酬が他の役員や従業員よりもはるかに高額である場合は、労務対価部分が小さいと判断されやすくなります。
東京地裁平成12年8月31日判決は、被害者の役員の報酬額が他の役員の報酬や従業員給与と比べて突出していることを理由の1つとして、賃金センサスも参照した上、1800万円ほどの役員報酬のうちの60%を労務対価部分と認定しています。
⑸ 事故後の当該役員及び他の役員の報酬額の推移
事故後に働けなかったことに応じて役員報酬が減額あるいは不支給となっている場合、その部分について労務対価部分がある程度大きいと評価されやすいです。
名古屋地裁平成15年1月17日判決は、1か月30万円の報酬の支払いを受けていた代表取締役が、事故後3か月間報酬の支払いを受けていなかったことを考慮し、全額を労務対価部分と認定しています。
ただし、同族会社などでは、代表者が報酬額や報酬不支給の期間を定めることができることが多いため、実際に休業していないにもかかわらず報酬を不支給とするということがあり得ます。
したがって、実際に休業があったのか、休業と事故に因果関係があるのか、という部分については慎重に判断されます。
⑹ 小括
以上の要素を総合的に考慮して、労務対価部分がどの程度か、という判断がなされます。
事案によって、役員報酬全額が労務対価部分であると判断されることもありますし、役員報酬の50%や70%が労務対価部分と判断されることもあります。
役員としての稼働実績がないケースについては、労務対価部分が認められず、役員報酬に基づく休業損害・逸失利益が認められないこともあります。
5.まとめ
今回は、休業損害・逸失利益の請求にあたって問題になりがちな、会社役員の役員報酬についてご説明いたしました。
上記のとおり、役員報酬のうち、休業損害・逸失利益の算定基礎となるのは労務対価部分のみとする扱いが実務上定着しています。
そして、労務対価部分については、被害者となった役員の職務内容や役員報酬の金額、他の役員や従業員との比較等を総合的に考慮して決定されます。
これら考慮要素に関しての立証を尽くせるか否かで、最終的な休業損害・逸失利益の金額が変わってくることになります。
上記の赤い本の中で裁判官も発言しておられるところですが、会社の実態や被害者である役員の稼働状況等についての立証が必ずしも十分ではないことがあり、そのような場合は金額的に控えめに認定されてしまう場合があるところです。
また、場合によっては被害者である役員ご本人の請求のみではなく、勤務先会社に損失が発生し、会社が主体となって損失分を請求できないか、という問題が生じることもあります。
以上のとおり、役員報酬についての休業損害・逸失利益の請求については、様々な事項をしっかりと主張立証し尽くす必要があるため、ぜひ一度弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は初回無料でお受けしております。
ぜひお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
怪我をしていなくても営業利益の損失(休車損害)を請求できる?~裁判例を交えて解説~
今回は、「休車損害」という損害費目について、裁判例を交えた解説をいたします。
交通事故によって怪我を負い、休業損害が発生した場合、これを請求できることはある程度ご存知の方も多いかと思います。
しかし、交通事故によって怪我を負っていなくても、営業利益の損失(休車損害)を請求できる場合があることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
休車損害は、簡単にいうと、仕事で使用していた車が交通事故によって壊れてしまい、使えなくなった場合に、本来得られるはずだった売上が得られなかったという損害を指します。
休車損害は、物損の1つであるため、怪我をしていることは要件ではありませんので、怪我を負わなかった交通事故で請求することができるのです。
それでは以下の目次に沿って、休車損害について説明いたします。
1.休車損害とは何か
休車損害とは、交通事故により破損した車(以下「事故車」といいます。)を買い替え、または修理をする期間において、事故車による稼働ができなかった場合に、事故車を運行していれば本来得られたであろう利益相当額の損害をいいます。
交通事故により事故車が稼働できなかった場合、通常は、修理期間中または買替期間中は、レンタカーを代車として使用することによって対応できるかと思います。
ですが、許認可の関係がある緑ナンバー(営業ナンバー)の場合はそのような訳にはいかず、レンタカーを代車として使用することはできません。
そのため、休車損害は、主に緑ナンバーの車について問題となります。
具体的には、タクシー、ハイヤー、路線バス、観光バス、他人の荷物を運搬する営業用貨物トラック等です。
このような実情から、休車損害は、裁判所によって、交通事故によって通常発生する損害として認められているのです。
2.休車損害の要件
それでは、この休車損害が認められるためには、具体的に、どのような要件を満たすことが必要になるでしょうか。
まず、①事故車を使用する必要性があることはもちろんですが、②代車を容易に調達することができないことも要件になります。
②が要件である理由は、代車を調達することが容易なのであれば、修理期間中または買替期間中、代車を使用することによって対応すればよいためです。
この点については、前述した緑ナンバー(営業ナンバー)の車両が当てはまります。
もっとも、白ナンバーの車両であっても、代車を調達することが容易ではないような特殊な車両である場合には、この要件に当てはまるといえるでしょう。
また、③遊休車が存在しないことも要件になります。
遊休車というのは聞き慣れない言葉かと思いますが、被害者が保有している車両のうち、事故車以外にも、事故車の代わりとして活用し得る他の車両のことをいいます。
遊休車がある場合、事故車の代わりにこの遊休車を稼働させることで損害発生を回避できます。
そのため、遊休車が存在しないことが要件となるのです。
もっとも、遊休車を保有していたとしても、遊休車を容易に稼働させることが困難である場合にまで、被害者に遊休車をやりくりすることを要求するのは酷です。
そのため、事故車に代わり得る車両を保有していたとしても、実際に当該車両を稼働させることが困難な場合にも、③遊休車が存在しないことの要件は満たされるものと考えられています。
この点に関連する裁判例として、神戸地裁平成15年1月22日判決があります。
タクシーが被害車となったケースですが、次のとおり諸事情を総合考慮し、遊休車を容易に稼働させることが困難であると認定しています。
【神戸地裁平成15年1月22日判決】
「控訴人は、本件事故当時、35台の車両を保有していたところ、1か月ごとに乗務員約78名の乗務予定を稼働可能な全車両にあらかじめ割り当てており、車両の点検整備・修理や乗務予定の者の欠勤のため稼働させることができない車両を除くすべての車両を常時稼働させていることが認められ、この事実によれば、控訴人が休車とされた控訴人車両の稼働を他の車両の運行によって補うことができたとはいえない。」
また、最近の裁判例である大阪地裁令和3年11月12日判決においても、車載クレーン付貨物自動車が被害車となったケースについて、次のとおり諸事情を総合考慮し、遊休車があったと認めることはできないと認定しています。
【大阪地裁令和3年11月12日判決】
「被告Y1及び被告会社は、原告会社に遊休車両がなかったとは認められないとして休車損害を争うが、原告会社が所有する事業用自動車は10台であるものの(甲20)、原告車両(10tユニック車)と同等の車両は保有していなかったと認められ(甲13:原告車両以外にもユニック車は保有しているものの、積載量が3t、4t、7t、8tのものであり、直ちに原告車両を代替できたとは認められない。)、原告会社に原告車両を代替する遊休車両があったと認めることはできない。」
3.休車損害の算定方法
休車損害は、事故車について1日当たりの営業収入(売上高)から支出を免れた経費(変動経費)を控除し、休車期間の日数を掛けて算定するのが通常です。
売上高から変動経費を控除する理由ですが、事故車を稼働させていれば支出していたはずの経費は、事故車を稼働させなかったことによって免れているためです。
そのため、燃料代、オイル代、通行料等の変動経費は控除することになります。
一方、減価償却費、自動車保険料、駐車場使用料等の固定経費は、休車期間中であっても支出は免れないため、控除するべきではありません。
休車損害が認められる期間は、事故車を買い替えるのに相当な期間、または事故車を修理するのに相当な期間ということで、基本的には代車使用期間と同様に考えることができます。
この点に関連する裁判例として、神戸地裁平成14年7月18日判決があります。
原告は休車期間として92日を主張し、被告らは長すぎると反論していましたが、裁判所は次のとおり判示し、原告の主張を認めました。
【神戸地裁平成14年7月18日判決】
「なお、被告らは、納車に要する期間として92日間は長すぎ、特殊仕様車であっても2か月程度が相当である旨主張するが、原告代表者の供述する新車購入に至る経緯、すなわち、双方の過失割合が争点となったので現物保存のため当初は修理を見合わしていたこと、話合いが不調に終わったため修理に出したところ、当初の予想とは違ってエンジン関係にも大分損傷のあることが分かったので廃車にしたことからすれば、92日間の休車期間が不当に長すぎるとはいえない。」
4.当事務所の解決事例~配送業の休車損害~
ここでは、当事務所で実際に解決した事例から休車損害が認められた事案をご紹介します。
依頼者のAさんは、事故の半年前から個人事業主としてトラックで配送の仕事をしていました。
そして、その配送の仕事中に、Aさんが優先道路を走行していたところ、信号のない交差点で加害者が一時停止無視で道路に進入してきて衝突されてしまいました。
幸いAさんに怪我はありませんでしたが、Aさんのトラックが損傷してしまい、Aさんはこの事故車以外に配送業務に使用できる車両を所有していませんでしたので、修理完了までの52日間にわたって仕事ができない状況が続きました。
そのため、担当弁護士は、物損の示談の際に、事故前3か月のAさんの合計収入(約200万円)から同期間のガソリン代、高速代などの経費合計(約30万円)を控除した上で、一日の営業利益の平均を算出し(約18,500円)、休業を強いられた52日間分の休車損害(約96万円)を請求しました。
これに対し、相手方保険会社側からは、Aさんから修理工場への着工指示が遅れたことによって10日ほど修理完了が遅くなった事情などを指摘され、減額を求められました。
この点は、Aさんから工場への連絡が遅くなったのは事実でしたので、減額を受け入れることとして、休車損害については約78万円を認めさせた上で物損の示談をすることとなりました。
5.まとめ
今回の記事では、比較的マイナーな損害である休車損害について説明をしましたが、いかがでしたか。
冒頭で述べたように、怪我を負っていなくても休車損害は認められますが、他方で、事故車が稼働できなくなったからといって、当然に休車損害が認められるわけではありません。
休車損害を請求するにあたっては、休車損害の要件を満たしていることや具体的な損害額を立証することが求められます。
そのため、保険会社等に対して休車損害の主張をされたい場合には、請求が認められる可能性を上げるためにも、交通事故を専門とする弁護士にご相談ください。
また、相手方保険会社から賠償金の提示がなされた際、示談することについて悩まれた場合も、適切な解決のため、交通事故を専門とする弁護士に相談するべきであるといえます。
私たちの弁護士法人優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。
また、弁護士特約でご依頼いただくことも可能です(一部の保険会社を除く)。
全国からご相談いただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故のリハビリと慰謝料|相場・計算方法・通院の注意点を弁護士が解説
交通事故に遭い、ケガを負った被害者の多くは、入院や手術の後もリハビリのための長期にわたって通院を続けることになります。
しかし、「リハビリ期間も慰謝料を請求できるのか」、「どのくらいの金額が受け取れるのか」、「どのような注意が必要なのか」について、正確に把握している方は多くありません。
また、交通事故で怪我を負った場合、慰謝料だけでなく、治療費、通院のための交通費、仕事を休んだことによる休業損害なども賠償金の対象になり得ます。
そして、請求できる損害の内容は事故の状況や過失割合によっても異なるため、相手方から提示された金額だけで判断せず、損害全体を確認することが重要です。
本記事では、リハビリを伴う傷害事故を中心に、交通事故後のリハビリと慰謝料の関係について、請求方法から計算のポイント、注意点や成功事例まで、弁護士の視点から詳しく解説します。
1.交通事故のリハビリ期間に対して請求できる慰謝料とは
リハビリ期間も傷害慰謝料の対象
交通事故によるケガは、手術や入院が終わった後も、長期にわたってリハビリを必要とすることが少なくありません。
むちうちや骨折後のリハビリ、神経損傷に伴う機能回復訓練など、その内容は傷病の種類や重傷・軽傷の程度によって大きく異なります。
こうしたリハビリ期間に対しても、傷害慰謝料(入通院慰謝料)を請求することができることを、まず理解しておく必要があります。
傷害慰謝料は、交通事故によって生じた肉体的・精神的苦痛を損害賠償として金銭化したものです。
入院や通院による不便さ、痛みや苦しみ、日常生活の制限など、リハビリ期間中に被害者が経験するあらゆる苦痛がその対象に含まれます。
加害者側の保険会社が支払う賠償額は、入院・通院の日数に基づいて算定されるのが一般的であり、リハビリのための通院もこの日数に算入されます。
重要なのは、「治療費」と「慰謝料」は別の損害項目だという点です。
リハビリにかかる実費(診察料、理学療法士の施術費、医療機器の使用料など)は治療費として請求し、その上でリハビリ通院に要した日数を基に慰謝料を別途請求できます。
軽傷であっても、医師の指示のもとで適切なリハビリを継続していれば、その期間は傷害慰謝料の対象期間となります。
一方、過剰と判断されるリハビリ通院については、保険会社から異議が出る場合があります。
医師の指示を超えた通院頻度や、因果関係が認められない施術については賠償額が減額されることもあるため、主治医と十分に連携しながら、リハビリの状況を医療記録として残すことが大切です。
職業や年齢によって必要なリハビリの内容や期間が異なるということもあり得ますので、自身の状況に応じたリハビリを受けるよう心がけましょう。
なお、慰謝料を増やすために通院回数を増やせばよいと考える被害者もいるかもしれませんが、そのような単純なルールではありません。
特に、後でご説明する裁判所基準では通院回数ではなく通院期間で慰謝料を算定することになり、自賠責基準でも通院回数が多い場合には通院期間で算定されることもあります。
さらに、医学的な必要性が乏しい通院は、保険会社との示談交渉で問題となり、治療費や慰謝料が減額されるおそれもあります。
主治医の指示を基本として、症状に応じた頻度で継続することが大切です。
症状固定までの慰謝料請求の流れ
傷害慰謝料は「症状固定」の時点まで請求することができます。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の大幅な改善が見込まれない状態を指し、究極的には裁判所が判断しますが、主治医の医学的判断が非常に重要になります。
症状固定前のリハビリはすべて「治療」として位置づけられ、その通院日数・期間は慰謝料算定の基礎となります。
症状固定に至るまでの一般的な流れは以下のとおりです。
まず、事故発生直後に病院を受診し、診断書を取得します。
その後、継続的に通院・リハビリを行いながら、医師との定期的な診察でリハビリの進捗を確認します。
保険会社からの治療費の支払いは「一括対応」という病院が直接保険会社に請求する形で行われることが多いです。
治療が長期化すると、保険会社から「症状固定を検討してください」と打診が来ることがありますが、必ずしも保険会社の判断に従う必要はありません。
必ず主治医と相談のうえ、医学的に適切なタイミングで症状固定の判断を行ってください。
症状固定後は、後遺症が残った場合に「後遺障害等級認定」の申請を行い、別途「後遺障害慰謝料」および「逸失利益」を請求します。
症状固定の時点で治癒(完全回復)した場合は、傷害慰謝料のみの請求となります。
いずれの場合も、必要書類(診断書、治療明細書、通院証明書など)を用意して、後遺障害申請や損害賠償の請求手続きを進めることになります。
なお、「完治」と「症状固定」は同じ意味ではありません。
完治は症状がなくなり治療を終える状態を指すのに対し、症状固定は症状が残っていても、これ以上の大幅な改善が見込みにくい段階を指します。
後遺症が残る場合には、この違いを理解したうえで後遺障害の申請へ進む必要があります。
2.リハビリで受け取れる慰謝料の相場と計算方法
入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料(傷害慰謝料)の金額は、どの「基準」を用いるかによって大きく異なります。
主な基準は以下の3つです。
①自賠責保険基準
最低限の補償を定めた基準で、日額4,300円(通院の場合)が目安となります。
通院1日につき4,300円、入院1日につき4,300円として計算しますが、実際には「実治療日数×2」と「入通院期間」を比較し、少ない方の日数を採用します。
この基準は最も低額であり、特に重傷の場合や長期リハビリが必要な場合には、③の弁護士基準と比べると著しく低くなります。
②任意保険基準
各保険会社が独自に設定している基準で、自賠責基準よりやや高い水準ですが、③の弁護士基準と比較するとかなり低いことが多いです。
保険会社との示談交渉ではこの基準で提案されることが多く、被害者がそのままサインしてしまうケースも多いと思われます。
③弁護士基準(裁判基準)
過去の判例に基づく基準で、3つの中で最も高額になります。
例えば、むちうちで通院のみのケース(6ヶ月通院)では89万円程度、重傷で入院3ヶ月・通院5ヶ月の場合は200万円を超えることもあります。
弁護士に依頼することでこの基準での請求が現実的になります。
一般的な相場として、むちうちで3ヶ月通院した場合の弁護士基準での慰謝料は53万円前後、6ヶ月通院では89万円前後となります。
通院頻度が低すぎると、通院期間ではなく通院日数×3の期間で慰謝料を計算するよう主張されるケースもありますので、主治医の指示に従って適切な頻度(週2〜3回程度が目安)で通院することが適切な慰謝料を受け取る上でも重要です。
後遺障害慰謝料の計算方法
症状固定後も痛みやしびれ、機能障害などの症状が残った場合には、後遺障害として等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料を別途請求できます。
後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も重篤です。等級によって慰謝料の金額は大きく異なります。
弁護士基準での後遺障害慰謝料の算定例は、14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、1級では2,800万円となります。
このうち、むちうちで最も多く認定されるのが14級であり、通院6ヶ月以上で症状が継続していることが認定の目安の一つとされています。
後遺障害等級が認定された場合には、後遺障害慰謝料に加え、逸失利益(後遺障害によって将来の収入が減少する損害)も請求できます。
算出方法は「基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」で計算されます。
等級によって労働能力喪失率が異なり、14級は5%、12級は14%、10級は27%、1級は100%です。
将来にわたる損害(逸失利益)を含めると、後遺障害がある場合の総賠償額は傷害慰謝料のみの場合と比べて大きく異なります。
後遺障害の認定申請は、「事前認定」(加害者の保険会社に一任する方法)と「被害者請求」(被害者が自ら自賠責保険に申請する方法)の2種類があります。
被害者請求の方が、必要な資料を自分で揃えられるため、適正な等級認定につながるケースが多いとされています。
申請後に認定結果に不服がある場合は、異議申立てを行うことも可能です。
3.リハビリ通院中の慰謝料請求における注意点
転院時の保険会社への連絡
リハビリ通院中に、より専門的な設備を持つ医療機関への転院や、自宅近くの整形外科への変更を検討する場合があります。
転院自体は被害者の判断で可能であり、法的に制限されるものではありませんが、保険会社(任意保険・自賠責保険)への事前連絡が重要です。
事前連絡なしに転院すると、治療費の一括対応が一時的にストップする可能性があります。
また、転院先の医療機関が保険会社の対応医療機関でない場合、立替え払いが必要になることもあります。
転院を決めた際は、まず、「専門的なリハビリ設備が必要」、「通院の利便性」など転院理由を明確にしたうえ、保険会社の担当者に連絡して手続き方法を確認しましょう。
健康保険を使って立て替えた場合の精算方法についても、事前に確認しておくとスムーズです。
転院先では、事故の経緯と現在の症状、これまでの治療内容を正確に伝えることが大切です。
前の医療機関から紹介状を取得しておくと、治療の継続性が保たれ、保険会社への説明もしやすくなります。
特に東京・大阪・名古屋・福岡などの大都市圏では複数の専門クリニックが存在しますが、どこへ転院する場合も保険会社への連絡を忘れないようにしてください。
整骨院でのリハビリに関する注意
整骨院(接骨院)は気軽に通いやすく、マッサージや電気治療などの施術が受けられます。
しかし、交通事故の慰謝料請求との関係では、いくつかの重要な注意点があります。
まず、整骨院は医師ではなく柔道整復師による施術機関であり、保険会社が「医療機関での治療」として認めない場合があります。
特に整形外科への通院を完全にやめて整骨院のみに切り替えると、「医師の指示に基づく治療とは言えない」として慰謝料の対象外とされるリスクが高いです。
整骨院を利用する場合は、整形外科との並行通院を継続し、医師から整骨院への通院許可を取得しておくことが強く推奨されます。
次に、施術記録の保管が重要です。整骨院では施術内容、施術部位、施術回数などを記録してもらい、施術証明書に記載してもらう必要があります。
運動器リハビリテーションに特化した整骨院であれば、骨折後のリハビリや筋力回復訓練など、高い専門性が期待できます。
ただし、施術内容が事故による傷病と直接関係ないものであれば賠償対象から外れる可能性があるため、担当の柔道整復師と施術内容について十分に確認しながら進めてください。
リハビリ費用の打ち切りに注意
保険会社は治療が長期化すると、「症状固定」と判断して治療費の支払いを打ち切るよう求めてくることがあります。
こうした打ち切りに遭った場合でも、慌てて示談に応じる必要はありません。
打ち切りの理由を確認し、主治医に相談して、医学的にまだリハビリが必要かどうかを確認します。
医師が治療継続の必要性を認めているにもかかわらず打ち切られた場合は、医師の意見書を取得し、保険会社に対して異議を申し入れることも考えられます。
保険会社の打ち切りに従ってリハビリを中断してしまうと、その後に症状が悪化した場合の治療費が自己負担になるだけでなく、慰謝料の算定日数も短くなり、最終的な賠償額が減額される可能性があります。
自費でリハビリを継続した上で、後から保険会社に請求するという方法もありますので、治療の継続について医師と相談することも重要です。
いずれにしても、弁護士に早期に相談することで、打ち切りへの対応策を徹底して把握することができます。
リハビリの打ち切り通告が来たら、すぐに行動することを忘れないでください。
4.適正な慰謝料を受け取るためのポイント
医師の指示に従った通院
適正な慰謝料を受け取るために最も基本的かつ重要なことは、医師の指示に従って適切な頻度で通院を続けることです。
通院期間や日数は慰謝料算定の直接的な基礎となるため、通院実績が少なければ、その分受け取れる慰謝料も少なくなります。
一方で、毎日通院すれば慰謝料が増えるというわけではありません。
例えば、自賠責保険の計算方式では、実治療日数(実際に通院した日数)に2を掛けた値と、総治療期間の日数のどちらか少ない方を基準とするため、通院頻度が低すぎる場合には不利になることは確かですが、逆に2日に1回以上の通院をしても慰謝料が増えることにはなりません。
主治医が指示する週2〜3回程度の通院を着実に続けることが、医学的な回復とともに慰謝料の適正な受け取りにもつながります。
また、主治医には症状の変化を正直かつ詳細に伝え、カルテに記載しておいてもらうようにしましょう。
診断書に記載された症状の内容が、後に慰謝料請求や後遺障害等級認定の際に重要な証拠となります。
保険会社からの示談金の妥当性確認
治療が終了または症状固定した後、保険会社から示談金(賠償額)の提案が来ます。
この金額が適正かどうかを自分で判断するのは難しく、多くの被害者が保険会社の提示額をそのまま受け入れてしまっています。
しかし、保険会社が最初に提示する金額は任意保険基準または自賠責基準に基づいており、弁護士基準よりも大幅に低いことがほとんどです。
示談書にサインする前に、まず提示額の根拠(通院日数、計算方法、適用基準)を書面で確認しましょう。
次に、過去の類似ケースや弁護士基準での相場と比較して、妥当性を判断します。
納得がいかない場合は再交渉を求めることができます。
保険会社からの示談提案に期限が設けられていても、法的に強制力はありませんので、焦らず慎重に対応してください。
示談が成立すると、原則として後から追加請求はできません。
示談前に弁護士に相談し、受け取れる額が適正かどうかを確認することを強くお勧めします。
弁護士への相談の重要性
交通事故による慰謝料請求は、法律知識なしには適正な額を受け取ることが難しい分野です。
弁護士への相談を検討すべき理由はいくつかあります。
第一に、弁護士基準での交渉が可能になります。
弁護士が代理人として交渉に当たることで、裁判所基準(弁護士基準)の慰謝料額を主張でき、任意保険基準との差額分を追加で受け取れる可能性があります。
第二に、後遺障害等級認定のサポートが受けられます。
等級によって慰謝料の差が何百万円にもなることもあるため、専門的なサポートは最終的な示談金額に大きな影響をもたらします。
第三に、ご自身の精神的・時間的負担を大幅に軽減できます。
保険会社とのやり取りを弁護士に任せることで、被害者はリハビリに集中できます。
多くの法律事務所では無料相談を提供しており、費用対効果を事前に把握することができます。
また、自動車保険の弁護士費用特約を使えば、弁護士費用を保険でカバーできるケースも多いです。
不安や疑問を感じたら、早い段階で弁護士事務所に連絡してみてください。
法律事務所を選ぶ際は、交通事故案件の取扱実績だけでなく、所属・在籍する弁護士の経験、初回相談の受付方法、電話や専用ダイヤルの有無、相談予約の取りやすさ、弁護士法人としての対応体制やスタッフのサポート、全国対応の可否、依頼時の着手費用まで確認すると安心です。
各事務所の案内を参照し、比較したうえで相談先を選びましょう。
実際に相談する際には、解決までの見通しと費用の説明を受けた上で依頼を判断することが大切です。
5.リハビリ期間中の慰謝料に関するよくある質問
Q:リハビリのみの通院でも慰謝料はもらえる?
A:はい、リハビリのみの通院でも慰謝料を受け取ることは可能です。
入通院慰謝料の算定において、「通院」にはリハビリ目的の通院も含まれます。
理学療法や作業療法、整骨院での施術など、治療の一環として医師が認めているリハビリはすべて通院日数に算入されます。
ただし、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、医師の指示(または同意)に基づいたリハビリであること。次に、通院の記録(診療明細書、領収書、通院履歴)がきちんと保管されていること。
そして、リハビリが事故によるケガ(捻挫・骨折・神経損傷など)の治療として医学的に必要かつ相当であることが証明できることです。
これらの条件が揃っていれば、治療費の支払いとともに慰謝料も受け取れます。
ご不安な方は、まず弁護士に相談してみてください。
Q:症状固定後のリハビリの慰謝料はどうなる?
A:症状固定後のリハビリは、原則として傷害慰謝料(入通院慰謝料)の対象外となります。
症状固定とは治療終了のタイミングであり、それ以降の通院は「維持療法」と位置づけられ、加害者への損害賠償請求の対象にならないとするのが原則的な考え方です。
ただし、後遺障害等級が認定された場合は、別途後遺障害慰謝料と逸失利益が発生します。
また、後遺障害の状態を維持・悪化防止するために医師が必要と認めたリハビリについては、将来の治療費として損害賠償に含めることを主張できるケースもあります。
症状固定のタイミングや、その後のリハビリの取り扱いについては個別の状況によって異なるため、弁護士に具体的に相談することをお勧めします。
6.交通事故のリハビリ慰謝料を請求する際の弁護士の役割
弁護士基準での慰謝料計算
弁護士(裁判)基準は、過去の裁判例を集積して作成された「赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)」に基づく計算方式であり、3つの基準の中で最も高額な慰謝料が算出されます。
弁護士が代理人として交渉することで、この基準を用いた請求が現実的に可能となります。
具体的な金額の差を示すと、例えばむちうちで6ヶ月通院(実通院日数70日)した場合、自賠責基準や任意保険基準では約60万円程度ですが、弁護士基準では89万円程度となります。
後遺障害等級認定のサポート
後遺障害等級認定は、認定される等級によって慰謝料の金額が数百万円単位で変わる非常に重要なプロセスです。
弁護士は、この等級認定においても大きなサポートを提供します。
具体的には、被害者請求に必要な書類(後遺障害診断書、MRI・CT画像、神経学的検査の結果など)の収集・整備を支援します。
後遺障害診断書の記載内容が等級認定の結果に直結するため、どのような症状・所見を記載すべきかを医師に適切に伝えるアドバイスも行います。
認定結果が出た後、納得のいかない結果であれば異議申立てを行い、より上位の等級認定を目指します。
1級から14級まで、各等級に必要な証拠や書類は異なるため、豊富な経験と実績を持つ弁護士事務所のサポートが有効です。
後遺障害等級の認定率は決して高くなく、適切な証拠を準備しなければ非該当(後遺障害なし)と判断される可能性もあります。
最終的に適正な賠償を受け取るためには、症状固定前から弁護士に相談し、認定に向けた準備を進めておくことが有効です。
7.交通事故のリハビリ慰謝料に関する成功事例
リハビリ通院中に弁護士に依頼した成功事例
【事例①:会社員・むちうちのケース】
30代会社員のAさんは、追突事故でむちうちを負い、仕事をしながら整形外科に通院していました。
3ヶ月が経過した頃、保険会社から「そろそろ症状固定してください」と連絡が来ましたが、まだ首や肩の痛みが続いていたため、当事務所にメールで相談し、弁護士への依頼を決めました。
弁護士が介入した結果、交渉により約6ヶ月後まで治療費の支払いが継続され、最終的に弁護士基準に近い慰謝料85万円を獲得しました。
保険会社に3ヶ月で打ち切られた場合と比べ、1.5倍以上の金額を受け取ることができました。
【事例②:主婦・骨折のケース】
40代の主婦Bさんは、横断歩道を歩行中に自転車と衝突し、足首を骨折しました。
入院2ヶ月・リハビリ通院8ヶ月を経て症状固定しましたが、足首に可動域制限が残り、12級の後遺障害が認定されました。
弁護士が後遺障害等級認定のサポートから示談交渉まで一貫して担当し、傷害慰謝料190万円と後遺障害慰謝料290万円を含む総額1,000万円以上の賠償額を獲得しました。
慰謝料増額に成功したケーススタディ
上記の具体例に限らず、慰謝料の増額に成功したケースには共通する3つのポイントがあります。
第一に、早期に弁護士に相談したことです。
リハビリ通院中から弁護士が関与することで、保険会社による不当な打ち切りを防ぐことができ、通院期間を十分に確保できました。
このように、治療終了後の示談直前に相談するよりも、通院開始後早い段階で相談することで、得られる賠償額が大きく変わる可能性があります。
第二に、後遺障害の証拠を十分に集めたことです。
MRI画像、神経学的検査の結果、通院記録、日常生活への支障を示す陳述書など、因果関係を立証する証拠を丁寧に積み重ねた結果、上位の等級が認定されたケースが多く見られます。
第三に、保険会社の提示額を安易に受け入れなかったことです。
保険会社が最初に提示する金額は、交渉の余地がある出発点に過ぎません。
弁護士が交渉に加わることで、実際の損害に見合った金額まで増額できるケースが多く、2倍以上の賠償を得た事例も存在します。
これらの事例から分かるように、加入している保険の弁護士費用特約も確認し、積極的に活用することが賢明です。
8.交通事故のリハビリ慰謝料についてのまとめ
リハビリ期間中の慰謝料請求の重要性
交通事故後のリハビリは、身体的回復のために欠かせないだけでなく、慰謝料請求の観点からも非常に重要です。
リハビリ期間も傷害慰謝料の対象となり、適切な通院記録と医療記録の整備が、適正な賠償額の受け取りに直結します。
事故後は、①医師の指示に従ったリハビリ通院を継続する、②診断書・治療明細書など必要書類を随時整理する、③保険会社からの打ち切りや示談提案には慎重に対応する、④早期に弁護士に相談する、という4つの行動指針を忘れないでください。
リハビリ期間中の経済的な負担を軽減し、将来の労働能力を守るためにも、賠償請求は自身の権利として堂々と主張することが大切です。
事故後に本当に困った場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家の力を借りてください。
弁護士に相談するメリット
弁護士への相談には多くのメリットがあります。
慰謝料の増額だけでなく、①保険会社との交渉を任せることで精神的・時間的負担が大幅に軽減される、②後遺障害等級認定のサポートにより適正な等級が認定されやすくなる、③示談の時期や方法について法的に適切なアドバイスが得られる、④万一裁判になった場合も対応可能、といった点が挙げられます。
悩みや疑問を抱えたまま示談書にサインしてしまうことが最大のリスクです。
弁護士費用特約を使えば費用の心配なく弁護士に相談できますし、多くの法律事務所では無料相談を受け付けています。
メール等で気軽に問い合わせできる事務所も増えており、相談のハードルは以前より大幅に下がっています。
交通事故のリハビリ慰謝料について少しでも疑問があれば、ぜひ専門家に相談して、適正な示談・解決を目指してください。
当事務所でも、交通事故の無料相談をお受けしておりますので、ご不安点がおありになる方は、お気軽にお問合せいただければと思います。
投稿者プロフィール

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故で大腿骨を骨折したら?後遺障害認定と適正な賠償を獲得するための完全ガイド
交通事故で大腿骨を骨折した場合、「慰謝料はいくらが相場なのか」「後遺障害等級はどう認定されるのか」と不安を抱く方は少なくありません。
本記事は、交通事故案件に豊富な解決実績を持つ弁護士法人優誠法律事務所の弁護士監修の下、大腿骨骨折の基礎知識から治療、後遺症・後遺障害等級の認定基準、そして適正な賠償金(慰謝料や逸失利益など)を得るための具体的な手順や交渉術まで徹底的に解説いたします。
読者の皆様が泣き寝入りすることなく、納得のいく解決を迎えられるよう、私たちが全力でサポートいたします。
お悩みの際は、決して一人で抱え込まず、ぜひ当事務所の無料相談をご利用ください。
1.交通事故による大腿骨骨折とは
⑴大腿骨骨折の定義と種類
大腿骨は、骨盤の股関節から膝関節までをつなぐ、太ももの中を通っている、人体の中で最も長く太い骨です。
上半身の体重をしっかりと支え、歩行や立つといった日常の基本的な可動を可能にする、極めて重要な機能を持っています。
交通事故においては、歩行中や自転車に乗っている際に自動車にはねられて転倒したり、バイク乗車中の衝突事故で太もも部分に直接大きな衝撃を受けたりすることで、この頑丈な大腿骨が折れてしまうことがあります。
大腿骨の骨折は、折れる箇所によって主に以下の種類に分類されます。
- 大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ):股関節のボール状の部分(大腿骨頭)のすぐ下にある細い頸部の骨折です。血流が乏しいため骨がくっつきにくく、非常に治りにくいのが特徴です。
- 大腿骨転子部骨折・転子下骨折:頸部のすぐ下にある太い部分の骨折です。
- 大腿骨骨幹部骨折:太ももの中央部分(長管骨)の骨折であり、交通事故などの強い外力によって発生します。
- 大腿骨顆上骨折・顆部骨折:膝関節に近い下端部分の骨折です。
このように、大腿骨骨折と一口に言っても折れる部位は大きく3つ以上の部分に分けられ、交通事故の強い衝撃によって引き起こされる重篤なケガです。
関節部分の損傷が激しい場合は、人工関節や人工骨頭への置換が必要になるなど、その後の生活が大きく変わってしまうケースも少なくありません。
⑵大腿骨骨折の主な症状
大腿骨骨折の主な症状は、骨折した部位周辺(股関節や太もも、膝関節など)に生じる非常に強い痛みと腫れです。
受傷直後から激痛が走り、ほとんどのケースで自力で立つことや歩行することが不可能となります。
下肢を動かすことができず、歩行という人間の基本動作に大きな機能障害を伴うため、日常生活や仕事に多大な支障をきたします。
また、強い衝撃により骨盤周りの筋肉や組織へのダメージも大きく、交通事故の中でも重傷に分類されるケガです。
さらに、症状の進行や治療の長期化によって、関節が拘縮(固まって動かなくなる)したり、寝たきり状態が続くことで高齢者の場合は認知症が進行したり、深部静脈血栓症などの深刻な合併症を引き起こすリスクも十分にあります。
人工骨頭への置換やプレート固定といった手術が必要になることが多く、足の長さが変わってしまうなど将来にわたって影響が残るリスクが高いケガであるため、適切な治療の継続と専門家による法的なサポートが不可欠です。
また、大腿骨骨折は、骨折部位や転位の程度によっては長期の入院を要し、治療後も関節の可動域制限や痛みなどの後遺症を残す可能性があります。
事故直後の症状だけでなく、その後の生活や仕事への影響も継続して記録しておくことが重要です。
2.大腿骨骨折の治療方法
⑴治療の流れと選択肢
大腿骨骨折の治療の流れとして、まずは救急搬送された病院でレントゲンやCT、MRIといった画像検査が行われます。
これにより骨折の部位や転位(骨のズレ)の程度を詳細に確認し、治療方針が選ばれます。
大腿骨骨折の場合、ギプスで固定して治癒を待つ非手術療法(保存療法)が選択されることは少なく、多くは早期の離床と歩行再開を目指して手術療法が選ばれます。
手術の選択肢としては、骨折部を金属のプレートやボルト、髄内釘などでつなぎ合わせて固定する「骨接合術(内固定)」のほか、頸部骨折などで骨の癒合が見込めない場合や関節へのダメージが著しい場合には、傷ついた関節を人工物に置き換える「人工骨頭置換術」や「人工関節置換術」が行われます。
手術以外にも、術後のリハビリテーションが極めて重要です。
関節の可動域を広げ、筋力を回復させるための歩行訓練などを早期から開始します。
⑵全治期間について
大腿骨骨折の全治期間は、骨折の種類や治療方法、患者の年齢や健康状態によって個人差がありますが、一般的な目安としては3か月から1年程度、場合によってはそれ以上の期間を要します。
骨の癒合(くっつくこと)やその後のリハビリテーションには長い時間が必要です。
また、1年程度を目途に固定のために入れたプレートなどを取り除く抜釘手術を行うことが多いです。
3.大腿骨骨折の後遺症・後遺障害等級と慰謝料相場
⑴後遺症の種類と影響
大腿骨骨折の治療を尽くしても、残念ながら後遺障害が残ってしまう被害者は少なくありません。
代表的な後遺障害には、股関節や膝関節の動きが悪くなる「機能障害」、骨が変形して癒合する、あるいは偽関節となる「変形障害」、左右の脚の長さに違いが生じる「短縮障害」、そして骨折部位周辺にしびれや痛みが残る「神経症状(神経障害)」があります。
これらの後遺障害は、歩行が不自由になったり、階段の昇降が困難になったりするなど、身体機能の喪失・低下をもたらし、被害者の日常生活や仕事に深刻な影響を与えます。
また、強い衝撃を受けた事故そのもののトラウマに加え、思い通りに体が動かない、痛みが引きにくいといった状況は、うつ病や不安感といった心理的な影響(精神的苦痛)を引き起こすことも特徴です。
さらに、頭部へのダメージを伴って負った事故であった場合、高次脳機能障害などを併発しているケースもあるため、目に見えにくい症状が残っていないかにも注意を払う必要があります。
⑵後遺障害等級の認定基準
後遺障害が残った場合、自賠責保険による「後遺障害等級」の認定を受けることで、適正な賠償金(後遺障害慰謝料や逸失利益)を請求できるようになります。
大腿骨骨折における後遺障害等級の認定基準は以下の通りです。
- 機能障害:人工関節や人工骨頭を挿入し、可動域が健側(ケガをしていない側)の1/2以下に制限された場合は8級(8級7号)、人工関節等を挿入したのみの場合は10級(10級11号)、人工関節なしで可動域が3/4以下になった場合は12級(12級7号)、1/2以下は10級(10級11号)、完全強直等に近い場合は8級(8級7号)が認定されます。
- 短縮障害:脚が5cm以上短縮した場合は8級(8級5号)、3cm以上で10級(10級8号)、1cm以上で13級(13級8号)となります。
- 変形障害:大腿骨に癒合不全(偽関節)を残し、常に硬性補装具を必要とする場合は7級(7級10号)、不要な場合は8級(8級9号)、15度以上屈曲して不正癒合した場合などは12級(12級8号)となります。
- 神経症状:画像所見等で痛みの原因を医学的に証明できる場合は12級(12級13号)、医学的に説明・推定できるレベルの痛みは14級(14級9号)となります。
等級によって慰謝料の金額は大きく異なり、例えば裁判所(弁護士)基準では、14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円程度となります。
高齢者の方を含め、労働能力の低下に対して適正な補償を受けるために、正確な等級認定の申請は非常に重要です。
なお、交通事故で大腿骨を骨折した場合に請求できる慰謝料は、主に、入院・通院に伴う精神的苦痛を補償する「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と、症状固定後に後遺障害等級が認定された場合の「後遺障害慰謝料」に分かれます。
実際の慰謝料相場や賠償金額は、治療期間、入院・通院日数、後遺障害の内容・等級、被害者の収入、過失割合などによって異なります。
保険会社から提示された金額が適正かどうかは、弁護士基準を用いて個別に計算し、判断する必要があります。
4.後遺障害認定の重要ポイント
⑴後遺障害診断書の重要性
後遺障害認定において最も重要となるのが、医師の作成する「後遺障害診断書」です。
審査は原則として提出された書面等で行われるため、診断書に記載されていない症状は認定の対象になりません。
そのため、正確な診断と詳細な記載が必要です。
関節の可動域制限や脚の短縮(SMDの測定など)、長管骨の変形(偽関節など)、残存する痛みやしびれといった症状が、適切なフォーマットで漏れなく記載されているかが、将来の賠償額を大きく左右します。
特に、後遺障害診断書の内容と画像所見が一致しているか、症状を残す医学的な理由が説明されているかは、認定結果に大きく関わります。
診断書を作成してもらう際は、痛みの部位、可動域制限、脚の短縮、日常生活への支障を具体的に伝えましょう。
医師は治療の専門家ですが、必ずしも後遺障害認定の基準に精通しているとは限りません。
したがって、被害者自身が日頃から自覚症状を正確に伝え、医師とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。
また、比較的早期から弁護士を利用し、弁護士を通じて医師に対してどのような記載が必要か、ケガによる症状が日常生活や仕事にどのように影響しているか等について説明しておくことも、適切な等級を獲得するためのカギとなります。
後遺障害診断書作成後も、弁護士に依頼していれば、診断書の内容を確認してもらい、必要に応じて診断書の修正や追記の助言を受けることができます。
⑵認定を受けるための注意点
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
まず、必要書類を過不足なく確認し、準備することです。
後遺障害診断書のほか、レントゲンやCT、MRIなどの画像データ、診療報酬明細書などが揃っているかを確認します。
次に、症状固定のタイミングと申請の期限に注意することです。
治療を継続しても大幅な改善が見込めない「症状固定」の判断は慎重に行う必要があり、保険会社から提示された時期を鵜呑みにせず、主治医と適切に判断する必要があります。
そして何より、加害者側の保険会社に手続きを任せる「事前認定」ではなく、被害者側で有利な証拠を集めて主体的に申請する「被害者請求」を行うべきですので、そのために交通事故に強い専門家(弁護士)に相談し、サポートを受けることが重要です。
後遺障害認定後に、認定結果を正当に評価し、必要であれば異議申立てを行うためにも、専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。
そのためには、早めに弁護士に相談することが第一歩です。
5.交通事故で大腿骨を骨折した場合の賠償請求の流れ
⑴賠償請求の基本的な手順
交通事故被害に遭い、大腿骨骨折などの損害賠償を請求する場合、基本的な手続きは以下の流れで進みます。
大腿骨骨折で請求できる主な損害の費目は、治療費・入院費・通院交通費・休業損害・入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益・将来介護費・装具費・住宅改修費などです。
ただし、事故との因果関係や必要性を証明できる範囲が賠償の対象となるため、領収書、診断書、画像、休業損害証明書などの資料を残しておく必要があります。
- 事故直後の対応:速やかに警察へ連絡して実況見分を行い、人身事故として処理してもらいます。また、加害者や保険会社の情報を確認し、目撃者がいれば証言や画像等の証拠を確保します。
- 治療の継続:自覚症状の有無にかかわらず、すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従い必要に応じて通院を継続します。治療費などの領収書や診断書など、賠償請求の基礎となる証拠を保管します。
- 症状固定と後遺障害申請:これ以上の改善が見込めなくなった段階で症状固定とし、後遺症が生じている場合は、自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請を行います。
- 損害賠償額の算定と示談交渉:後遺障害等級が確定した後、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などの詳しい損害項目を算定した請求書(示談案)を作成し、加害者側の保険会社に提示して示談交渉を開始します。各手続きの詳細は、当事務所サイトの関連コラムでも解説しています。無料相談も随時対応しております。
⑵弁護士に相談するメリット
交通事故の損害賠償請求において、弁護士に相談・依頼することには大きなメリットがあるといえます。
まず、交通事故と法律に関する高度な専門知識を活用できる点です。
保険会社が提示してくる慰謝料は、自社の基準(任意保険基準)であり、被害者が本来受け取るべき裁判所(弁護士)基準に比べて著しく低額に設定されていることがほとんどです。
弁護士が介入することで、最も高額な裁判基準での交渉が可能になり、適正な賠償額を得やすくなります。
また、煩わしい保険会社とのやり取りや示談交渉をすべて弁護士に任せられるため、被害者の方は治療やリハビリ、生活の再建に専念でき、精神的な負担も大きく軽減されます。
ご自身の年齢や怪我の程度を問わず、「どう対応すべきか分からない」「無理な条件を言われた」と悩まれる方に対しても、弁護士が的確な検討とアドバイスを行い、サポートします。
6.交通事故に関するよくある質問
⑴交通事故後の通院先の選び方
Q: 大腿骨を骨折した場合、どのような病院に通院すべきですか?
A: 大腿骨骨折という重傷の場合、まずは手術設備やMRI等の高度な検査機器が整った総合病院や、整形外科の専門医の選定が重要です。
手術後は、リハビリテーションに特化した施設での継続的な通院が回復のカギとなります。
また、通院の継続性を考慮し、ご自宅からアクセスしやすい病院を選ぶことも必要です。
接骨院や整骨院でのリハビリを併用する場合は、必ず整形外科の医師に相談し、同意を得た上で通院してください。
⑵慰謝料の相場・計算方法と増額基準について
Q: 慰謝料を少しでも増額させるためには、どのような基準や要素が影響しますか?
A: 慰謝料の算定基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所(弁護士)基準」があり、弁護士を代理人として立てて裁判所基準を用いることで大幅な増額が見込めます。
具体的な増額要素としては、第一に「治療期間の長さ(入通院日数)」が影響します。適切な頻度で治療を継続し、症状固定までしっかりと通院することが重要です。
ただ、通院回数を不自然に増やせばよいわけではありません。
事故による症状の程度に応じた必要な治療を継続し、医学的資料と生活・仕事への影響を整合的に示すことがポイントです。
第二に「後遺症の有無と等級」です。大腿骨骨折で股関節の機能障害や短縮障害、神経症状が認定されれば、慰謝料だけでなく将来の減収分である逸失利益も加わり、数百万〜数千万円単位で賠償金が変わる(高額になる)可能性があります。
第三に「事故の過失割合」も考慮されます。被害者にも過失があると賠償金全体が減額されるため、正しい過失割合を主張・変更させることが重要です。
7.交通事故に関する法律相談の重要性
⑴法律事務所の役割と選び方
交通事故の被害者が適正な補償を受けるためには、法律事務所の専門性の確認が極めて重要です。
すべての弁護士が交通事故の実務に精通しているわけではありません。
大腿骨骨折のような重大な機能低下や労働能力の喪失が伴うケースでは、後遺障害認定に関する深い医学的知見や、保険会社との交渉実績が豊富な事務所を選ぶことが重要です。
優誠法律事務所は、所属弁護士全員が10年以上の交通事故案件の経験を持ち、累計2,000件以上の解決実績があります。
ご相談時の親身な対応や正確な見通しの説明を重視し、被害者のお悩みやご不安に寄り添った対応を行っていますので、弁護士への依頼をご検討されているのであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。
⑵解決事例の紹介
当事務所における具体的な解決事例を紹介します。
【事例】バイク走行中に自動車と衝突し、大腿骨骨幹部骨折等を負ったケース
本件の依頼者は、治療終了後、保険会社の事前認定で後遺障害12級13号(神経症状)のみが認定され、保険会社からこれを前提とする示談金が提示されていました。
ご依頼後、当事務所の弁護士が介入し、医療記録や画像データを詳細に分析した結果、脚の短縮(1cm以上)と、股関節の可動域制限が適切に評価されていないという問題の存在が判明しました。
そこで、医師に可動域の再測定と診断書の追記を依頼し、被害者請求による異議申立てを行った結果、短縮障害(13級8号)と機能障害(12級7号)が併合して認定されました(併合11級)。
その結果、逸失利益の計算に用いる労働能力喪失率が上昇し、最終的な賠償額が当初の提示額から1000万円以上も増額となり、被害者の方に大変納得いただける結果となりました。
⑶長期リハビリと生活の質向上のための対策
大腿骨骨折の場合、退院後も長期間にわたるリハビリが必要となることが多いです。
大腿骨骨折により歩行が困難になった場合、ご自宅のバリアフリー改修(手すりの設置や段差解消)や、車椅子の購入など、生活の質(QOL)を維持・向上させるための対策費用も、必要性が認められれば損害賠償として請求可能です。
家庭や職場への復帰に向けた社会的なサポート体制の構築についても、法的側面から最大限のアドバイスと交渉を行います。
8.まとめ
大腿骨骨折は、長期間の痛みを伴う治療と過酷なリハビリを強いられ、後遺障害が残りやすい重大なケガです。
保険会社からの治療費の不当な打ち切りや、自社の基準に基づく低額な示談金の提示など、被害者ご自身だけで対応するには非常に困難な問題が数多く立ちはだかります。
適正な後遺障害等級の認定を受け、本来受け取るべき正当な損害賠償金(慰謝料や逸失利益)を獲得するためには、事故直後の治療段階から交通事故に精通した弁護士のサポートを受けることが不可欠です。
優誠法律事務所では、大腿骨骨折をはじめとする重傷事故・後遺障害案件において、数多くの増額実績とノウハウを有しております。
ご自身の加入する自動車保険等に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、実質的な自己負担ゼロでご依頼いただけるケースも多いです。
「提示された示談金は本当に適正か?」「後遺障害等級は正しく認定されているか?」と少しでも疑問や不安をお持ちの方は、一人で悩まずに、まずは弁護士法人優誠法律事務所の無料相談をご利用ください。
全国どこからでも、お電話やメール、WEB面談でのご相談を承っております。
あなたの正当な権利を守り、新たな生活への第一歩を踏み出すために、私たちが全力でサポートいたします。
【関連記事】
投稿者プロフィール

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故のリハビリでも慰謝料は請求できる?通院時の注意点を弁護士が解説
交通事故に遭い、辛い痛みや不自由な生活に耐えながらリハビリを続けている被害者の方は少なくありません。
終わりの見えない治療の中で、「いつまで通院すればいいのか」「リハビリ期間中の慰謝料は適正に支払われるのか」と不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、交通事故におけるリハビリ期間と慰謝料の深い関係性、入通院慰謝料の計算基準、症状固定後の対応、そして弁護士に依頼するメリットまで、慰謝料請求の全貌を詳しく解説します。
結論として、交通事故で負った怪我について、医師の診断や指示のもとで行うリハビリ通院は、原則として入通院慰謝料の対象です。
相手方に賠償責任がある場合には、慰謝料を請求できるほか、治療費(リハビリ費用)、通院交通費、休業損害などの賠償金についても補償の対象となります。
ただし、リハビリに通っていれば必ず希望どおりの金額をもらえるわけではありません。
症状、治療の必要性、治療期間、実通院日数などを踏まえ、適切な金額が判断されます。
1 交通事故のリハビリと慰謝料の関係
⑴ リハビリの重要性と慰謝料の関連性
重傷であれ軽い怪我であれ、被害者が失われた能力を取り戻すためには、適切な治療を受けることが不可欠です。
交通事故後の治療において、リハビリは非常に重要な役割を果たします。
心身の機能回復を促進するだけでなく、慰謝料の算定においても影響を与えることがあるのです。
慰謝料の金額は、単に通院した回数だけで決まるものではありませんので、どのように算定されるのかについて知っておく必要があります。
⑵ 交通事故によるリハビリの目的
交通事故(追突事故や自転車、バイクの事故など)によるリハビリの主な目的は、身体機能の回復や怪我の改善です。
怪我の程度に応じたリハビリ(例えば、運動器リハビリテーション等)を受けることで、日常生活に戻るためのサポートを受けられます。
むちうちなどの軽傷であっても、骨折など比較的重い怪我であっても、必要となるリハビリの内容や通院期間は一律ではありません。
主治医の診断をもとに、症状や回復状況に応じた治療計画を立てることが重要です。
また、早期に適切なリハビリを受けることにより、後遺障害が残ってしまう可能性を軽減できるという効果も期待できます。
2 入通院慰謝料の対象となるリハビリ期間
⑴ 入通院慰謝料の算定基準
入通院慰謝料の金額については、裁判基準の場合、治療回数(実通院日数)ではなく治療期間が主な要素となります。
一方、自賠責基準の場合は、次のとおり、基本的に治療回数(実通院日数)が基準になりますが、治療期間も考慮要素になります。
【自賠責基準の慰謝料:4,300円×対象日数】
対象日数:以下の①と②を比較して少ない方
①実通院日数(入院日数+通院日数)×2
②治療期間(治療開始から完治または症状固定までの日数)
例えば、治療期間が90日、実通院日数が40日の場合、対象日数は「90日」と「40日×2=80日」のうち少ない80日となります。
この場合、自賠責基準による入通院慰謝料は、4,300円×80日=34万4,000円を目安に算出します。
また、傷害による損害(治療費や慰謝料など)について、自賠責保険会社から支払われる限度額は120万円となります。
入通院慰謝料を計算するにあたっては、医療機関が作成した診断書や診療報酬明細書等の治療記録が極めて重要な証拠となります。
特に、相手方に治療の必要性など争われている場合には、必要に応じて専門家の意見を求めるなど、適切な慰謝料の算定について事前の準備を進めることも大切です。
⑵ リハビリ期間中の慰謝料請求の可否
人身事故による傷病の治療としてリハビリを受ける期間中も、相手方保険会社からの内払いという形で慰謝料の支払いを受けられる場合もあります。
既にある程度治療実績がある場合や、診断書などに医師の指示やリハビリの内容が記録されている場合は、内払いが認められる可能性も高くなります。
ただ、慰謝料の内払いを保険会社に強制する法的根拠はありませんので、あくまで保険会社側の判断次第ということにはなります。
3 症状固定後のリハビリと慰謝料
⑴ 症状固定とは何か
症状固定とは、治療してもこれ以上症状の改善が見込めない状況を指します。
医学的な要素が含まれていることもあり、症状固定した日がいつであるかについては、基本的には担当医師が判断することになります。
そのため、安易に症状固定であると自己判断して治療を中断することなく、医師の指示に従って治療を行うことが重要です。
一方、症状固定は、法律的な観点からの評価を行う概念でもあり、担当医の症状固定日に関する判断は絶対的なものではありません。
例えば、裁判に至った場合などでは、担当医の判断を参考にしながら、症状固定した日がいつであるかについて裁判所が判断することになります。
⑵ 症状固定後のリハビリに関する慰謝料
原則として、交通事故の損害賠償の範囲は症状固定までになります。
そのため、症状固定後にリハビリを継続しても、その治療費や慰謝料は損害として認められません。
症状固定時に残存してしまった症状に対しては、「後遺障害」としての評価を受けて、損害賠償を受けることが必要になります。
症状固定後に後遺障害の申請をしない場合は、症状固定までに発生した治療費や通院交通費、慰謝料などを具体的に計算して請求することになります。
また、症状固定後も、強い症状が残って困っている場合には、自己負担でリハビリの治療を継続することも検討すると良いでしょう。
心身のためということはもちろん、後遺障害の審査にあたり、症状が残っていることに関する判断要素にもなり得るためです。
4 リハビリにおける慰謝料の計算方法
⑴ 自賠責・任意保険・弁護士基準の違いとリハビリ通院の慰謝料相場
交通事故のリハビリ通院の慰謝料は、治療期間、怪我の程度、入院の有無、実通院日数、通院頻度などを踏まえて算出されます。
なお、通院回数を増やせば慰謝料が自動的に増額されるわけではなく、医師の指示に基づく必要かつ相当な治療であったかが重要です。
そして、慰謝料の相場については、自賠責基準、任意保険基準、弁護士(裁判)基準という3つの基準があります。
自賠責基準は法律に基づく最低限の慰謝料を示し、通常は低めの金額であるとともに、自賠責保険金自体に120万円の上限額が設定されています。
もっとも、自賠責基準は、基本的に被害者側に多少の過失があっても減額されず、重大な過失がある場合にだけ過失減額がされるという特徴があります。
任意保険基準は、相手方の任意保険会社が示談金額を提示する際に用いる基準であり、具体的な金額や運用は保険会社ごとに異なります。
弁護士(裁判)基準は、基本的に最も高額となります。
これらの違いを理解することで、慰謝料の請求においてどの基準を用いるべきか適切な判断ができるようになります。
具体的には、事故の状況や過失割合の争い、相手方との交渉により変わるため、それぞれの基準の特徴をしっかり把握しておきましょう。
ただ、これらの判断を自身で行うのは難しいと思いますので、専門家に相談することが重要といえます。
⑵ 慰謝料請求時の注意点
慰謝料請求を行う際には、事故直後の対応が非常に重要です。
例えば、事故の記録や、いつどこで治療を受けるべきか、整骨院や接骨院に通院する場合は担当医から同意を得ておく必要があるのか等です。
また、慰謝料の請求には専門的な知識が必要となるため、法律の専門家や弁護士に相談することで、早い段階で適切なアドバイスを得ることができます。
適正な慰謝料を受け取れるようにするためには、事故後早い段階からこれらの知識を身につけ、準備を怠らないことが大切です。
5 リハビリ通院の頻度と慰謝料の影響
⑴ 適正な通院頻度とは
リハビリの適正な頻度は、症状ごとにそれぞれ異なるため、医師の診断や指示に従い、必要な回数を通院することが重要です。
毎日痛みが続くからといって、医師の診断や指示に従わず、むやみに回数を増やしたり、一度に長時間の治療を受けたりすれば良いというわけではありません。
どのような頻度で通うべきかについては、医師と相談の上、医師の指示に従いましょう。
また、リハビリによる改善傾向が記録されていれば、通院期間が長引いていたとしても、症状固定ではないことについての重要な一資料となります。
⑵ 過度な通院のリスク
一方で、むちうち等で過剰に通い過ぎる(通院日数が多い)と、保険会社が負担する治療費の金額が大きくなる上、保険会社から治療の必要性を疑われることにより、治療費が早期に打ち切られやすくなる等、慰謝料請求において不利な状況を招く可能性があります。
反対に、むち打ち等で通院日数があまりにも少ない(過少な)場合も、不利な状況を招く可能性があります。
例えば、1ヶ月に1回程度しか通院していない場合、空白の期間が長すぎるといった理由で、治療費が打ち切られやすくなることが考えられます。
このように、通院頻度については、医師にしっかり相談した上で、自身の体調に合わせた通院計画を立てることが重要です。
適度な頻度を心掛け、過剰・過少な通院による打ち切りを防ぎながら、健康的な回復を目指しましょう。
6 整骨院・接骨院でのリハビリと慰謝料の関係
⑴ 整骨院・接骨院通院のメリットとデメリット
整骨院などに通院することにはいくつかのメリットがあります。
まず、整形外科よりも受付時間が長いことが多く、患者のライフスタイルに合わせた通院が可能な傾向にあります。
また、個別のケアが受けられるため、患者にとって満足度の高い施術が行われる傾向にあります。
しかしながら、デメリットとして、このような満足度の高い施術が行われることもあり、過剰に通い過ぎてしまい、治療費が高額になって早期に打ち切られたり、治療の必要性を争われるリスクもあります。
最近は、整骨院の施術費を3ヶ月までしか認めないと主張してくる保険会社もありますので、整骨院での治療を選択することで治療期間が限定されてしまう可能性もあります。
⑵ 整骨院・接骨院での治療が慰謝料に与える影響
リハビリの慰謝料の算定をする際には、整骨院・接骨院での治療日・治療期間も合わせて算定しますので、整骨院・接骨院での治療も慰謝料の金額に影響を与えます。
また、症状固定時期が問題になるケースでは、施術証明書等に症状が改善している旨の記載がされていれば、症状固定ではないことを示す証拠にもなります。
交通事故で負った捻挫などの怪我について整骨院・接骨院で施術を受ける際は、まず整形外科を受診し、主治医の診断を受けることが重要です。
整骨院などへの通院は、主治医に相談し、治療上問題がないことを確認した上で行いましょう。
加害者側の任意保険会社が治療費を一括対応している場合には、整骨院などに通院する前に保険会社へ連絡しておくことも大切です。
医師の診断や許可、施術内容の記録がないまま通院を続けると、治療費や慰謝料の必要性を争われるおそれがあります。
7 転院時の手続きと保険会社への連絡
⑴ 転院の必要性と手続き
引っ越し等により転院を余儀なくされる場合、新しい病院を選ばなければならない必要性が生じます。
院にあたっては、現在の治療状況や症状を整理し、医師に相談することが重要です。
転院の手続きをするにあたっては、転院先の医療機関に事前に連絡を取り、受け入れ可能か否かを確認しておいた方が良いでしょう。
その上で、現在の医師に紹介状を作成してもらうことにより、円滑な転院が可能となる可能性が上がります。
⑵ 保険会社への連絡方法
任意保険会社が治療費の一括対応をしているケースで転院する場合、対応している任意保険会社に電話等で連絡し、転院を希望している旨を伝えましょう。
保険会社への事前連絡を怠ると、転院先の治療費について一括対応をしてもらえないこともあり、一時的に治療費を立て替えなければならないリスクがあることに注意が必要です。
8 後遺障害等級と慰謝料請求
⑴ 後遺障害等級の決定方法
リハビリを続けても後遺症が残った場合、後遺障害の等級を獲得できないか検討することが重要です。
基本的には自賠責保険会社が後遺障害等級認定の審査を行いますが、後遺障害等級の判断や決定には、医療機関での診断が必要です。
具体的には、医療機関で後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
注意点としては、後遺障害等級認定の審査には時間が掛かるということです。
また、後遺障害診断書の費用は医療機関によって異なり、5,000円~10,000円程度という印象ですが、後遺障害等級が認定されなかった場合は自己負担になるというリスクがあります。
後遺障害等級は第1級から第14級までに区分され、認定結果や等級によって後遺障害慰謝料、逸失利益などの損害賠償額が変わります。
症状が残っている場合には、後遺障害等級の申請を行うべきか、早めに検討することが重要です。
⑵ 後遺障害慰謝料の計算方法
交通事故に遭って後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料には、等級に基づく裁判基準が存在します。
まずはその裁判基準を知識として身に着け、どの程度の後遺障害慰謝料が妥当かを把握しましょう。
なお、後遺障害に関する請求費目には、後遺障害慰謝料に加えて、後遺障害逸失利益(将来の収入減に対する逸失利益)があります。
これらの請求費目についても、専門知識を持つ弁護士に相談することで、より正確な計算が可能になります。
9 弁護士に依頼するメリットと相談の流れ
⑴ 弁護士に相談する理由
なぜ法律事務所(弁護士法人など)に相談するのが良いのか、その理由としてはまず、交通事故に基づく損害賠償請求の手続きは複雑であるということが挙げられます。
次に、弁護士は専門的な知識を持っており、適切なアドバイスを提供できる点が挙げられます。
保険会社から治療の打ち切りを打診されたり、治療の必要性を疑われ、治療を続けることに疑問が生じるような事例でも、弁護士が状況を整理して保険会社と交渉します。
さらに、弁護士に依頼することで、保険会社とのやりとりに関する時間や労力を節約できることもメリットとして挙げられます。ご自身の保険に弁護士費用特約が付帯されていれば、基本的に保険会社が弁護士費用を負担してくれます。
⑵ 示談交渉の流れと注意点
示談交渉の流れについて、基本的な流れをご説明します。
交通事故が発生した後、通院を開始し、治癒または症状固定するまで通院を行います。
症状固定になった場合は、自賠責保険会社に後遺障害等級の申請をするか否か検討を行い、申請を行わない又は後遺障害等級について確定(非該当含む)した後、示談交渉という流れになるのが一般的です。
示談交渉において注意すべきポイントとして、提示された通りの示談内容に漫然と同意するのは避けるべきです。
提示された金額が妥当かどうか判断するにあたり、専門家に相談してみることをお勧めします。
10 リハビリ通院中の慰謝料に関するよくある質問
Q.交通事故のリハビリ通院でも慰謝料はもらえる?
A.医師の診断や指示に基づき、交通事故による怪我の治療として行うリハビリ通院は、原則として入通院慰謝料の対象です。
ただし、症状、治療の必要性、通院頻度、診療記録などを踏まえて判断されるため、通院していれば必ず希望どおりの金額をもらえるわけではありません。
Q.保険会社から治療の打ち切りを打診された場合はどうすればよい?
A.保険会社から治療費の支払い終了を打診されても、自己判断で通院をやめる必要はありません。
まずは主治医に症状や治療継続の必要性を相談し、診断内容や治療方針を確認しましょう。
加害者側の保険会社から提示された内容に納得できない場合には、交通事故に詳しい弁護士への相談も検討してください。
Q.整骨院でリハビリを受ける場合も慰謝料の対象になる?
A.整骨院での施術も、交通事故による怪我の治療として必要性が認められれば、慰謝料や治療費の対象となります。
ただし、整骨院のみの通院や、医師の診断を受けていない施術は争われやすいため、整形外科への通院と主治医への相談を継続することが大切です。
11 まとめ
交通事故後にリハビリ通院を行う場合、医師の診断や指示に基づき、怪我の治療として必要かつ相当な内容で継続していれば、原則として入通院慰謝料の対象となります。
もっとも、慰謝料の金額は通院回数だけで決まるものではなく、症状、治療期間、実通院日数、診療記録、治療の必要性などを踏まえて判断されます。
特に、整骨院での施術、通院頻度、転院、症状固定、後遺障害等級の申請などは、治療費や慰謝料の取扱いに影響することがあります。
自己判断で通院を中断したり、保険会社から提示された示談内容にそのまま同意したりせず、まずは主治医の意見や診療記録を確認することが重要です。
保険会社から治療の打ち切りを打診された場合や、提示された慰謝料額が適正か判断できない場合には、交通事故に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士費用特約を利用できる場合には、費用負担を抑えながら相談・依頼できます。
私たち優誠法律事務所は、交通事故のご相談は無料でお受けしております。
お気軽にお問い合わせください。
【関連記事】
投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故による大腿骨骨折・後遺障害と慰謝料を徹底解説
交通事故で負傷する部位のなかでも、大腿骨(太ももの骨)の骨折は特に重篤な損傷のひとつです。
手術やリハビリに長期間を要するうえ、後遺症が残るケースも少なくありません。
そのような事情もあり、交通事故で大腿骨を骨折した場合、治療期間に応じた入通院慰謝料に加え、後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求でき、受け取れる賠償金は大きくなります。
大腿骨骨折では、股関節や膝関節の可動域制限、下肢の短縮、変形癒合、偽関節、痛みやしびれなどが後遺障害として問題となります。
後遺障害慰謝料の目安は、等級により弁護士基準で110万円から1,180万円程度ですが、実際の賠償額は入通院期間、収入、年齢、仕事への影響、過失割合、他の怪我の有無によって変わります。
なお、後遺障害が認定されない場合でも、治療費、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費などは請求できます。
本記事では、交通事故による大腿骨骨折の基礎知識から、後遺障害等級の認定基準・慰謝料相場・弁護士に相談するメリットまでを、交通事故案件に注力している弁護士の監修の下わかりやすく解説します。
1. 交通事故による大腿骨骨折の基本知識
大腿骨の役割と重要性
大腿骨は人体最大かつ最強の骨であり、大腿部(太もも)に位置して股関節と膝関節をつなぐ重要な役割を担っています。
体重の支持・歩行・走行・立ち上がりなど、日常のあらゆる動作に不可欠です。
大腿骨は構造上、①大腿骨頭・頸部・転子部(股関節側)、②骨幹部(中央部)、③遠位端(膝関節側)の3つに大別されます。

それぞれ骨折の様相や治療法・後遺障害リスクが異なります。
交通事故での大腿骨骨折のメカニズム
大腿骨骨折は、交通事故のなかでもバイク事故・自転車事故・歩行者と自動車の衝突などで多く発生します。
直接的な衝撃(相手車両への膝の激突など)や、転倒時の体重のかかり方によって骨折が生じます。
| 骨折部位 | 主な受傷メカニズム | 特徴・リスク | 後遺障害で確認する主な点 |
| 大腿骨頚部骨折 | 側方からの衝突・転倒時の捻転力 | 高齢者に多い。股関節の機能障害が残りやすい | 股関節の可動域制限、疼痛、人工骨頭・人工股関節置換後の機能 |
| 大腿骨転子部骨折 | 直接打撲・転倒 | 歩行困難となる場合や足が短縮する場合もある | 下肢短縮、股関節の可動域制限、歩行状態 |
| 大腿骨骨幹部骨折 | 車両との正面衝突・強い外力 | 大量出血リスク。髄内釘固定が一般的 | 下肢短縮、変形癒合、偽関節、股関節・膝関節の可動域、神経症状 |
| 大腿骨遠位端骨折 | 膝の強打 | 膝関節の機能障害が残りやすい | 膝関節の可動域制限、膝痛、変形癒合、歩行への影響 |
2. 大腿骨骨折の症状と治療法
大腿骨骨折の主な症状
大腿骨骨折は骨折部位によって症状が異なりますが、共通して現れる主な症状は以下のとおりです。
- 激しい疼痛
- 大腿部の変形・腫脹(骨がずれると著明な腫れが生じる)
- 患肢の短縮・回旋変形
- 歩行・起立不能
- 出血・血腫形成(骨幹部骨折では大量出血)
- 神経・血管損傷症状(しびれ・冷感・チアノーゼ)
⚠️ 注意:大量出血について
大腿骨骨幹部骨折では、骨折部への出血だけで1,000〜2,000mLに達することがあります。救急搬送後の輸血・ショック対応が必要となるケースもあり、生命に関わる重篤な外傷です。
治療方法とリハビリテーション
大腿骨骨折の治療は基本的に手術療法が選択されます。骨折部位・年齢・骨折型によって術式が決まります。
| 治療法 | 対象・特徴 | 入院期間の目安 |
| 髄内釘固定術 | 骨幹部骨折に最も多く用いられる。骨髄腔にチタン製の釘を挿入して固定する。 | 2〜4週間 |
| プレート固定術 | 遠位端骨折など複雑な形状の骨折に有効。プレートとスクリューで固定。 | 2〜6週間 |
| 人工骨頭置換術 | 頚部骨折(特に高齢者)に対し、骨頭を人工物に置き換える。 | 3〜6週間 |
| 人工股関節全置換術(THA) | 骨頭壊死・変形性股関節症が生じた場合に選択される。 | 3〜6週間 |
術後はリハビリテーションが不可欠です。
早期から関節可動域訓練・筋力訓練・歩行訓練を行い、機能回復を目指します。
骨折の重症度・合併症の有無によって、リハビリ期間は数カ月〜1年以上に及ぶことも珍しくありません。
📋 リハビリの流れ(例)
STEP 1:術直後〜2週間(急性期リハビリ)→ ベッド上での関節可動域訓練・筋力維持・浮腫軽減
STEP 2:2〜8週間(荷重・歩行訓練)→ 部分荷重から全荷重へ段階的に移行。松葉杖・歩行器使用
STEP 3:2〜6カ月(機能回復訓練)→ 筋力強化・バランス訓練・日常生活動作(ADL)の回復
STEP 4:6カ月以降(社会復帰へ向けたリハビリ)→ 職場復帰訓練。症状固定の判断も行われる
3. 大腿骨骨折による後遺障害の種類
大腿骨骨折では、適切な治療・リハビリを行っても症状が残存するケースがあります。
これを後遺障害といい、自賠責保険の後遺障害等級が認定されると、慰謝料・逸失利益などの賠償額が大幅に増加します。
主な後遺障害は「短縮障害」「機能障害」「神経障害」の3つです。
短縮障害とその影響
骨幹部骨折などで骨がずれたまま癒合すると、患肢が健側より短くなる短縮障害が生じます。
| 短縮の程度 | 後遺障害等級 | 主な影響 |
| 5cm以上短縮 | 8級5号 | 跛行(はこう)が顕著。骨盤傾斜・脊椎側弯が生じる。長距離歩行が困難 |
| 3cm以上短縮 | 10級8号 | 跛行(はこう) |
| 1cm以上3cm未満短縮 | 13級8号 | 軽度の跛行。靴底のリフトアップで対応できるケースも多い |
機能障害の具体例
骨折後の関節拘縮・筋萎縮・骨癒合不全などにより、股関節や膝関節の可動域が制限される機能障害が残ることがあります。
| 障害の内容 | 後遺障害等級 |
| 股関節または膝関節の用廃(まったく動かない・健側の10%以下) | 8級7号 |
| 股関節または膝関節の可動域が健側の1/2以下に制限 | 10級11号 |
| 股関節または膝関節の可動域が健側の3/4以下に制限 | 12級7号 |
神経障害の症状と影響
骨折に伴う神経損傷や手術による神経への影響で、下肢のしびれ・感覚障害・疼痛(神経障害性疼痛)が残存することがあります。
- 坐骨神経障害:大腿後面から下腿にかけてのしびれ・感覚低下・筋力低下
- 大腿神経障害:大腿前面のしびれ・感覚低下、膝伸展力の低下
- 神経障害性疼痛(CRPS含む):持続する灼熱感・アロディニア
- 足の変形:下垂足(腓骨神経麻痺)による歩行困難
| 神経障害の程度 | 後遺障害等級 |
| 1関節の完全弛緩性麻痺等 | 8級7号 |
| 1下肢の軽度の麻痺・神経症状(しびれ等) | 12級13号または14級9号 |
4. 交通事故で大腿骨を骨折した場合の慰謝料・賠償金の相場
大腿骨骨折で請求できる賠償金の内訳
交通事故で大腿骨を骨折した場合、請求できる可能性がある賠償金は後遺障害慰謝料だけではありません。
検索で「慰謝料」と調べる方の多くは、最終的に受け取れる賠償金全体を知りたいと考えていると思いますので、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、休業損害、逸失利益、治療費、通院交通費、装具費などに分けて確認することが重要です。
| 項目 | 内容 |
| 入通院慰謝料 | 入院・通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する補償 |
| 後遺障害慰謝料 | 後遺障害等級が認定された場合の精神的苦痛に対する補償 |
| 休業損害 | 治療のために仕事や家事ができず、収入等が減少した損害 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害により将来の収入が減ると見込まれる損害 |
| 治療関係費等 | 治療費、通院交通費、装具費、付添費など |
後遺障害等級の認定基準
後遺障害等級は1級〜14級まであり、1級が最も重篤です。
大腿骨骨折で認定される等級は、後遺症の種類・程度によって異なります。
複数の後遺障害が残る場合は、併合によって等級が上がることがあります。
| 等級 | 大腿骨骨折に関連する典型例 |
| 6級 | 1下肢の膝関節及び股関節が用廃(複数関節) |
| 8級 | 1関節の用廃・5cm以上の短縮障害・完全弛緩性麻痺 |
| 10級 | 1関節の可動域1/2以下制限・3cm以上の短縮障害 |
| 12級 | 1関節の可動域3/4以下制限・変形癒合・神経症状(他覚所見あり) |
| 13級 | 1cm以上3cm未満の短縮障害 |
| 14級 | 神経症状(他覚所見なし) |
慰謝料の相場と計算方法
交通事故の慰謝料には①自賠責基準・②任意保険基準・③弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。
弁護士基準が最も高額になるため、弁護士に依頼することで慰謝料が大幅に増額するケースが多いといえます。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準(目安) |
| 6級 | 512万円 | 1,180万円 |
| 8級 | 331万円 | 830万円 |
| 10級 | 187万円 | 550万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
具体例(機能障害に関する慰謝料・逸失利益)
機能障害(8級7号・10級11号・12級7号)に対応する後遺障害慰謝料は上記表のとおりですが、これに加えて逸失利益が算定されます。
📐 逸失利益の計算式
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 67歳までのライプニッツ係数
例:年収500万円・8級認定(喪失率45%)・45歳の場合
500万円 × 0.45 × 15.9369 ≒ 約3,586万円
5. 後遺障害認定を受けるためのポイント
症状固定の重要性
後遺障害として申請できるのは、症状固定(これ以上治療を続けても症状が改善しない状態)と医師が判断した後です。
- 症状固定の判断は担当医師が行う。保険会社に促されても、症状の改善が見込まれる状況であれば治療継続を主治医に相談した方がよい
- 症状固定日は後遺障害等級の認定に影響する。あまり早期に設定しないよう注意が必要
- 症状固定後は、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼する
後遺障害診断書の確認ポイント
後遺障害診断書の記載内容が、等級認定の可否を大きく左右します。
以下の点を必ず確認してください。
- 可動域の計測値:健側・患側の両方を正確に記載。数値が欠けていると適切な等級が認定されないリスクがある
- 画像所見の記載:X線・MRIなどの画像所見が明記されているか。変形癒合・骨萎縮の有無を確認
- 神経症状の他覚所見:しびれ・感覚障害を訴えるだけでなく、腱反射低下・MMT結果など他覚的所見が必要
- 短縮の計測値:健側・患側の具体的な数値が記載されているか
⚠️ 後遺障害診断書は弁護士と一緒に確認を
後遺障害診断書の記載が不十分・不正確な場合、本来認定されるべき等級が認定されないことがあります。提出前に弁護士に確認を依頼することを強くお勧めします。
6. 弁護士に相談するメリット
適正な賠償金の獲得
保険会社は任意保険基準(自賠責基準に近い低い金額)で示談交渉を行います。
弁護士が代理人として交渉することで、弁護士基準(裁判基準)での請求が可能となり、慰謝料・逸失利益が大幅に増額するケースが多いといえます。
| 項目(具体例) | 弁護士なし(保険会社提示額の例) | 弁護士あり(弁護士基準) |
| 後遺障害慰謝料(12級) | 約100〜140万円 | 約290万円 |
| 後遺障害慰謝料(8級) | 約340〜400万円 | 約830万円 |
| 入通院慰謝料(6カ月入通院) | 約80〜100万円 | 約116万円〜 |
交渉のプロセスとサポート
弁護士に依頼することで、以下のサポートをすべて受けられます。
- 事故直後からの証拠保全アドバイス:警察・保険会社への連絡方法、診断書・画像の保管方法などを指導
- 後遺障害申請のサポート:後遺障害診断書の確認・被害者請求・異議申立て手続きの代行
- 保険会社との示談交渉:弁護士基準での慰謝料・逸失利益等の請求。不当な過失割合の修正も対応
- 訴訟・調停への対応:示談交渉が不調の場合、訴訟・ADRへの対応も一貫サポート
✅ 弁護士費用特約を活用しよう
多くの自動車保険には弁護士費用特約が付帯しています。
弁護士費用特約があれば、弁護士費用(着手金・報酬金)が保険でまかなわれるため、実質無料で弁護士に依頼できるケースが多くあります。
まずは加入中の保険を確認してください。
7. 大腿骨骨折に関するよくある質問
Q. 治療にかかる期間はどのくらいですか?
A. 大腿骨骨折の治療期間は骨折の部位・重症度・年齢・合併症の有無によって大きく異なります。
一般的には入院:1〜3カ月、リハビリ期間を含めた症状固定まで:6カ月〜1年以上かかることが多いです。
後遺症が残る場合、治療期間中から弁護士に相談しておくことが重要です。
Q. 大腿骨骨折で後遺障害が残る可能性はどのくらいですか?
A. 大腿骨骨折は人体最大の骨への重篤な損傷であるため、適切な治療・リハビリを行っても何らかの後遺症が残るケースは少なくありません。
症状を粘り強く医師に訴え、画像検査・神経学的検査を受けることが重要です。
Q. 後遺障害の認定に納得できない場合はどうすればよいですか?
A. 後遺障害の認定結果に納得できない場合は「異議申立て」を行うことができます。
新たな医学的証拠(追加の検査結果・医師意見書など)を添付して再審査を求めることが可能です。
弁護士に相談することで、適切な証拠収集・申立て書類の作成を任せることができます。
Q. 示談を急かされていますが、どうすればよいですか?
A. 症状固定前・後遺障害等級認定前に示談してはいけません。
示談が成立すると、原則として追加請求ができなくなります。
まずは弁護士に相談し、現在の状況を確認したうえで示談のタイミングを判断してください。
8. まとめと今後のステップ
交通事故後の行動指針
大腿骨骨折を負った場合、以下のステップで行動することで、適正な賠償金を受け取れる可能性が高まります。
- すぐに医療機関を受診・記録を残す:事故直後の診断書・画像(X線・CT・MRI)を保管。受診記録・治療記録をしっかり残す
- 早期に弁護士へ相談する:事故直後から弁護士に相談することで、証拠保全・治療方針へのアドバイスが受けられる。無料相談を活用しよう
- 症状固定まで治療を継続する:症状が残っている間は治療を継続。保険会社に促されても主治医の判断に従う
- 後遺障害診断書を確認・申請する:弁護士と一緒に後遺障害診断書を確認し、被害者請求で後遺障害等級の認定を申請する
- 弁護士基準で示談交渉・訴訟:後遺障害等級認定後、弁護士基準(裁判基準)での慰謝料・逸失利益を請求し示談交渉を進める
優誠法律事務所では、交通事故被害のご相談は無料で対応しております。
全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。
【関連記事】
投稿者プロフィール

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故で足を骨折した場合の慰謝料相場|後遺障害等級・請求方法を弁護士が解説
交通事故で足を骨折してしまった場合、身体的な痛みはもちろんのこと、治療の長期化や仕事への影響、今後の生活に対する不安など、さまざまな問題が重なります。
そのような状況で「自分はどれくらいの慰謝料をもらえるのか」、「どうやって請求すればいいのか」と疑問を抱く方は少なくありません。
一般的に、相手方保険会社から示談金として提示される金額が、本来認められるべき適正な水準を下回っているケースは多く見られますが、特に骨折が伴う交通事故では、その差額が大きい傾向があります。
適切な補償を受けるためには、慰謝料の仕組みや相場、請求の手順についての正しい知識が不可欠です。
本記事では、足の骨折に関わる慰謝料の種類・相場・算定基準・請求方法を、交通事故を得意とする弁護士の視点からわかりやすく解説します。
最後まで読むことで、あなたやご家族が適正な補償を得るために必要な行動が明確になると思います。
1.交通事故で足を骨折した場合の慰謝料相場
交通事故で足を骨折した場合の慰謝料は、治療期間や入院の有無、後遺障害等級が認定されるかどうかによって大きく変わります。
たとえば、弁護士基準(裁判基準)では、通院6ヶ月の場合の入通院慰謝料は116万円程度が目安です。
また、後遺障害が残った場合は、14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円の後遺障害慰謝料が認められるのが一般的です。
そのため、保険会社から提示された金額だけで判断せず、弁護士基準で計算した場合にどの程度の損害賠償を受け取ることができるのかを確認することが重要です。
2.交通事故による足の骨折と慰謝料の基本知識
(1)交通事故による骨折の種類と症状
交通事故によって足に生じる骨折は、部位や骨折の状態によってさまざまな種類に分類されます。
主な骨折部位と代表的な症状を以下に整理します。
足首(足関節)骨折:足首は体重を支える重要な部位であり、足関節は脛骨、腓骨、距骨の3つの骨で構成されています。交通事故の衝撃で強くひねられたり圧迫されたりすると骨折が生じやすい箇所です。主な症状として激しい腫れ・痛み・歩行困難が現れます。靭帯損傷を伴うケースも多く、足関節の可動域制限が残ることもあります。
大腿骨(太もも)骨折:人間の体で最も長い骨である大腿骨が骨折した場合、歩行が著しく困難になることがあります。特に高齢者では寝たきりになるリスクも高く、後遺症が残る可能性が高い重篤な骨折です。
脛骨(すね)・腓骨骨折:膝と足首をつなぐ脛骨・腓骨の骨折は、交通事故における下肢骨折の中でも発生頻度が高い部位です。骨が皮膚を突き破る「開放骨折」となる場合もあります。脛骨の膝関節内の骨折(高原骨折)の場合、膝関節の可動域に制限が出ることもあります。膝関節に近い部位の骨折では、靭帯損傷を伴うことも多いです。
骨盤骨折:交通事故による高エネルギー外傷で生じやすく、内臓への影響や大量出血を伴う危険な骨折です。長期入院・手術が必要となるケースが多く、後遺症のリスクも高い骨折です。
いずれの骨折も、事故直後は痛みや腫れが目立ちますが、時間が経つにつれて症状の全貌が明らかになることがあります。
「大丈夫だろう」と放置せず、整形外科などで画像検査(レントゲン・MRI)を受けることが重要です。
(2)骨折の治療法と回復期間
足の骨折に対する一般的な治療法は、骨折の部位・程度・ずれの有無などによって異なります。
保存療法(ギプス固定など):骨のずれが少ない場合は、ギプスや副木で患部を固定し、安静を保ちながら骨の自然癒合を待ちます。固定期間は骨折部位によって異なりますが、一般的に4〜8週間程度が目安です。その後、リハビリによって関節の可動域や筋力を回復させていきます。
手術療法(観血的整復固定術など):骨のずれが大きい場合や粉砕骨折の場合は、金属プレートやボルトで骨を固定する手術が行われます。手術後はリハビリが必要となり、金属を抜去する再手術が必要になる場合もあります。
回復にかかる期間の目安:骨折が癒合するまでに要する期間は、骨折の部位・重症度・年齢・体の状態によって異なります。軽度の骨折でも2〜3ヶ月程度、重症例では半年以上に及ぶことも珍しくありません。さらに、骨癒合後もリハビリが続くため、社会復帰までにはより長い期間を要するケースがあります。
3.交通事故で骨折した場合の慰謝料の種類
(1)入通院慰謝料とは
入通院慰謝料(傷害慰謝料)とは、交通事故の受傷による入院・通院期間中の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
骨折による長期の治療や療養、日常生活の制限、仕事への影響など、受傷後から治療終了(症状固定)までの精神的負担が補償の対象となります。
慰謝料の金額は、主に入院期間と通院期間の長さをもとに算定されます。
なお、「症状固定」とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態のことです。
症状固定の時点で治療を終了し、その後に残った症状は「後遺障害」として別途認定・請求する流れになります。
(2)後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、症状固定後も痛みや機能障害などの症状が残り、後遺障害等級の認定を受けた場合に請求できる慰謝料です。
骨折の場合、治療が完了しても以下のような症状が残ることがあります。
- 関節が正常な範囲まで動かなくなる(機能障害)
- 慢性的な痛みやしびれが続く(神経障害)
- 骨が正常に癒合せず、不安定な状態になる(変形障害)
- 足の長さに左右差が生じる(短縮障害)
これらの症状が認定された等級に応じて、後遺障害慰謝料の金額が決まります。
入通院慰謝料と比べて金額が大きくなるケースが多く、適切な後遺障害認定を受けることが適正な補償を得る上で非常に重要です。
4.骨折の慰謝料相場と算定基準
慰謝料の算定には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判基準)」の3つの基準が用いられます。どの基準を使うかによって、受け取れる金額に大きな差が生じます。
(1)自賠責保険基準による慰謝料
自賠責保険基準は、国が定めた最低限の補償を目的とした基準です。入通院慰謝料の計算式は以下のとおりです。
1日あたり4,300円(2020年4月以降)×対象日数
「対象日数」は、①実際に治療を受けた日数(実治療日数)×2 と、②入院・通院の合計期間(暦日数)のいずれか少ない方が採用されます。
たとえば、通院期間6ヶ月・実治療日数60日の場合、60日×2=120日と180日(6ヶ月)を比べ、少ない120日が対象となり、4,300円×120日=51万6,000円が慰謝料の目安となります。
ただし、自賠責保険には傷害部分の上限額(120万円)が設けられており、治療費や交通費なども含めてこの範囲内でしか補償されません。
(2)任意保険基準による慰謝料
任意保険基準は、各任意保険会社が独自に設定している基準です。
こちらの基準は、あくまで保険会社内部で運用している基準で公開されていませんが、自賠責基準よりは多少高い基準に設定されています。
(3)弁護士基準による慰謝料相場
弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例をもとに設定された基準で、3つの算定基準の中で最も高額な補償が得られます。
骨折のように客観的所見が明らかな場合は、「別表I」と呼ばれる高い方の基準が適用されます。
以下は弁護士基準(別表I)による入通院慰謝料の目安です。
| 通院期間 | 通院のみの場合 | 入院1ヶ月+通院の場合 |
| 1ヶ月 | 28万円 | 77万円 |
| 2ヶ月 | 52万円 | 98万円 |
| 3ヶ月 | 73万円 | 115万円 |
| 4ヶ月 | 90万円 | 130万円 |
| 5ヶ月 | 105万円 | 141万円 |
| 6ヶ月 | 116万円 | 150万円 |
自賠責基準と比較すると、弁護士基準の方が大幅に高額となることがわかります。
保険会社との示談交渉では、弁護士が介入することで弁護士基準の適用を主張できるため、弁護士への依頼を検討することが重要です。
5.後遺障害等級の認定とその影響
(1)後遺障害等級の概要
後遺障害等級とは、交通事故による後遺症の重さに応じて定められた1〜14級の分類制度です。
等級が高い(数字が小さい)ほど重篤な障害を意味し、受け取れる慰謝料や逸失利益の金額も大きくなります。
等級の認定は、相手方保険会社を通じて自賠責保険会社に申請する「事前認定」と、被害者自身が直接自賠責保険会社に申請する「被害者請求」の2通りの方法があります。
適正な等級認定を目指す上では、主治医が作成する後遺障害診断書の内容が極めて重要です。
症状や検査結果が漏れなく正確に記載されるよう、受診時に自覚症状を医師に詳しく伝えることが大切です。
(2)骨折による後遺障害等級の具体例
足の骨折によって認定される可能性がある主な後遺障害等級を、弁護士基準の慰謝料額とともに紹介します。
| 等級 | 主な症状の例 | 弁護士基準の慰謝料 |
| 14級 | 局部に神経症状を残すもの(痛み・しびれが継続) | 110万円 |
| 13級 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの | 180万円 |
| 12級 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 局部に頑固な神経症状を残すもの | 290万円 |
| 10級 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 550万円 |
| 8級 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 830万円 |
| 7級 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 1,000万円 |
足の骨折では、骨が癒合した後も、痛みやしびれ(神経障害)、関節の可動域制限(機能障害)などの症状を残すことがあります。
これらの症状が医学的に認められる場合、後遺障害等級が認定される可能性が高くなります。
特に、足関節・膝関節・股関節などの主要な関節に可動域制限が残った場合は、12級・10級・8級などの高い等級に該当する可能性があるため、後遺障害診断書に正確な検査結果を記載してもらう必要があります。
また、可動域制限が残らなかった場合でも、骨折部位に痛みが残っている場合は14級が認定されやすいため、症状固定前から医師に症状を詳しく伝え、診断書やカルテなどに適切に残してもらうことが重要です。
6.交通事故の骨折で慰謝料を請求するための手続き
(1)必要な書類と証拠
慰謝料を適正に請求するためには、事故の状況と損害を客観的に証明する書類・証拠の準備が不可欠です。
主に必要となる書類は以下のとおりです。
【事故を証明する書類】
- 交通事故証明書
- 事故車の損傷状況が分かる写真・修理見積書
【治療・傷病を証明する書類】
- 診断書(骨折の診断内容が明記されたもの)
- 診療報酬明細書(レセプト)
- 治療費の領収書
- 後遺障害診断書(後遺障害が残った場合)
【収入・生活への影響を証明する書類】
- 休業損害証明書(勤務先に作成してもらう)
- 源泉徴収票・確定申告書(収入を証明するため)
弁護士に依頼する場合は、書類収集のサポートも受けられます。
また、自動車保険に弁護士費用特約が付帯されている場合は、一般的に自己負担なく弁護士に依頼できるため、まず保険証券を確認することをおすすめします。
(2)請求の流れと注意点
交通事故による慰謝料の請求は、おおまかに以下の流れで進みます。
1. 事故直後の対応
警察への通報・相手方の情報確認・現場の記録を行います。
警察に届け出ないと「交通事故証明書」が取得できず、その後の請求が困難になります。
2. 医療機関での治療
整形外科などで骨折の診断を受け、医師の指示に従って治療を続けます。
通院の間隔が開きすぎると「完治した」と判断されるリスクがあるため、定期的な受診を維持することが重要です。
3. 症状固定・後遺障害の申請
治療を続けても改善が見込めなくなった段階で医師が「症状固定」を判断します。
後遺症が残っている場合は、後遺障害等級の認定申請を行います。
4. 保険会社との示談交渉
症状固定・後遺障害等級の確定後、保険会社と損害賠償額について交渉します。
提示額が適正かどうか、弁護士基準と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。
5. 示談書の締結・慰謝料の受領
双方が合意した内容で示談書を締結し、通常1〜2週間後に慰謝料が口座に振り込まれます。
なお、示談成立後は原則として追加請求ができないため、後遺症の状況が固まるまで安易に示談に応じないことが重要です。
(3)交通事故で足を骨折した場合の慰謝料事例
交通事故で足を骨折した場合の慰謝料や損害賠償額は、骨折の部位、治療期間、後遺障害等級、休業損害の有無によって大きく異なります。
たとえば、足関節の可動域制限が残り、後遺障害12級が認定されたケースでは、裁判基準では後遺障害慰謝料として290万円が目安となります。
関節の機能障害がさらに重い場合には、10級で550万円、8級で830万円が目安となります。
一方で、保険会社側から提示される金額は、弁護士基準より低いことがあります。
そのため、提示額をそのまま受け入れるのではなく、弁護士に相談し、適正な損害賠償額を確認することが解決への近道です。
7.慰謝料以外に請求できる損害
交通事故による足の骨折では、慰謝料のほかにもさまざまな損害を請求することができます。
損害の全体像を把握した上で、漏れなく請求することが大切です。
(1)休業損害の請求
休業損害とは、交通事故のケガによって仕事を休んだことで生じた収入の減少分を補う損害賠償です。
会社員・自営業・主婦(主夫)のいずれの場合でも請求が可能です。
計算の基本は「事故前の日収×休業日数」です。
日収は、会社員であれば事故前3ヶ月の給与をもとに算定し、自営業者は確定申告書などを参考にします。
主婦(家事従事者)の場合は、賃金センサスの女性全年齢平均賃金をもとに算定します。
骨折により長期間仕事を休む必要が生じた場合は、休業損害だけで数十万〜数百万円に及ぶこともあります。
勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、しっかりと請求しましょう。
(2)治療費やリハビリ費用の請求
骨折の治療に要した費用は、原則として相手方の保険会社が全額負担します。
請求できる費用の主な項目は以下のとおりです。
- 入院・手術費用(手術費・入院室料・食事代など)
- 通院治療費(診察料・検査料・薬代など)
- 装具費用(松葉杖・装具・車いすなど)
- 通院交通費(電車・バス代、タクシーが必要な場合はタクシー代)
- 入院雑費(日額1,500円程度が目安)
治療費に関する書類(領収書・明細書)は必ずすべて保管しておきましょう。
また、将来的に追加の手術(金属プレートの抜去手術など)が見込まれる場合、将来の治療費も請求できる場合があります。
8.交通事故の骨折で適正な慰謝料を得るためのポイント
(1)医師の指示に従う重要性
適正な慰謝料を得るためには、治療中の行動が非常に重要な意味を持ちます。
特に以下の点には注意が必要です。
定期的な通院を続ける:通院の間隔が開きすぎると、保険会社から「症状が改善した」「治療の必要はなくなった」と判断され、治療費の打ち切りや慰謝料の減額につながるリスクがあります。医師の指示に従い、定期的に通院することが重要です。
自覚症状を正確に医師に伝える:骨折後に残る痛みやしびれは、後遺障害認定の重要な判断材料となります。診察時に「良くなった」と軽く伝えてしまうと、後遺障害診断書に症状が適切に記載されない可能性があります。気になる症状はすべて、正確に医師に伝えることが大切です。
安易に示談に応じない:保険会社から早期に示談を提案されることがありますが、症状が固まる前に示談すると、その後の治療費などが追加請求できません。治療が終了し、症状が固定してから交渉に臨むようにしましょう。
(2)弁護士に相談するメリット
交通事故の骨折事案は、医学的・法律的な知識が複雑に絡み合うため、弁護士に依頼することで得られるメリットは非常に大きいです。
弁護士基準で慰謝料を算定・交渉できる:弁護士なしで保険会社と交渉する場合、多くの場合で自賠責基準や任意保険基準の低い金額で示談になってしまいます。弁護士が介入することで、弁護士基準(裁判基準)に基づいた適正な金額を主張でき、慰謝料が増額される可能性が高まります。
後遺障害認定のサポートを受けられる:適切な後遺障害等級の認定を受けるために、後遺障害診断書の記載内容や医師への伝え方についてアドバイスを受けることができます。等級が1段階変わるだけで、慰謝料や逸失利益が大幅に変わるため、専門家のサポートは非常に重要です。
精神的な負担を軽減できる:ケガの治療で身体的につらい状況の中、保険会社とのやり取りを自分で行うことは大きなストレスです。弁護士に交渉を一任することで、治療に専念できます。
弁護士費用特約で自己負担ゼロのケースも:自動車保険の弁護士費用特約が使える場合、弁護士費用は保険会社が負担するため、多くの場合、被害者の自己負担はゼロになります(※)。加入している保険を確認の上、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
※得られた示談金が高額の場合には、特約の300万円の枠を超えて自己負担が発生する場合もありますが、その場合には不足分は示談金から充当されますので、いずれにしてもご自身で費用を捻出する必要はなく、負担は少ないといえます。
当法律事務所では、交通事故の被害者側のご相談を受け付けています。
保険会社から提示された慰謝料の金額が妥当かどうか、後遺障害等級の申請をどう進めるべきか、弁護士費用特約を利用できるかなど、状況に応じて具体的にサポートいたします。
足の骨折による慰謝料請求でお困りの方は、早めにご相談ください。
9.交通事故による骨折の慰謝料に関するQ&A
(1)通院期間による慰謝料の相場
Q. 骨折で6ヶ月通院した場合、慰謝料はどれくらいになりますか?
A. 弁護士基準(別表I)では、通院6ヶ月の入通院慰謝料の目安は116万円程度です(入院なし・通院のみの場合)。これに対し、自賠責基準での算定では40〜50万円前後となるケースが多く、基準によって受け取れる額に大きな差が生じます。
Q. 治療中に保険会社から「治療費の支払いを打ち切る」と言われました。どうすればよいですか?
A. 保険会社の打ち切り通知は、医学的な「完治」や「症状固定」を意味するわけではありません。まだ痛みや症状が残っており、主治医も治療継続が必要と判断している場合は、安易に同意する必要はありません。強引に打ち切られる場合には、健康保険に切り替えて通院を継続し、治療費は後から別途請求する方法もあります。打ち切りを打診された場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 骨折の慰謝料請求だけでなく、過失割合や物損についても依頼できますか?
A. はい、対応可能です。交通事故に関する損害賠償の問題はケガに関するものだけでなく、過失割合の争いや車両・物的損害(物損)についても一括してご相談・ご依頼いただくことが可能です。
(2)後遺障害が残った場合の慰謝料
Q. 後遺障害が残った場合、慰謝料はどれくらい増えますか?
A. 後遺障害が認定されると、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料と逸失利益が発生します。後遺障害慰謝料は、弁護士基準では14級(局部に神経症状)で110万円、12級(関節機能に障害または頑固な神経症状)で290万円、10級(関節機能に著しい障害)で550万円の後遺障害慰謝料となります。これに逸失利益が加算されるため、最終的な損害賠償総額は慰謝料だけでなく、年収や症状固定時の年齢によっても大きく異なります。
Q. 慰謝料はいつ支払われますか?
A. 原則として、治療が終了(症状固定)し、後遺障害等級が確定した後に保険会社との示談交渉を行い、双方が合意して示談書を取り交わしてから約1〜2週間後に口座へ振り込まれます。示談書への署名前に、弁護士にチェックを依頼することをおすすめします。
まとめ:交通事故で骨折した場合の対応
・適切なアクションを取るために
交通事故で足を骨折した場合、適正な慰謝料を得るために大切なことをまとめます。
事故後すぐに行うべき行動:まず警察に通報し、相手方の情報と現場の状況を記録します。その後、できるだけ早く整形外科を受診し、骨折の診断書を取得しましょう。事故に関係する領収書はすべて保管し、通院を定期的に継続することが重要です。
治療中に意識すること:自覚症状(痛み・しびれ・可動域の制限など)を毎回正確に医師に伝え、診療記録に残してもらいましょう。治療が一段落したら、後遺障害の有無を医師と相談した上で、後遺障害等級の申請を検討します。
保険会社との交渉で注意すること:提示された慰謝料が弁護士基準と比べて低い場合は、安易に示談に応じず、弁護士に相談した上で交渉を進めましょう。
・専門家への相談の重要性
交通事故による骨折は、適切に対応しなければ受け取れる補償が本来の水準を大幅に下回ってしまうおそれがあります。
特に後遺障害が残るような重傷事案では、弁護士への相談が適正な賠償を得るための最善策となります。
当法律事務所では、交通事故案件に対応している所属弁護士が、被害者側の慰謝料請求や後遺障害等級認定、保険会社との交渉をサポートしています。
「提示された金額が適正かわからない」「後遺障害の申請方法を知りたい」「痛みやしびれが残っているが認定される可能性があるのか不安」といった方は、無料相談をご利用ください。
一人で悩まず、まずは専門家にご相談いただくことをおすすめします。
全国からご相談いただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。
【関連記事】
投稿者プロフィール

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベストベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
交通事故の評価損(格落ち損害)とは?認められる条件・判例・計算方法を弁護士が解説
今回は、交通事故における評価損(格落ち損害)について解説いたします。
交通事故被害によって車両が損傷した場合、加害者側の保険会社から「修理費用はこちらで負担します」と言われれば、ひとまずはホッと胸をなでおろすかもしれません。
しかし、完全な修理がなされたとしても、例えば車両の骨格部分等に損傷が生じた場合、その車両は中古車市場において「修復歴あり」と扱われ、交換価値(市場価格)が下落することは避けられません。
このような車両価値の下落分、すなわち「評価損(格落ち損害)」は、不法行為(交通事故)に基づく損害賠償における費目の1つです。
本稿では、評価損が認められるための要件、特に高級車が認められやすい傾向にある理由、そして令和における最新の裁判例や当事務所における解決事例について解説いたします。
1.評価損を巡る実務の現状
評価損については、実務上、「評価損も発生していますから、上乗せしてお支払いしますね」などと言って、保険会社の担当者が自ら支払いを提示することは極めて稀です。
つまり、被害者側から主張しなければ、検討されることすらないということになります。
これは評価損という損害が、算出する際の考慮要素が多岐にわたり、評価も難しいためであるものと思われます。
また、かつては、評価損についてこれを否定する見解もありました。
修理によって事故前の状態に戻っている以上、損害は発生していないという考え方です。
ただ、現在では、一定の場合には評価損を肯定する見解が一般的です。
修理により事故前の状態に戻ったとしても、中古車市場では事故歴のある車は価値が低下する傾向にある以上、その交換価値(市場価格)は現実的に減少しているためです。
このような資産価値の減少が生じている以上、被害者としては、評価損を請求することができないか検討した方が良いでしょう。
2.評価損が認定されるための判断基準
評価損を認定するにあたっては、主に以下の考慮要素が総合的に評価されます。
まず挙げられるのが、「初度登録からの期間」です。
初度登録からの期間が短ければ短いほど、評価損は認定されやすくなります。
これは、新車に近いような自動車が事故に遭うと交換価値が大きく低下するためです。
一方、初度登録からの期間が長い車両は、何らかの不具合がある可能性も想定した上で取引されることが通常であり、事故の有無が大きな意味を持たなくなることもあってか、評価損が認定されるハードルは高くなります。
次に挙げられるのが、「走行距離」です。
走行距離が長くなるにつれて、評価損が認定されるハードルは高くなります。
これは、初度登録から期間が経過している場合と同様に、走行距離が長い場合も、何らかの不具合がある可能性も想定した上で取引されることが通常であるため、事故の有無が大きな意味を持たなくなってくるためであるものと思われます。
さらに挙げられるのが、「損傷の程度」です。
骨格部分への損傷がある場合、評価損は認定されやすくなります。
これは、骨格部分への損傷は、修復歴表示義務に繋がり得るものであるためです。
なお、中古車販売業者に表示義務のある修復歴は、①フレーム(サイドメンバー)、②クロスメンバー、③フロントインサイドパネル、④ピラー(フロント、センター及びリア)、⑤ダッシュパネル、⑥ルーフパネル、⑦フロアパネル、⑧ トランクフロアパネルの修復(修正・補修)とされています(自動車公正競争規約11条(10)・同施行規則14条)。
3.高級車は評価損が認定されやすい
例えばレクサスやベンツ等、価格が相応に高額で、一般に高級な印象を与える、いわゆる高級車は、評価損が認められやすい傾向にあります。
いわゆる大衆車の場合、初度登録から3年以上を経過すると評価損が認められにくい傾向にありますが、高級車の場合は5年以上である場合に評価損が認められにくくなる傾向にあるという印象です。
また、走行距離についても、いわゆる大衆車の場合、4万キロ程度以上になると評価損が認められにくい傾向にありますが、高級車の場合は6万キロ程度である場合に評価損が認められにくくなる傾向にあると指摘されているところです。
これらの要因として、高級車を中古で購入する層は、車両の状態に対して非常に高い水準を求める傾向にあるため、「修復歴」の有無がリセールバリューに与えるインパクトが、大衆車に比べて極めて大きくなるというのが挙げられるのではないでしょうか。
4.評価損の裁判例
⑴ レクサスで評価損として修理費用の約30%を認定
ここでは、大阪地裁令和2年11月24日判決を紹介いたします。
車種:レクサスRX200tバージョンL
初度登録からの期間:約6ヶ月
走行距離:4040キロ
損傷部位:バッテリ部分(バッテリトレイ、バッテリランプ等)を含むフロント部分が大破し、前部内板骨格部(左右のフロントサイドメンバー、左右のフロントフェンダーエプロン等)まで損傷
裁判所は、次のとおり判断しました。
「・・原告車が本件事故当時初度登録から約6か月の国産国産高級車であり、損傷が内部骨格を含む相当部分に及んでいることに照らせば、原告車には基本骨格に係る評価損が発生したものと認められる。そして、その損害は、上記修理費の約30%である130万円と認めるのが相当である。」
⑵ ミニクーパーで評価損として修理費用の約20%を認定
ここでは、東京地裁令和6年6月12日判決を紹介いたします。
車種:ミニクーパー
初度登録からの期間:約1年5ヶ月
走行距離:9353キロ
損傷部位:リヤバンパー等の交換修理、車両の骨格部分であるフロアパネルの板金修理
裁判所は、次のとおり判断しました。
「・・原告車は、外国車の人気車種であるミニクーパーであり、本件事故(令和4年5月24日)時点で、初度登録から1年6月に満たず、走行距離も9353kmで、1万kmに満たない状態であったところ、合計135万5860円もの修理費がかかる損傷を負ったことが認められる。そして、これらのことからすると、同修理内容のうち、中古車販売業者に修理歴の表示義務がある部分の修理はフロアパネルの板金修理のみでありその金額が4万9000円に過ぎないこと(認定事実(2))や、原告車の修理後、原告車の機能上、外観上の欠陥が生じていないこと(上記(1)参照)を踏まえても、原告車について、現実的に、中古車市場流通性上の心理的嫌悪感を原因とした評価額の低下が生じる可能性は極めて高いといえる。そうすると、原告車について、取引上の評価損が生じるといえるが、その額は、原告車の車種や修理内容(骨格部分の修理費が僅か4万9000円にとどまること)等を考慮し、修理費用135万5860円の約2割に当たる27万円とするのが相当である。なお、原告は、原告車の評価損は、甲6号証(阿部モータースが作成した原告車の査定書)等も根拠とし、50万円とすべきであると主張するが、同査定書は、本件事故による原告車の減価額の算出方法が不明であり、これを評価損額の根拠とすることはできないし、他に、上記認定を覆すに足る証拠はない。」
⑶ ベンツで評価損として修理費用の約10%を認定
ここでは、東京地裁令和5年9月27日判決を紹介いたします。
車種:メルセデスベンツ
初度登録からの期間:約4年9ヶ月
走行距離:1万6135キロ
損傷部位:後部の左側(リアバンパーの左側、左テールランプ、左クオーターパネル等)が損傷しており、中でも左側下部(リアバンパー)の損傷が激しい。
また、内部骨格の一部であるリアバンパクロスメンバーに取替が必要なほどの損傷が生じており、リアフロアパンも損傷。
裁判所は、次のとおり判断しました。
「原告の車両はメルセデス・ベンツであるところ、初度登録は平成28年8月で本件事故当時までに4年9か月が経過しているものの、走行距離は令和3年5月24日時点で1万6135kmに留まる(甲2、5、乙5)。そして、本件事故により原告車には内部骨格の一部であるリアバンパクロスメンバーに取替が必要なほどの損傷が生じていること(甲5)も踏まえると、原告車には、評価損が生じているというべきである。他方、本件事故時の原告車の時価額が140万円であるとうかがわれること(乙5・2頁)も踏まえれば、原告の評価損は、修理費用136万6530円(前記第2の1(2))の1割である13万6653円を認めるのが相当である。」
5.当事務所における解決事例~修理費用の約23%で示談解決
車種:ジープラングラー Unlimited Sport
初度登録からの期間:約1年3ヶ月
走行距離:1万5422キロ
損傷部位:足回り交換、右リアドア交換、右リア廻りパネル交換・フェンダー交換、フロア部分板金
この事案では、当初、加害者側保険会社が評価損を否定しており、その点に疑問を感じた被害者(宮崎県在住)の方から当事務所にご相談いただきました。
ご依頼いただいた後、当事務所の担当弁護士が、加害者側の保険会社や代理人弁護士と交渉した結果、評価損として、修理費用の約23%である70万円にて示談することができました。
6.まとめ
評価損は、算出する際の考慮要素が多岐にわたり、評価も難しい損害費目です。
そのため、評価損について被害者自身が保険会社と交渉するのは、かなりハードルが高いものと思われます。
しかし、弁護士が介入し、法的な根拠に基づいた主張・立証を行うことで、保険会社の態度が変わることもあります。
特に、資産価値の高いお車や、大切に維持されてきたお車であれば、その価値を正当に評価させることは、被害者の正当な権利です。
私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。
また、当事務所は一般的な弁護士費用特約の料金体系で対応しておりますので、弁護士費用特約を付帯されている場合には、同特約により弁護士費用を賄うことが可能となっております。
全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。
【関連記事】
投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で心身ともに大きな負担を抱えている被害者の方々。
保険会社とのやり取りや後遺障害の申請など、慣れない手続きに途方に暮れてしまう方も少なくありません。
私たち弁護士法人優誠法律事務所は、そんな被害者の方々が正当な補償を受けられるよう、全力でサポートいたします。
交通事故案件の解決実績は2,000件以上。所属弁護士全員が10年以上の経験を持ち、専門的な知識と豊富なノウハウを蓄積しています。
「弁護士に相談するほどのことだろうか」「費用が心配だ」と感じる方もご安心ください。
初回相談は無料で、弁護士費用特約にも対応しています。
全国どこからでもご相談いただけますので、不安を抱え込まず、まずは一度お気軽にお問い合わせください。
