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バイク事故で脊髄損傷|慰謝料・逸失利益が数百万円変わる分岐点とは

2026-01-11

今回のテーマは、バイク事故による「脊髄損傷」です。

交通事故の中でも、身体が剥き出しの状態であるバイク事故は、重篤な怪我につながるケースが少なくありません。

中でも脊髄損傷は、手足の麻痺や感覚障害など、被害者の将来にわたって深刻な影響を残す重大な傷害です。

脊髄損傷の被害者が適切な補償を獲得するためには、後遺障害の等級認定が極めて重要です。

認定される等級が1つ違うだけで、慰謝料や逸失利益が数百万円、あるいは数千万円単位で変わることもあります。

本記事では、交通事故・バイク事故を多く取り扱ってきた弁護士の視点から、脊髄損傷の基礎知識、賠償額が決まる仕組み、そして解決へのポイントを解説します。

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1.交通事故による脊髄損傷とは?症状・後遺症・被害者に生じる障害を解説

まずは、医学的な観点から脊髄損傷がどのような状態を指すのか、その症状と診断の基礎知識を確認しましょう。

脊髄損傷が起きる仕組みと主な原因(交通事故事例を中心に解説)

脊髄とは、脳から背骨(脊椎)の中を通って伸びる太い神経の束のことです。

バイク事故では、転倒時の強い衝撃などにより、背骨の骨折や脱臼が生じ、その中の脊髄が圧迫されたり傷ついたりすることで損傷が起きます。

特にバイクは、ヘルメットで頭部は守られていても、首(頚椎)や腰(腰椎)は衝撃を受けやすい部位です。

事例としても、交差点での出会い頭の衝突や、ガードレールへの激突などで、頚髄(首の神経)を損傷するケースが多く見られます。

2.脊髄損傷の症状・種類・部位別の違い|頚髄損傷が重くなりやすい理由

交通事故による脊髄損傷では、損傷した部位や損傷の程度に応じて、様々な症状が現れます。

代表的なのは、麻痺・感覚障害・運動制限であり、これらの症状がどの程度残るかによって、後遺障害等級や慰謝料額が大きく左右されます。

脊髄損傷では、脳からの指令が神経を通じて伝わらなくなることで、手足が動かしにくくなる「麻痺」や、痛み・温度を感じにくくなる「感覚障害」が生じることがあります。

また、歩行や階段昇降が困難になるなど、日常生活や労務に支障をきたす「運動制限」が残るケースも少なくありません。

これらの症状は、損傷の程度だけでなく、どの部位の脊髄が損傷したかによっても大きく異なります。

特に頚髄(首の脊髄)を損傷した場合には、上肢・下肢の双方に障害が及びやすく、重症の場合には介護が必要となる後遺症が残ることもあります。

一方、胸髄や腰髄の損傷では、主に下半身に麻痺や感覚障害が現れ、歩行困難や日常生活動作の制限が問題となるケースが多く見られます。

さらに、脊髄損傷が「完全損傷」か「不完全損傷」かによっても、症状の重さや生活への影響は大きく異なります。

完全損傷では神経機能がほぼ失われるのに対し、不完全損傷では一部の運動機能や感覚が残ることがあります。

この違いは、後遺障害等級や賠償額にも大きく影響します。

次に、こうした症状や損傷の違いが、後遺障害等級としてどのように評価されるのかを解説します。

3.交通事故による脊髄損傷|後遺障害等級(1級〜12級)の一覧と認定ポイント

脊髄損傷による損害賠償において、最も重要なのが「後遺障害等級」です。

この等級によって、保険会社から支払われる金額の基準が決まります。

⑴ 後遺障害等級(1級~12級など)の違いと認定基準・理由

脊髄損傷の後遺障害は、麻痺の範囲や生活への支障の程度に応じて、主に以下の等級に分類されます。

等級状態の目安
第1級常に介護が必要な状態。
第2級随時介護が必要な状態。
第3級終身労務に服することができない状態。
第5級特に軽易な労務以外の労務に服することができない状態。
第7級軽易な労務以外の労務に服することができない状態。
第9級服することができる労務が相当な程度に制限される状態。
第12級局部に頑固な神経症状を残す状態。

重い等級であれば、将来の介護費用も認定されやすくなるため、賠償額が非常に高額になります。

⑵ 等級認定に必要な資料・画像・診断書と申請手順

後遺障害認定の流れとしては、主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらい、自賠責保険(損害保険料率算出機構)へ申請を行います。

この際、単に診断書を提出するだけでなく、MRI画像や、日常生活に関する状況報告書(日常の困難さを伝える書類)などをセットで提出することが、適正な等級を受けるために有効です。

⑶ 等級非該当・低い等級と異議申立て|成功・解決のコツ

例えば、弁護士に依頼しないで自賠責保険に申請した際,非該当にされたり、想定よりも低い等級が認定されたりしてしまったとします。

この場合、手続上は「異議申立て」を行うことが可能です。

ただ、同じ資料で再審査しても、結果が変わる可能性は低いといえます。

そこで、有効な異議申立てを行うためには、新たな医学的証拠を用意したり、医師や弁護士による意見書を添えるなどの必要があります。

一般論としては、異議申立てで後遺障害等級が変更される確率は低いですが、新たな医学的証拠などを添付して再審査を求めることで、認定結果が覆るケースもあります。

4.脊髄損傷の後遺障害認定に必要な診断書・検査内容と医師の所見

交通事故による脊髄損傷で後遺障害認定を受けられるかどうかは、医師が作成する診断書と検査結果の内容によって左右されます。

実際、症状が残っていても、診断書の記載や検査結果が不十分な場合、後遺障害非該当や、想定より低い等級にとどまってしまうケースも少なくありません。

特に重要なのが、MRIや神経学的検査による客観的な所見です。

これらの検査結果がなければ、症状があっても医学的に裏付けられず、後遺障害として認定されないことがあります。

また、診断書に記載される医師の所見次第で、後遺障害等級が大きく変わる点にも注意が必要です。

5.自賠責保険と保険会社の対応|脊髄損傷はどこまで認められるか

交通事故による脊髄損傷で補償を受ける際、自賠責保険と任意保険会社がどこまで損害を認めるのかは、被害者にとって非常に重要なポイントです。

実務上は、
「症状があるのに認められない」
「後遺障害等級が想定より低い」
といったトラブルが多く発生します。

ここでは、自賠責保険の役割保険会社の対応の実態、そしてなぜ認められないケースがあるのかを解説します。

(1) 自賠責保険とは|脊髄損傷で請求できる補償の範囲

自賠責保険は、すべての自動車・バイクに加入が義務づけられている保険で、交通事故被害者に対する 最低限の補償 を目的としています。

脊髄損傷の場合、自賠責保険では主に次の補償が対象となります。

  • 治療費・入通院慰謝料・休業損害などの傷害部分の損害
  • 後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

ただし、自賠責保険には 後遺障害等級ごとに支払限度額 が定められており、脊髄損傷のような重い後遺症では、補償額が実際の損害に比べて不足するケースが多いのが実情です。

(2) 脊髄損傷は自賠責保険でどこまで認められるのか

自賠責保険では、脊髄損傷が客観的資料によって裏付けられているかどうかが支払いの前提となります。

認定されるためには、

  • 事故と症状との因果関係が明確であること
  • 症状が将来にわたって残存していること
  • MRIなどの検査結果や医師の所見がそろっていること

が必要です。

一方で、

  • 「画像上、明確な損傷が確認できない」
  • 「症状が医学的に説明できないと判断された」

といった理由で、脊髄損傷と診断されていても非該当と判断されるケースもあります。

(3) 保険会社(任意保険)の対応と注意すべきポイント

任意保険会社は、自賠責保険で認定された等級を前提に、独自の基準で賠償額を算定・提示してきます。

実務上、保険会社の対応として問題になることが多いのが、

  • 労働能力喪失率や喪失期間を限定した逸失利益の提示
  • 「症状が軽い」「日常生活に支障が少ない」との主張
  • 治療費の早期打ち切り要請

といったケースです。

保険会社は、支払額を抑える立場にあるため、被害者に有利な判断を自発的に行うことはほとんどありません。

(4) 脊髄損傷が認められないケースと正当な補償を受けるためのポイント

脊髄損傷で補償が十分に認められない背景には、いくつか共通する理由があります。

例えば、

・診断書の記載内容が抽象的で、症状の程度が具体的に示されていない

・MRIや神経学的検査による客観的所見が不足している

・事故と症状との因果関係が弱いと判断されてしまう

・日常生活や労務への影響が十分に伝わっていない

といった点が重なると、実際には重い症状が残っていても、後遺障害非該当や、低い等級にとどまってしまうケースがあります。

そのため、正当な補償を請求するためには、必要な検査を適切な時期に受け、症状や生活上の支障が診断書に正確に反映されているかを確認することが重要です。

また、保険会社からの提示をそのまま受け入れず、内容が妥当かどうかを慎重に判断する姿勢も欠かせません。

(5) 弁護士に相談することでできること

交通事故・脊髄損傷に詳しい弁護士に相談することで、

  • 自賠責保険への適切な後遺障害申請
  • 保険会社との交渉・示談対応
  • 認定結果に納得できない場合の異議申立て
  • 裁判基準を前提とした賠償請求

といったサポートを受けることができます。

保険会社の提示額が適正かどうかを判断するためにも、一度専門家に相談することを強くおすすめします。

6.交通事故による脊髄損傷の慰謝料・逸失利益|請求額が変わる分岐点

なぜ後遺障害等級によって「数百万円変わる」と言われるのか。

その理由は、後遺障害慰謝料の基準と、後遺障害逸失利益の計算方法にあります。

⑴ 脊髄損傷で認定される後遺障害慰謝料・損害賠償金の相場と算定基準

交通事故の慰謝料には、大きく分けて3つの基準があります。

・自賠責基準:最低限の補償。

・任意保険基準:保険会社が独自に定める基準。

・弁護士基準(裁判基準):裁判所が採用している基準(最も高額)。

例えば、後遺障害の等級が12級である場合、自賠責基準では慰謝料が94万円ですが、弁護士基準では290万円と、基準が違うだけで金額が跳ね上がります。

脊髄損傷のような重い障害では、その差はさらに広がります。

⑵ 後遺障害逸失利益の計算の考え方|等級・年収・年齢ごとの増減額例

逸失利益とは、「事故がなければ将来得られたはずの収入」のことです。

計算式は以下の通りです。

逸失利益 = 基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(原則67歳まで)に対応する係数

ここで重要なのが「労働能力喪失率」です。

次のとおり、このパーセンテージは等級によって大きく異なります。

・第1級~3級:100%喪失(全く働けない)

・第9級:35%喪失

・第12級:14%喪失

例えば、36歳で年収500万円の方で、労働能力喪失期間に対応する係数を便宜上20とした場合,次のとおり,等級によって後遺障害逸失利益の金額には大きな差が生じます。

・第1級~3級:500万円×100%×20=1億円

・第9級:500万円×35%×20=3500万円

・第12級:500万円×14%×20=1400万円

⑶ 等級の分岐点:賠償が数百万円変わる認定・症状の境界線

争点になりやすいのが、9級(労務が相当制限される)と12級(頑固な症状)の境界線です。

画像上の明確な損傷所見の有無や、神経学的検査の結果が分岐点となります。

また,介護が必要か否か(1・2級かそれ以外か)の境界線は、(非常に高額となる)将来の介護費用が認定されやすくなるか否かに関わるため、極めて重要です。

7.交通事故の脊髄損傷は弁護士に相談すべき理由|法律事務所選びのポイント

脊髄損傷の事案は専門性が高く、保険会社との交渉を被害者自身で行うのは非常に困難です。

⑴ 弁護士に依頼するタイミングと費用|無料相談・事務所選び

依頼のタイミングは、事故直後または治療中の早い段階がベストです。

適切な検査を受けるアドバイスができるからです。

多くの法律事務所や弁護士法人では、交通事故の無料相談を実施しています。

費用についても「弁護士費用特約」を利用すれば実質0円になる場合が多く、特約がない場合でも、着手金無料で賠償金獲得後の後払い(成功報酬)とする事務所が増えています。

⑵ 交通事故・バイク事故対応で弁護士が行う交渉や裁判サポート事例

弁護士は、被害者の代理人として以下のサポートを行います。

・医師に対して診断書の作成を依頼する際のアドバイス等

・保険会社からの治療費打ち切りへの対応

・適正な後遺障害等級の申請手続き

・弁護士基準を用いた賠償金の増額交渉

⑶ 弁護士による高額解決事例

実際、弁護士が介入することにより、高額で解決できた事例は珍しくありません。

弊所においても、弊所弁護士が解決した「交通事故により脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例」を紹介していますので、ご参照ください。

8.脊髄損傷後の生活|介護・歩行困難・将来に必要な補償と支援

賠償金の問題だけでなく、被害者とその家族は、これからの生活にどう向き合うかという課題も抱えます。

⑴ リハビリテーション・治療法と回復の可能性

脊髄の神経は一度損傷すると完全な修復は難しいとされていますが、近年の再生医療の研究や、専門的なリハビリによって、機能の改善が期待できるとされています。

残された機能を最大限に活かすためのリハビリは非常に重要です。

具体的な治療方針やリハビリ計画については、必ず主治医の先生とよく相談してください。

⑵ 介護・車椅子・生活補償|被害者と家族の悩みへの対応策

車椅子生活になる場合、自宅のバリアフリー化や、介護用ベッドの購入などが必要になります。

これらの費用も、必要性・相当性が認められれば損害賠償として請求可能です。

また、家族の悩みを軽減するためにも、利用できる公的支援や補償内容も把握しておくことが大切です。

⑶ 病院・専門医の選び方と将来の生活設計

脊髄損傷の治療・リハビリに特化した病院や専門医を選ぶことは、その後の回復に影響します。

また、獲得した賠償金を将来の生活費や治療費としてどう管理していくかも含めた生活設計が求められます。

9.まとめ|バイク事故の脊髄損傷被害にどう向き合うか

バイク事故による脊髄損傷は、被害者の方の人生を一変させる重大な出来事です。

身体的な苦痛に加え、将来への不安は計り知れません。

しかし、適切な等級認定を受け、正当な賠償(慰謝料・逸失利益・介護費用など)を獲得することで、今後の生活の基盤を整えることは可能です。

保険会社の提示額を鵜呑みにせず、弁護士などの専門家のサポートを受けることをお勧めします。

優誠法律事務所では、脊髄損傷を含めた交通事故被害の相談を随時受け付けております。

無料相談も可能ですので、お気軽にご連絡ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で脊髄損傷を負った方へ|後遺障害等級の認定基準と慰謝料相場を弁護士が解説

2025-12-07

今回は、「脊髄損傷」に関する後遺障害等級について、解説いたします。

脊髄損傷は、交通事故や転落事故などによって引き起こされる重篤な損傷であり、その後の生活に重大な影響を及ぼします。

適切な後遺障害等級が認定されることは、正当な賠償を受ける上で非常に重要です。

しかし、「どのような基準で後遺障害等級が認定されるのか」「後遺障害等級認定の申請をするためには、どのような書類が必要なのか」など、脊髄損傷に関する後遺障害等級は難しいと感じる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

交通事故により脊髄損傷を負った被害者の方は、手足の麻痺や感覚麻痺など、日常生活に大きな制限が残る「後遺症」を抱える可能性があります。

こうした後遺症が残った場合には、自賠責保険や相手方保険会社に対して「後遺障害等級」の認定請求を行うことが極めて重要です。

適切な等級が認められれば、後遺障害慰謝料や将来にわたる介護費・生活補償など、相当額の賠償金を受けられる可能性があります。

しかし、認定される等級によって金額は大きく変わるため、認定の段階での対応が非常に重要となります。

この記事では、脊髄損傷に関する後遺障害等級の認定基準と、申請に必要な書類について詳しく解説します。

特に、画像所見の重要性についても掘り下げて解説しますので、現在、脊髄損傷による後遺障害でお困りの方、またはその可能性のある方は、ぜひご一読いただき、適切な補償を獲得するための一助としていただけますと幸いです。

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1.脊髄損傷とはどんな状態?後遺障害の基礎知識を深掘り

⑴ 脊髄損傷のメカニズムと症状の多様性

そもそも脊髄とは何かについて、ご説明いたします。

脊髄とは、脳から連なる中枢神経系の一部をいいます。

脊髄は神経であり、直径わずか1cmほどの細い組織の中に、運動神経や知覚神経の繊維が詰まっています。

脊柱管によって守られてはいますが、わずかな病変が生じても四肢麻痺などの症状が出現し得るため、脊髄は非常に繊細なものです。

そして、脊髄損傷とは、交通事故などによる外力が脊髄に加わって、脊髄が損傷された状態のことをいいます。

脊髄損傷は、脊椎(いわゆる背骨)の脱臼や骨折を伴って生じることが多いです。

このうち、脊髄全横断面にわたって神経回路が断絶したものを完全損傷、一部でも保たれたものを不完全損傷といいます。

脊髄損傷の症状は、「完全損傷」と「不完全損傷」で大きく変わります。

完全損傷の場合、脳からの命令が断たれるため、四肢・体幹の運動機能が失われるだけでなく、感覚機能も失われ、体温調節機能や代謝機能も困難になってしまいます。

一方、不完全損傷の場合、神経が完全には断裂していないため、症状の有無や程度には広範囲の差異があるとされています。

脊髄損傷によって生じる症状は、損傷した脊髄の「部位」によって大きく異なります。

・頚髄(首の脊髄)を損傷した場合:手足(上肢・下肢)の麻痺、呼吸機能低下など

・胸髄を損傷した場合:体幹の保持が困難になり、歩行障害や姿勢保持が困難になる場合がある

・腰髄を損傷した場合:下肢の運動障害や感覚障害が生じやすく、歩行に支障が出ることが多い

このように、損傷部位と神経の走行が深く関係しているため、症状の「程度」や「残る後遺症」は個人によって大きく異なります。

⑵ 後遺障害等級とは何か

後遺障害等級は、自賠責保険会社や裁判所等において認定がなされます。

等級が認定されることは、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益といった適正な賠償の支払いに向けた大きな前進です。

一方、等級が認定されない場合、後遺障害が残っていても基本的には賠償対象にならないことから、等級認定の重要性は極めて高いです。

2.脊髄損傷の後遺障害は「等級」がカギ! 具体的な認定基準と分類

このように、脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定は、その後の賠償額を大きく左右します。

ここでは、どのような基準で等級が判断されるのかを具体的に見ていきましょう。

⑴ 「神経系統の機能または精神の障害」としての評価

脊髄損傷の後遺障害は、主に「神経系統の機能または精神の障害」として評価されます。

その等級ですが、症状の程度や日常生活への影響、介護の必要性などによって細かく分類されています。

具体的には、別表第1と別表第2に分かれており、重度な麻痺を伴う場合、別表第1の等級(第1級、第2級)が認定される可能性があります。

これは、常時介護や随時介護が必要な状態を指し、非常に重いものとされています。

後遺障害の等級認定がされるのか、されるとしても等級は何かを判断する要素としては、麻痺の程度(徒手筋力テストの数値など)、麻痺の範囲(四肢、対麻痺)、感覚障害の範囲・程度、排泄機能の障害の有無・程度などが挙げられます。

⑵ 脊髄損傷で認定される等級の目安

【常時介護が必要な状態:別表第1の第1級1号】

広範囲な麻痺により、日常生活のほぼ全ての動作(食事、入浴、排泄、着替えなど)に常時介護が必要となる状態です。

【随時介護が必要な状態:別表第1の第2級1号】

運動能力や感覚機能が著しく低下し、歩行が困難で、日常生活の重要な動作に随時介護が必要となる状態です。

【労働能力に支障が生じた状態:別表第2の第3級~第9級】

脊髄損傷により、手足の麻痺や体幹機能の障害が残ることで、仕事に大きな制限がかかったり、今後仕事に就くことが困難になったりする状態です。

具体的な等級は、麻痺の程度や、どの程度の労働能力が失われたか等によって判断されます。

【局部に頑固な神経症状を残している状態:別表第2の第12級13号】

例えば、筋緊張の亢進が認められるもの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの等が挙げられます。

後遺障害等級認定までの流れ

① 医師による診断書作成と画像検査(MRI・CT)

② 症状と画像所見に整合性があるかの確認

③ 自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請

④ 認定された等級に応じ、慰謝料・逸失利益・将来介護費などの損害賠償を請求

この「流れ」を正しく踏むことで、適正な賠償の獲得に繋がります。

3.等級認定の成否を分ける「画像」の全貌

脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定においては、医師の診断書や各種証明書のほか、特に重要なのがMRIやCTなどの「画像」所見です。

これらが認定の成否を分けると言っても過言ではありません。

その理由ですが、脊髄損傷は、外からは分からない神経の損傷であるものの、MRIやCTといった画像検査によって、この損傷を客観的かつ視覚的に捉えることができるためです。

画像は、骨折や脱臼の有無だけでなく、脊髄そのものの損傷部位、損傷の程度、脊髄がどの程度圧迫されているかといった重要な情報を提供します。

そのため、等級認定の審査にあたっては、MRIやCTなどの「画像」所見と、症状の内容や程度等との間に整合性はあるか否かが重要になります。

ここで、「画像」所見が重要であることを示す裁判例(京都地裁平成16年6月16日判決)をご紹介いたします。
この裁判例は、「画像」所見について次のとおり判示するとともに、結論として原告の頚髄(脊髄の一部)損傷を否定しました。

「頸髄損傷は、頸髄に対する器質的な損傷があり、頸髄実質内に出血や浮腫を伴い、事故直後から重度の麻痺を呈する傷害であって、その診断はMRI検査で頸髄に輝度変化があること、事故直後から四肢麻痺などの神経症状のあることが重要であり、さらに電気生理学的検査を総合して判断することになる(弁論の全趣旨、当裁判所に顕著な頸髄損傷の病態)が、(ア)原告には、受傷直後に四肢麻痺が発生したかについては、前記のとおり、事故の翌日に左上肢痛、挙上不可及び指尖の知覚異常を訴えたが、他の部位の知覚はあったのであり、上記麻痺があったとは窺えず、(イ)病的反射はみられず、エックス線写真、CT、MRI検査上頸髄損傷を疑わせる異常所見もみられず、(ウ)その他、頸椎第4・第5間、第5・第6間に突出部があったとしても、これが片麻痺の原因とはなり難く、麻痺、知覚異常を訴える部位は上記変性部の神経支配域とも一致しないことからすれば、原告が本件事故により頸髄損傷を受傷したと認めることはできず、この点の原告の主張は採用できない。」

保険会社は、被害者にとって「最も有利な等級」が認定されるように動いてくれるわけではありません。

むしろ、後遺障害が「軽い」と判断されることで、支払う慰謝料や逸失利益が低額で済むため、保険会社側としては被害者にとって不利な等級が認定される方が都合が良いともいえます。

そのため、後遺障害の等級認定は「保険会社任せにしないこと」が非常に重要です

特に脊髄損傷は、画像所見の読み取りや診断書の記載内容、神経症状の証明など、医学的・法的な観点での整理が必要となるため、適切なサポートを受けずに申請すると本来認められるべき等級よりも低く評価されてしまうケースがあります。

当事務所では、脊髄損傷に関する後遺障害認定について

診断書の記載内容の確認 

MRI/CTなどの画像所見の分析 

必要資料の収集 

自賠責保険への申請手続き 

までを一貫してサポートいたします。

無料相談も随時承っておりますので、おひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

4.まとめ:脊髄損傷による後遺障害は、お一人で悩まず専門家にご相談ください

脊髄損傷に関する後遺障害の等級認定は、賠償額を大きく左右する極めて重要なものです。

このとき、MRIやCTなどの画像所見は、あなたの症状を客観的に証明する強力な証拠となります。

しかし、その内容を適切に評価し、等級認定に繋げるための主張立証は、一般の方には難しいものと思われます。

優誠法律事務所では、脊髄損傷による後遺障害でお困りの方をサポートいたします。

無料相談も可能ですので、まずは一度ご相談ください。

専門知識を持つ弁護士が、これまでの解決事例も踏まえて親身に寄り添い、解決へと導きます。

弁護士費用についても、ご依頼いただく際に明確にご説明いたしますのでご安心ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故で脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例

2023-10-12

今回は、交通事故により脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例をご紹介いたします。

脊髄損傷は、交通事故が原因で起こるケースが多いと言われています。

その他にも、高い所から落ちたり、転倒したり、スポーツが原因で発症することが多いようです。

脊髄は、脳から背骨の中を通って伸びている太い神経のようなものであり、脊髄を損傷し、重い傷を負うと、脳からの指令が伝わらなくなり、手足に重い麻痺等の障害が残ります。

その一方で、交通事故事件においては、担当医から脊髄損傷との診断を受けたにもかかわらず、画像所見や神経学的な所見がないことを理由に脊髄損傷が否定されることもあります。

以下、脊髄損傷に関する基本的な説明を交えながら、事例をご紹介いたします。

1.脊髄損傷とは

脊髄は、背骨の中心部を通る太い神経組織で、脳からの指令(手足を動かす等)を手足に伝える神経が集まっています。

人間の体を動かす様々な指示は、脳からこの脊髄を使って全身に伝えられるため、人間にとって非常に重要な部分といえます。

脊髄損傷は、その程度により「完全損傷」と「不完全損傷」に分けられます。

「完全損傷」は、脊髄の機能が完全に壊れた状態であり、脳からの命令は届かず、損傷部位以下の運動、感覚機能が完全に消失してしまいます。

「不完全損傷」は、脊髄の一部が損傷し一部機能が残った状態であり、脊髄損傷部位以下の感覚知覚機能だけが残った重症なものから、ある程度運動機能が残った軽症なものまであります。

2.脊髄損傷の認定~画像所見と神経学的所見~

交通事故事件においては、担当医から脊髄損傷の診断を受けているにもかかわらず、当該事故によって脊髄損傷を負ったか否かが争点となることがあります。

例えば、受傷時に器質的損傷は特になく、脊柱管の圧迫はあるが脊髄を圧迫するまでとはいえない事案において、実質的にはムチウチと変わらないという反論がなされる場合等です。

脊髄損傷を負ったか否かを判断するにあたり主に検討されるのは、①画像所見、②神経学的所見、③症状の推移、④これらの整合性です。

①画像所見について補足すると、X線(レントゲン)検査は、脊椎に生じた骨の損傷は明らかになりますが、脊髄の損傷は分かりません。一方、MRI検査は、脊髄の損傷と脊椎の靱帯の損傷を最も正確に検出できる検査となります。

①画像所見や②神経学的所見がなく、ただ症状だけを訴えているような場合には、脊髄損傷の発生が認定されることは厳しいといえます。

また、③症状が事故直後から発生している場合はともかく、事故後しばらくして症状が現れた場合には、医学的な説明ができない限り、脊髄損傷によるものとするには疑問が生じてくることになります。

3.脊髄損傷の後遺障害等級

脊髄損傷の後遺障害等級認定にあたっては、麻痺の範囲及びその程度や、食事・入浴・用便・更衣等の生命維持に必要な身のまわりの処理の動作についての介護の要否及びその程度が重要な考慮要素となっています。

等級障害の程度
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの

その他、後遺障害等級の認定基準に関する詳細は,以下のリンク先をご参照ください。

4.事例の紹介~脊髄損傷を負ってしまった方の高額解決事例~

Sさんは、自動車を運転して青信号の交差点に進入したところ、左方から赤信号を無視した加害車両に衝突されたことにより、怪我を負ってしまいました。

上記の交通事故事件についてSさんからご相談いただいた際、脊髄損傷と診断されている旨を伝えられました。

しかしながら、診断書を確認したところ、「中心性頸髄損傷」との診断であったため、この点が懸念材料となりました。

なぜなら、中心性頸髄損傷は、不完全損傷のうち、脱臼や骨折を認めないことが多い損傷であることから、そもそも頸髄損傷を負ったか否かが争点となることが多いためです。

それに加えて、Sさんは、事故後も勤務を継続することができていたことから、頸髄損傷が否定されるリスクをしっかりと念頭に置かなければならないと判断しました。

そのため、自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請をするにあたっては、これらの点について特に配慮する必要がありました。

申請の準備をするにあたっては、後遺障害診断書や画像の取得に加えて、脊髄症状特有の状態に関する医学的意見書(「脳損傷又は脊髄損傷による障害の状態に関する意見書」及び「脊髄症状判定用」)の作成を依頼しました。

その後、後遺障害診断書が作成されたのですが、少しでも認定される可能性を高めるために、病院に対して後遺障害診断書の修正依頼を行いました。

また、必ず提出しなければならない資料ではないのですが、「陳述書」の作成をSさんに依頼しました。

しっかりと準備した甲斐があり、自賠責保険会社における審査の結果、中心性頸髄損傷であるものの後遺障害等級として7級4号が認定されました。

その後、この後遺障害等級を前提に相手方保険会社と交渉した結果、損害として合計約3500万円もの金額が認められるに至りました。

このうち、後遺障害による損害だけでも約2500万円であったことからも分かるように、自賠責保険会社によって認定される後遺障害等級は、損害額を算出する上で非常に重要となります。

5.まとめ

被害者からの自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請は、相手方保険会社経由で行うこともできます。

しかしながら、この場合、相手方という立場上、被害者の有利となるような資料等を積極的に提出することについて期待はできません。

そのため、自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請は、被害者側で行うことが肝要です。

しかしながら、申請にあたっては様々な資料が必要となるため、被害者自身で申請の準備を進めることは困難であるかと思います。

特に、今回ご紹介した脊髄損傷の場合、脊髄症状特有の状態に関する医学的意見書等も必要になることから、より準備には困難を極めるでしょう。

したがって,自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請は,可能であれば弁護士に依頼した方が良いと思います。

当事務所では、事例でご紹介したように、自賠責保険会社に対する後遺障害等級の申請についても対応しております。

当事務所は全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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