TFCC損傷とは?後遺障害として認められる?

自転車やバイクでの転倒事故の被害に遭ってしまった場合、手首を痛めてしまうことがあります。

バイク事故などで生じる手首の怪我の中でも、TFCC損傷はよくある傷病といえます。

そこで、今回は、バイクの転倒事故によって、TFCC損傷との診断を受けた場合、どのような損害を賠償請求することができるのかについて解説してきます。

1.TFCC損傷とは

TFCCは、三角線維軟骨複合体(「Triangular Fibro Cartilage Complex」の頭文字をとるとTFCCになります)といい、TFCC損傷は、この三角線維軟骨複合体が損傷することを言います。

三角線維軟骨複合体は、手首の小指側に位置し、橈骨と尺骨という2つの骨の間を結んでいる靭帯や腱、軟骨などの軟部組織の総称です。

2.TFCC損傷の後遺障害

TFCCは、手首の小指側に位置していますので、自転車やバイクの乗車中に事故に遭い、転倒した際に地面に手をついたりしてしまうと、損傷してしまうことがあります。

TFCC損傷の主な症状は、手首の小指側の痛みです。

特に、ドアノブを回すように手首をひねる動作をする場合に痛みを生じます。

TFCC損傷の場合、手首の関節可動域制限を伴う場合も伴わない場合もあります。

3.後遺障害の認定のポイント

⑴ 認定される可能性のある後遺障害の等級

① 後遺障害とは

交通事故の被害に遭った場合、懸命に治療をしても、「これ以上治療を継続しても改善しない」状態になることがあります。

このような状態に至ることを、「症状固定」と言い、症状固定時に残存した症状のうち、自動車損害賠償保障法施行令の別表に定める症状が、将来にわたり改善しないと認められる場合には、後遺障害が認定されます。

② 12級13号

上記のとおり、残存した症状が後遺障害として認められるためには、自動車損害賠償保障法施行令別表に記載された症状に該当する必要があります。なお、この別表には、1級から14級まで症状の軽重に応じて全部で133類型の症状が記載されています。

そして、TFCC損傷の主な症状は、「痛み」という神経症状です。

自動車損害賠償保障法施行令別表2の12級13号には、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と記載されています。

「頑固な神経症状」とは、医学的に残存した神経症状を立証することができるものをいい、基本的には、画像所見等の客観的ないし他覚的な所見の有無によって判断されます。

そのため、TFCC損傷が、レントゲンないしMRI等によってわかる場合には、12級13号が認定される可能性が高いと言えます。

③ 14級9号

自動車損害賠償保障法施行令別表2の14級9号には、「局部に神経症状を残すもの」と記載されています。

(頑固ではない)「神経症状」とは、医学的に残存した神経症状を説明することができるものをいい、症状の程度、外力の程度、治療の経過や症状の推移等を総合的に判断します。

TFCC損傷は、確定診断がつかないことも多く、「TFCC損傷の疑い」などと診断されることも珍しくありません。

画像所見上明らかでない場合には、「TFCC損傷の疑い」と診断されることがありますが、その場合でも他の事情からTFCC部に痛みが生じ、これが将来にわたっても残存する可能性があることを医学的に説明することが可能である場合には、14級9号が認定されます。

⑵ 後遺障害認定のポイント

① 他覚所見の有無がポイント

上記のとおり、同じTFCC損傷という傷病名であっても、他覚所見がある場合には12級13号の認定がなされる可能性があります。

後述のとおり、後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益を請求することが可能になり、その金額は等級によって異なります。

もし、TFCC損傷と診断されたにもかかわらず、画像検査を行っていない場合には、医師に画像検査を依頼しておきましょう

② 被害者請求の方法で請求することがポイント

後遺障害の請求方法は、交通事故被害者が自ら請求する「被害者請求」と加害者側の任意保険会社に手続きを任せることができる「事前認定」の2つの方法があります。

このように聞くと、「事前認定」の方が手続きの負担が少なく良いように思われるかもしれませんが、後遺障害の請求をする際には、「被害者請求」がおすすめです。

理由は以下のとおりです。

まず、後遺障害の請求には、必要書類が決まっていますが、追加の資料を添付することは禁止されていません。

事前認定では、後遺障害が認定されると賠償額が大きくなるという不利益を被る立場の保険会社が主導して行う手続きになりますので、積極的に後遺障害が認定されるための資料を作成・添付してくれません。

他方、被害者請求は、どのような資料を提出するかを被害者側でコントロールすることができます。

そして、後遺障害の請求は、基本的に書面審査です。どのような資料を添付するかが、後遺障害の認定にとっては非常に重要なのです。

以上のとおりですから、後遺障害の請求をするときには、非常に重要な資料の作成・添付をコントロールすることができる「被害者請求」がおすすめです。

4.TFCC損傷後に後遺障害が認定された場合の損賠賠償額

後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益を請求することが可能になります。

⑴ 後遺障害慰謝料

後遺障害の額は、認定された後遺障害の等級に応じて異なります。

例えば、自動車損害賠償保障法施行令別表2の12級13号が認定されたとき、後遺障害が残存したことによって生じる慰謝料の額は、290万円(裁判所・弁護士基準)がひとつの基準となっています。

また、自動車損害賠償保障法施行令別表2の14級9号が認定されたときには、110万円(裁判所・弁護士基準)がひとつの基準となっています。

⑵ 後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残存したことによって、被害者の将来の労働能力が減退することによって生じる(であろう)減収を損害として捉えたものです。

後遺障害逸失利益は、以下の計算式によって算出できます。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間

基礎収入とは、稼働能力であり、実際に働いている方は、事故直前の年収を指すことが多いです。

そして、労働能力喪失率及び労働能力喪失期間は、認定された後遺障害の等級によって変わります。

12級13号の場合には、労働能力喪失率が14%、労働能力喪失期間が10年というものがひとつの基準となっています。

また、14級9号の場合には、労働能力喪失率が5%、労働能力喪失期間が5年というものがひとつの基準となっています。

例えば、基礎収入額が400万円の方がTFCC損傷の怪我を負った場合には、12級13号に認定されたときには約477万円が逸失利益の金額となり、同14級9号の場合には約91万円が逸失利益の額となります。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。

TFCC損傷という傷病は、交通事故に遭って初めて聞いたという方も多いと思います。

交通事故に遭ってあまり聞きなれない診断がなされると、不安に思うこともありますよね。

優誠法律事務所では、多くの交通事故の被害に遭われた方からご相談・ご依頼をお受けしています。

バイクや自転車の転倒事故に遭って、TFCC損傷の診断を受けた方は、お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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