異議申立てで14級が認定された事例(距骨骨折後の足関節の疼痛)

今回は、頚椎捻挫と距骨骨折後の足関節の疼痛で後遺障害等級14級9号が認定された事例をご紹介します。

今回の依頼者Sさんは、交通事故で両足を骨折したものの、事故直後に救急搬送された病院のレントゲン検査では左足の骨折が見つからず、事故から半年後のMRI検査でようやく距骨骨折が判明したという事情があります。

このような経緯もあったため、初回の後遺障害申請では、左足の骨折について否定され、非該当の判断になってしまいました。

その後、当事務所で、Sさんのカルテを取り寄せたり、主治医に医療照会を行ったり、専門の鑑定機関に画像の読影をお願いするなどの準備を行い、異議申立てをしたところ、左足骨折の事実が認められ、14級9号の認定を受けました。

交通事故の実務上、どうしても事故直後の画像で損傷が証明できないと、交通事故と怪我の因果関係が否定されてしまうことも多いですが、Sさんの場合は交通事故から半年後に骨折が判明した事例でも後遺障害が認められた稀なケースですので、同じようなことでお困りの方のご参考になればと思い、ご紹介することにしました。

1.事案の概要~事故から半年後に左距骨骨折が判明~

今回の依頼者Sさんは、片側一車線の直線道路を走行中、対向車がセンターラインをオーバーしてきて正面衝突されてしまいました。

お互いに相当なスピードが出ていましたので、この交通事故の衝撃でSさんの車両は大破してしまい、ブレーキペダルなどが折れ曲がって両足が挟まれたことで両足とも骨折してしまいました。

また、Sさんは、事故の衝撃で身体に強い衝撃を受け、頚椎と腰椎も負傷しました。

しかし、事故直後に救急搬送された病院では、レントゲンで右足の指の骨折は確認されたものの、左足のレントゲン画像では骨折が確認できなかったため、Sさんは左足の痛みも訴えていたものの、「左足関節打撲」の診断になってしまいました。

その後、Sさんは近所の整形外科に転院して懸命にリハビリをしたものの、事故から5ヶ月くらいのタイミングで、相手方保険会社に一方的に治療費の支払い(いわゆる一括対応)を打ち切られてしまい、これからどのようにすればよいか分からないということで当事務所に相談にいらっしゃいました。

ご相談後、主治医に確認してもらったところ、まだ治療によって改善の余地があり、症状固定にはなっていないとのことでしたので、健康保険に切り替えてしばらく治療を続けてもらうことになりました。

また、左足の痛みが改善しないことを相談してもらったところ、主治医から再検査することを勧められ、事故から半年後に再び救急搬送されたときの大きな病院で精密検査をすることになりました。

そして、このときのMRI検査で左足距骨に骨折した跡があることが判明しましたので、この時点でようやく「左距骨骨折」の診断が付きました。

2.初回申請は非該当

Sさんは、左距骨骨折の診断を受けた後も、主治医の下でリハビリを続けましたが、腰椎の痛みと左足関節の痛みが消えないまま、事故から約8ヶ月後に症状固定となりました。

なお、頚椎と右足の骨折部位については、多少の痛みが残ったものの、ある程度改善しました。

そして、Sさんは、症状固定時に主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害申請をしました。

ところが、初回申請の結果は、頚椎・腰椎・右足・左足の全てで非該当という判断になりました。

しかも、左足については、認定理由にMRI画像上にも骨折が認められないと記載されていました。

Sさんとしては、左足首の痛みから仕事にも日常生活にも大きな支障が出ているにもかかわらず、非該当という結果では納得できず、しかもMRIを撮影した病院と主治医の2人の医師から骨折の診断を受けたにもかかわらず、骨折したこと自体が認められないという判断であったため、そのような結果は受け入れられず、異議申立てを行うことになりました。 

3.異議申立てで左足関節の疼痛に14級9号が認定

⑴ MRI画像上で骨折部位の指摘

今回の場合、自賠責保険で、SさんのMRI画像上、左距骨に骨折は認められないとの理由で非該当の判断がなされていましたので、私たちは、まず、MRI撮影をした病院の担当医師にMRI画像のどこに骨折が認められるかを画像上で指摘してもらうようお願いしました。

そうしたところ、快く病院側が医療照会に応じてくれて、骨折部位(剥離骨折が偽関節化した部分)を指摘してもらうことができました。

⑵ 鑑定業者に画像の鑑定依頼

次に、私たちは、事故直後のSさんの左足のレントゲン画像で本当に距骨骨折が確認できないかを専門の鑑定業者に依頼して専門医に確認してもらいました。

しかし、専門医の判断でも事故直後のレントゲン画像では骨折が確認できないという回答でした。

ただ、左距骨後突起外側結節がはっきり描出されていない可能性も高く、このレントゲン画像だけで左距骨骨折が否定される訳でもないとの意見をもらうことができました。

⑶ 事故直後のカルテ分析・医療照会

さらに、救急搬送された病院と主治医の病院から診療録(カルテ)を取り寄せ、交通事故直後にSさんの左足についてどのような記載があるか確認しました。

そうしたところ、救急搬送された病院のカルテに「骨折の疑い」との記載があり、当時の医師がSさんの痛みの訴えや左足の腫れなどから、骨折を疑うような状況であったことが裏付けられました。

加えて、主治医にも医療照会で、事故直後の時期の左足の状況について質問したところ、2~3ヶ月腫れがあったことや痛みの改善がほとんど見られなかったことなど、こちらが意図した回答をもらうことができました。

⑷ 異議申立てで距骨骨折を認めさせることに成功

私たちは、これらの準備をして、MRIで左距骨骨折が認められること、事故直後のSさんの症状などからこれが今回の交通事故による骨折であることなどを主張して異議申立てを行いました。

また、今回は割愛しますが、腰椎捻挫後の腰痛についても、14級9号が認定されるよう準備を行って申し立てました。

そして、その結果、私たちの主張が認められ、Sさんの左距骨骨折後の左足関節の痛みと腰椎捻挫後の腰の痛みについてそれぞれ14級9号が認定されて、併合14級の認定となりました。

4.まとめ

今回は、距骨骨折後の左足関節の痛みについて、初回申請非該当から異議申立てで14級9号が認定された事例をご紹介しました。

今回のSさんのように、交通事故直後の画像で骨折などの器質的損傷が証明できない場合、仮に、その後数ヶ月してからの画像で損傷が見られたとしても、交通事故から時間が経てば経つほど、事故との因果関係を証明するのが難しくなります。

そのため、Sさんのケースでは手を尽くして異議申立ての準備を行って、なんとか後遺障害を認めさせることができましたが、正直に言えば、これは稀なケースだと思います。

Sさんの場合も、もう少し早い段階で再検査ができていれば、初回申請でスムーズに後遺障害等級が認定されていたかもしれませんし、事故後早い段階で私たちにご相談いただいていれば、もっと早く主治医に相談するよう促せたかもしれません。

ですから、私たちは、交通事故は被害者の方に対して、少しでも早く弁護士にご相談になるようお勧めしています。

私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております

ぜひ、お気軽にお問合せください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

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