駐車場内の交通事故の過失割合を逆転させた事例(80:20⇒10:90)

今回は、駐車場内の交通事故で過失割合を争い、相手方の主張から逆転させることができた事案をご紹介します。

現在、当事務所では、駐車場内の交通事故に関するお問い合わせを多くいただいております。

その多くは過失割合に関するお問い合わせですが、駐車場内における事故は非定型で特有性の強い事故が多いということを感じます。

今回も、駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

事故当時、依頼者Tさんは、Tさん車両を運転して、前方を走行していた相手車両に続いて、道路から駐車場内に進入しました。

その後、相手車両が通路の交差部分を左に曲がったため、Tさん車両も続いて通路の交差部分に進入したところ、突然、相手車両がTさん車両に向かって後退を開始しました。

危険を感じたTさんは、Tさん車両を停止させた上でクラクションを鳴らしました。

しかしながら、その後も相手車両は減速することなく後退を継続したことにより、Tさん車両に衝突してしまいました。

幸いにして、Tさんも相手方も怪我をしていませんでした。

ただ、Tさんは、相手方保険会社から、Tさんの過失割合が80%であるという主張をされており、これに納得できなかったことから、当事務所にご相談いただくことになりました。

Tさんは弁護士特約が利用することができ、弁護士費用による費用倒れの心配はありませんでしたので、ご相談後、ご依頼いただくことになりました。

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

事故が起きたのは、画像中央にある通路の交差部分になります。この写真は、下の図で見ると上部の方から交差部分を撮影したもので、Tさんはこの写真の奥側から手前側に向かって進行してきました。

2.基本過失割合は?

ご相談いただいた際、今回の交通事故の基本過失割合について検討しました。

(「基本過失割合とは?」については、以前、当事務所ブログの記事でご説明していますので、こちらもご覧ください。)

今回の事故は、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故ですので、一見すると別冊判例タイムズの336図が基本になりますが、別冊判例タイムズ336図の基本過失割合は80(通路進行車):20(駐車区画進入車)になっています。

相手方保険会社が提示していた過失割合も80%:20%であったため、相手方保険会社は、この別冊判例タイムズ336図の基本過失割合を根拠に主張していることが推察されました。

3.別冊判例タイムズ336図が適用されるか否か

しかしながら、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故であれば、必ず別冊判例タイムズ336図の80%:20%が適用される訳ではありません。

実際、別冊判例タイムズにも、通路進行車において、駐車区画進入車の駐車区画への進入動作を事前に認識することが客観的に困難であった場合は、本基準によらず、具体的な事実関係に即して個別的に過失相殺率を検討すべきであるとの記載がなされています。

Tさんからご依頼いただいた後、本件事故は別冊判例タイムズ336図が適用されるケースであるか否かを検討するため、交通事故が発生した駐車場を訪れて、事故現場の確認を行いました。

その結果、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されるべきではないとの心証を抱きました。

その後、相手方保険会社に対しては、資料等を引用した上で、概ね以下の主張を展開しました。

・通常、駐車区画に進入する際は、当該駐車区画の傍で停車した後、当該駐車区画への進入動作を開始すること。

・それにもかかわらず、相手車両は、かなり距離の離れた場所から駐車区画への進入動作を開始しており、Tさんが事前に認識することが客観的に困難であったこと。

・以上より、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されないこと。

その上で、衝突時にはTさん車両が停止していたこともあり、Tさんの過失割合は10%を上回らないと主張しました。

4.交渉の結果~過失割合10:90で解決~

その後、相手方保険会社は、私たちの主張を受け入れ、当初提示していた過失割合から70%過失を修正し、10%(Tさん):90%(相手方)で了承すると回答しました。

Tさんとしても、想定以上に有利な過失割合であったため、裁判にならずに示談が成立しました。

5.まとめ

今回のTさんの場合、結果的に80:20から10:90に過失割合を修正することができました。

このように大幅に過失割合を修正することができたのは、交通事故が発生した場所を訪れて事故現場の確認を行ったことにより、当方に有利な主張内容を説得的に構成できたためであると感じました。

過失割合の交渉をするにあたっては、機械的に別冊判例タイムズの基準を当てはめるのではなく、駐車場内における事故の特殊性を踏まえて柔軟に主張内容を構成することが肝要です。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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