進路変更事故の過失割合は本当に30:70?直進車が0になるケースと修正要素を弁護士が解説

今回のテーマは、「進路変更事故の過失割合」です。

進路変更事故の過失割合はなぜ「30:70」と言われるのか?

その根拠となる「判例タイムズ153図」を弁護士が徹底解説しつつ、直進車の過失が0になるケースや、ウインカーなし等の修正要素を具体例とともにご紹介します。

1.はじめに

進路変更(車線変更)事故の過失割合は、「30:70」と言われることが多いですが、すべてのケースで当てはまるわけではありません。

✔ 直進車の過失0になるケース

✔ 車線変更のタイミング次第で過失割合が修正されるケース

✔ 保険会社の説明が必ずしも正しいとは限らないケース

進路変更事故の過失割合は、事故の状況次第で大きく変わります。

本記事では、直進車と進路変更車との間で発生する交通事故について、

・進路変更事故の基本的な過失割合
・30:70が前提とする事故状況
・過失割合が修正される具体例
・保険会社との交渉で注意すべきポイント
・弁護士が介入すべき判断基準

を、交通事故実務の視点からわかりやすく解説します。

実際に、進路変更事故に遭った方の多くが、保険会社から「直進車が3割、進路変更した側が7割です」と説明を受け、「3割もこちらが悪いのだろうか?」と疑問を感じながらも、保険会社が言うなら「進路変更事故はそういうものなのだろう」とそのまま受け入れてしまっています。

しかし、交通事故実務の視点から見ると、進路変更事故だからといって一律に30:70と判断されるわけではありません。

進路変更事故における過失割合の考え方を正しく理解するためには、まず、なぜ「30:70」と言われることが多いのか、その根拠と前提となる事故状況を知る必要があります。

次では、進路変更事故の過失割合の根拠として、実務上参照されている「判例タイムズ」と基本過失割合について詳しく解説します。

2.進路変更事故の過失割合

進路変更事故における過失割合は、一般的には「後続直進車30%・進路変更車70%」とされることが多いです。

これは、進路変更を行う車両には、後方を十分に確認し、安全に進路変更を行う注意義務があるためです。

もっとも、この「30:70」はすべての進路変更事故に当てはまるものではなく、事故の状況によって過失割合が修正されるケースも少なくありません。

特に、以下のような場合には、直進車の過失が軽減されたり、過失なし(0%)と判断される可能性があります。

・進路変更車がウインカー(合図)を出さずに進路変更した場合 

・進路変更車が直進車の真横や後方から、急に車線変更してきた場合 

・進路変更車がゼブラゾーンをまたいで進入してきた場合 

・交差点付近で無理な進路変更が行われた場合 

・駐車場内での進路変更・接触事故の場合

なぜ進路変更事故で「30:70」と言われるのか、また、どのような事故状況を前提としているのかについて、次章で詳しく解説します。

3.なぜ「30:70」と言われるのか-判例タイムズと基本過失割合-

進路変更事故の基本的な過失割合は、道路交通法上の「進路変更時の安全確認義務」を前提に判断されます。

特に、

・ウインカー(合図)の有無

・進路変更開始時の位置関係や確認状況

・進路変更時の速度差

といった要素が、過失割合を左右します。

進路変更事故における30:70という過失割合の根拠として実務上参照されているのが、別冊判例タイムズ38号(以下「判例タイムズ」といいます。)という雑誌に掲載されている「153図」です。

判例タイムズは、日本国内で年間30万件を超える交通事故が発生している実情等を鑑み、これまでの交通事故過失割合に関する考え方を集積し、早期の解決・早期の被害者保護のために事故状況をデフォルメし、類型化したうえで、あらかじめ類型ごとの基本的な過失割合等を定めているものです。

裁判官や弁護士等の専門家も多くの場合、この判例タイムズを参考にして過失割合を議論・認定しています。

さて、判例タイムズ153図は、「車線変更車と後続直進車との事故」を類型化したもので、進路変更車70%、後続直進車30%という基本過失割合が示されています。

判例タイムズ153図
判例タイムズ153図

※基本過失割合(後続直進車Ⓐ30%:進路変更車Ⓑ70%)

保険会社が進路変更事故について「30:70です」と説明する場合、その多くは、この判例タイムズ153図を前提としています。

もっとも、判例タイムズは結論を自動的に導くものではありません。重要なのは、「153図」がどのような事故状況を前提としているのかを正確に理解することです。

4.判例タイムズ153図が前提としている進路変更事故の状況

判例タイムズ153図は、進路変更車70%、後続直進車30%という基本過失割合を示しています。

この点、「なぜ後続直進車に30%も過失があるのか」と疑問に思われる方も少なくないのではないでしょうか。

そこで、まず、判例タイムズ153図が前提としている事故状況及び後続直進車の基本過失の内容について解説します。

この点、判例タイムズは、153図について、「あらかじめ前方にある車両が適法に進路変更を行ったが、後方から直進してきた他の車両の進路と重なり、両車両が接触したという通常の態様の事故を想定している」と明確に記載しています。

ポイントとなるのは、その位置関係です。

すなわち、判例タイムズでは、「進路変更は、通常、後続直進車の速度又は方向を急に変更させることとなるから、基本的には後続直進車に有利に考えるべきであるが、後続直進車としても、進路変更車があらかじめ前方にいるのであるから、その合図等により、進路変更を察知して適宜、減速等の措置を講ずることにより衝突を回避することは、前車が進路変更と同時に急制動をかけたような場合でもない限り、一般にさほど困難ではない」としています。

簡単に言えば、後ろから走行してきたのだから、前方にいる車両の動向に注意を払い、その動向に合わせて危険を回避することは比較的容易なのであるから、それにもかかわらず漫然と直進走行した後続車には過失があり、その程度は30%ほどである、と言っているわけです。

ただ、逆にいえば、「進路変更」の態様にも種々あり、「合図等により、進路変更を察知して適宜、減速等の措置を講ずることにより衝突を回避する」ことが容易ではないという具体的な状況であれば、判例タイムズ153図が想定している30%の過失割合を後続直進車に負わせるべきではありません。

したがって、一律に「進路変更事故では後続直進車も3割の過失を負う」という理解は誤りであり、結局は具体的な事故状況によって判断されるのです。

5. 進路変更事故の過失割合が修正される代表的なケース

上でご説明したように、進路変更事故における過失割合は、基本的には「進路変更車70%・直進車30%」とされることが多いですが、事故の状況によっては、この割合が修正されるケースも少なくありません。

特に、進路変更の方法や場所、相手方との位置関係によっては、直進車の過失が軽減されたり、過失なし(0%)と判断されることもあります。

① ゼブラゾーンでの進路変更

ゼブラゾーンは、車両の進入が原則として想定されていない区画であり、そのゼブラゾーンを横断・進入して進路変更を行った場合には、進路変更車の過失が通常より重く評価される傾向があります。

このようなケースでは、直進車に結果予見可能性や回避可能性があったとは言い難く、直進車の過失が0%と判断される例もあります。

② 交差点直前での車線変更

交差点付近では、右左折車や信号の存在などにより、周囲の交通状況が複雑になります。

そのような場所で無理な車線変更や進路変更が行われた場合、進路変更車に高度な注意義務が課されるため、基本の「30:70」から進路変更車側の過失が加重されることがあります。

特に、交差点直前での急な車線変更は、直進車にとって回避が困難であるとして、過失割合が修正されやすい典型例です。

③ 駐車場内での接触事故

駐車場内で発生する進路変更・接触事故については、一般道路とは異なる注意義務が問題となります。

駐車場内では低速走行が前提となる一方で、車両の進行方向が定まっていないことも多く、一律に判例タイムズの基準が適用されるわけではありません。

そのため、駐車場内の事故では、事故状況次第で過失割合が大きく修正されることがあります。

④ 自転車との進路変更事故

進路変更事故の相手方が自転車である場合には、自動車同士の事故とは異なる評価がなされることがあります。

自転車は交通弱者として保護される側面がある一方で、自転車側の走行位置や進行方向、速度によっては、自転車側にも過失が認められるケースがあります。

このような事故では、単純に「進路変更=7割」とはならず、個別の事故状況に応じた判断が不可欠です。

このように、進路変更事故の過失割合は、事故の場所や進路変更の態様によって大きく左右されます。

過失割合を正しく判断するためには、単に事故類型を見るだけでなく、法律上の「過失」の考え方を理解することが重要です。

6.そもそも法律上の「過失」とは何か

過失割合を考えるうえで欠かせないのが、「過失」という概念の理解です。

それでは、「過失」とは何でしょうか?

過失とは、結果を予見することができたにもかかわらず、その結果を回避するための行動を取らなかったこと、すなわち、結果予見可能性を前提とした結果回避義務違反を意味します。

判例タイムズ153図が想定する進路変更事故では、進路変更車は、後続の車両の有無及び動向を確認すること(予見可能性)は容易であり、自らがその進路上に進入するわけですので、その回避(回避可能性)も通常容易にできるわけです。

その上で、判例タイムズ153図が想定する進路変更事故では、双方の速度に差のあることが前提となる(すなわち、後続直進車の速度が進路変更車より高速であるか、進路変更時に進路変更車が減速するか、又は後続直進車が加速中であるかのいずれか)ところ、このような進路変更は、通常、後続直進車の速度又は方向を急に変更させることとなる可能性が高いため、進路変更車により重い注意義務が課せられているのです。

他方で、後続直進車については、進路変更車の合図等により、進路変更を察知して(予見可能性)適宜、減速等の措置を講ずる(回避可能性)ことができるということです。

7.過失割合の争い方~過失割合は「事実」と「評価」の二段階で決まる~

⑴ まず問題となる「事実」の争い

進路変更事故の過失割合を検討する際、最初に問題となるのは、判例タイムズ153図の前提となる事実関係が本当に存在するのかという点です。

これが、過失割合における第一の争い、すなわち「事実レベルの争い」です。

実際のご相談であった事例ですが、直進車の運転手が「進路変更車が後方から近づいてきて、真横あたりで一時的に並走したかと思った直後、いきなり進路変更してきたため、回避できずに衝突された」と主張しました。

これに対し、進路変更車の運転手は、「すでに進路変更中であり、その最中に後方の直進車が衝突してきた」と主張していました。

ここで争われているのは、進路変更車が直進車の前方に位置していたのか、それとも真横付近だったのかという点です。

判例タイムズ153図は、進路変更車が直進車の前方に位置していることを前提に、直進車にも結果予見可能性・結果回避可能性があったとして3割の過失を認めています。

しかし、直進車の運転手の主張どおり、真横付近から突然進路を塞がれたのであれば、直進車について結果予見可能性や回避可能性が否定され、無過失と評価される可能性も十分にあります。

そのため、どちらの主張する事故状況であったのかは極めて重要なポイントでした。

このような事実の争いは、ドライブレコーダー、防犯カメラ、警察の実況見分調書などの証拠によって裏付けられるかどうかが大きなポイントです。

上記実際にあったご相談においても、被害車両(直進車)にドライブレコーダーが搭載されており、これを確認したところ、直進車運転手の主張のとおりであったことが確認され、0:100での交渉を行うことが出来ました。

反対に証拠によって立証できなければ、一般的な進路変更事故として30:70と評価されてしまう可能性もあります。

⑵ 事実に争いがなくても「評価」で争いになることがある

事故の事実関係が明確であっても、過失割合が争われるケースがあります。

これが、過失割合における第二の争い、すなわち「評価」の問題です。

こちらも実際にあったご相談ですが、直進車の前方に別の車両が存在し、直進車はその車両に追従して走行していました。

その状況下で、進路変更車が前方車両を追い抜いた直後、ほとんど間を置かずに直進車の前方へ進路変更し、衝突したという事故です。

この事例の場合、事故状況そのものに争いはありませんでした。

問題となるのは、直進車にどこまで結果予見可能性や回避可能性があったと評価すべきかという点です。

直進車は、前方車両に続いて走行できるという一定の信頼のもとで運転しており、その直後に第三の車両が割り込んでくることまで予測すべきか否かは評価が分かれます。

一方で、進路変更車については、後続車両の存在を十分に確認せずに進路変更を行っている点で、通常の過失を超える「著しい過失(脇見運転や酒気帯びなど通常想定される以上の不注意)」を問うべきかどうかが問題となります。

この点は、判例タイムズ等の事故類型から自動的に結論が導かれるものではなく、裁判例や過失概念に照らした法的評価に委ねられます。

この事例では、先行車が通過した直後に進路変更をしたことが進路変更車の過失を加重させる事由であるとして、後続直進車15:進路変更車85での解決となりました。

⑶ 小括~過失割合は「事実」と「評価」の二段階で決まる~

以上のとおり、進路変更事故を含む交通事故における過失割合の争いは、

① 判例タイムズ153図の前提となる事実が存在するのかという事実認定

② その事実をどのように法的に評価するのかという評価

という二段階のいずれの問題であるかをきちんと整理したうえで、証拠を収集しなければならないのか、法的評価を固めなければならないのか等方針を決めていく必要があるのです。

8.過失割合の交渉で弁護士が果たす役割

過失割合の交渉において、弁護士は法律のプロであると同時に、事実認定のプロでもあります。

法的判断には、事実の認定と法律への当てはめ(評価)があります。

どの事実が争点なのか、その立証のためにどの証拠が必要なのか、証拠を収集するためにどのような手続きが必要なのか。

弁護士であれば、ドライブレコーダーの開示請求、防犯カメラの確認、警察の実況見分調書の取得などを通じて、事実認定を補強できる場合があります。

他方で、このような主張の構成、証拠収集、法的評価までを、被害者ご本人が一人で行うことは現実的には極めて困難です。

だからこそ、交通事故、とりわけ過失割合に精通した弁護士の関与が重要になります。

9.交通事故は「誰に相談するか」で結果が大きく変わる

進路変更事故の過失割合については、保険会社の説明が必ずしも正しいとは限りません。

保険会社は、判例タイムズの基本過失割合を前提に「30:70」と説明することが多いですが、事故の具体的な状況や証拠次第では、過失割合が修正される可能性は十分にあります。

しかし、過失割合の判断や修正には、事故状況の整理、証拠の収集、法的評価が必要となるため、被害者ご本人が保険会社と対等に交渉することは簡単ではありません。

当事務所では、進路変更事故を含む交通事故について、

・過失割合に関する無料相談 

・弁護士費用の事前説明 

・保険会社との示談交渉の代行 

を通じて、事故状況に即した適正な過失割合の判断と、請求できる損害賠償額の最大化をサポートしています。

「進路変更事故だから過失割合は30:70で仕方がない」と諦めてしまう前に、一度、専門家に相談してみることをおすすめします。

ご相談の結果、必ずしもご依頼いただく必要はありません。

まずは、ご自身の事故状況がどのように評価されるのかを確認するだけでも構いません。

当事務所では、進路変更(車線変更)事故を含む交通事故のご相談は無料でお受けしております。

全国からご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

牧野孝二郎 弁護士

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

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