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むち打ち慰謝料が低くなる理由と保険会社との交渉術まとめ

2025-08-03

交通事故でむちうち(頚椎捻挫・腰椎捻挫)と診断され、適切な治療を受けているにもかかわらず、治療途中で保険会社から治療の打切りを打診されたり、低い慰謝料が提示される場合があります。

むち打ちの慰謝料の計算は、その症状や治療期間、通院頻度などによって大きく変動します。

また、保険会社とどのように交渉するかという点も慰謝料の金額に影響を与える重要な要素です。

そこで、今回は、むち打ちの慰謝料が相場より低くなりがちな理由を解き明かし、さらに保険会社からの治療打切り打診への対応策、慰謝料や治療費の減額リスクを回避する方法、保険会社に治療・通院期間の延長を認めさせるための交渉術などについて詳しく解説します。

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1.治療打切りや減額への対処法と治療期間延長のコツ

交通事故によるむち打ち治療において、最も多くの被害者の方が直面するのが、保険会社からの治療打ち切り打診です。

保険会社は、治療が一定期間に達すると「症状固定」と判断し、治療費の支払いを打ち切ろうとすることがあります。

保険会社としては、早期に治療費を打ち切ることで治療費の支出を抑えることができるというメリットがある上に、通院慰謝料も低額で抑えることができます。

これは、通院慰謝料が治療期間や通院回数によって算定されることから、早めに治療費を打ち切って治療期間を短くできれば、その分慰謝料の支払いも少なくすることができるためです。

ですから、保険会社にとっては、賠償金を少なくするためには治療費の打切りは早ければ早い方が良いということにはなります。

逆に、被害者にとっては、症状が改善していないにもかかわらず治療を打ち切られてしまうと、後遺症として症状が残り、その後の治療費が自己負担となってしまいます。

さらに、慰謝料の算定期間も短くなってしまうため、結果的に受け取れる慰謝料が、一般的な期間の通院をした場合と比べて大幅に減額される可能性があります。

被害者側が適切な補償を受けるためには、このような場面でも冷静に対処し、必要な治療期間の治療費を確保することが重要となります。

また、治療終了後に保険会社から提示される入通院慰謝料は、入院・通院日数も考慮して算定されるため、通院頻度が少ないと同じ期間通院した場合でも減額される可能性がありますので、適切な通院頻度で通院することも重要となります。

以下では、治療費打切りの打診があった場合の基本的な考え方と、それにどう対処していくべきか、また治療期間の延長を認めさせるための具体的な方法・流れについて解説していきます。

2.保険会社からの治療打切り打診への対応策

保険会社から治療の打切りを打診された場合、まず焦らずにその理由を確認することが重要です。

一般的には、診断書の内容や通院頻度などを基に、任意保険の保険会社として「これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない」と判断した場合などに打診されます。

特に、事故態様が軽微な場合は、保険会社が事故の賠償としてはこれ以上払えないと判断してしまい、早期に打切りを打診されることが多いです。

しかし、まだ症状が残っている、または、まだ改善の余地があると感じる場合は、安易に打切りを受け入れてはいけません。以下の対応策を参考に、適切な治療継続を目指しましょう。

⑴ 医師との綿密な連携

担当医には、診察のたびに現在の症状や改善の具合などを具体的に説明しておきましょう。

そうすることによって、診断書に「治療の継続が必要」といった内容を記載してもらいやすくなります。

また、保険会社が医師に対して医療照会をすることもありますが、基本的に事前に被害者に対して医療照会をすることを予告してきますので、予告された場合には、予め医師に保険会社から医療照会があることを知らせて、治療を継続して症状を改善させたいという希望をしっかり伝え、回答書や意見書に「症状固定には至っていない」ことやまだ治療の必要性があることを記載してもらいやすくしておきましょう。

医師の医学的見解は、保険会社との交渉において最も重要な証拠となります。

加害者側の保険会社からの連絡があった際も、医師から説明されている内容・治療の見込みなどの医師の意見を伝えることも大切です。

⑵ 通院頻度の見直し

むち打ちの治療は継続が重要ですが、あまりにも通院頻度が少ないと、保険会社に「治療の必要性がない」と判断されることがあります。

また、治療途中で急に通院頻度が少なくなると、改善したと解釈される場合があります。

適切な通院頻度を医師と相談し、維持するようにしましょう。

⑶ 症状の詳細な記録

毎日の症状の変化や、日常生活での支障などを細かく記録しておくことで、治療の必要性を具体的に説明できます。

これは、後に損害賠償の示談交渉が決裂してしまって裁判になった際、加害者側に治療期間の妥当性などを争われることもありますので、これに反論する場面でも有効です。

特に、主婦の方は、家事に支障があったことに対して家事従事者としての休業損害を請求できますが、これについても、どの時期にどのような家事にどの程度の支障があったかという点は重要になりますので、記録を残しておくと良いでしょう。

⑷ 自賠責へ被害者請求

被害者や医師が治療の必要性を訴えているにもかかわらず、保険会社が一方的に治療打切りを決定し、強行することもあります。

そのような場合には、一旦打切り後の治療費を立て替えた上で、自賠責保険に被害者請求をして打切り後の治療費を回収することも可能です。

ただ、自賠責保険は120万円が上限になりますので、枠が残っていない場合には自賠責保険には請求できません。

⑸ 弁護士への相談

保険会社との交渉が難航する場合や、専門知識が必要となる場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、あなたの代理人として保険会社と交渉し、適切な治療期間の治療費や慰謝料を獲得するためのサポートをしてくれます。

弁護士費用特約が利用できる場合には、弁護士費用の心配もありませんから、積極的に依頼することを検討しましょう。

法律事務所によっては無料相談を行っている事務所もあり、全国から電話やメールで相談できる事務所もあります。

3.慰謝料や治療費の減額リスクを回避する方法

むち打ちの慰謝料や治療費が不当に減額されるリスクを回避するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

⑴ 適切な医療機関での受診と継続的な治療

事故後すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な治療を継続することが重要です。

自己判断で治療を中断したり、通院を怠ったりすると、治療の必要性が低いと判断され、早期に治療費を打ち切られたり、通院頻度が低いという理由で慰謝料が減額される可能性があります。

MRIの設備がない整形外科の場合、大きな病院を紹介されて検査を受ける場合もありますが、そのように新たな医療機関を受診する場合には、事前に保険会社に連絡しておく必要があります。

また、整形外科以外にも、接骨院や整骨院での治療費も検討してもらえることもありますが、医師の同意を得ておくことが大切です。

⑵ 診断書の正確な記載

診断書には、症状の内容、治療期間、今後の見込み、症状固定の目安などが正確に記載されていることが重要です。

特に、痛みや痺れなどの自覚症状は、できるだけ具体的に医師に伝え、診断書に反映してもらいましょう。

医師が作成するカルテも裁判になった場合には重要な証拠になります。

⑶ 後遺障害診断の検討

治療を続けても症状が改善しない場合、後遺障害に該当する可能性があります。

後遺障害と認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになり、受け取れる金額が大幅に増える可能性があります。

後遺障害の申請は、自賠責保険に対する請求となりますが、加害者側保険会社に任せて申請してもらう「事前認定」と被害者側で申請する「被害者請求」の方法があります。

基本的に、加害者側保険会社が後遺障害等級認定のために尽力してくれることは期待できませんので、被害者請求の方が望ましいですが、後遺障害の種類や等級は専門的な知識が必要なため、弁護士に相談しながら手続きを進めるのが賢明です。

⑷ 交通事故を得意とする弁護士への依頼

保険会社は営利企業であり、できるだけ支払う金額を抑えようとします。

弁護士は、法律の専門家としてあなたの正当な権利を主張し、過去の裁判例(判例)に基づいて適切な慰謝料額を算定しますので、被害者本人が交渉するよりも、保険会社との交渉を有利に進めることができます。

弁護士費用特約に加入している場合は、自己負担なく弁護士に依頼できるケースが多いです。

⑸ 示談交渉の知識を持つ

示談交渉は、一度成立すると原則としてやり直しができません。

提示された慰謝料の金額に納得できない場合は、安易に示談に応じず、内容を十分に検討し、ご自身のお怪我についていくらくらいが適切な金額か弁護士に相談するようにしましょう(例えば、むち打ちで治療期間が3ヶ月の場合、裁判所基準では慰謝料が53万円程度になります。)。

過失割合も慰謝料に影響する重要な要素ですので、安易に保険会社の提示を受け入れずに、妥当な過失割合か調べてみると良いでしょう。

4.治療・通院期間の延長を勝ち取るための交渉術

むち打ちの慰謝料は、治療・通院期間の長さに大きく影響されます。

そのため、適切な期間の治療と通院を継続することは、結果的に適正な慰謝料を獲得することにもつながります。

⑴ 医師との協力体制の構築

医師は治療の専門家であり、あなたの症状を最も理解している存在です。

現在の症状、治療の進捗、今後の治療方針について医師と密にコミュニケーションを取り、治療の必要性を客観的に示してもらいましょう。

診断の内容や検査の結果を確認することも大切です。

⑵ 症状の継続的な訴えと記録

痛みが残っているにもかかわらず、「もう大丈夫だろう」と我慢してしまうと、治療の必要性がないと判断されかねませんので注意が必要です。

医師や保険会社に対し、症状が続いていることを明確に伝え、日常生活における支障なども具体的に記録しておきましょう。

⑶ 通院の継続と頻度

むち打ちの治療は、継続的な通院が原則です。

適切な頻度で通院し、治療への意欲を示すことも重要です。

ただし、過剰な通院は不必要と判断される可能性もあるため、医師と相談して適切な頻度を保ちましょう。

加害者側の保険会社から通院や診察を促されるケースもあります。

⑷ 客観的証拠の収集

MRIやレントゲンなどの症状の原因の裏付けとなる画像診断の結果、神経学的所見、医師の診断書や意見書など、客観的な証拠は交渉において非常に強力な武器となります。

事故の状況を証明する書類として、交通事故証明書や実況見分調書も必要になる場合もあります。実況見分調書は、弁護士に依頼して取得してもらうと良いでしょう。

⑸ 現実的な治療期間の提示

保険会社から治療費打切りの打診があった場合、まだ治療を継続したいと伝えると、保険会社はあとどのくらい治療が必要か聞いてくることが多いですが、「あと1ヶ月続けたい」など具体的な期限を伝えると延長を認めてもらいやすい傾向があります。

もちろん、あとどのくらいで改善するかということは予想できない人も多いと思いますが、「治るまで治療したい」などと伝えてしまうと、保険会社としては対応しきれないと判断され、早期打切りの可能性が高まりますので、「もう1ヶ月様子を見て相談したい」などと現実的な期限を伝えて交渉するのもよいと思います。

⑹ 弁護士の活用

保険会社は、弁護士が介入することで、訴訟に発展するリスクを考慮し、より柔軟な対応をする傾向があります。

弁護士は、被害者のお怪我の症状や治療の実績に基づいて、保険会社基準より高額な裁判所基準に近いところで解決できるよう交渉を進めます。

また、難しい保険会社とのやり取りは弁護士に任せることができ、安心して治療に専念できるはずです。

弁護士費用特約がない場合でも、示談交渉で慰謝料を増額できて弁護士費用をカバーできる(弁護士費用をかけても増額メリットが大きい)可能性も高いですから、示談する前に一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

5.まとめ

むち打ちの治療と慰謝料に関する交渉は、専門知識が必要な場面が多く、精神的な負担も大きいものです。

一人で抱え込まず、信頼できる医療機関の医師や、交通事故に強い弁護士と連携しながら、ご自身の権利をしっかりと主張していきましょう。

適切な知識と準備があれば、適正な慰謝料を獲得できるはずです。

私たち弁護士法人優誠法律事務所は、全国から無料でご相談をお受けしておりますので、この記事をご覧になった方はぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

肩腱板損傷で認定されやすい後遺障害等級~具体的な事例を踏まえて~

2025-07-27

今回は、交通事故による肩腱板損傷の後遺障害について、裁判例を交えて解説いたします。

肩腱板損傷は、肩の腱板(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋という4つの筋肉の腱)が傷ついたり、部分的に、あるいは完全に断裂したりする損傷を指します。

この損傷は、日常生活において様々な苦労をもたらすことがあります。具体的には、痛み、可動域制限、筋力低下や脱力感等です。

このように、腱板損傷は、日常生活において大きな苦労を伴う損傷といえます。

したがって、交通事故や労災事故等によって肩腱板損傷を負った場合、その苦労に見合った適正な賠償額が保険会社から支払われなければなりませんし、そのための知識をつけておくこと重要です。

1.過去の裁判例から学ぶ~後遺障害認定の傾向と注意点~

冒頭で触れたように、交通事故によって負った肩腱板損傷は、その後の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

適切な補償を受けるためには、後遺障害の認定が極めて重要ですが、その判断は非常に複雑です。

特に、事故前から存在した加齢による変性との区別が争点となるケースが多く、この争点について判断している裁判事例もあるところです。

後遺障害の等級は、症状の程度、治療経過、そして医学的所見等に基づいて総合的に判断されます。

肩腱板損傷の場合、主に以下の等級が検討の対象となります。

<8級6号>

肩関節の可動域が健側の10%程度以下に制限されている場合。

「関節の用を廃したもの」とされ、重度の機能障害が認められるケースに適用されます。

<10級10号>

肩関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されている場合。

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とされ、比較的重度の機能障害が認められるケースに適用されます。

<12級6号>

肩関節の可動域が健側の4分の3以下に制限されている場合。

「関節の機能に障害を残すもの」とされ、10級10号ほどではないものの、機能制限が存在する場合に該当します。

<12級13号>

痛みが「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認められる場合。

他覚的所見(MRIなど)で痛みの原因となる腱板損傷が確認でき、その痛みが継続している場合に認定されます。

<14級9号>

痛みが「局部に神経症状を残すもの」と認められる場合。

他覚的所見(MRIなど)で痛みの原因となる腱板損傷が確認できないものの、その痛みが継続している場合に認定されます。

これらの等級認定をするにあたり、裁判所が重視しているポイントをいくつかピックアップいたします。

① 肩腱板損傷と交通事故との因果関係に関する立証

肩腱板損傷は、外傷以外にも加齢による変性や日常生活での負荷によっても発生し得るため、事故によって生じた損傷であることの証明が最も重要です。事故直後からの症状の一貫性、事故態様と受傷内容の整合性、そして事故以前に同様の症状がなかったことの証明が重要です。

② 医学的所見の存在

特にMRI画像は、腱板損傷の有無、断裂の程度、損傷の新鮮さ、筋萎縮や脂肪浸潤の有無などを客観的に示す上で決定的な証拠となります。医師による診断書だけでなく、画像所見そのものが後遺障害認定に大きく影響します。そのため、事故直後にMRI検査を行うことが重要です。

③ 治療経過の一貫性と適切性

これは特に、神経症状に関する後遺障害等級において関連しますが、受傷直後から症状固定に至るまでの治療内容、治療効果、そして症状固定の時期の適切性です。漫然とした治療や、症状の訴えに一貫性がない場合は、認定が難しくなることがあります。

2.腱板損傷の慰謝料相場は?

慰謝料には「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」があります。以下にそれぞれの目安を紹介します。

・入通院慰謝料の目安

入院や通院日数・期間に応じて計算されます。

  • 例えば、6か月通院した場合:約50万円〜116万円(自賠責基準・弁護士基準で異なります)
  • 慰謝料の計算は治療の必要に応じて通院をした結果に基づくものではありますが、自賠責基準では通院回数が少ないと慰謝料が低く算定されるため、その点からも継続的な通院は大切です。

・後遺障害慰謝料の目安(等級別)

腱板損傷が後遺障害と認定されれば、慰謝料の金額は一気に上がります。

等級慰謝料(弁護士基準)逸失利益の考慮
10級約550万円収入の27%
12級約290万円収入の14%
14級約110万円収入の5%

3.慰謝料請求の流れと損害賠償の注意点

事故後は以下のような流れで進めるのが一般的です。

  • 事故後すぐに通院:初診が遅れると事故との因果関係を疑われます。
  • 診断書の取得:腱板損傷の診断が明記されたものが必要です。
  • 症状固定の判断:ある程度(一般的には6ヶ月程度)治療を続けた後、医師により”これ以上の回復が見込めない”と判断された時点です。
  • 後遺障害等級の申請:自賠責保険(損害保険料率算出機構)に申請します。
  • 示談交渉:保険会社との間で慰謝料などを決定。専門家がいないと過少評価されるリスクが高いです。

4.裁判例に基づく後遺障害認定の可能性の評価~あなたのケースはどうなる?~

ご自身の肩腱板損傷が後遺障害として認定される可能性を評価する際には、裁判事例から見えてくる基準とご自身の状況を照らし合わせることが有効です。

裁判事例を踏まえ、後遺障害が認められる可能性が高いと考えられるケースの一般的な特徴は、次のとおりです。

① 受傷直後からの明確な症状

これは特に、神経症状に関する後遺障害等級において関連しますが、事故後、速やかに医療機関を受診し、その後も一貫して肩の痛みを訴えて症状が継続していること。

② 客観的な画像所見の存在

MRI画像において、明らかな腱板の断裂(完全断裂、部分断裂を問わず)や損傷が確認できる場合。新鮮な損傷を示す所見(出血、浮腫など)があれば、事故との因果関係がより強く裏付けられます。

③ 可動域制限の正確な測定

医師による正確な計測によって、肩関節の自動運動(自分で動かせる範囲)だけでなく、他動運動(他人に動かしてもらう範囲)にも明らかな制限が認められる場合。これにより、痛みのために動かせないだけではない器質的な問題があることが裏付けられます。

④ 主治医の積極的な意見

主治医が、後遺障害診断書に具体的に症状や他覚的所見を記載するとともに、事故との因果関係や症状の程度について医学的な見地から肯定的な意見を示している場合。

一方、後遺障害が認められる可能性が低いと考えられるケースの一般的な特徴は、次のとおりです。

① 事故から医療機関の受診までに時間が空いたケース

そもそも事故との因果関係が問題視されてしまうリスクが高いです。

② 事故前に肩に何らかの症状があった、または加齢による変性が顕著なケース

事故による新たな損傷か、既存の症状の悪化かを区別することが難しくなります。

③ 他覚的所見が確認できないケース

他覚的所見が無いため、可動域制限に関する後遺障害等級の認定は難しくなります。もっとも、神経症状に関する後遺障害等級14級9号については、他覚的所見が無くても認定される可能性が残ります。

④ 後遺障害診断書において、因果関係や症状の程度等が曖昧にされているケース

後遺障害診断書は、後遺障害等級を判断するにあたり非常に重要な書類であるため、その記載内容が不十分であると不利に影響します。

ご自身の状況がこれらのいずれに該当するかを確認し、特に「事故との因果関係の証明」と「客観的な医学的所見の提示」に力を入れることが、後遺障害認定の可能性を高める上で重要です。

5.事例紹介とその解説~具体的な裁判例から学ぶ~

それでは具体的な裁判事例を通して、肩腱板損傷の後遺障害認定がどのように判断されているかを見てみましょう。

これらの事例は、実際の裁判所での判断基準を理解する上で非常に参考になります。

【事例1:可動域制限の後遺障害を主張したものの14級9号が認定されたケース】

<事案概要>

50代男性(原告)がタクシーを運転して交差点を右折しようとしたところ、対向車線を直進してきた相手車両と衝突したことにより交通事故が発生しました。原告は、右肩腱板損傷に基づく可動域制限を主張し、その後遺障害等級に該当することを主張しました。

<裁判所の判断(東京地裁平成30年11月20日判決)>

「右肩甲部から右上肢の疼痛に関しては、①原告は、本件事故後から右肩関節部の疼痛、圧痛、運動時痛を一貫して訴えており、本事故以前にそのような痛みが生じていたものとはうかがわれないこと、②平成24年7月10日に実施された右肩のMRI検査の結果、右肩関節棘上筋腱に脂肪抑制T2WIにて高信号域が見られ、損傷の所見があるものとされ、右肩関節腱板損傷との所見が示されており、丁山四郎医師の意見書や戊田五郎医師による鑑定報告書においても、右肩棘上筋の損傷や関節唇の損傷がみられるとの所見が示されていること、③本件事故態様や衝撃の程度等からすると、原告には、本件事故により、右肩に腱板損傷が生じ、右肩の疼痛が生じたものと推認される。もっとも、右肩の可動域は、自動値については制限がみられるものの、他動値では大きな制限はみられず、右肩関節の機能障害が生じたものとまでは認めるに足りない。」、「原告には症状固定後も、①右肩甲部から右上肢の疼痛・・が残存したものと認められるところ、①については後遺障害等級14級9号・・に該当・・したものと認めるのが相当である。」

<解説>

この事例から、自動運動が制限されていても、他動運動が制限されていなければ、可動域制限に関する後遺障害等級が認定されることは難しいことが分かります。

【事例2:被告からの反論を退けて12級6号が認定されたケース】

<事案概要>

50代男性(原告)が自動二輪車に乗車して直進していたところ、対向車線から転回してきた相手車両に衝突されたことにより交通事故が発生しました。これにより、原告は、左肩腱板損傷等の傷害を負い、自賠責保険会社から、左肩関節機能障害について12級6号の認定を受けていました。これに対し、被告側は、左肩関節の可動域制限と本件事故との因果関係について反論をしていました。

<裁判所の判断(神戸地裁令和元年6月26日判決)>

「原告はE自賠責損害調査事務所によって後遺障害等級併合12級と認定されているところ、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告には、本件事故によって受傷した左肩腱板損傷後の左肩関節について、健側(右肩関節)の可動域と比較して3/4以下の可動域制限が残存するという機能障害とともに、右足関節外果部に瘢痕があり・・原告には、後遺障害等級12級6号及び14級5号にそれぞれ該当する後遺障害が残存し、これを併合12級と評価するのが相当である。」、「この点、被告らは、原告の左肩関節の可動域制限と本件事故との因果関係に疑問を呈するとともに、その実質は疼痛という神経症状の範疇に止まる旨主張するところ、なるほど、事故から約7ヶ月が経過した平成30年2月26日のC整形外科の診療録において初めて左肩可動域制限に関する記載があると認められ、それまでのB病院の診療録では可動域制限なしとされ、他に上記日時までは可動域制限に関する記載がC整形外科の診療録にも見当たらず、また原告は事故後2ヶ月余が経過した平成29年9月ころに左肩の痛みがやや軽減し、又はほぼない旨医師に告げていることが認められる。」、「もっとも、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故から2日後の平成29年7月13日にC整形外科においてMRI検査を受けた結果、左肩、肩甲下筋腱に損傷があると診断されており、そのころ相当程度の疼痛を訴えていたこと、腱板損傷による疼痛等のため、原告は左肩をできるだけ動かさず、安静にする必要があったこと、医学的知見として、①腱板損傷が生じると時間の経過とともに断裂は拡大し、筋の萎縮が進行する、②関節可動域の制限には発生進行に関節の不動が影響するものであり、関節の不動によって拘縮が発生し、不動期間が長期化するほど拘縮が進行する、とされていること等の事実が認められ、これらの事実に徴すると、原告には、損害保険料率算出機構が認定したとおりの左肩関節の機能障害が残存し、その程度は後遺障害等級12級6号に該当するとの認定は覆らない。」

<解説>

この事例は、診療録に可動域制限なしと記載されていても、左肩関節の機能障害が残存していると評価された点が重要です。このように、裁判所は、様々な事情を総合考慮した上で、可動域制限の後遺障害等級について判断していることが分かります。

6.まとめ

このように、肩腱板損傷の後遺障害等級認定は、様々な事情を総合考慮した上で審査が行われます。

そのため、肩腱板損傷を負った被害者としては、後遺障害等級認定に有利な事情を主張立証しなければなりません。

一般の方が、これらの主張立証をすることは難しいと思われるため、適切な主張立証をされたい場合には、交通事故を専門とする弁護士に相談するべきであるといえます。

弁護士法人優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

この記事が、肩腱板損傷でお困りの被害者の皆様の解決に少しでもお役に立てれば幸いです。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故におけるむち打ちとその症状

2025-07-18

交通事故に遭われた際、身体には大きな衝撃が加わり、事故直後には自覚症状がなくても、時間が経ってから様々な不調が現れることがあります。

中でも「むちうち」は、交通事故被害者に特に多く見られる症状です。

むち打ちは、交通事故の衝撃で首に負担がかかることで生じる神経症状のことで、「外傷性頚部症候群」や「頚椎捻挫」とも呼ばれます。

主な症状は、首やその周辺の筋肉、靭帯、神経などの損傷によって引き起こされます。

被害者自身が軽傷だと考えていても、少し時間が経過してから症状が現れるケースも少なくないため、早めの受診と継続的な通院が非常に重要です。

この記事では、むち打ちの主な症状とその影響、慰謝料の種類と計算方法、そして診断書の重要性とその記載内容について詳しく解説します。

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1.むち打ちの主な症状と影響

むち打ちとは、交通事故などの衝撃により首に負担がかかって生じる神経症状のことを指します。

むち打ちの症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。

最も典型的な症状は、首や肩の痛み、こり、違和感です。

これは、事故の衝撃で首が前後左右に激しく揺さぶられ、頚部の筋肉や靭帯が過度に伸展したり、損傷したりすることによって生じます。

寝違えのような軽い症状から、頭を動かすことが困難になるほどの強い痛みまで、その程度は様々です。

また、痛みやこりだけでなく、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気といった症状を伴うことも珍しくありません。

これらは、頚部の損傷が自律神経に影響を与えたり、脳への血流に影響を及ぼしたりすることによって引き起こされると考えられています。

さらに、腕や指のしびれ、脱力感が生じることもあります。

これは、頚部から腕へと伸びる神経が圧迫されたり、損傷を受けたりすることによるものです。

場合によっては、集中力の低下や不眠といった精神的な症状が現れることもあり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

これらの症状は、事故直後には現れず、数時間後、あるいは数日経ってから徐々に現れるケースも少なくありません。

そのため、「事故に遭ったけれど、特に痛いところはないから大丈夫だろう」と自己判断してしまうのは非常に危険です。

被害者自身は軽傷だと思っても、後に症状が悪化することもあり、通院の継続や専門医による診断が重要です。

症状が軽いうちに適切な治療を開始しないと、慢性化して後遺症として残ってしまう可能性もあります。

また、事故直後に通院を行わないことによって、後の示談交渉の際に、事故と症状の因果関係を争われることにもなりかねません。

むち打ちは、レントゲン検査では異常が認められにくいことも多く、その診断が難しいとされています。

骨折や脱臼のように骨そのものに異常がないため、レントゲン画像では異常が見つかりにくいのです。そのため、症状の訴えと医師の診察が診断の重要な要素となります。

交通事故によるむち打ちは、単なる身体的な不調にとどまらず、精神的な苦痛や経済的な負担も伴います。

仕事に支障が出たり、趣味の活動ができなくなったりすることで、精神的なストレスも大きくなるでしょう。

また、治療費や休業による収入減など、経済的な負担も無視できません。

このような状況において、適切な治療を受けることはもちろんのこと、慰謝料や損害賠償といった法的な側面についても理解しておくことが重要です。

特にむち打ちの場合、その症状の特性から、適正な慰謝料の算定が争点となることも少なくありません。

2.慰謝料の種類と計算方法の違い

交通事故の慰謝料には、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料:治療のために入院・通院した期間・日数を元に計算
  • 後遺障害慰謝料:後遺症が残った場合に発生
  • 死亡慰謝料:死亡事故に該当する場合

慰謝料の計算方法には”基準の違い”がある

  • 自賠責基準(国の最低限保障)
  • 任意保険基準(各保険会社の独自基準)
  • 弁護士(裁判)基準(過去の裁判結果に基づく)

適正な金額を得るには、弁護士基準での請求が最も有利とされています。

慰謝料の内訳として「入通院慰謝料(入院・通院日数ベース)」や「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」があり、例えば【自賠責】では通院1日あたり4,300円(2023年4月以降の基準)、また弁護士基準では1ヶ月:約15〜20万円、3ヶ月:約53〜73万円、6ヶ月:約89〜116万円が目安です(すべて一例で、症状や日数、固定のタイミングにより増減)。

詳細な金額は表などで示されることも多く、被害者側の過失割合によって減額される場合があり、賠償金の計算には通院日数、症状固定日、後遺障害の有無など多くの要素が影響します。

また、保険ごとの対応の違いとして、

  • 【自賠責保険】:最低限の補償として入院・通院慰謝料、交通費、休業損害など
  • 【任意保険】:示談代行サービスや契約内容で補償範囲や金額に違いあり、自分に過失がある場合も一定額がもらえるケースあり
  • 【人身傷害特約】:自分が加害者でも一定の保険金を請求できる
    といった特徴があります。

「症状固定前の打切り」には注意が必要で、保険会社の治療費打切りの時点で通院をやめてしまうと、治療費や慰謝料などの賠償範囲がその時点までとなってしまいます。

適切な賠償金を得るためには、たとえ保険会社から打切りの打診があっても、医師が治療の必要性を認めている間は病院を継続受診し、医師が症状固定の診断をするまでの治療費の延長交渉が必要です。

交通事故の被害に遭った場合、弁護士への早期相談が勧められていますが、弁護士に相談すると、治療終了後の慰謝料や賠償金の増額交渉だけでなく、治療費の延長交渉や必要な診断書の取得の代行など多くのメリットがあります。

「弁護士費用特約」で弁護士費用が実質無料となる場合もありますし、着手金無料や成功報酬型の法律事務所も増えていますので、気軽に弁護士の活用を検討してみてください。

3.診断書の重要性と書き方

交通事故に遭い、むち打ちの症状が現れた場合、最も重要となるのが「診断書」です。

診断書は、ご自身の症状が交通事故によって引き起こされたことを医学的に証明する、場合によっては唯一の書類であり、加害者側や保険会社に対して損害賠償請求を行う上で不可欠な証拠となります。

⑴ 診断書の重要性

診断書の重要性は、以下の点に集約されます。

  • 因果関係の証明:診断書は、交通事故とご自身の症状との間に医学的な因果関係があることを証明します。これがなければ、「事故とは関係のない症状ではないか」と加害者側や保険会社に主張され、適切な補償を受けられない可能性があります。
  • 治療の必要性の証明:診断書には、医師が診断した傷病名や症状、それに対する治療方針が記載されます。これにより、行われる治療が交通事故による症状に対するものであることが明確になり、治療費の請求根拠となります。
  • 後遺障害認定の基礎:むち打ちの症状が長期化し、後遺症として残ってしまった場合、後遺障害の等級認定を申請することになります。その際、診断書の内容は後遺障害の有無や等級を判断する上で極めて重要な資料となります。症状の推移や治療経過が詳細に記載されていることが、適切な等級認定につながります。
  • 慰謝料算定の根拠:交通事故における慰謝料は、入通院期間や症状の程度によって算定されます。診断書に記載された傷病名、症状、治療期間などが、慰謝料の金額を決定する上で重要な要素となります。

⑵ 診断書に記載されるべき主要な項目

  • 傷病名:「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」など、医師が診断した具体的な病名が記載されます。
  • 初診日:交通事故後、初めて医療機関を受診した日が記載されます。事故発生から初診までの期間が短いほど、事故との因果関係が認められやすくなります。
  • 負傷の原因:「交通事故による」と明確に記載されていることが重要です。
  • 主要な症状:患者が訴える症状(首の痛み、頭痛、しびれなど)が具体的に記載されます。医師が客観的に確認できる所見(可動域制限、圧痛など)も記載されます。
  • 治療内容と期間:どのような治療が行われているか(投薬、リハビリ、物理療法など)や、今後の治療方針、治療期間の見込みなどが記載されます。
  • 全治の見込み:症状が完全に回復するまでの見込みが記載されます。症状が残存する可能性がある場合は、その旨も記載されます。

⑶ 医師への症状の伝え方と注意点

診断書の内容は、患者自身の訴えに基づいて医師が作成します。

特に、むち打ちの場合には、自覚症状が主となり、他覚的に確認できる可動域制限等の所見がないことも珍しくありません。

そのため、医師に正確かつ具体的に症状を伝えることが非常に重要です。

  • 発生時の状況を正確に伝える:交通事故がどのように発生し、ご自身の身体にどのような衝撃があったのかを具体的に伝えます。例えば、「追突されて首がガクンとなった」「横からぶつかられて身体が横に振られた」など、状況を詳細に説明しましょう。
  • すべての症状を具体的に伝える:痛みだけでなく、しびれ、めまい、吐き気、耳鳴り、不眠、集中力の低下など、自覚するすべての症状を具体的に伝えます。痛みの程度(ズキズキする、重い、ピリピリするなど)、頻度、症状が現れる時間帯なども詳しく伝えましょう。
  • 症状の変化を記録する:毎日、ご自身の症状の変化を記録することをお勧めします。痛みの強さ、症状が出た時間、改善したこと、悪化したことなどを記録し、診察時に医師に提示することで、医師はより正確な診断を下しやすくなります。
  • 遠慮せずに伝える:医師に遠慮して症状を軽めに伝えたり、伝え忘れてしまうことがないようにしましょう。ご自身の身体のことですから、気になる症状はすべて正直に伝えてください。
  • 既往歴や持病も伝える:以前からの持病や既往歴がある場合は、それがむち打ちの症状に影響を与える可能性もあるため、医師に伝えておきましょう。
  • 複数の医療機関を受診しない:原則として、診断書は一つの医療機関で作成されるべきです。複数の医療機関を受診すると、診断書の内容に矛盾が生じたり、治療の一貫性が失われたりして、保険会社から不当な評価を受ける可能性があります。ただし、専門医のセカンドオピニオンが必要な場合は、主治医と相談の上で検討しましょう。

⑷ 診断書が作成された後の確認

診断書が作成されたら、必ず内容を確認しましょう。

ご自身が訴えた症状がすべて記載されているか、病名や初診日、負傷の原因が正確に記載されているかなどを確認します。

もし、誤りや不足している点があれば、すぐに医師に申し出て訂正してもらいましょう。

交通事故の被害に遭われた方が、適切な慰謝料や補償や後遺障害等級の認定を受けるためには、正確で具体的な診断書が不可欠です。

4.弁護士に依頼するメリット

交通事故に関する手続きは、上でご説明した診断書の内容だけでなく、その後の示談交渉や後遺障害の申請など、非常に複雑で専門的な知識が求められます。

そして、多くの場合、加害者側の保険会社はできるだけ支払う慰謝料や賠償額を抑えようとします。

提示された金額が相場と比較して適切かどうか、ご自身で判断することは非常に困難です。

特にむち打ちの場合、自覚症状が中心となるため、その程度や慰謝料の相場を巡って争いになることも少なくありません。

そのような時に頼りになるのが、弁護士です。弁護士は、法律の専門家として、被害者の方の権利を守り、適正な慰謝料や賠償額を獲得できるようサポートします。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 示談交渉の代行:保険会社との煩雑な交渉を弁護士が全て代行します。これにより、精神的な負担が軽減され、治療に専念することができます。
  • 適切な慰謝料の算定:裁判例に基づく適切な慰謝料の相場を把握しているため、保険会社が提示する金額が不当に低い場合には、増額交渉を行います。弁護士基準といわれる高い基準で慰謝料を請求できます。
  • 後遺障害認定のサポート:後遺障害の等級認定は、非常に専門的な知識が必要です。弁護士は、適切な資料収集や申請手続きをサポートし、適正な等級認定が受けられるよう尽力します。
  • 訴訟対応:交渉が決裂した場合でも、民事訴訟を提起して適切な賠償を得られるよう尽力します。
  • 法律相談:疑問や不安な点をいつでも弁護士に相談できるため、安心して手続きを進めることができます。

5.まとめ

私たち弁護士法人優誠法律事務所は、これまで数多くのむち打ち事案を解決して参りました。

被害者の方々が抱える痛みや不安に寄り添い、適正な解決へと導きます。

もし、交通事故に遭われてむち打ちの症状でお悩みの場合、また、保険会社との交渉でお困りの場合は、一度、当法律事務所にご相談ください。

初回の相談は無料で行っております。

早期にご相談いただくことで、より有利な解決に繋がる可能性が高まります。

ご自身の権利を守り、事故の被害から一日も早く回復するためにも、弁護士のサポートをぜひご検討いただければと思います。

投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

交通事故による肩腱板損傷でお悩みの方へ

2025-06-29

突然の交通事故は、私たちの日常を奪い、心身に大きな負担を強いることがあります。

特に、肩関節を構成する重要な腱の集まりである腱板の損傷は、その後の生活や仕事に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

上肢の機能障害にもつながる肩腱板損傷は、痛みだけでなく、肩の可動域制限を引き起こし、時に後遺障害を残すことも少なくありません。

もしあなたが交通事故で腱板損傷を負い、今後の治療や保険会社との交渉、そして適切な慰謝料の獲得について不安を感じているのであれば、この記事が解決への糸口になると思います。

弁護士法人優誠法律事務所は、交通事故の専門知識と豊富な解決事例に基づき、被害者の方々を全力でサポートしています。

この記事では、交通事故における肩腱板損傷の基礎知識から、後遺障害認定の必要性、保険会社との交渉のポイント、そして弁護士に依頼するメリットまでを詳細に解説します。

1.交通事故における肩腱板損傷とは

交通事故によって肩に強い衝撃が加わると、肩腱板を損傷する可能性があります。

ここでは、肩腱板の構造と機能、主な損傷の原因、そして交通事故における症状と影響について解説します。

(1)肩腱板の構造と機能

肩腱板とは、肩関節を構成する4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の腱が集合したものです。

これらの腱は、上腕骨頭(腕の骨の先端)を肩甲骨の関節窩に安定させ、腕を上げたり、回したりする際の滑らかな動きを支える重要な役割を担っています。

腱板が正常に機能することで、私たちは日常生活における様々な動作をスムーズに行うことができるのです。

(2)主な損傷の原因

肩腱板損傷の主な原因は、加齢による腱の変性、使いすぎ(オーバーユース)、転倒やスポーツなどによる急激な外力などが挙げられます。

交通事故においては、衝突時の衝撃や、体を支えようとした際の無理な力が肩関節に加わることで、腱板が断裂したり、部分的に損傷したりすることがあります。

特に、直接的な打撃だけでなく、予測できない体勢での衝撃は、腱板に大きな負担を与える可能性があります。

(3)交通事故での症状と影響

交通事故による肩腱板損傷の症状は、損傷の程度によって様々です。

軽度の場合には、肩の痛みやわずかな可動域制限が見られる程度ですが、重度の場合には、激しい痛みで腕を上げることが困難になったり、夜間に痛みが強くなったりすることがあります。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 肩の痛み(安静時痛、運動時痛、夜間痛)
  • 腕を上げる際の痛みやひっかかり感
  • 肩関節の可動域制限(特に腕を上げる、外に開く、内側に回す動作が困難になる)
  • 肩の力が入りにくい、脱力感
  • 特定の動作での肩の不安定感

これらの症状は、日常生活における様々な動作、例えば着替え、入浴、食事、車の運転などを困難にするだけでなく、睡眠障害を引き起こし、精神的な負担となることもあります。

また、受傷当日には症状が軽度でも、数日経過してから悪化することもあるため、注意が必要です。

鎖骨の骨折など、肩腱板の損傷に加えて骨折を伴うケースもあります。

2.交通事故における証明の重要性

交通事故によって腱板損傷を負った被害者が適切な損害賠償を獲得するためには、その怪我が交通事故によって生じたものであり、かつ後遺障害が残っていることを医学的に証明することが極めて重要です。

ここでは、医師の意見書の役割、証明に必要な書類、そして立証に向けた準備について解説します。

(1)医師の意見書の役割

医師が作成する後遺障害診断書や意見書は、後遺障害認定において非常に重要な役割を果たします。

これらは、被害者の症状が交通事故に起因するものであること、治療の経過、症状固定時の状態、そして将来にわたって残存する後遺症の程度や内容を医学的な見地から客観的に記載するものです。

特に、腱板損傷による可動域制限や痛みが後遺障害として認められるためには、医師が作成する詳細な診断書や意見書が不可欠となります。

弁護士は、医師との連携を通じて、後遺障害認定に必要な情報を的確に診断書や意見書に反映させられるようサポートします。

(2)証明に必要な書類

後遺障害認定の申請や損害賠償請求を行う際には、以下のような書類が必要または有効となります。

これらの書類は、被害者の怪我の状況、治療の経過、そして後遺症の存在を客観的に証明する根拠となります。

  • 交通事故証明書:事故の事実を公的に証明する書類です。
  • 診断書:初診時からの診断、怪我の部位や内容、症状などが記載されます。
  • 診療報酬明細書:治療費の詳細が記載された書類です。
  • レントゲン画像、MRI画像、CT画像など:腱板損傷の有無や程度を客観的に示す画像検査のデータです。特にMRIは腱板の損傷状況を詳細に評価する上で重要です。
  • 各種検査結果:関節の可動域測定結果など、機能障害の程度を示すデータです。
  • 後遺障害診断書:症状固定時に医師が作成する書類で、後遺症の内容や程度が詳細に記載されます。後遺障害認定の申請に不可欠な書類です。
  • 意見書:医師が作成する、症状や治療に関する詳細な意見が記載された書類です。
  • 診療録:入院していた場合に、身体の状況や介護の必要性などが記載されます。

これ以外の書類も状況に応じて必要になる場合がありますが、被害者自身で全てを収集するには負担が大きいため、弁護士に依頼してスムーズに収集できるようサポートしてもらうことをお勧めします。

(3)立証に向けた準備

後遺障害の立証に向けた準備は、治療中から始まります。

  • 早期の受診と継続的な治療:事故後、肩に痛みや違和感を感じたら、速やかに整形外科を受診しましょう。そして、医師の指示に従い、中断することなく治療を継続することが重要です。事故発生から2週間以上経過した段階での受診や、治療中1か月以上の治療の中断は、交通事故と怪我の因果関係を否定される可能性があるため注意が必要です。
  • 医師との密な連携:症状の変化や治療の経過について、医師に詳細に伝え、診断書や意見書に正確に反映してもらうよう依頼しましょう。
  • 症状の記録:日々の痛みの程度、可動域制限の状況、日常生活での支障などをメモに残しておくことが有効です。これは、後遺障害認定の際の参考資料となり得ます。
  • 専門医への紹介:必要に応じて、腱板損傷の専門医や高次医療機関への紹介を受け、より専門的な診断や治療を受けることも検討しましょう。

これらの準備が十分になされていないと、後遺障害が認められなかったり、適切な等級が認定されなかったりする可能性があります。

3.保険会社とのやり取り

交通事故の被害者にとって、保険会社とのやり取りは精神的な負担が大きく、専門知識が必要となる場面が多々あります。

ここでは、保険会社の対応と注意点、交渉のポイント、そして保険金請求の流れについて解説します。

(1)保険会社の対応と注意点

交通事故の後、加害者側の保険会社から連絡が入り、治療費の支払いや休業損害・慰謝料に関する提示が行われます。

しかし、保険会社は営利企業であり、自社の基準で損害額を提示してくることがほとんどです。

この提示額は、弁護士が交渉して獲得できる金額よりも低い場合が多く、特に示談交渉の最終段階で提示される示談金は、被害者にとって不利な内容である可能性があります。

注意点としては、以下が挙げられます。

  • 安易に署名・捺印をしない:保険会社から送られてくる書類には、安易に署名・捺印をしないように注意しましょう。
  • 安易に症状固定の打診に応じない:保険会社は、治療期間が長引くと、治療費の支払いを打ち切るために「症状固定」を打診してくることがあります。しかし、症状固定の判断は、医師が行うべきものであり、保険会社の都合で決定されるものではありません。
  • 安易に示談を了承しない:保険会社からの初期の示談提案は、自賠責保険の基準や任意保険の独自基準(いわゆる相場)に基づくことが多く、裁判基準(弁護士基準)と比較して大幅に低い金額である可能性が高いです。

(2)交渉のポイント

保険会社との交渉を有利に進めるためには、慰謝料の増額も視野に入れた戦略が重要です。以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 適正な損害額の算定:治療費、交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益など、発生した損害の総額を正確に算定することが不可欠です。特に後遺障害が残った場合には、後遺障害等級に応じた逸失利益の計算が重要となります。
  • 後遺障害等級の認定:肩腱板損傷の後遺障害は、肩関節の可動域制限などによって10級10号などの等級が認定される可能性があり、12級6号が認定される事例もあります。適切な等級認定を受けることが、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益の獲得に直結します。
  • 裁判基準(弁護士基準)の適用:保険会社が提示する金額は、自賠責保険基準や任意保険基準であることがほとんどです。しかし、弁護士が介入することで、過去の裁判例に基づいた最も高額な基準である裁判基準(弁護士基準)で交渉を進めることが可能になります。
  • 専門家による交渉:弁護士は、法的な知識と交渉経験を活かし、保険会社の主張に対して的確に反論し、被害者の権利を守るために粘り強く交渉します。

(3)保険金請求の流れ

交通事故の損害賠償請求は、一般的に以下のような流れで進行します。

  • 事故発生・警察への連絡:事故が発生したら、速やかに警察に連絡し、事故状況の確認を行ってもらいます。
  • 病院での診察・治療:痛みや違和感がなくても、必ず病院で診察を受けましょう。腱板損傷などの怪我は、後になって症状が現れることもあります。診断書は必ず保管してください。
  • 保険会社への連絡:自身の保険会社と相手方の保険会社に事故が発生したことを連絡します。
  • 治療の継続:医師の指示に従い、症状が固定するまで治療を継続します。症状や状況に応じて、整骨院等での治療を検討できる場合もあります。
  • 症状固定・後遺障害診断:医師がこれ以上の治療による改善が見込めないと判断した時点で「症状固定」となります。この時点で後遺症が残っていれば、後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害認定の申請を行います。
  • 後遺障害等級の認定:損害保険料率算出機構(自賠責保険調査事務所)が提出された書類に基づき、後遺障害等級の審査を行います。等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能になります。
  • 示談交渉:後遺障害等級が認定された後、治療費、慰謝料、休業損害、逸失利益などの損害賠償額について、保険会社と示談交渉を行います。
  • 示談成立・賠償金支払い:示談が成立すれば、示談書を締結し、保険会社から賠償金が支払われます。

この流れの中で、弁護士は被害者の立場に立ち、各段階で適切なアドバイスとサポートを提供します。

4.交通事故後の弁護士の役割

交通事故による肩腱板損傷は、被害者に大きな精神的・経済的な負担を与えます。

弁護士は、被害者の権利を守り、適切な賠償を得るために様々なサポートを行います。

ここでは、弁護士の選び方と相談方法、無料相談の活用方法、そして弁護士に依頼するメリットについて解説します。

(1)弁護士の選び方と相談方法

交通事故問題を専門とする弁護士を選ぶことが重要です。

当弁護士法人のように、交通事故の解決実績が豊富で、専門知識を持つ事務所を選ぶことが重要です。

ホームページや紹介などを通じて、弁護士の専門性や実績を確認しましょう。

また、実際に相談してみて、親身になって話を聞いてくれるか、説明が丁寧で分かりやすいかなども判断材料となります。

弁護士への相談方法としては、電話、メール、オンライン相談、面談などがあります。

多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っているため、まずは気軽に相談してみることをお勧めします。

相談の際には、事故の状況、怪我の状況、治療の経過、保険会社とのやり取りなど、できるだけ詳しく伝えることが大切です。

(2)無料相談の活用方法

無料相談は、弁護士に依頼するかどうかを検討する上で非常に有効な手段です。

無料相談を最大限に活用するために、以下の点に注意しましょう。

  • 事前に相談内容を整理しておく:聞きたいことや伝えたいことをメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます。
  • 関係書類を持参する:事故証明書、診断書、保険会社の提示書など、関連する書類を持参すると、より具体的なアドバイスを受けることができます。
  • 弁護士の経験や実績を確認する:交通事故事件の解決経験や、特に肩腱板損傷のような事例の経験があるかなどを質問してみましょう。
  • 費用体系について確認する:弁護士に依頼した場合の費用(着手金、報酬金など)やその理由について、明確に説明を受けるようにしましょう。

複数の弁護士に相談してみることも、自分に合った弁護士を見つけるためには有効な方法です。

(3)弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害者が弁護士に依頼することには、以下のような多くのメリットがあります。

  • 適正な損害賠償額の獲得:弁護士は、法的な知識や過去の判例・裁判例に基づいて、適正な損害賠償額を算定し、保険会社との交渉を有利に進めます。
  • 煩雑な手続きからの解放:示談交渉や後遺障害認定の手続きなど、複雑で時間のかかる作業を弁護士に任せることができます。これにより、被害者は治療に専念することが可能となります。
  • 精神的な負担の軽減:保険会社とのやり取りや、今後の見通しなどについて弁護士に相談することで、精神的な不安や負担を軽減することができます。
  • 裁判になった場合の対応:示談交渉が決裂し、裁判になった場合でも、弁護士が代理人として対応します。

交通事故による肩腱板損傷は、症状が重い場合、後遺障害として残る可能性も十分に考えられ、損害賠償額も高額になるケースが多くなります。

弁護士費用が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、弁護士費用特約に加入していれば、費用は保険で賄われることがほとんどです。

特約がない場合でも、着手金無料や成功報酬型の料金体系を採用している事務所もありますので、まずは無料相談をご利用いただき、費用について確認してみましょう。

交通事故による肩腱板損傷でお困りの方は、一人で悩まず、まずは当弁護士法人にご相談ください。

経験豊富な弁護士が、あなたにとってより良い問題解決となるよう尽力いたします。

投稿者プロフィール

牧野孝二郎 弁護士

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

【弁護士が解説】むち打ち慰謝料の相場と交通事故後に取るべき正しい対応とは?(後遺症・通院・慰謝料増額のポイント)

2025-06-01

交通事故に遭い、むち打ち症(頚椎捻挫、頚部挫傷)と診断された場合、多くの方が気になるのは、今後どのように治療を進めたら良いかという点やその慰謝料の相場などでしょう。

後遺症が残る可能性や、通院にかかる負担への不安、そして被害に遭った訳ですから慰謝料を増額したいという思いは当然です。

慣れない交通事故の手続きや、今後への不安から、適切な判断ができずに悩んでしまう方も少なくありません。

本記事では、交通事故におけるむち打ちの慰謝料の相場について、多くの交通事故被害者の方のサポートをしてきた弁護士が詳しく解説いたします。

さらに、相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数や、交通事故後に取るべき正しい対応、そして慰謝料を増額するためのポイントについてもご紹介します。

むち打ちの症状にお悩みで、今後の対応に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてください。

【関連記事】

1.むち打ちとは?|事故後すぐに症状が出ないケースも

「むちうち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)」とは、追突事故などで首がムチのようにしなることで起こる外傷です。主な症状は以下の通りです。

・首や肩の痛み

・頭痛、めまい、吐き気

・手足のしびれや脱力感

事故直後は症状が軽くても、数日後に悪化するケースもあります。

放置せず、事故後は速やかに整形外科などの病院を受診しましょう。

2.慰謝料とは?|精神的苦痛に対する金銭的補償

交通事故における慰謝料とは、怪我によって被った精神的な苦痛に対して支払われる金銭のことです。むち打ちの場合、以下の2つが主に該当します。

入通院慰謝料:通院期間や治療日数に応じて支払われる

後遺障害慰謝料:後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる

3.むち打ち慰謝料の算定基準を理解する(自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の違い)

交通事故によるむち打ちの慰謝料は、一律に決められているわけではありません。

慰謝料の金額は、交通事故の状況、被害者の負傷の程度、治療期間実通院日数など、様々な要素を基に検討します。

一般的に、慰謝料を算定する基準として、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」の3つが存在します。

それぞれの基準によって慰謝料の金額は大きく異なるため、その違いを理解しておくことが重要です。

(1)自賠責保険基準:最低限の補償

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。被害者の救済を目的としており、最低限の補償を行うための基準が定められています。

自賠責保険基準による慰謝料は、治療期間や実通院日数に応じて算出されますが、最低限の補償を目的にしていますので、その金額はどうしても低額になります。

具体的には、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×総治療期間」のいずれか少ない方が慰謝料として支払われます(2020年4月1日以降の事故の場合)。

なお、後遺障害等級が認定された場合には、別途後遺障害慰謝料(後遺障害保険金)が支払われます。

(2)任意保険基準:保険会社独自の基準

任意保険は、自賠責保険では賄えない部分を補填するために、自動車の所有者が任意で加入する保険です。

各保険会社が独自に慰謝料の算定基準(任意保険基準)を設けていますが、一般的には自賠責保険基準よりも高額になることが多いです。

ただし、その算定方法は公開されておらず、保険会社によって金額が異なる場合があります。

保険会社から提示される慰謝料は、この任意保険基準に基づくものですが(最低限の自賠責保険基準で提示してくる担当者もいます)、あくまで保険会社の都合で決められている基準ですから、被害者にとって適正な金額とは言えません。

被害者側が弁護士に依頼しなければ、保険会社は、この自社の基準である任意保険基準に基づいて示談交渉を進めてきます。

(3)裁判基準(弁護士基準):適正な賠償を目指す

裁判基準(弁護士基準)は、過去の裁判例に基づいて確立された慰謝料算定基準です。

3つの中で最も高額になる可能性が高い基準となります。交通事故に強い弁護士が示談交渉を行う際や、裁判になった場合に用いられます。

裁判基準では、基本的にむち打ちの症状の程度や治療期間に応じて慰謝料を算定しますが、慰謝料の目安としては、例えば、他覚所見のない神経症状の場合、3ヶ月の治療期間で53万円程度、6ヶ月の治療期間で89万円程度となります。

これはあくまで目安であり、個別の事案によって増減する可能性があります。

また、関西地方の裁判所では独自の基準があり、これより低い金額となることが多いなど、地方によっても若干の違いが出ることがあります。

後遺障害等級が認定された場合には、さらに後遺障害慰謝料が加算されます。

例えば、むち打ちで後遺障害等級14級9号が認定された場合、裁判基準の後遺障害慰謝料の相場は110万円、12級13号の場合は290万円となります。

このように、自賠責保険基準や任意保険基準よりも高額になりますので、慰謝料を増額するためには、この裁判基準で交渉することが重要になります。

ただし、弁護士に依頼せずに被害者ご自身が保険会社に裁判基準で慰謝料を要求しても、応じてもらえないことが多いようです。

4.慰謝料相場と相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数(適切な通院頻度と期間)

(1)むち打ち慰謝料の相場

交通事故被害者の方からご相談をお受けすると、「慰謝料の相場はどのくらいですか?」というご質問をよくお受けします。

交通事故の慰謝料は、お怪我の症状の程度や治療期間などを基に算定されますので、「慰謝料の相場」がどのくらいか?というのは一概には言えませんが、むち打ちの場合、一般的には治療期間が3ヶ月から6ヶ月の間の方が多いです。

そして、その場合の裁判基準の通院慰謝料(傷害慰謝料)は、53万円~89万円ですので、このくらいがむち打ちの慰謝料の相場と言えるかもしれません。

ご参考までに月10日程度通院した場合の自賠責基準と裁判基準の慰謝料の目安も載せておきます。

むち打ち慰謝料の金額例(目安)

通院期間通院日数自賠責基準の慰謝料裁判基準の慰謝料
1ヶ月10日8万6000円19万円
3ヶ月30日25万8000円53万円
6ヶ月60日51万6000円89万円

(2)必要な通院日数

自賠責保険基準の場合は、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×

一方、裁判基準で慰謝料を算定する場合、基本的には治療期間(通院期間)で算定します。

そのため、通院日数は慰謝料の計算にそれほど影響せず、週に2~3回通院した場合でも、週に4~5回通院した場合でも、慰謝料の金額は変わらないということになります。

なお、以前は、裁判基準でも、通院頻度が少ない場合、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とするとされていました(「3倍ルール」などと呼ばれていました。)。

例えば、通院期間は6ヶ月間でも、週1回(月4回)程度の通院で、合計の実通院日数が24回だった場合、通常の裁判基準では通院6ヶ月で慰謝料89万円になりますが、実通院日数の3倍程度とされてしまうと、「実通院日数24回×3=72日」で2ヶ月半程度の通院という評価になり、慰謝料が約43万円になってしまいます。

このように、以前の基準では、通院頻度が週2回以下の場合には通常の裁判基準よりも慰謝料が減額されてしまうことがありました。

これは、加害者側の保険会社にとっては有利な基準ですので、未だに年配の担当者が、この3倍ルールを持ち出して慰謝料を減額させようとするケースもあります。

しかし、現在の基準では、この3倍ルールが適用されるのは、「通院が長期にわたる場合」(概ね1年以上)に限定されることになっており、例えば加害者側が6ヶ月程度の通院期間の場合に3倍ルールの主張をしても、基本的には裁判所が認めていない印象です。

このように、特に裁判基準では、慰謝料算定の上で、必要な通院日数というものはありません。

また、そもそも慰謝料のために通院する訳ではなく、治療の必要に応じて通院したことの結果として通院を強いられた慰謝料を算定するということですから、医師の指示の下で必要な治療を受けていただくということが原則になります。

ただ、むち打ちの場合、一般的に他覚所見がないことが多いため、適切な頻度での継続的な通院が、症状の存在や治療の必要性を客観的に示す要素になり得ますので、自己判断で通院を中断したり、回数を減らしたりすることは避けるべきです。

特に、急に通院頻度が減ると、症状が改善したと認識されてしまう場合もありますので、注意が必要です。

そして、上でご説明した3倍ルールなども考えると、一般論としては、週に2~3回程度の通院が適切と言えるように思います。

なお、整骨院や接骨院への通院も、慰謝料の算定においては整形外科への通院と同様に扱われますが、事前に医師に相談して指示(同意)を得ておくことが必要です。

5.慰謝料額が変動する要因

むちうち事故における慰謝料額は、以下の要因で大きく変わります。

  • 通院日数・通院期間:実際に通った期間や日数によって算定される
  • 通院頻度:毎月の通院回数も考慮される可能性がある
  • 後遺障害等級の認定有無:14級9号などに該当すれば増額
  • 事故の状況(過失割合):過失があれば減額される

6.交通事故後に取るべき正しい対応(初期対応が重要)

交通事故に遭ってしまった場合、適切な初期対応を取ることが、その後の慰謝料請求や損害賠償請求において非常に重要になります。以下の点に注意して、冷静に対応しましょう。

  • 警察への連絡:交通事故が発生した場合は、速やかに警察に連絡し、事故状況の確認と届け出を行いましょう。また、お怪我をされた場合は、診断書を提出して人身事故に切り替える手続きをした方が無難です。
  • 加入保険会社への連絡:ご自身が加入している自動車保険会社にも、事故の状況を速やかに報告しましょう。保険会社からのアドバイスやサポートを受けることができます。弁護士費用特約が付いている場合は、弁護士費用を保険でまかなうことができますので、弁護士特約の使用の可否も確認しましょう。
  • 医療機関での受診:事故直後は症状がなくても、後からむち打ちなどの症状が現れることがあります。速やかに医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。交通事故から時間が経過してしまうと事故との因果関係を争われる場合がありますから、とにかく早く受診することが重要です(原則として、事故から2週間以内に受診しないと自賠責保険が適用できません。)。また、通院の際には、医師に症状を詳しく伝え、適切な治療を受けるようにしてください。事故直後に医師に症状を伝えていないと、カルテや診断書に記載されません。診断書に記載のない症状は、事故との関連性を認めてもらえませんので、全ての症状を伝えることが重要です。治療期間中も、医師にはなるべく症状を詳しく伝えることが重要です。後遺障害認定や裁判でカルテが提出されることもありますが、日々の診察で症状を訴えていないと症状が改善されているなどと捉えられてしまうこともあります。
  • 弁護士への相談:交通事故後の手続きや、相手方との交渉に不安を感じた場合は、早めに交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

7.弁護士による交渉のメリット(慰謝料増額と手続きの負担軽減)

(1)専門知識と交渉力:慰謝料増額の可能性

交通事故の被害者が、保険会社と直接交渉を行う場合、提示される慰謝料の金額が自賠責保険基準や任意保険基準に基づいたものになりますから、裁判基準と比較して低額になります。

一方、弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士は裁判基準で慰謝料の交渉をしますので、慰謝料を増額できる可能性が高く、大きなメリットがあります。

特に、交通事故に強い弁護士は、交通事故に関する豊富な知識と経験がありますから、適正な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。

(2)手続きの負担軽減:治療に専念できる環境

交通事故後の手続きは煩雑で、精神的な負担も大きいものです。

弁護士に依頼することで、保険会社との連絡や書類作成、示談交渉など、一切の手続きを代理してもらうことができます。

これにより、被害者は治療に専念することができ、精神的な負担も軽減されます。

(3)後遺障害等級認定のサポート:適切な等級認定を目指して

むち打ちの症状が長期間にわたり、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。

しかし、後遺障害等級の認定手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。医師に適切な内容で後遺障害診断書を作成してもらうことも重要です。

事前認定という手続きで加害者側の保険会社に手続きを任せることもできますが、交通事故に強い弁護士に依頼すれば、後遺障害等級の認定についてもサポートを受けることができ、保険会社に任せるよりも適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まるといえます。

(4)裁判になった場合の対応:適正な賠償金の獲得

示談交渉がうまくいかず、裁判になった場合でも、弁護士に依頼していれば、基本的に裁判所での主張・立証活動は弁護士が行いますので、被害者が裁判に出席する場面は少なく、弁護士に裁判対応を任せることができます。

逆に、保険会社としては、弁護士が付いていると、裁判を提起される可能性があることも考えて示談交渉を行わざるを得ず、慰謝料増額などの被害者側の要求を受け入れやすいという側面もあります。

弁護士に依頼する最大のメリットは、やはり適正な賠償金を獲得できる可能性が高まることです。

保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合や、今後の手続きに不安を感じている場合は、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。

無料相談を実施している法律事務所も多くありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

8.まとめ(弁護士への相談が解決への近道)

交通事故でむち打ち(頚椎捻挫)の怪我を負ってしまった場合、少しでも症状が改善するよう医師の指示の下で適切な頻度で通院して治療を行うことが重要です。

それが結果的に適正な慰謝料を得ることにもつながります。

後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級の認定を受けることも検討しましょう。

また、交通事故によるむち打ちの慰謝料は、算定基準によって大きく異なります。

適正な慰謝料を得るためには、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉をする必要があります。

保険会社から早期解決を促され、免責証書(示談書の代わりになるもの)が送られてくることがありますが、一度署名してしまうと示談のやり直しはできませんので、安易にサインしないよう注意してください。

もし、交通事故後の手続きに不安を感じている場合や保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合は、迷わず弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしております。

投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故で肩の腱板損傷に…慰謝料や後遺障害認定のポイントを弁護士が解説!

2025-05-18

今回のテーマは、交通事故で肩腱板損傷を負ってしまった場合の損害賠償についてです。

交通事故は、予期せぬ瞬間に私たちの日常生活を大きく変えてしまう可能性があります。交通事故による負傷の中でも、肩関節周辺の痛みや機能障害を引き起こす「肩腱板損傷」は、その後の生活に大きな影響を与えることがあります。

今回は、交通事故による肩腱板損傷について、その基礎知識から、診断・治療、後遺障害の認定、損害論(慰謝料や逸失利益)、そして弁護士の役割までを詳しく解説します。

【関連記事】

弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~右肩腱板損傷・異議申立て・後遺障害12級13号~

1.交通事故における肩腱板損傷とは

交通事故によって肩に強い衝撃が加わると、肩腱板を損傷する可能性があります。

ここでは、まず肩腱板の構造と機能、主な損傷の原因、そして交通事故における症状と影響について解説します。

(1)肩腱板の構造と機能

肩腱板とは、肩関節を構成する4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋及び小円筋)の腱が集まったものです。

「腱」とは、筋肉の先端部で繊維が細くなって線維化して骨に付着している部分をいい、つまり筋肉と骨とを繋いでいる組織であると考えてください。

これらの腱は、上腕骨頭(腕の骨の先端)を肩甲骨の関節窩(関節を構成する凹状のくぼみ部分)に安定させ、腕を上げたり、回したりする際の滑らかな動きを支える重要な役割を担っています。

腱板が正常に機能することで、私たちは日常生活における様々な動作をスムーズに行うことができます。

(2)主な損傷の原因

肩腱板損傷の主な原因は、加齢による腱の変性、使いすぎ(オーバーユース)、転倒やスポーツなどによる急激な外力などが挙げられます。

交通事故においては、衝突時の衝撃や、体を支えようとした際の無理な力が肩関節に加わることで、腱板が断裂したり、部分的に損傷したりすることがあります。

特に、直接的な打撃だけでなく、予測できない体勢での衝撃は、腱板に大きな負担を与える可能性があります。

ただし、一般的にはいわゆるシートベルト損傷によって、靱帯や腱が切れるということは珍しいとされており、二輪車や自転車などで転倒しているかどうかなどの受傷機転が明確に存在することが重要です。

(3)交通事故での症状と影響

交通事故による肩腱板損傷の症状は、損傷の程度によって様々です。

軽度の場合には、肩の痛みやわずかな可動域制限が見られる程度ですが、重度の場合には、激しい痛みで腕を上げることが困難になったり、夜間に痛みが強くなったりすることがあります。

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 肩の痛み(安静時痛、運動時痛、夜間痛)
  • 腕を上げる際の痛みやひっかかり感
  • 肩関節の可動域制限(特に腕を上げる、外に開く、内側に回す動作が困難になる)
  • 肩の力が入りにくい、脱力感
  • 特定の動作での肩の不安定感

これらの症状は、日常生活における様々な動作、例えば着替え、入浴、食事、車の運転などを困難にするだけでなく、時には睡眠障害を引き起こし、精神的な負担となることもあります。

2.腱板損傷の診断と治療

交通事故による肩の痛みを感じたら、早期に整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

ここでは、腱板損傷の診断方法と検査内容、治療法の選択肢、そして肩関節の可動域制限について解説します。

(1)診断方法と検査内容

腱板損傷の診断のためには、一般的にMRIによる画像検査が必要です。

なぜなら、いわゆるレントゲンやCTなどのX線画像では、骨の状態しかわからないため、骨折を伴わない場合にはそれ以上の説明ができません。

靱帯や腱の断裂や損傷については、MRIでなければ映らないため、靱帯や腱の断裂や損傷が疑われる場合には一般的にMRIによる画像検査が行われます。

なお、肩腱板に損傷や炎症がある場合には、MRIのT2強調画像で損傷や炎症部位が白く(高信号で)映ります。

MRI検査結果等を総合的に判断し、腱板損傷の有無、程度、損傷部位などが特定されます。

ただ、事故から時間が経過してしまうと、事故との因果関係を疑われることがありますので、早期にMRI検査を行う必要があります。

(2)治療法の選択肢

腱板損傷の治療法は、損傷の程度や患者さんの年齢、活動レベルなどによって異なります。

主な治療法としては、保存療法と手術療法があります。

 【保存療法】
手術を行わずに、自然治癒力を促したり、症状の緩和を図る治療法です。

  • 安静: 損傷した腱板の負担を軽減するため、肩関節を安静に保ちます。
  • 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、鎮痛薬や湿布、内服薬などが用いられます。
  • 注射療法: 痛みが強い場合には、局所麻酔薬やステロイド薬を肩関節周囲に注射することがあります。
  • リハビリテーション: 痛みが落ち着いてきたら、肩関節の可動域を改善し、周囲の筋肉を強化するための運動療法を行います。理学療法士の指導のもと、段階的に運動を進めていくことが重要です。

【手術療法
保存療法で十分な改善が見られない場合や、腱板の完全断裂など重度の損傷の場合には、手術が検討されます。手術の方法は、関節鏡視下手術(内視鏡を用いた手術)や、より開放的な手術などがあります。手術の目的は、断裂した腱板を修復し、肩関節の機能を回復させることです。術後も、リハビリテーションを継続して行うことが、良好な回復のためには不可欠です。

(3)肩関節の可動域制限について

腱は筋肉の収縮を骨に伝える役割がありますので、腱に損傷が生じると、関節の可動域に制限が生じることがあります。

なお、先に述べたとおり肩腱板は、肩関節を構成する4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋及び小円筋)の腱が集まったものですが、交通事故による損傷においては、そのほとんどが棘上筋腱損傷であると言われています。

腱板損傷によって生じる肩関節の可動域制限は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。

特に、腕を上げる、回すといった動作が困難になるため、着替えや洗髪、高い場所の物を取るなどの動作に苦労することがあるでしょう。

3.肩腱板損傷の後遺障害とその認定

交通事故による肩腱板損傷は、適切な治療を行っても、後遺障害が残ってしまうことがあります。

ここでは、後遺障害認定の必要性、後遺障害等級の説明、そして認定を受けるための条件について解説します。

(1)後遺障害認定の必要性

交通事故による怪我で後遺障害が残った場合、加害者の加入する自賠責保険に対して請求を行うことにより、その程度に応じて後遺障害等級が認定されることがあります。

後遺障害等級が認定されると、その等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益といった損害賠償を請求することができます。

肩腱板損傷の場合、肩関節の機能障害の程度によって後遺障害等級が認定される可能性があります。

適切な賠償を受けるためには、後遺障害認定の手続きを行うことが重要です。

(2)後遺障害等級の説明

肩関節の機能障害に関する後遺障害等級は、主に以下の3つに分類されます。

第8級6号】 肩関節の用を廃したもの

「肩関節の用を廃した」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 関節が強直したもの

「関節が強直した」とは、関節の完全強直またはこれに近い状態にあるものとして、関節可動域が原則として健側(怪我をしていない側)の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものを言います。また、肩関節においては、肩甲上腕関節が癒合し骨製強直していることがX線写真により確認できるものを含みます。

  • 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換し、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

第10級10号】 肩関節の機能に著しい障害を残すもの

「肩関節の機能に著しい障害を残す」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 肩関節の可動域が健側の可動域確度の1/2以下に制限されているもの
  • 人工関節・人工骨頭を挿入置換し、上記第8級6号に該当しないもの

【第12級6号肩関節の機能に障害を残すもの

 ・肩関節の可動域が健側の3/4以下に制限された場合をいいます。

これらの等級は、医師の診断書や関節の可動域測定の結果などに基づいて自賠責保険(損害保険料率算出機構の自賠責保険調査事務所)において判断されます。

(3)認定を受けるための条件

交通事故による肩腱板損傷で後遺障害の認定を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 交通事故と肩腱板損傷の因果関係が医学的に認められること: 事故の状況や受傷時の状態、その後の経過などから、肩腱板損傷が交通事故によって生じたものであると医学的に説明できる必要があります。
  2. 適切な治療を継続して行ったにもかかわらず、症状が改善せず、後遺症が残存していること: 漫然と治療を受けるのではなく、医師の指示に従い、必要な検査やリハビリテーションを継続して行うことが重要です。
  3. 残存した症状が、将来においても回復が見込めないと医学的に判断されること: 症状が一時的なものではなく、永続的なものであると医師が判断する必要があります。
  4. 後遺症の内容が、自賠責保険の後遺障害等級に該当するものであること: 提出された医学的な資料に基づいて、損害保険料率算出機構の自賠責保険調査事務所が各等級に該当するか否かを認定します。

後遺障害の認定を受けるためには、適切な診断書や検査結果などの医学的証拠を揃えることが重要です。

弁護士に相談することで、これらの手続きをスムーズに進めるためのアドバイスやサポートを受けることができます。

4.肩腱板損傷による後遺障害の損害賠償(慰謝料と逸失利益)

交通事故による肩腱板損傷で後遺障害が残った場合、慰謝料や逸失利益の請求を行うことができます。

ここでは、慰謝料の種類と実績、逸失利益とは何か、そして示談金の交渉と流れについて解説します。

(1)慰謝料の種類

交通事故における慰謝料には、主に以下の2種類があります。

  • 入通院慰謝料: 怪我の治療のために、入院や通院を余儀なくされた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。入院期間や通院期間、治療内容などに基づいて算出されます。
  • 後遺障害慰謝料: 後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる慰謝料です。後遺障害等級に応じて金額が定められており、等級が高いほど慰謝料の金額も高くなります。

慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあり、一般的に弁護士基準が最も高額になる傾向があります。

過去の裁判例などを参考に、個々の事案に応じた適切な慰謝料額を算定することが重要です。

なお、上記肩関節の機能障害に関する各後遺障害等級に該当する場合の弁護士基準(裁判基準)の一例を記すと以下のとおりです(地域や個別の事情によって異なる場合がありますのでご留意ください)。

  • 第8級6号: 830万円
  • 第10級10号: 550万円
  • 第12級6号: 290万円

(2)逸失利益とは何か

逸失利益とは、後遺障害が残ったことにより、将来にわたって得られるはずだった収入が減少してしまう損害のことです。

肩腱板損傷による機能障害が、仕事に支障をきたし、収入の減少につながるとして逸失利益を請求することができます。

逸失利益の計算は、被害者の年齢、職業、事故前の収入、後遺障害等級などを考慮して行われます。

具体的には、「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式を用いて算出されることが一般的です。

労働能力喪失率や労働能力喪失期間は、後遺障害等級に応じて定められています。

なお、こちらも一概には言えませんが、労働能力喪失期間は、始期を症状固定日として、その終期は原則として67歳として計算するのが一般的です。

また、上記肩関節の機能障害に関する各後遺障害等級に該当する場合の労働能力喪失率は一般的には以下の基準によって計算されます。

  • 第8級6号: 45%
  • 第10級10号: 27%
  • 第12級6号: 14%

(3)示談金の交渉と流れ

交通事故による損害賠償金(慰謝料や逸失利益など)の支払いは、加害者側の保険会社との示談交渉によって決まることが一般的です。

保険会社は、自社の基準に基づいて損害額を提示してきますが、その金額が必ずしも適正とは限りません。

なお、弁護士が対応する場合の示談交渉の流れは以下のようになります。

  1. 損害額の算定: 治療費、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益など、発生した損害の総額を正確に算定します。
  2. 示談案の提示: 算定した損害額に基づいて、加害者側の保険会社に示談案を提示します。
  3. 交渉: 保険会社から提示された示談案(対案)に対して、増額交渉を行います。お互いの主張をぶつけ合い、合意点を探ります。
  4. 合意: 双方の合意が得られたら、示談書を作成し、示談が成立となります。
  5. 賠償金の支払い: 示談書に基づき、加害者側の保険会社から被害者へ賠償金が支払われます。

示談交渉は、法的な知識や交渉力が必要となるため、被害者自身で行うには負担が大きい場合があります。

弁護士に依頼することで、適切な損害額を算定し、有利な条件で示談を進めることが期待できます。

(4)解決の実績

ここでひとつ、解決事例をご紹介します。

【事案】

東京都内在住のAさん(40歳・会社員・年収約800万円)は、バイクで優先道路を走行中、路外から一時停止をせずに侵入してきた自動車と衝突しました。この事故により、Aさんは鎖骨骨折、肩腱板断裂などの重傷を負い、緊急搬送され手術を受けました。その後、約1年にわたりリハビリテーションを中心とした治療を継続されました。

【相談・依頼の経緯】

事故後、相手方保険会社から治療費や休業損害の支払いがありましたが、今後の後遺症や慰謝料について不安を感じたAさんは、当事務所の無料相談をご利用になりました。弁護士がAさんの状況を詳しくお伺いし、後遺障害等級認定の手続きや、適正な損害賠償額の請求についてサポートできることをご説明したところ、Aさんは正式に当事務所に依頼されました。

【弁護士の活動】

後遺障害等級認定のサポート

Aさんの肩関節の可動域制限は著しく、日常生活や仕事にも支障をきたす可能性がありました。そこで、当事務所の弁護士は、Aさんの主治医と連携を取りながら、後遺障害等級認定に必要な医学的な資料を収集し、適切な等級認定を受けられるよう尽力しました。その結果、Aさんは後遺障害等級10級10号の認定を受けることができました。

損害賠償請求と示談交渉

後遺障害等級が認定されたことを受け、当事務所は相手方保険会社に対し、以下の項目について損害賠償請求を行いました。※ただし、Aさんにも過失がありましたので、請求できたのは以下の損害に対する相手方の過失割合分となります。

  • 治療費: 約200万円
  • 交通費: 約20万円
  • 入通院慰謝料: 約1年間の治療期間に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料: 後遺障害等級10級相当の慰謝料550万円
  • 休業損害: 約3ヶ月の休業期間に対する損害
  • 逸失利益: 後遺障害による将来の収入減少に対する損害(約3969万円)

相手方保険会社は当初、自社の基準に基づいた低い金額を提示してきました。しかし、当事務所の弁護士は裁判基準(弁護士基準)に基づいた適正な損害賠償額を算定し、粘り強く交渉を行いました。

特に、後遺障害慰謝料と逸失利益については、過去の裁判例やAさんの年齢、年収などを考慮し、詳細な主張を展開しました。

肩関節の機能障害がAさんの仕事に与える影響についても具体的に説明し、将来の収入減少の可能性を強く訴えました。

最終的な示談成立

数回にわたる交渉の結果、最終的に相手方保険会社は当事務所の主張をほぼ全面的に認め、合計で約3000万円(自賠責保険金などの既払い金を除く)の示談金が支払われることで合意に至りました。

Aさんは、当初保険会社から説明を受けていた金額よりも大幅に増額された賠償金を受け取ることができ、今後の生活への不安を大きく軽減することができました。

5.交通事故被害者のための弁護士の役割

交通事故による肩腱板損傷は、被害者に大きな精神的・経済的負担を与えます。

弁護士は、このような被害者の被害に対して適切な賠償を得るために様々なサポートを行います。

ここでは、弁護士の選び方と相談方法、無料相談の活用方法、そして弁護士に依頼するメリットについて解説します。

(1)弁護士の選び方と相談方法

交通事故問題を専門とする弁護士を選ぶことが重要です。

ホームページや紹介などを通じて、交通事故の解決実績や専門知識を確認しましょう。

また、実際に相談してみて、親身になって話を聞いてくれるか、説明が丁寧で分かりやすいかなども判断材料となります。

弁護士への相談方法としては、電話、メール、オンライン相談、面談などがあります。

多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っているため、まずは気軽に相談してみることをお勧めします。

相談の際には、事故の状況、怪我の状況、治療の経過、保険会社とのやり取りなど、できるだけ詳しく伝えることが大切です。

(2)無料相談の活用方法

無料相談は、弁護士に依頼するかどうかを検討する上で非常に有効な手段です。

無料相談を最大限に活用するために、以下の点に注意しましょう。

  • 事前に相談内容を整理しておく: 聞きたいことや伝えたいことをメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます。
  • 関係書類を持参する: 事故証明書、診断書、保険会社の提示書など、関連する書類を持参すると、より具体的なアドバイスを受けることができます。
  • 弁護士の経験や実績を確認する: 交通事故事件の解決経験や、特に肩腱板損傷のような事例の経験があるかなどを質問してみましょう。
  • 費用体系について確認する: 弁護士に依頼した場合の費用(着手金、報酬金など)について、明確に説明を受けるようにしましょう。

(3)弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害者が弁護士に依頼することには、以下のような多くのメリットがあります。

  • 適正な損害賠償額の獲得: 弁護士は、法的な知識や過去の判例に基づいて、適正な損害賠償額を算定し、保険会社との交渉を有利に進めます。
  • 煩雑な手続きからの解放: 示談交渉や後遺障害認定の手続きなど、複雑で時間のかかる作業を弁護士に任せることができます。
  • 精神的な負担の軽減: 保険会社とのやり取りや、今後の見通しなどについて弁護士に相談することで、精神的な不安や負担を軽減することができます。
  • 法的サポートによる安心感: 法的な専門家である弁護士がサポートすることで、安心して治療に専念することができます。
  • 裁判になった場合の対応: 示談交渉が決裂し、裁判になった場合でも、弁護士が代理人として対応します。

交通事故による肩腱板損傷でお困りの方は、一人で悩まず、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士は、あなたの権利を守り、一日も早い問題解決のために尽力します。

私たち優誠法律事務所では、交通事故被害者の方からのご相談を初回無料でお受けしております。是非お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

牧野孝二郎 弁護士

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

後遺障害12級や14級の神経症状において通常より長期の労働能力喪失期間が認められた裁判例

2025-01-25

今回は、交通事故による後遺障害等級12級や14級に該当する神経症状において、一般的な労働能力喪失期間(12級13号の労働能力喪失期間10年間、14級9号の労働能力喪失期間5年間)より長期の喪失期間が認められた裁判例をご紹介します。

後遺障害とは、交通事故によって負った傷害が完全に回復せず、身体や精神の機能に残った不完全な状態をいいます。

交通事故による加害者と被害者との間における問題は、基本的に金銭賠償として処理されることから、後遺障害の問題も金銭賠償によることとなります。

具体的には、被害者に残存している後遺障害が後遺障害等級表のどの等級に該当するかを認定し、それを損害算定に反映させるという手法が実務において定着しています。

労働能力喪失期間は、この後遺障害による損害の1つである後遺障害逸失利益の算定要素の1つです。

後遺障害逸失利益の算定は、

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)

によってなされます。

労働能力喪失期間については様々な考え方があるところであり、理解するのが難しい分野といえます。

被害者の後遺障害の状況によっては、通常の喪失期間よりも後遺障害による影響が長く続く場合もありますので、ご参考にしていただけますと幸いです。

【関連記事】

神経症状の後遺障害(12級13号・14級9号)の逸失利益~労働能力喪失期間の相場~

12級や14級の後遺障害等級において通常より高い労働能力喪失率が認められた裁判例

後遺障害認定と弁護士に依頼するメリット

1.労働能力喪失期間の原則

後遺障害逸失利益の算定要素のうち、労働能力喪失期間については、「民事交通事故訴訟賠償額算定基準」(通称「赤い本」)において次のとおり記載されています。

①労働能力喪失期間の始期は症状固定日

未就労者の就労の始期については原則18歳とするが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時とする。

②労働能力喪失期間の終期は、原則として67歳とする

症状固定時の年齢が67歳をこえる者については、原則として簡易生命表・・の平均余命2分の1を労働能力喪失期間とする。

症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表・・の平均余命の2分の1より短くなる者の労働能力喪失期間は、原則として平均余命の2分の1とする。

但し、労働能力喪失期間の終期は、職種、地位、健康状態、能力等により上記原則と異なった判断がなされる場合がある。

事案によっては期間に応じた喪失率の逓減を認めることもある。

このように、労働能力喪失期間は、原則として症状固定日以降の就労可能期間であり、就労可能期間の終期は原則として67歳までとされています。

一方、高齢の場合には、67歳までの年数と平均余命の2分の1とのいずれか長期の方を採用することが多いです。

これらの運用は、後遺障害が、傷害が治ったときに身体に存する障害と定義され、一般には症状が永続するものと考えられていることと整合します。

2.むち打ち症の場合の労働能力喪失期間

一方、いわゆるむち打ち症の場合の労働能力喪失期間については、「民事交通事故訴訟賠償額算定基準」(通称「赤い本」)において次のとおり記載されています。

③むち打ち症の場合

12級で10年程度、14級で5年程度に制限する例が多く見られるが、後遺障害の具体的症状に応じて適宜判断すべきである。

このように、むち打ち症の場合には、一定期間経過後に症状が緩和したり症状に慣れたりすると考えられており、14級9号に該当するものであれば5年に、12級13号に該当するものであれば10年に喪失期間を限定するのが通常です。

実務では、逆に相手方保険会社から、14級9号の場合に喪失期間を3~4年に限定すべきであると主張されることがありますが、裁判になれば、特別な事情がない限り殆どのケースで5年が認定されており、裁判所がこのような相手方の主張を認めることは少ないという印象です。

一方、症状固定時から長期間経過しているものの、なお症状改善の傾向が認められないという場合に、14級で5年を超える喪失期間を認定した裁判例(千葉地方裁判所平成21年12月17日判決)がありますので、本記事の後半で紹介いたします。

3.むち打ち症以外の神経症状の場合の労働能力喪失期間

むち打ち症以外の原因による神経症状で12級や14級に該当する場合についても、むち打ち症と同じように労働能力喪失期間を限定するかどうかについては、裁判例においても考え方が分かれています。

むち打ち症の場合と同様、労働能力喪失期間を限定するべきとの根拠としては、次のような考え方が挙げられます。

・単なる神経症状のようなものである場合には、将来における改善が期待される。特に若い場合には可塑性があり、訓練や日常生活によって回復する可能性がある。

・むち打ち症の場合、一定期間経過後に症状が緩和したり症状に慣れたりすることから労働能力喪失期間は制限されているが、これは神経症状一般に当てはまる。

・単なる神経症状の場合は自覚症状が中心であることから、長期の労働能力喪失期間を認めることは妥当でない。

しかしながら、そもそも後遺障害は症状が永続する状態を指すのですから、後遺障害として認定した以上、このことを前提に労働能力喪失期間も算定することが大前提といえます。

そのため、労働能力喪失期間は就労可能期間の終期である67歳までを原則とし、安易に労働能力喪失期間をむち打ち症のように限定するべきではありません。

実際、むち打ち症以外の神経症状について判断した裁判例の中でも、就労可能期間まで認めている裁判例(京都地方裁判所平成21年2月18日判決・横浜地方裁判所平成25年9月20日判決)がありますので、この後に紹介いたします。

4.長期の労働能力喪失期間を認めた裁判例の紹介

⑴ 千葉地方裁判所平成21年12月17日判決

本件事故は、調理師である被害者(原告)が原付バイクを運転中に、停車していた相手車両の左側を通過しようとしたところ、相手方(被告)が後方の安全を確認することなくドアを開けたために、原告車両がそのドアに衝突し、原告は前方にはね飛ばされてしまったというものです。

原告は、本件事故により頚椎捻挫(いわゆるむち打ち症)等の傷害を負い、後遺障害として頭痛や右手の握力低下等の神経症状が残り、14級9号が認定されました。

前述したとおり、むち打ち症の場合は労働能力喪失期間を14級で5年に制限することが一般的ですが、この裁判例では次のとおり判示し、労働能力喪失期間を15年と認定しました。

「原告に生じている右手の握力低下は、利き腕に関するものであり、その程度も左手の握力の半分程度となっているものであること、原告は調理師として稼働していたところ、包丁を握るなどの面で実際に支障が生じているものと認められること、握力低下の状態は、事故後5年以上が経過した現在も解消されておらず、今後も相当程度の期間にわたって継続することが見込まれることなどの事情を考慮し、原告に生じた後遺障害の実態に即して考えると、労働能力喪失率としては8%、労働能力喪失期間としては15年間(ライプニッツ係数10.3796)と解するのが相当である。」

⑵ 京都地方裁判所平成21年2月18日判決

本件事故は、会社員である被害者(原告)が夜間の横断歩道外を小走りに横断していたところ、相手車両に衝突されたことで発生したものです。

原告は本件事故により右脛骨高原骨折、頚部捻挫、右上腕打撲、右足背打撲の傷害を負い、後遺障害として、本件事故による右脛骨高原骨折に起因する右膝関節部痛、跛行が残る、走れない、荷重時痛が強い等が残存し、12級13号が認定されました。

前述したとおり、むち打ち症以外の神経症状の場合も、むち打ち症と同様に労働能力喪失期間を12級で10年に制限するという有力な考え方がありますが、この裁判例では次のとおり判示し、労働能力喪失期間を67歳までの25年間と認定しました。

「・・原告には、本件事故による右脛骨高原骨折に起因する右膝関節部痛、跛行が残る、走れない、荷重時痛が強い等の後遺障害が残存し、この後遺障害は平成19年3月31日に症状固定となったこと、この後遺障害は膝関節面の不整という客観的所見により認められるものであることが認められる。・・原告の症状固定時・・の年齢(42歳・・)に照らし、労働能力喪失期間は25年と認められる(対応するライプニッツ係数は14.094である。)。なお、この点につき、被告らは、原告に残存する神経症状は経年により緩和することに照らし、労働能力喪失期間は2年から3年までが限度とされるべきであると主張するものの、・・認定事実によれば、原告の膝関節面に不整が生じているというのであって、このことを前提とすると、必ずしも原告に残存する神経症状が経年により緩和するとまでは認められない。」

⑶ 横浜地方裁判所平成25年9月20日判決

本件事故は、自動車工場の塗装作業員である被害者(原告)が、原付自転車を運転して交差点を左折しようとしたところ、相手方(被告)の自動二輪車の右前部が、原告の左肘に衝突したことにより発生したものです。

原告は本件事故により尺骨肘頭骨折の傷害を負い、後遺障害として左尺骨肘頭骨折後の肘関節の痛みが残存し、14級9号が認定されました。

前述したとおり、むち打ち症以外の神経症状の場合も、むち打ち症と同様に労働能力喪失期間を14級で5年に制限するという有力な考え方がありますが、この裁判例では次のとおり判示し、労働能力喪失期間を67歳までの23年間と認定しました。

「原告X1には、後遺障害として、神経症状(左尺骨肘頭骨折後の肘関節の痛み)が残存しており、これが自賠責保険の後遺障害等級14級9号に認定されたこと・・は当事者間に争いがない。・・原告X1の仕事は、C自動車△△工場における車両の塗装作業であり、ボンネットなどの重い部品を運ぶ作業などをしていることが認められる。そうすると、痛みがある部位に常に負荷がかかっているのであるから、容易に神経症状が解消されるとは考えられず、労働能力喪失期間は23年間(対応するライプニッツ係数は13.4886)と認めるのが相当である。」

5.まとめ

以上のとおり、労働能力喪失期間は原則67歳まで認定されるものの、むち打ち症の場合は異なる取り扱いをすることについて、実務ではほぼ固まっているといえます。

もっとも、長期間経過しているにもかかわらず症状改善の傾向が認められないといった場合に、特別な配慮をしている裁判例があることは前述したとおりです。

一方、むち打ち症以外の神経症状の場合、むち打ち症の場合と同様に労働能力喪失期間を限定するか否かについては裁判例が分かれているところです。

このように分かれている要因としては、改善の兆候等といった、個々の事案における要素が関連していることも考えられます。

そのため、原則通りの労働能力喪失期間を主張する被害者としては、労働能力喪失期間の見込みについて適切な立証をする必要があります。

一般の方が、このような対応をすることは難しいと思われるため、適切な労働能力喪失期間を主張されたい場合には、交通事故を専門とする弁護士に相談するべきであるといえます。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

12級や14級の後遺障害等級において通常より高い労働能力喪失率が認められた裁判例

2024-12-22

今回は、12級や14級の後遺障害等級において通常(12級の労働能力喪失率14%、14級の労働能力喪失率5%)より高い労働能力喪失率が認められた裁判例をご紹介します。

後遺障害等級が認定された場合、通常は後遺障害による逸失利益を相手方に請求していくことになります。

ただ、その算定方法については、同じく後遺障害等級が認定された場合に請求する後遺障害慰謝料と比較すると、やや難解なところがあります。

そのため、今回はまず、後遺障害による逸失利益の算定方法について説明します。

この説明をご覧いただければ、労働能力喪失率というものが、後遺障害による逸失利益の算定方法の中でどのように位置付けられているかが分かるかと思います。

その上で、冒頭に記載したとおり、12級や14級の後遺障害等級において通常より高い労働能力喪失率が認められた裁判例をご紹介します。

交通事故被害者の方の中には、12級や14級の後遺障害等級が認定されたものの、これらの等級の通常の労働能力喪失率以上に労働能力が失われてしまっているという方もいらっしゃいますので、ご参考にしていただけますと幸いです。

【関連記事】

後遺障害12級や14級の神経症状において通常より長期の労働能力喪失期間が認められた裁判例

神経症状の後遺障害(12級13号・14級9号)の逸失利益~労働能力喪失期間の相場~

後遺障害認定と弁護士に依頼するメリット

1.後遺障害による逸失利益の算定方法

後遺障害による逸失利益の算定方法については、次のとおり「民事交通事故訴訟賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に計算式が記載されています。

①有職者または就労可能者

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

②18歳未満(症状固定時)の未就労者

基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)

例えば、症状固定時の年齢が50歳で年収500万円の会社員の男性が傷害を負い、その後遺障害により労働能力が14%低下した場合の後遺障害逸失利益は、次の計算式になります。

500万円×0.14×13.1661=921万6270円

このように、基本的には、

第1に後遺障害がなければどれだけ所得があったか(基礎収入額

第2にこれが後遺障害によってどのくらい減少したか(労働能力喪失率

第3にその影響がどの程度継続するか(労働能力喪失期間

を順次判断していくことになります。

2.労働能力喪失率とは

労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度をいいます。

基本的には、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発551号)別表による、次の労働能力喪失率表記載の喪失率を認定基準として採用することが多いといえます。

等級1級2級3級4級5級6級7級
喪失率100%100%100%92%79%67%56%
等級8級9級10級11級12級13級14級
喪失率45%35%27%20%14%9%5%

もっとも、労働能力喪失率表は極めて概括的であり、工場労働者を対象に作成されたものである上、労災の補償日数をベースにしたものであって科学的根拠も乏しいものです。

また、後遺障害の部位・内容・程度が同じであっても、被害者の職業、年齢、性別等によって労働に対する影響の程度も異なります。

そのため、上記の表はあくまで参考資料にとどまり、労働能力喪失率は、被害者の年齢・職業、後遺障害の部位、程度、事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的にあてはめて評価すべきであると考えられています。

3.裁判例の紹介~14級において通常より高い労働能力喪失率が認定~

⑴ はじめに

上の労働能力喪失率表によりますと、14級の後遺障害等級における労働能力喪失率は5%です。

しかしながら、以下に抜粋した裁判例では、様々な事情を総合的に判断して、5%よりも高い労働能力喪失率を認定しています。

⑵ 甲府地方裁判所 平成17年10月12日判決

本件事故は、眼科医である被害者(原告)が自動車で病院に通勤していたところ、相手方の運転する自動車に追突されたことで発生したものです。

本件事故により原告には頚椎捻挫ないし外傷性頚部症候群の傷害が生じ、後遺障害として頚部痛、後頭部痛、眼精疲労、眼科医として手術をしようとする際の左手の振戦(ふるえ)などの症状が残り、14級の後遺障害等級が認定されました。

この裁判の判決では、労働能力喪失率については、次のとおり判示し、12%の労働能力喪失率を認めました。

「原告は現在も頚部痛、後頭部痛、眼精疲労を感じており、眼科医として手術をしようとすると左手の振戦が現れる。本件事故前は、原告は眼科医として数多くの手術をこなしていたが、本件事故後はこの左手の振戦により手術ができなくなった。そのため原告は手術をあきらめ研究職の眼科医に転向せざるをえなくなった。・・自賠責等級第14級の後遺症の労働能力喪失率は5%とされている。しかし、上記のような原告の症状、職業、職場環境を考慮すると、原告の場合、5%にとどまらない労働能力が失われているといえる。すなわち、従来、原告が高額の収入を得ることができたのは、手術のできる眼科医だったためである。しかし、本件事故後、後遺症である左手の振戦のために手術ができなくなり、この前提が崩れたため、平成11年当時と同様の収入が得られる保証はなくなった。平成17年5~8月の収入をみると、現実にかなりの収入の減少が生じていることが認められる。そこで、これらの事情を総合的に勘案し、さらに、原告の主張もふまえ、原告の労働能力喪失率は12%とする。」

⑶ 大阪地方裁判所 平成8年1月12日判決

本件事故は、型枠大工である被害者(原告)が自動車に同乗していたところ、相手方の運転する自動車に衝突されたことで発生したものです。

本件事故により原告には頚部損傷、左膝内障、腰部打撲の傷害が生じ、後遺障害として左膝に一定の運動可能領域の制限が存在し、左膝の引っ掛かり感をもっていること、長時間の歩行に困難をきたしている等の症状が残り、14級の後遺障害等級が認定されました。

この裁判の判決では、労働能力喪失率については次のとおり判示し、10%の労働能力喪失率を認めました。

「原告の後遺障害の程度は、等級表14級7号に該当するものであり、労災及び自賠責実務上その労働能力喪失割合は5%と取り扱われていることは当裁判所に顕著である。しかしながら、型枠大工の作業は膝の屈曲を多く伴なうものであって、右の障害があった場合、その作業能率の低下が5%にとどまるとは思えないこと、L病院においてもしゃがみこみの姿勢は半月板に負担をかけるのでこの動作を行わないように指導していること(証拠略)、しかも原告には生来の難聴という障害があり(証拠略)他に職を求めることが比較的困難であることを考え併せると、その労働能力喪失率は10%とみるべきである。」

4.裁判例の紹介~12級において通常より高い労働能力喪失率が認定~

⑴ はじめに

上記の労働能力喪失率表によりますと、12級の後遺障害等級における労働能力喪失率は14%です。

しかしながら、以下に抜粋した裁判例では、様々な事情を総合的に判断して、14%よりも高い労働能力喪失率を認定しています。

⑵ 東京地方裁判所 平成6年9月27日判決

本件事故は、タクシー運転手である被害者(原告)が自動車を運転していたところ、一時停止することなく交差点に進入した相手車両に左側面を衝突されたことで発生したものです。

原告は本件事故により右膝内側側副靭帯断裂、右膝内側半月板損傷、頚椎捻挫等の傷害を受け、後遺障害として①右膝関節に可動制限はないものの、正座や胡座は疼痛のため、短時間しかできない、②右膝内側側副靱帯部及び内側関節間隔に圧痛があり、長時間立っていたり、物を持って歩くと膝内側に圧痛がある、③頸部前屈時に左頸附根部に疼痛や圧痛があり、また、左母指、示指の末節にしびれ、知覚麻痺があるという症状が残り、12級が認定されました。

この裁判の判決では、労働能力喪失率については次のとおり判示し、25%の労働能力喪失率を認めました。

「原告は、本件事故のため、右膝関節に12級の後遺障害を残したが、同関節障害のためアクセルを踏み込む動作に支障を来たし、長時間の運転ができず、また、重量のある物の運搬に重大な支障を来たしている。このため、タクシー運転手としての業務遂行は不可能となったが、甲15、19、原告本人によれば、本件事故がなければ、64歳まではC会社の正勤の乗務員として、65歳からは嘱託の乗務員として正勤の乗務員と同一の給与のベースで、それぞれタクシーの運転手の業務を継続することができたことが認められる。そして、現在はC会社で車庫の管理の仕事を行い、月給22、3万円の賃金を得るに止まること、原告がタクシー運転手としての業務を継続するとしても、歩合給の率が高い右業務の賃金体系に照らせば、加齢とともに収入が減ることが予想されることを斟酌すると、平成元年度の給与を基礎とすれば本件事故により労働能力が25%喪失したものと認めるのが相当である。」

⑶ 仙台地方裁判所平成13年6月22日判決

本件事故は、理容店兼美容院を経営する被害者(原告)が自動2輪車を運転していたところ、後方から同一方向に進行してきた相手車両に追突されたことで発生したものです。

原告は本件事故により左腎損傷、頸椎捻挫、肋骨骨折、右小趾基節骨骨折、胸椎・腰椎捻挫、左肩・臀部・腹部・左膝打撲、急性胃炎等の傷害を受け、左腕神経損傷の後遺障害が残り、12級が認定されました。

この裁判の判決では、労働能力喪失率については次のとおり判示し、35%の労働能力喪失率を認めました。

「・・原告は、前記受傷により、左腕神経損傷の後遺障害が残存し、左腕の肩から指先にかけてのしびれ、左肩関節痛の自覚症状を有し、左上肢の皮膚温低下、感覚鈍麻、筋力低下、巧緻性の低下が認められること、理容師及び美容師の作業は、両手、指先の動きの巧緻さを要し、原告は、同後遺障害のため、作業中にはさみで自己の指を傷つける等理容師及び美容師としての技術を十分に駆使し得ない状態となったことの事実が認められる。そうすると、原告は、本件後遺障害により、少なくとも理容師及び美容師としての労働能力の35%を喪失したものと認めるのが相当である。」

.まとめ

既に解説したとおり、労働能力喪失率については、労働能力喪失率表記載の喪失率を認定基準として採用することが多いです。

そのため、14級については5%、12級については14%が認定されることが多数です。

もっとも、今回紹介した裁判例においては、後遺障害の程度・部位と、被害者の職業に対する具体的な影響の程度を詳細に認定した上で、労働能力喪失率表記載の喪失率を上回る認定をしています。

これは裏返して言うと、労働能力喪失率表記載の喪失率を上回る主張をする被害者は、労働能力喪失の実態について適切な立証をしなければならないということです。

一般の方が、これらの立証をすることは難しいですから、労働能力喪失率表記載の喪失率を上回る主張をされたい場合には、交通事故を専門とする弁護士に相談するべきであるといえます。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

整骨院・接骨院で治療すると後遺障害等級が認定されないって本当?

2024-09-29

交通事故で首(頚椎捻挫等)や腰(腰椎捻挫等)を負傷した被害者の中には、整骨院・接骨院での治療を希望して、主に整骨院・接骨院に通院される方もいらっしゃいます。

交通事故の治療で整骨院・接骨院に通院すること自体は何も問題はありませんが、インターネットなどで様々な情報をご覧になって、治療が一区切りとなる「症状固定」となった時点でも痛みなどの症状(後遺症)が残存してしまった場合に、整骨院・接骨院で治療していると自賠責に後遺障害申請をしても、後遺障害等級が認定されないのではないか?とご不安になる方も多いようで、当事務所でも時々そのようなご相談をお受けすることがあります。

結論から申し上げますと、整骨院・接骨院で治療したから後遺障害が認定されないということはありません

主に整骨院・接骨院で治療した交通事故被害者の方でも、後遺障害等級(主に神経症状の14級9号)が認定される可能性はあります。

そこで、今回は、主に整骨院・接骨院で治療をしていた交通事故被害者が後遺障害申請をした場合に後遺障害等級が認定されるか?という点について、最近の当事務所のご依頼者様の具体的事例を基にご説明します。

同様のお悩みをお持ちの方のご参考にしていただけますと幸いです。

1.整骨院・接骨院での治療について

⑴ 整骨院・接骨院での治療を希望する理由

交通事故に遭った被害者の方が、主に首(頚椎捻挫等)や腰(腰椎捻挫等)の怪我をされた場合、整骨院・接骨院での治療を希望されるケースは珍しくありません。

整骨院・接骨院の先生(柔道整復師)は医師ではありませんので、基本的には整形外科の医師の下で治療をすることが望ましいですが、整形外科は診察やリハビリに長い時間がかかってしまうとか、診察時間が短いなどの理由で、通院しにくいと感じる方は多いようです。

特に仕事をしている方の場合、仕事を休んだり、遅刻・早退をしないと整形外科の診察時間中に通院できないとの理由で、遅い時間まで診療している整骨院・接骨院での治療を希望するということはよくあります。

また、診察時間には問題がなくても、整骨院・接骨院でのリハビリの方が長い時間施術をしてもらえるとの理由で、整形外科でのリハビリよりも効果を感じるということで整骨院・接骨院での治療を希望される方もいらっしゃいます。

⑵ 整骨院・接骨院での治療の可否

まず、整骨院・接骨院で治療をするためには、原則として医師の了承が必要です

特に、骨折部位については、医師の許可がなければ、柔道整復師が施術をすることはできません。

骨折部位以外についても、整形外科の医師が整骨院・接骨院での治療を認めない場合、保険会社が整骨院・接骨院の治療費を払ってくれないことが多いため、やはり医師の了承を得てから整骨院・接骨院を受診するべきです。

そのため、交通事故被害者が整骨院・接骨院での治療を希望する場合でも、まずは整形外科を受診して医師に診断してもらい、整骨院・接骨院での治療について相談する必要があります。

なお、整骨院・接骨院での治療は認めないという医師もいます。

当事務所のご相談者・ご依頼者の事例で、保険会社に医師の了承を得たと嘘をついて整骨院に通ってしまい、後で示談の際に整骨院の治療費を慰謝料から減額すると主張されたケースや、相談せずに整骨院を受診したことに怒った医師が診断書に不利な記載をしたケースなどもありました。

医師の了承を得られない場合、無理に整骨院・接骨院に通うと、このように後々トラブルになる可能性が高いので注意が必要です。

⑶ 整骨院・接骨院で治療する際の注意点

主に整骨院・接骨院に通院する場合、整形外科を全く受診しなくなってしまう方もいるようですが、整形外科にも定期的に通院して医師の診察を受けることが重要です。

整骨院・接骨院の先生は医師ではありませんので、診断書を作成することはできません。

そのため、治療後に後遺障害が残存してしまって後遺障害申請したいという場合、後遺障害診断書は整形外科の医師に作成してもらう必要があります

しかし、定期的に受診していない患者については、医師が、様子(症状経過や治療内容)が分からないなどの理由で診断書を書いてくれないというケースも珍しくありません。

また、最近は、裁判で整骨院・接骨院の施術費について厳しい判断が出る傾向もあります。

治療終了後に保険会社と示談できずに裁判までもつれる事例は稀ですが、万が一、裁判になった場合、整形外科を定期的に受診していないと、治療の必要性が認められない可能性が高まります。

このような事情から、最近では、整骨院・接骨院でも整形外科を定期的に受診するように促すことも多いようですが、当事務所でも月に数回は整形外科も受診するようお勧めしています。

2.後遺障害申請の方法

交通事故後、一定期間の治療を続けても症状が改善せず、これ以上の改善が見込めない状態となることを「症状固定」と言います。

医師が、症状固定の診断をした時点で残存してしまった症状については、「後遺障害」として評価されることになり、自賠責保険に後遺障害申請をすると、後遺障害等級に該当するか否か、該当する場合には1級から14級のどの後遺障害等級に該当するかが判断(認定)されます。

後遺障害の申請をする場合には、まず、医師に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。

また、後遺障害申請は、加害者側任意保険会社に任せる「事前認定」と、被害者側で申請する「被害者請求」の2つの方法がありますが、基本的には被害者請求で申請することをお勧めしています。

後遺障害申請については、別の記事でも解説していますので、こちらもご覧ください(後遺障害認定と弁護士に依頼するメリット

3.Wさんの事例~初回申請で頚椎捻挫14級9号~

それでは、ここから具体例をご紹介します。

一人目の依頼者・福岡県在住のWさんは、友人の運転する自動車の助手席に乗って、道路の反対側のレストランに入るために一時停止して対向車の通過を待っていた際、先方不注視の後方車両に追突されてしまい、首の怪我を負いました。

最初に整形外科を受診して、頚椎捻挫の診断を受け、リハビリに通うように指示されましたが、お仕事の関係で、整形外科の診察時間に受診できる日が限られることから、勤務先近くの整骨院での治療を希望しました。

その後、整形外科にも定期的に通院しつつ、整骨院で治療を続けましたが、事故から約7ヶ月半後に加害者側保険会社から治療費を打ち切られてしまい、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

Wさんは、この時点でもまだ首の痛みなどの症状が残存しているとのことでしたので、後遺障害申請からご依頼いただくことになりました。

そして、主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、被害者請求で後遺障害申請をしたところ、14級9号の認定を受けることができました。

Wさんの通院期間や通院回数は以下のとおりです。

・通院期間:227日(7ヶ月と17日)

・整形外科への通院回数:38回(週1回くらいの頻度)

・整骨院への通院回数:93回(週3回くらいの頻度)

4.Yさんの事例~異議申立てで併合14級~

二人目の依頼者・香川県在住のYさんは、ご自身が自動車を運転して、信号のない十字路を直進した際、左側の道から遅れて交差点に進入してきた車に衝突されてしまい、首と腰の怪我を負いました。

Yさんは、事故直後に総合病院に救急搬送されて、頚椎捻挫・腰椎捻挫の診断を受けました。

その後は、別の整形外科に転院しましたが、病院までが遠く、その整形外科がいつも混んでいて1回の受診にかなり時間がかかるため、ご自宅の最寄りの整骨院でのリハビリを希望されました。

その後、整形外科にも月に数回は通院しつつ、主に整骨院で治療を続けました。

しかし、まだ症状が残っていた事故から約半年の時点で、加害者側保険会社から治療費を打ち切られてしまいました。

そして、事前認定で後遺障害の申請をしましたが、非該当という結果になり、後遺障害等級は認定されません。

Yさんとしては、特に腰の症状が辛く、非該当という結果に納得できず、当事務所にご相談いただきましたので、後遺障害の異議申立てからご依頼いただくことになりました。

ご依頼後は、当事務所で主治医に医療照会を行うなどして、異議申立ての材料を準備し、被害者請求で異議申立てを行いました。

そうしたところ、Yさんの主張が認められ、首(頚椎捻挫)と腰(腰椎捻挫)でそれぞれ14級9号の認定(併合14級)を受けることができました。

Yさんの通院期間や通院回数は以下のとおりです。

・通院期間:178日(約6ヶ月)

・整形外科への通院回数:12回(月2回くらいの頻度)

・整骨院への通院回数:78回(週3~4回くらいの頻度)

5.まとめ

今回は、主に整骨院で治療をした交通事故被害者の方で、実際に後遺障害等級が認定された事例をご紹介しました。

ただ、正直なところ、当事務所のご依頼者様についても、主に整骨院・接骨院で治療した方の場合、主に整形外科で治療した方に比べると、後遺障害等級が認定されにくい傾向はあるかもしれません。

しかし、整骨院・接骨院中心で治療された場合でも、状況次第で後遺障害等級が認定される可能性は十分にあります。

また、今回ご紹介したYさんのように、交通事故に詳しい弁護士にご依頼になることで結果が変わることもありますので、後遺障害でお困りの方は是非お気軽にご相談ください。

私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は初回無料でお受けしております。

ぜひ、お気軽にお問合せください。

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投稿者プロフィール

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 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

遷延性意識障害(意識のない寝たきり状態)と慰謝料

2024-07-28

交通事故は突然の出来事であり、重大な被害をもたらすことも少なくありません。

本記事では、交通事故の被害者が、意識が戻らないまま寝たきり状態(遷延性意識障害)となってしまったケースにつき、慰謝料の相場や請求方法について解説していきます。

1.遷延性意識障害とは?

⑴ 遷延性意識障害の定義

意識が戻らないままの寝たきり状態は、過去には「植物状態」などと呼ばれ,診断名としては「遷延性意識障害」といわれるものです。

日本では、1972年に日本脳神経外科学会から、「植物状態」の定義が発表されており、同発表によりますと、その定義は以下のとおりです。

脳損傷を受けた後で、以下に述べる6項目を満たす状態に陥り、ほとんど改善が見られないまま満3か月以上経過したもの

①自力移動不可能

②自力摂食不可能

③し尿失禁状態にある

④たとえ声は出しても意味のある発語は不可能

⑤「目を開け」「手を握れ」などの命令にはかろうじて応じることもあるが、それ以上の意志の疎通は不可能

⑥眼球はかろうじて物を追っても認識はできない

⑵ 交通事故で遷延性意識障害になる原因

交通事故で遷延性意識障害になる原因はさまざまですが、主なものとしては頭部への強い衝撃、すなわち頭部外傷による脳損傷が挙げられます。

例えば、歩行者と自動車との事故によって、歩行者の頭部がフロントガラスに打ち付けられるなど、交通事故被害者の頭部に強度の外力が加わった時に発症することがあります。

2.遷延性意識障害になった被害者の権利

⑴ 慰謝料の請求権

交通事故の被害者は、加害者や加害者の加入する保険会社に対し、自身が被った精神的な損害を賠償するよう請求することができます。

この精神的な損害のことを「慰謝料」と呼びます。

遷延性意識障害になってしまった被害者は、意識が戻らない限りご自身が損害賠償請求をすることはできませんが、慰謝料の請求権は当然に認められます。

⑵ その他の損害賠償

加害者が、上記のとおり慰謝料の支払義務を負うのは、民法の不法行為責任(709条)や、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます。)の運行供用者責任(3条)に基づくものです。

これらの法律では、交通事故の加害者は、被害者に生じた「損害」を賠償する義務を負います。

そのため、交通事故加害者は、慰謝料のほかにも、治療費・通院交通費・入院雑費・休業損害・後遺障害逸失利益・後遺障害慰謝料など被害者が被った損害を賠償しなければなりません。

3.遷延性意識障害になった場合の慰謝料相場

⑴ 一般的な慰謝料相場

遷延性意識障害になってしまったときに、加害者に請求することができる慰謝料には、次の傷害慰謝料と後遺障害慰謝料があります。

①傷害慰謝料(入通院慰謝料)

傷害慰謝料は、けがを負ったことに対する慰謝料を指します。

傷害慰謝料は入通院慰謝料とも言われ、その額は、一般的には入通院の期間等によって計算されます。

遷延性意識障害の状態になってしまう場合には、交通事故後直ちに救急搬送され、その後も入院が継続されていることが多いかと思います。

また、慰謝料基準については、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準などと呼ばれる基準があります。

一般的には、自賠責保険基準が最も低く、裁判所基準が最も高い金額になります。

裁判所基準で、入院期間を1年間として慰謝料を計算すると、傷害慰謝料の額は、およそ321万円になります。

②後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残存する場合、すなわち治療を継続してもこれ以上良くならないという状態(これを一般的に「症状固定」といいます)になった時に、残存した症状が自賠法上の後遺障害に該当する場合には、これを請求することができます。

自賠法上の後遺障害は、最も重い1級から14級まで等級が定められています。

遷延性意識障害の状態である場合には、1級に該当する場合が多いでしょう。

裁判所基準で後遺障害等級1級に該当するものとすると、後遺障害慰謝料の額はおよそ2800万円です。

なお、このように重大な後遺障害が残存した場合には、交通事故被害者の慰謝料のほか、近親者の慰謝料が認められる場合も少なくありません。

⑵ 被害者の属性や事故状況による相場の変動

その他、事故状況が特に悪質である場合には、慰謝料基準を増額することがありますし、被害者の属性(年齢・収入・同居家族の有無)によって、近親者の慰謝料の額も増減することがあります。

4.慰謝料等の請求手続

⑴ 治療・症状固定

傷害慰謝料は入通院期間等をもとに算定され、また後遺障害慰謝料は症状固定を迎えなければ計算することができませんので、慰謝料の請求をするには、まずどのような慰謝料が発生したのかを確定させるため、治療を継続しなければなりません。

そのため、原則として、治療中に相手方に対し慰謝料を請求することは出来ません。  

⑵ 後遺障害の認定

治療が終わったら、残存した症状がどのような後遺障害に該当するのかを明らかにするため、加害者の加入する自賠責保険に対し、後遺傷害部分の保険請求(後遺障害申請)を行うことが通常です。

⑶ 損害計算・保険会社との交渉

治療が終わり、後遺障害等級も認定されたら、交通事故によって交通事故被害者の方が被った損害額を算定することができるようになります。

損害額を算定したら、加害者または加害者の加入する任意保険会社に対し、当該損害を賠償するよう求めます。

5.弁護士のサポートが重要な理由

⑴ 適切な慰謝料額を算定

上記のとおり、交通事故の被害者が加害者に対して慰謝料を含む適切な損害賠償を求めるには、適切な損害計算をすることができなければなりません。

しかしながら、適切な損害計算を自ら行うということは簡単なことではありません。

また、弁護士に依頼しなければ、慰謝料は、基本的に弁護士が用いる裁判所基準よりも低い任意保険会社基準によって計算されますので、相手方に計算を任せたり、それを簡単に信用することはお勧めしません。

弁護士に依頼すれば、適切な慰謝料を請求することができます。

⑵ スムーズな手続きの進行

慰謝料の請求までには、治療を行い、後遺障害の認定を受ける必要があります。

家族が遷延性意識障害となり、寝たきりになってしまったときには、生活が一変します。

そのような中で、相手方の保険会社とやり取りをしたり、後遺障害の認定を受けるために必要な書類を確認し、用意することは簡単なことではありません。

弁護士に依頼すれば、この先どのように手続きが進むのか先行きが明確になりますし、その多くの手続を弁護士に任せることが可能です。

⑶ 保険会社との交渉力

慰謝料の交渉もそうですが、相手方保険会社との交渉を行うことは容易ではありません。

交通事故によって遷延性意識障害になってしまったときに、加害者側から将来の損害分(将来治療費や後遺障害逸失利益)について、今後の死亡リスクが高いものとして、これらの期間を短くすべきとの主張がなされることがあります。

結論として、このような主張が通る可能性は高くありませんが、突然このような主張をされたら「そうなのかも」と思ってしまうのも無理はありません。

弁護士に依頼すれば、専門的な知見に基づき、保険会社と交渉しますので、適切な損害賠償を求めていくことができます。  

6.まとめ

交通事故で遷延性意識障害になった場合の慰謝料請求は、多くの要素が関わるため繊細で複雑なものです。適切な慰謝料の賠償を求めるためには専門的な知識が必要です。

また、適切な慰謝料額の算定や保険会社との交渉など、弁護士のサポートが不可欠です。被害者やその家族が十分な補償を受けるために、弁護士事務所と連携し、慰謝料請求の手続きを進めていくことが重要です。

もし、ご家族や近しい方が交通事故によって遷延性意識障害となり、寝たきりの状態になってしまったときには、是非早期にご相談ください。

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交通事故で遷延性意識障害などの寝たきりになった場合の慰謝料請求の相場と手続

投稿者プロフィール

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 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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