【速報】後遺障害等級認定事例(1)~頚椎捻挫~

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

これから何回に分けて、私が2021年に担当した交通事故事案のうち、後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介したいと思います。

2021年に私が担当した事案で異議申立てを行った事例は5件ありましたが、実は、以下のようにその5件とも異議が認められるという結果を得ました。

Aさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
⇒本記事

Bさん:併合14級(頚椎・右肩)⇒併合12級(頚椎14級9号・右肩12級13号)
【速報】後遺障害等級認定事例(2)~右肩腱板損傷~

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎・腰椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

Dさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(4)右直事故~外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)~

Eさん:12級14号⇒9級16号(外貌醜状)
【速報】後遺障害等級認定事例(5) ~外貌醜状(顔面の醜状痕)~

異議申立てが認められる確率はかなり低く、2020年の統計では15%程度とされています。ですから、成功率100%は本当に偶然ではありますが、それでも当事務所所属の弁護士たちの異議申立て成功率は通算で50%くらいですので、全体の統計よりもかなり高い確率で成功しています。

それでは、今回はAさんの事例をご紹介します。

1.初回の申請は非該当

 Aさんは、信号のない交差点で右側の道路から一時停止無視で進入して来た加害者車両と衝突してしまいました。加害者車両は、Aさんの車両の運転席付近に衝突し、Aさんの車両は大きく損傷しました。運転していたAさんはかなり強い衝撃を受け、頚椎を負傷してしまいました(頚椎捻挫)。

 その後、Aさんは整形外科で治療を続けていましたが、首から肩にかけての痛みや腕の痺れがなかなか改善しませんでした。ところが、相手方保険会社は、交通事故から8ヶ月が経過した時点で治療費を一方的に打ち切ってしまいました。Aさんとしては、もう少し治療を続けたいという希望があり、当事務所に相談にいらっしゃいました。

 私たちは、ご依頼いただいた直後、相手方保険会社にもう少し治療費の支払いを延ばすように交渉しました。しかし、もう8ヶ月経過しているということで治療費の延長には応じませんでした。そこで、Aさんには一旦健康保険に切り替えて治療を継続してもらいました。

 それから2ヶ月ほどしてもAさんの症状にほとんど変化が見られなかったことから、主治医も交通事故から10ヶ月経過した時点で症状固定の診断をしました。

 そして、当事務所にて被害者請求で後遺障害申請をしました。しかし、残念ながら初回の申請では後遺障害等級は認められず、非該当という結果が通知されました。

 Aさんは、その間も自費で治療を続けるほど症状が残っており、非該当という結果には納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

 そこで、私たちは主治医に医療照会を行い、Aさんの交通事故直後から症状固定までの症状の経過などを回答書に記載してもらいました。また、症状固定後に自費で治療を続けている状況やAさんの異議申立て時点での症状についても報告書を作成して、異議申立てを行いました。

2.異議申立ての結果、14級9号が認定

 上記のように、私たちがAさんの後遺障害非該当の認定に対して異議申立てを行ったところ、異議が認められ、Aさんの頚椎捻挫後の症状について14級9号が認定されました。

 14級9号の場合には、骨折や脱臼などのいわゆる器質的損傷がXPやMRIなどの画像で証明できなくても認定されますが、受傷状況(事故状況)や症状経過等から総合的に判断されることになります。

 具体的な認定の基準は公表されていませんので、ここからは私たちの私見にはなりますが、過去の私たちの経験上は、症状固定後も自費で治療を継続している被害者の方が、症状固定時点で治療をやめた被害者の方に比べて異議申立てが認められやすい傾向があるように思います。

 交通事故の加害者側が被害者の治療費を負担しなければならないのは症状固定までで、症状固定後は相手方保険会社が治療費を負担してくれることはありません。ですから、その時点で治療をやめる方も多いですが、症状固定の診断を受けたからといって治癒する訳ではなく、症状は残ります。治療費が自己負担になったとしても治療を続けているという事情は、それだけ症状が重いという裏付けと考えられているのかもしれません。

 今回のAさんも、症状固定後も数ヶ月間自費で治療を継続しており、これが有利に働いた可能性があります。また、主治医が作成してくれた回答書にしっかりAさんの症状が残存していることが記載されていた点も異議が認められた要因になったと思います。

3.後遺障害等級と示談金の関係

 後遺障害等級が認定されるか否か、認定されるとして何級が認定されるかは、最終的な示談金の金額に大きく関わります。

 例えば、首のムチウチ(「頚椎捻挫」の診断)で治療期間が交通事故から半年くらいだった過失割合0:100の被害者の方の場合、後遺障害等級非該当(もしくは申請しなかった場合)であれば、示談金は通院慰謝料の約90万円程度となることが多いですが、14級9号の後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料や逸失利益なども加わり、最終的な示談金は300万円以上になることが多いです。

 このように、後遺障害等級が認定されるかどうかは交通事故被害者の示談にとってかなり重要です。

 今回のAさんの場合は、初回の後遺障害申請も当事務所で行いましたが、相手方保険会社に初回申請を任せて(これを「事前認定」といいます)納得の行く結果にならなかった場合でも、弁護士に依頼して異議申立てをすることができます。

4.まとめ

 今回は、後遺障害非該当から異議申立てによって14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 統計では、交通事故被害者の半数以上の方が頸椎(首)を負傷しているというデータもあり、今回のAさんと同じように首の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が首の後遺障害でお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。お困りことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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