【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

前々回から私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介していますが、今回は頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負った被害者のCさんの事例をご紹介します。

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎14級9号・腰椎14級9号)

1.初回の申請は非該当

 Cさんは、ご家族が運転する自動車の後部座席に乗っていたところ、隣の車線を走っていた加害者車両が急に車線変更してきたため、Cさんの車両の運転手の方が、衝突を避けるために急ブレーキをかけました。幸い急ブレーキによって衝突を回避することはできたものの、後部座席に乗っていたCさんは、急ブレーキの反動で体が前方に大きく振られて、前の座席に顔面を強打してしまい、顔や頚椎、腰椎を負傷してしまいました(外傷性顎関節症・頚椎捻挫・腰椎捻挫)。

 その後、Cさんは整形外科と口腔外科で治療を続けていましたが、首や腰の痛みがなかなか改善しませんでした。Cさんは、前の仕事を辞めて転職活動をしているタイミングでしたが、首や腰の痛みもあって転職活動を中断せざるを得ず、早く症状を改善させたいとの思いでリハビリを続けました。しかし、交通事故から約1年が経過した時点でも首と腰の痛みが改善しませんでした。そうしたところ、相手方保険会社に治療費の打切りを通告され、主治医もそのタイミングで症状固定と診断しました。

 Cさんは、治療費を打ち切られて症状固定となったことで、その後の後遺障害申請や示談交渉などの手続きを弁護士に任せたいというお考えで私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。ご依頼いただいた後、私たちは必要な書類を揃え、被害者請求で後遺障害申請をしました。

 その結果、残念ながら初回の申請では首の痛みと腰の痛みについて、それぞれ「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」として非該当と判断されました。

 Cさんとしては、首も腰も痛みが残存していて日常生活に支障があるにもかかわらず、非該当という結果では納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

2.異議申立ての結果、併合14級が認定

 頚椎捻挫や腰椎捻挫の場合、交通事故から通常6ヶ月程度で症状固定と診断されることが多いですが、Cさんの場合は交通事故から約1年間も治療を続けており、リハビリの回数も通算170回以上にも上っていました。長年交通事故の後遺障害申請を担当してきた私たちの経験上、通院回数の多い人は痛み(神経症状)による後遺障害等級(14級9号)が認定されやすいという感覚があります。通院回数が多いということは、それだけ痛みが強かったことを推認する事情でもあると考えられるためではないかと思います。ただし、通院回数が多かったり、通院期間が長くても、症状が改善傾向にあったり、訴えている症状に一貫性がなかったりすると、後遺障害とは認定されにくくなります。

 そこで、私たちはCさんの異議申立てをするにあたり、主治医に頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移についての照会書の作成をお願いし、併せてカルテを取り寄せて、症状の経過や一貫性があるか否かを確認しました。その結果、Cさんは交通事故直後から症状固定まで一貫して首と腰の痛みを訴えて治療を続けていたことが分かり、主治医から症状が慢性化していて改善は見込めないとの回答を得ました。

 また、Cさんの交通事故は、急ブレーキで自動車同士の衝突を避けられており、非接触の交通事故であったため、自賠責保険は「後遺障害が残るほどの怪我が発生する事故ではない」と判断したのではないかと考えられました。

 そこで、私たちは、交通事故当時の状況をCさんから詳しく聞き取り、Cさんが靴を脱いで後部座席に座っていたこと、シートベルトをしていなかったこともあって急ブレーキで前方に押し出されて前の座席に顔面を強打したこと、この前方座席に強打した際に首や腰も負傷したことなど、自動車同士は非接触であっても後遺障害が残るほどの怪我を負っても不自然ではないことを細かく主張する異議申立書を作成して異議申立てを行いました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Cさんの頚椎捻挫後の首の痛みと腰椎捻挫後の腰の痛みについてそれぞれ14級9号が認定されて、併合14級の認定となりました。

3.まとめ

 今回は、頚椎捻挫・腰椎捻挫で初回申請非該当から、異議申立てでそれぞれ14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のCさんのように、交通事故の被害者の多くが頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負っていますが、首や腰の症状は回復するまで長い時間がかかることも多く、首や腰の痛みが残ってしまう方も少なくありません。

 その場合、多くの方は相手方保険会社に任せて後遺障害の申請を行いますが(この保険会社に任せる方法を「事前認定」といいます。)、この事前認定では必要最低限の書類を揃えて提出するという対応以上は期待できません。

また、少なくとも私たちの経験では、初回の事前認定が非該当だったケースで、相手方保険会社が異議申立てをしてくれて後遺障害等級が認定されたというケースは見たことがありません。

 ですから、やはり後遺障害の申請は弁護士に依頼した方が適切な等級が認定される可能性が高まるといえるのではないかと思います。

 Cさんと同じように首や腰の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。ぜひ、お気軽にお問合せください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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