交通事故によって骨折という大きな傷害が生じた場合、ケガを負った本人はもちろんのこと、サポートする家族や周囲の方々にとっても、今後の生活や手続きに関して大きな不安を抱えることとなります。
また、適正な賠償の仕組みをあらかじめ正しく理解しておきたいという方もいらっしゃるでしょう。
骨折を伴うケースでは、治療が長期化しやすく、痛みが引かない、関節が動かしにくいといった後遺症が残るリスクもあります。
しかし、示談の際に保険会社から提示される慰謝料は、本来の適正な基準(弁護士基準・裁判基準)よりも低く見積もられていることがほとんどです。
本記事では、適正な賠償金が算出される基礎知識や、解決までの適切な流れを弁護士が詳しく解説します。
以下の目次に沿って、具体的な請求の手順や、後遺障害認定を受けるための詳細な条件、知っておくべきポイントなどを分かりやすく紹介します。
当事者にとって公平で適切な解決を図るための正しい知識として、ぜひ最後までご一読ください。
このページの目次
1.交通事故で足を骨折した場合に請求できる慰謝料と流れ
交通事故で足を骨折した場合、請求できる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」です。
治療期間や入院の有無、後遺障害等級の認定結果によって金額は大きく変わります。
たとえば、足関節の可動域制限や痛み・しびれが残った場合には、10級・12級・14級などの後遺障害等級が認定される可能性があり、裁判基準では14級で110万円、12級で290万円、10級で550万円、8級で830万円が後遺障害慰謝料の目安となります。
⑴ 慰謝料請求の基本ステップ
交通事故の骨折で慰謝料を請求するにあたっては、基本的なステップを把握しておくことが重要です。
まず、交通事故の内容を記録しておきましょう。
事故直後は気が動転しているかと思いますが、事故状況、相手方の連絡先、事故現場(たとえば、どのビルの前だったかなど)を記録し、目撃者がいれば連絡先を控えておきましょう。
次に、医療機関で骨折の診断を受けた後、適切な治療を受けます。
慰謝料は通院回数や通院期間によって金額が定まる上、治療が長引くようなケースでは、後遺障害の申請を見据えて適切な治療を受けることが、適切な賠償をもらえるかどうかの分かれ道となります。
最後に、必要な治療を受けた後は、相手方の保険会社と慰謝料を含む示談金の交渉を行い、事故で生じた損害についての話し合いを進めます。
治療費については、治療中に保険会社が支払対応をすることが通常ですが、慰謝料については、基本的に治療が終了した後の交渉になります。
⑵ 必要な書類と証拠
慰謝料請求を円滑・適正に進めるためには、客観的な書類と証拠の準備が欠かせません。
まず、必ず医療機関を受診し、医師から骨折等について診断を受けることが必要です。
診断書の記載と実際の症状との間に齟齬がないようにするため、例えば著しい痛みがあるならば、その旨を必ず医師に申告しましょう。
次に、通院にかかる治療費の領収書は大切に保管しておきましょう(保険会社が直接医療機関に治療費を支払っているケースでは不要です。)。
これにより、実際にかかった費用を正確に証明することができます。
また、事故の発生を公的に証明する重要な書類として、警察署が発行する交通事故証明書を入手しておきましょう。
なお、弁護士に依頼することにより、書類や証拠の準備を、弁護士と協力しながら進めることも可能です。
加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯されていて、この特約が利用できる交通事故に該当する場合、多くの場合で弁護士費用を負担することなく弁護士に依頼することができます。
2.足の骨折で後遺障害が残った場合の慰謝料と等級認定
⑴ 後遺障害等級の認定方法
骨折の治療後も症状が残存している場合、自賠責保険会社に対する後遺障害等級認定の申請を検討することが重要です。
骨折の場合、骨が癒合しても痛みが残る「神経障害」や、関節の動く範囲が狭くなる「機能障害(可動域制限)」などが後遺障害等級認定の対象として考えられます。
後遺障害等級認定の申請をするにあたっては、担当医が作成する後遺障害診断書が極めて重要な役割を果たします。
例えば、骨折後の痛みが長引いて残る場合、後遺障害診断(症状固定)までの治療経過や、検査の結果について、後遺障害診断書を含む各診断書に適切な記載がなされていることが重要です。
これらの点を踏まえ、後遺障害別等級表のうち、いずれの等級に該当するのかについて審査が行われることになります。
後遺障害等級が認定されれば、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料を受け取ることができますが、どの等級が認定されるかによって、最終的な賠償額は大きく変わります。
⑵ 後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料がいくらになるのかについては、しっかりと理解しておくことが必要です。
損害賠償のうち、後遺障害に関する費目(後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益)は、認定された等級によって金額が大きく変動します。
最も高額となる弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料は、以下のとおりです(足の骨折に関する後遺障害のみ抜粋しています。)。
| 等級 | 後遺障害の内容 | 後遺障害慰謝料 |
| 14級 | 局部に神経症状を残すもの等 | 110万円 |
| 13級 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの等 | 180万円 |
| 12級 | 局部に頑固な神経症状を残すもの等 | 290万円 |
| 10級 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの等 | 550万円 |
| 9級 | 1足の足指の全部の用を廃したもの等 | 690万円 |
| 8級 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの等 | 830万円 |
| 7級 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの等 | 1000万円 |
| 6級 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの等 | 1180万円 |
| 5級 | 1下肢を足関節以上で失ったもの等 | 1400万円 |
| 4級 | 1下肢をひざ関節以上で失ったもの等 | 1670万円 |
| 3級 | 終身労務に服することができないもの等 | 1990万円 |
| 2級 | 随時介護を要するもの等 | 2370万円 |
| 1級 | 常に介護を要するもの等 | 2800万円 |
3.交通事故で多い足の骨折の種類と後遺症
⑴ 足首骨折の症状と後遺障害
足首(足関節)の骨折は、激しい腫れや痛み、歩行困難などが主な症状として現れます。
足首は体重を支え、歩行の要となる関節であるため、通勤や家事など日常生活にダイレクトに支障をきたします。
また、足首(足関節)の骨折は後遺障害が残りやすいケガの一つです。
ギプス固定などの治療や長期間のリハビリを経ても、関節の動く範囲、いわゆる可動域が制限される「機能障害」や、慢性的なしびれ・痛みを伴う「神経障害」が残るリスクがあります。
症状の重さに応じて、10級や12級などの等級が認定される可能性があります。
⑵ 大腿骨骨折の後遺障害等級
大腿骨(太ももの骨)は、人間の体重を支え、歩行の要となる重要な部分(部位)であるため、大腿骨骨折は重篤な後遺障害を引き起こす可能性がある部位です。
歩行が著しく困難になり、車椅子や杖の生活を余儀なくされるなど、日常生活に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
後遺障害等級としては、骨が正しく癒合せず「偽関節」が残ってしまった場合や、足の長さが短縮してしまった場合、関節が曲がりにくくなった場合に関する等級があり、8級・10級・12級などの等級に該当する可能性があります。
また、歩行が完全に困難になるような上肢・下肢の複合的なケガや、脳へのダメージによる高次脳機能障害を伴うような重大なケースでは、1級、3級、5級、6級といった極めて高い等級が認定される可能性があります。
4.足の骨折で適正な慰謝料を受け取るためのポイント
⑴ 慰謝料相場の理解
適正な慰謝料を取得するためには、まず被害者ご自身(あるいはご家族)が、現在の正しい相場を調査し理解することが重要です。
そもそも交通事故の慰謝料には、入通院に対する「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」や、後遺症が残った場合の「後遺障害慰謝料」があります。
さらに、傷害慰謝料を算出する「弁護士基準(裁判基準)」には、2つの基準が存在します。
むちうち等の他覚所見がない場合は低い方の基準(別表Ⅱ)が用いられますが、骨折のようにレントゲン画像等でケガの程度が明らかなケースでは、高い方の基準(別表Ⅰ)が使われる可能性が高くなります。
インターネットの専門記事や過去の判例を参考にし、骨折でどの程度の金額が認められているのか、具体的な相場感をつかむことが大切です。
⑵ 弁護士に依頼するメリット
交通事故による慰謝料請求は、医学的知識と法的知識が交差する複雑なプロセスです。
そのため、弁護士に依頼することには非常に多くのメリットがあります。
まず、弁護士は法律の専門知識を持っているため、保険会社が低い金額を提示していた場合、最も高額な「裁判基準(弁護士基準)」を用いて適切な慰謝料を再計算・主張することができます。
また、相手方やその保険会社とのやり取りなどの精神的負担の大きい作業を任せることができます。
相手方やその保険会社が頑固で、裁判所外では適切な慰謝料が獲得できない場合、裁判所を利用した手続についても弁護士に依頼することができます。
このように、弁護士に依頼すると、自分で交渉する手間と不安を省き、時間と労力を大幅に節約しながら、治療や日常生活の再建に専念できるのです。
弁護士への依頼を検討する場合、まずは法律事務所に相談することをお勧めします。
5.交通事故の慰謝料計算に使う3つの基準
慰謝料の算定では、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料をそれぞれ分けて考える必要があります。
さらに、これらは自賠責保険基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)によって算出方法が異なり、治療期間、通院日数、入院の有無、後遺障害等級の認定結果によって、請求できる金額は大きく変動します。
⑴ 自賠責保険基準と弁護士基準の比較
交通事故の慰謝料には、主に「自賠責保険基準」と「裁判基準(弁護士基準)」の2種類が存在します(※保険会社が独自に用いる「任意保険基準」もあります)。
自賠責保険基準は、国が定めた最低限の補償を提供するものであり、上限が設けられています。
これに対して裁判基準(弁護士基準)は、損害や苦痛を正当に評価した基準であり、自賠責基準と比較して高額になります。
相手方の保険会社は、自社の支出を抑えるためもあってか、弁護士が就いていない場合は自賠責基準やこれに近い任意保険基準での示談を提案してくることが通常です。
被害者が適正な補償を受けるためには、原則として裁判基準(弁護士基準)での解決を目指すべきです。
⑵ 逸失利益の計算方法
「逸失利益」とは、交通事故の後遺症によって労働能力が低下し、将来得るはずであった収入を失ったことによる損害を指します。
この計算は非常に複雑で、主に以下の3つのデータを用いて算出します。
適正な計算には、専門的な判断が不可欠です。
・基礎収入:事故前の年収など
・労働能力喪失率:認定された後遺障害等級に応じた割合(例:14級なら5%、12級なら14%など)
・労働能力喪失期間:症状固定から原則67歳までの期間(将来の利息を引くための「ライプニッツ係数」を使用します)
例えば、「症状固定時の年齢が50歳で年収500万円のサラリーマンが、傷害を負い後遺障害等級12級(喪失率14%)が認定され、喪失期間を17年(ライプニッツ係数13.1661)とした場合」は、
約920万円(500万円×0.14×13.1661)の逸失利益が、慰謝料とは別に請求できる計算となります。
なお、労働能力喪失期間は原則67歳までとされていますが、実務上、12級13号は10年程度、14級9号は5年程度に制限されることが多いです。
6.交通事故後の対応と必要な行動
⑴ 事故後の初期対応
交通事故が発生した場合、まずは自分自身と周囲の安全を確保することが最優先です。
車を安全な場所に移動させるなどの措置を取りましょう。
次に、ケガの程度にかかわらず、速やかに110番して警察に報告し、臨場した警察官に事故の状況を正確に伝えます。警察に報告しないと「交通事故証明書」が発行されず、後々の請求が非常に厳しくなってしまうリスクがあります。
また、相手方の氏名、連絡先、車のナンバー、加入している保険会社などの情報を記録し、目撃者がいれば連絡先をメモしておきましょう。
可能であれば、スマートフォン等で現場の状況や車両の破損箇所の写真を撮っておくことも、重要な証拠保全となります。
⑵ 医療機関との連携
交通事故に遭った後は、少しでも違和感があれば、その日のうちに(遅くとも数日以内に)必ず整形外科などの医療機関で診察を受けることが必要です。
整骨院等については、受診前にまずは医師の診断を受けることが鉄則です。
骨折が疑われる場合はもちろん、目に見えない神経の損傷等がないか、専門医によるレントゲンやMRIによる正確な診断が重要です。
また、通院の間隔が空きすぎると「もう治った」と判断されるリスクがあるため、医師の指示に従って定期的に通院し、治療の過程や自覚症状の変化(改善傾向にあり治療効果が現れていること等)を医師に伝えることが重要です。
基本的には、治癒ないし症状が固定するまで通院することになります。
7.交通事故の骨折に関するQ&A
⑴ よくある質問とその回答
ここでは、交通事故による骨折に関してご相談者様から寄せられるよくある質問とその回答を簡潔にご紹介します。
Q. 骨折の治療中、保険会社から突然「治療費の支払いを打ち切る」と言われました。どうすればいいですか?
A. 保険会社の打ち切り打診は、必ずしも医学的な「完治」を意味しません。まだ痛み等があり主治医も治療継続が必要と判断している場合は、安易に同意せず、健康保険に切り替えて通院を継続し、後から請求する方法があります。
Q. 骨折の怪我に関する慰謝料の請求だけでなく、過失割合や物損の交渉についても依頼することは可能ですか?
A. 法律事務所によって対応方針は異なるかと思いますが、当事務所においては、これらについても一緒にご依頼いただくことが可能です。
Q. 慰謝料はいつのタイミングで支払われますか?
A. 原則として、ケガの治療が終了(症状固定となり後遺障害等級が確定する等)した後、保険会社と示談交渉を行い、双方が合意して示談書を取り交わしてから約2~3週間後に口座に振り込まれます。
⑵ 専門家に相談する重要性
交通事故による骨折のような重傷事案において、早期に専門家に相談することの重要性は計り知れません。
弁護士に相談することで、今後の治療の受け方に関するアドバイスや、後遺障害診断書を作成する際の医師への適切な伝え方など、「適正な賠償を獲得するための道筋」が明確になります。
保険会社とのやり取りにストレスを感じたタイミングや、治療費の打ち切りを打診されたタイミング、あるいは後遺障害認定の手続きに入る前など、少しでも不安を感じたら一人で悩まないことが大切です。
交通事故による足の骨折では、治療中の対応や後遺障害申請の進め方によって、受け取ることができる慰謝料・損害賠償額が変わる可能性があります。
保険会社から提示された金額に不安がある場合や、後遺症が残るかもしれないと感じている場合は、早めの相談が重要です。
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投稿者プロフィール

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)

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