高速道路の過失割合まとめ|合流事故・車線変更・追突事故の基準を解説

お盆や年末年始の帰省、休日のレジャーや日々の業務など、長距離移動に欠かせない高速道路。

交差点や急なカーブをなくしたり、対向車線との間に中央分離帯を設けてあったりと、高速道路は車の流れがスムーズになるように設計されています。

しかし、その一方で、制限速度が高く設定されていることや、つい速度が出やすくなってしまうことから、ひとたび交通事故が起こってしまったときの被害の大きさは、一般道路とは比較にならないほど甚大なものになる危険があります。

このように、高速道路での事故は、車両の大破、生命に対する危機や重篤な後遺障害を伴うケースが多く、損害賠償金も高額になりがちです。

それゆえに、相手方の保険会社から一方的に提示される過失割合に納得がいかない被害者の方は多くいらっしゃるものと思われます。

実は、保険会社が提示する過失割合は「絶対的な決定事項」ではありません。

本記事では、高速道路における過失割合の決まり方から、実際の算定基準、そして不利な過失割合を示された場合に適正な割合に修正するための具体的なポイントまでを詳しく解説します。

1.高速道路とは何か~高速道路における特例について~

高速道路とは、高速自動車国道と自動車専用道路をいいます。

高速道路は、一般道路と分離されており、立体交差にしたり、カーブをゆるくするなど、ルールやマナーを正しく守れば安全で快適に走行できるように設計されています。

一般道路については、人や車両の混在が予定されており、人と車両または車両同士の接触を回避することが中心に考えられています。

一方、高速道路については、一般道路と異なり自動車のみの通行を予定する道路であり、一般道路よりも高速での走行が許容されていることから、例えば、次のような特例が定められています。

⑴ 最低速度を維持する義務(道路交通法75条の4)
標識や標示で、最低速度が指定されているところでは、最低速度に達しない速度で運転してはならない。

⑵ 横断・転回・後退の禁止(道路交通法75条の5)
本線車道では、中央分離帯を横切ったり、転回したり、後退したりしてはならない。

⑶ 本線車道通行車の本線車道進入車に対する優先(道路交通法75条の6第1項)
本線車道に入ろうとする自動車は、当該本線車道を通行する自動車の進行を妨害してはならない

⑷ 本線車道出入時の加速車線・減速車線通行義務(道路交通法75条の7)
本線車道に入ろうとするときは、加速車線がある場合、加速車線を通行しなければならない。
本線車道から出ようとするときは、減速車線がある場合、減速車線を通行しなければならない。

⑸ 駐停車の原則的禁止(道路交通法75条の8第1項)
高速道路では、駐車や停車をしてはならない。ただし例外はあります(危険防止や故障のため停止するなど)。

⑹ 燃料・冷却水・オイルの量、貨物の積載状態を点検する義務(道路交通法75条の10)
高速道路を走行するときは、燃料切れや冷却水、エンジンオイルの不足などにより停止することのないよう点検しなければならない。
積載している物については、転落・飛散しないように点検しなければならない。

⑺ 本線車道等に停止したときに停止表示を行う義務(道路交通法75条の11第1項)
故障などで路肩や路側帯に駐車した場合は、後続車の運転者に停止していることがわかるように表示しなければならない。

⑻ 本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(道路交通法75条の11第2項)
故障などにより運転することができなくなったときは、速やかに自動車を安全な場所へ移動させるために必要な措置をとらなければならない。

2.「別冊判例タイムズ39号」の基準と高速道路上における四輪車同士の事故

交通事故における過失割合を検討するにあたっては、実務上、「別冊判例タイムズ39号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」における基準が用いられています。

高速道路上の事故については、「第7章 高速道路上の事故」として、一般道路上の事故とは別に過失割合の基準が定められています。

これは、高速度での走行が許容されている高速道路においては、法に従って走行することが強く要求されることから、法に従わないで走行した場合の過失を一般道路の場合よりも重く評価しているためです。

もっとも、速度違反については、事実上、車線の流れに沿って走行することが一般道路以上に要請されることもあるため、その過失相殺率に与える影響は慎重に評価する必要があるとされています。

また、高速道路上の交通事故であっても、渋滞などで高速走行が不可能な道路状況下で発生した事故については、そのまま適用せず、事案に応じて適宜修正して適用する必要があります。

以下、高速道路上における四輪車同士の事故に関する基準を紹介いたします。

⑴ 合流地点における事故

【基本過失割合】 本線車30% : 合流車70%

先程ご紹介したとおり、本線車道に入ろうとする自動車(合流車)は、当該本線車道を通行する自動車(本線車)の進行を妨害してはならないという規定があります(道路交通法75条の6第1項)。

他方、本線車としても、減速等の措置をとることによって合流車との衝突を回避することが可能であるため、上記割合とされています。

判例タイムズ311図

⑵ 進路変更に伴う事故

①   走行車線から追越車線へ進路変更する場合

【基本過失割合】 後続直進車20% : 進路変更車80%

追越車線を走行する後続直進車の速度は、通常、走行車線を走行する自動車よりも高速です。

そのため、走行車線から追越車線へ進路変更する自動車は、一層の注意をすべきであるという観点から、上記割合とされています。

判例タイムズ314図

②   その他の場合

【基本過失割合】 後続直進車30% : 進路変更車70%

追越車線から走行車線に進路変更する場合や、片側3車線以上の道路で走行車線から走行車線に進路変更する場合に伴う事故の場合です。

ここでの基本過失割合は、一般道路における進路変更に伴う事故と同様、30%(後続直進車):70%(進路変更車)とされています。

判例タイムズ315図

⑶ 追突事故

① 過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故

【基本過失割合】 追突車60% : 被追突車40%

被追突車に何らかの落ち度が認められる事情(事前の整備不良によるガス欠・エンジントラブルなど)により運転に支障を来して駐停車し、これに前方不注意の追突車が追突した場合です。

高速道路においては、駐停車の原則的禁止(道路交通法75条の8第1項)や本線車道等において運転できなくなったときの退避義務(道路交通法75条の11第2項)があり、一般道路よりも駐停車による事故発生の危険が高いことから、駐停車中の被追突車であっても過失が相当大きいものとされています。

判例タイムズ320図

②   過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故(駐停車後の過失あり)

【基本過失割合】 追突車80% : 被追突車20%

被追突車が自己に過失のない先行事故によって本線車道等に駐停車した後、退避や停止表示器材の設置について過失がある場合です。

被追突車には駐停車したこと自体については過失がないため、上記①(過失等により本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故)よりも、被追突車の過失割合は小さいものとされています。

③   過失なく本線車道に駐停車した自動車に対する追突事故(駐停車後の過失なし)

【基本過失割合】 追突車100% : 被追突車0%

被追突車が自己に過失のない先行事故によって本線車道等に駐停車した後、退避や停止表示器材の設置について過失がない場合です。

被追突車には、駐停車したことについて過失はなく、駐停車後の対応にも過失はないため、被追突車の過失は0%とされています。

④   路肩等に駐停車中の自動車に対する追突事故

【基本過失割合】 追突車100% : 被追突車0%

路肩等は、原則として車両の通行が禁止されている部分です。

そのため、走行中の追突車が、路肩等に駐停車中の被追突車に追突した場合には、全て追突車の責任であり、被追突車の過失は0%とされています。

判例タイムズ327図

3.【重要】基本割合だけで諦めないための「修正要素」

以上が、各事故類型の基本過失割合になります。

もっとも、基準は基本過失割合だけでなく、事故態様ごとによって設けられている「修正要素」との組み合わせによって、過失割合が決定されます。

そのため、保険会社から、「基本過失割合」がそのまま提示された場合には、「修正要素」を考慮すべきケースであるかについては検討が必要です。

例えば、走行車線を走行していた四輪車(A)が、追越車線へ進路変更したことによって、後方から追越車線を走行してきた四輪車(B)と衝突した事故を例に挙げます。

先程ご紹介したとおり、この場合の基本過失割合は後続直進車20%(B):進路変更車80%(A)ですが、Aが「ウインカーを出さずに、進路変更禁止区間で進路変更していた」場合、修正要素として「合図なし」-10%、「進路変更禁止区間」-10%の減算修正がなされます。

これにより、Bの過失割合は0%(基本過失割合20%-修正要素20%)となります。

このように、修正要素の存在を立証することができれば、過失割合を有利に修正することが可能となるのです。

4.過失割合を覆すためのカギは「客観的な証拠」

保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合、被害者自身が「相手の方が悪かった」と口頭で主張しても、残念ながら保険会社が譲歩することは少ないです。

修正要素の主張をするにあたっては、客観的な証拠が不可欠です。

強力な武器となるのが「ドライブレコーダーの映像」です。

ウインカーのタイミング、相手車両の速度、車線変更を開始した位置などを詳細に分析(コマ送りでの秒数計算など)することで、修正要素を客観的に証明できます。

また、警察が作成する「実況見分調書」も過失の立証において非常に重要です。

5.まとめ

保険会社から提示される過失割合は、必ずしも最終決定ではありません。

相手の不当な主張を覆し、適正な過失割合と賠償金を獲得するにあたっては、法律の専門家である弁護士のサポートが有効です。

弁護士に依頼することで、客観的な証拠(ドライブレコーダーや実況見分調書など)の分析から、煩わしい保険会社との交渉まで任せることができます。

これにより、治療に専念できる環境が整うだけでなく、最終的な賠償金が「裁判所基準(弁護士基準)」で計算されるため、慰謝料等が大幅に増額する大きなメリットがあります。

一度示談書にサインをしてしまうと後から覆すことは極めて困難になるため、サインをする前にご相談いただくことが重要です。

ご自身の自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、実質的な費用負担なしで弁護士に依頼できるケースがほとんどです。

高速道路での事故は被害が大きくなりやすいため、一人で抱え込まず、ぜひお早めに当事務所の無料相談をご利用ください。

全国からご相談いただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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