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道路進行車と路外からの進入車の交通事故の過失割合を修正できた事例

2024-06-23

今回のテーマは、道路進行車と路外からの進入車との交通事故の過失割合です。

今回は、片側2車線の国道の第2車線を走行していた車と路外の飲食店の駐車場から直接第2車線に進入してきた車が衝突した事例についてご紹介します。

以前、当事務所のブログで、駐車場内の交通事故についてご紹介した記事で、

●過失割合とは?

●基本過失割合とは?

●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

など、過失割合の基本的なことを解説していますので、是非こちらの記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。

これまで全国の方々から、当交通事故専門サイトや当事務所のブログに掲載している事例と同じような事故の過失割合で困っているとのご相談をいただいておりますが、今回ご紹介するTさんの事例も、道路進行車と路外からの進入車の交通事故という意味では、比較的よく発生する交通事故の類型ですので、同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

1.今回のご相談内容~道路進行車と路外からの進入車の交通事故~

今回の依頼者Tさんは、東京都在住で

・交通事故は片側2車線の国道上

・Tさんは第2車線を走行していた

・相手方は路外の飲食店の駐車場から国道に左折で進入

・相手方は路外から直接第2車線に進入

・Tさんの車両の左前部に相手方の右前部が接触

・相手方に過失割合20:80を主張されている

・交通事故による怪我は頚椎捻挫・右手関節捻挫

・治療期間は約6ヶ月間

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

本件事故現場の写真

上の写真が本件の交通事故現場です(相手方は矢印の部分から道路に進入してきました。)。

Tさんが、この事故現場を通りかかった際、第1車線は比較的車が多かったものの、第2車線のTさんの前方は、先行車との距離が結構空いていました。

そのため、Tさんは第2車線を法定速度程度で走行していました。

一方、相手方は、左側の飲食店の駐車場から道路に進入しようとして、第1車線の車の流れが切れるのを待っていました。

そして、ちょうどTさんが通りかかる直前で少し第1車線の車の間隔が空いたため、道路に進入してきました。

この際、第1車線が比較的混んでいたことから、相手方は直接第2車線に進入してきました。

相手方は、このとき第1車線の自動車にばかり気を取られており、第2車線をTさんが走行してきていることに気が付いておらず、衝突して初めてTさんの車に気が付いた状態でした。

Tさんとしては、このような通行量の多い国道でいきなり路外から第2車線に進入してくる車がいるとは予想できず、しかも、第1車線が比較的車の多い状態で直前まで相手方が路外から道路に進入しようとしている様子が見えなかったこと、相手方の動きが第1車線に進入するような動きに見えたこともあり、全く避けることができませんでした。

この事故でTさんは頚椎捻挫・右手関節捻挫の怪我を負ってしまいました。

相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は20(Tさん):80(相手方)と主張してきました。

Tさんとしては、ただ国道を走行していただけであり、相手方が路外からいきなり第2車線に進入するという予測できない動きをし、しかも第2車線を全く確認していなかったことが今回の交通事故の原因と考えており、ご自身に過失があると主張されたことに強い不満がありました。

その後、Tさんはご自身で相手方保険会社と交渉しましたが、相手方が態度を変えず、話が進みませんでした。

そこで、ご自身の自動車保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

2.基本過失割合は?(別冊判例タイムズ148図)

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所のブログで説明していますから、こちらもご覧ください。)

今回のような道路走行車と路外からの進入車が衝突した事故類型の基本過失割合は、別冊判例タイムズの148図によって、20(直進車):80(路外からの進入車)とされています。

相手方保険会社は、今回の交通事故合は、この基本過失割合の20(Tさん):80(相手方)が妥当であると主張していました。

判例タイムズ148図
基本過失割合Ⓐ20:Ⓑ80

確かに、今回の交通事故の場合、別冊判例タイムズの148図と同じく、道路進行車と路外からの進入車の交通事故ですので、基本過失割合が20:80になることはやむを得ないと考えられました。

しかし、別冊判例タイムズの148図では、以下のような道路進行車に有利に過失割合を修正する修正要素が認められています。

進入車徐行なし:10%

幹線道路:5%

その他の著しい過失:10%

その他の重過失:20%

今回の交通事故で、Tさんの過失を基本過失割合の20%から修正するためには、上記のようなTさんに有利な修正要素があることを主張する必要がありました。

また、今回の場合は、もともとTさんがご自身の過失0%を主張したいとお考えであったこともあり、私たちも極力ご希望に沿う主張ができないか検討しました。

そこで、私たちは、まず本件事故現場の道路を確認したところ、片側2車線の国道でしたので、明らかに幹線道路と評価できると考え、この点で5%の修正を主張しました。

また、Tさんの車両のドライブレコーダーの映像を確認したところ、相手方は、路外から道路に進入した後、第2車線内でTさんの車両に衝突するまで全く減速しておらず、その動きから第2車線の右方を確認せずに進入していることが明らかでした。

判例タイムズでは、著しい前方不注視は、「その他の著しい過失」として10%の修正要素になり得るとされていますが、本件は相手方が交通量の多い国道で路外から第2車線に直接進入するという危険な運転をしているにもかかわらず、その合流先の第2車線を確認していないという点は、著しい過失として10%の修正、もしくはそれ以上の修正要素になり得ると主張しました。

3.交渉の結果~過失割合5:95で解決~

上記のように、別冊判例タイムズ148図の基本過失割合20:80を主張していた保険会社に対して、私たちは、

幹線道路で5%修正すべき

相手方が、第2車線を確認せずに漫然と第2車線に進入しているから、著しい過失もしくは重過失で10~15%修正すべき

と2点の修正要素を主張しました。

これに対して、当初、相手方保険会社は、

①幹線道路であることは争わず、5%修正は認める

②路外から直接第2車線に進入してはいけないという法規制はなく、第2車線の確認不足も基本過失割合の80%の中に含まれているため、著しい過失については認められず、幹線道路修正後の15:85からは修正できない

と回答してきました。

そこで、私たちは、類似の裁判例を探したところ、「第1車線渋滞中に路外からの進入車が直接第2車線へ進入した交通事故」や、「路外からの進入車が直接第3車線へ進入した交通事故」で、それぞれ過失割合0:100と判断されている裁判例が見つかりましたので、相手方保険会社にこれらの裁判例も提示して、本件も過失割合0:100が妥当であると再反論しました。

その結果、相手方保険会社は、私たちが提示した裁判例はTさんの交通事故とは多少状況が異なり、そのまま0:100を受け入れることはできないものの、著しい過失での10%の修正は認め、5(Tさん):95(相手方)であれば示談に応じると回答してきました。

そこで、私たちがTさんに相談したところ、Tさんとしては、ただ第2車線を走っていただけのご自身に過失はないと主張したいお気持ちが強かったものの、Tさんの車両修理費が高額で裁判になって解決まで長期化すると一旦立て替える必要があって負担が大きいことや、双方が動いていた交通事故では0:100の判決を得るのは難しいと周囲に助言を受けたとのことで、5%ならば仕方ないとのお考えになり、5:95での示談を了承されました。

4.まとめ

今回の交通事故では、交渉の結果、過失割合が

20:80→5:95

となり、当初Tさんが希望されていた0:100までは修正できませんでしたが、Tさんも相手方保険会社の担当者と直接お話になっていて、態度が強硬であったことは認識されていましたので、当初の相手方の主張から15%も修正できた点については、ご自身だけではこのような結果にはならなかったと喜んでいただけました。

今回のような道路進行車と路外からの進入車の交通事故は、よくある事故類型ですので、Tさんと同じように過失割合でお困りの方も多いと思います。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故紛争処理センターで過失割合を争った事例~路外進出車と直進二輪車の交通事故~

2024-05-18

今回のテーマは、路外進出車と直進車の交通事故の過失割合と「公益財団法人交通事故紛争処理センター」(通称「紛セ」)の手続きについてです。

今回は、路外のマンションの敷地(路外)に向かって右折しようとしたタクシーと対向車線を直進してきたバイクが衝突した交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介します。

この事案では、交渉が決裂してしまい、交通事故紛争処理センターでの解決を目指して申立てを行い、最終的に紛争処理センターの審査会の裁定で解決しました。

紛争処理センターは、裁判よりも比較的早期の解決が期待できるため、交通事故の示談交渉がうまく進まないときに解決方法として用いられます。

しかし、一般の方にはあまり馴染みがないと思いますので、今回の記事では紛争処理センターでの手続きやルールについても詳しくご説明します。

交通事故の示談交渉がなかなかうまく進まないというお悩みをお持ちの方は、ご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~路外進出車(右折車)と対向直進車の自動車VS二輪車の交通事故~

今回の依頼者Vさんは、神奈川県在住で

・交通事故は片側1車線道路で発生

・Vさんは事故現場の道路を二輪車で直進していた

・相手(タクシー)は、乗客の指示で相手から見て右側のマンション敷地に入るために右折を開始した

・Vさんは、直前に路上駐車していた車を避けてセンターライン付近まで膨らんで走行し、衝突時には道路左側に寄っていた

・相手方にはドライブレコーダーがあり、対向直進二輪車(Vさん)の姿がはっきり映っているが、相手方は右折開始から衝突まで減速した様子がない

・相手方に過失割合30:70を主張されている

・交通事故によるVさんの怪我は頚椎捻挫・左肘打撲

・治療期間は約3ヶ月間

弁護士費用特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故発生状況図(路外進出車と直進二輪車の事故)

上の図が本件の交通事故発生状況です。

Vさんは、この直前に路上駐車の自動車を避けるためにセンターライン側に膨らんで走行しましたが、衝突の際には道路左側に寄って走行していました。

この時、Vさんによると、対向車のタクシー(相手方)が急にウインカーを出して右折しようとしているのは分かったものの、当然相手は自分が通り過ぎるまで待つだろうと思って減速しなかったそうです。

ところが、相手方がそのまま右折してきたため、避けられずに衝突してしまったとのことでした。

一方、相手方は、事故直後は、乗客に急に右のマンションに入るように言われて慌てて右折してしまい、前方をよく確認できていなかったと述べていたとのことでした。

この事故でVさんは左側に転倒して左肘などを負傷してしまい、3ヶ月ほど整形外科に通院しました。

そして、Vさんは、通院中もバイクの賠償について相手方保険会社と交渉していましたが、相手方がこの交通事故の過失割合は30(Vさん):70(相手方)と主張しており、全く交渉が進みませんでした。

Vさんとしては、道路を直進走行していただけで、相手方が前方の安全確認が不十分なまま右折を開始し、しかもそのまま減速しなかったことで本件事故が起きたという認識でしたので、ご自身に過失があるとしても10%くらいと考えており、相手方の過失割合の主張には不満がありました。

その後、Vさんは治療終了後にもお怪我の通院慰謝料も併せて相手方保険会社と交渉をしましたが、相手方が過失割合30:70を譲らず、交渉が進みませんでしたので、ご自身の保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことでご相談いただきました。

2.基本過失割合と修正要素(判例タイムズ220図)

では、まず今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所の公式ブログの記事で説明していますから、こちら(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。)

今回のような路外進出車と直進二輪車の交通事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの220図によって、10(直進二輪車):90(路外進出車)とされています。

判例タイムズ220図
基本過失割合Ⓐ10:Ⓑ90

相手方保険会社は、今回の交通事故の過失割合は、この基本過失割合の10(Vさん):90(相手方)から、Vさんの速度違反で10%著しい過失で10%、併せて20%修正し、30:70が妥当だと主張していました。

しかし、資料を見る限り、相手方保険会社の主張する修正要素はいずれも妥当ではないと考えられました。

まず、判例タイムズ220図は、直進二輪車に時速15km以上の速度違反があった場合に10%、30km以上の速度違反があった場合に20%修正するとしています

本件の事故現場の道路の制限速度は時速30kmでしたので、Vさんがそこから時速15km以上の速度違反、つまり時速45km以上で走行していなければ、修正要素にはなりません。

そこで、私たちは、相手方にVさんが時速45km以上で走行していたことの証拠が何かあるのか聞いたところ、何もないということでこの点はあっさり撤回しました。

また、併せて、どのような点が著しい過失だと主張するのか聞いたところ、Vさんが路上駐車の車両を避けるためにセンターラインを越えて対向車線にはみ出して走行したことが蛇行運転で著しい過失だと主張していました。

この点に対しては、私たちは、直前に路上駐車の車を避けただけで、センターラインは超えておらず、衝突時には道路左側に寄って走行していた訳なので、著しい過失には該当しないと主張しました。

しかし、相手方がこれについては譲りませんでした。

私たちは、逆に、相手方のドライブレコーダーを見る限り、相手方が右折を開始してから衝突するまで減速していないため、衝突直前までVさん車両に気が付いていないと考えられましたので、この点が著しい前方不注視にあたり、むしろVさんに有利に10%修正するべきと反論しました。

3.交渉の経過と交通事故紛争処理センターへの申立ての決断

上記のように、過失割合30:70を主張していた相手方保険会社に対して、私たちは、Vさんに不利に修正する修正要素はなく、逆に相手方の著しい過失でVさんに有利に10%すべき(これが認められると0:100になります)と主張しました。

これに対して、相手方は20:80までは認めたものの、それ以上は譲らないと主張したため、交渉で示談することは困難になりました。

そこで、裁判を提起することも考えましたが、裁判の場合には解決まで1年程度かかることもあり、Vさんとしては、できれば裁判は避けたいというご希望でした。

また、今回は、争点が過失割合と慰謝料の金額(相手方保険会社は裁判所基準の通院慰謝料の90%~95%までしか出せないと主張していましたが、これは単に裁判ではないから満額は出せないという主張で、保険会社としては通常の対応です。)のみで、複雑な争点はありませんでしたので、裁判より早期解決が望める交通事故紛争処理センターでの解決を目指すことにしました。

4.交通事故紛争処理センターの手続き

交通事故紛争処理センターでの手続きは、和解斡旋審査会という2段階になります(弁護士に依頼せずに被害者自身が申立てをする場合には、基本的に初回は被害者のみの相談面談が行われます。)。

⑴和解斡旋

和解斡旋の手続きでは、まずは、センター側の担当弁護士(嘱託弁護士)が、申立側と相手側の双方から事情を聞き、話し合いで和解ができないか協議することが一般的です。

この手続きは、裁判所の民事調停と似たような流れといえます。

そして、嘱託弁護士を交えた協議によって和解が成立すれば、その時点で示談成立となり、手続きが終了します。

協議だけでは和解が成立しない場合には、センターとして妥当と思われる内容で「斡旋案」を作成し、双方に提示することになります。

双方がこの斡旋案に合意すれば、この時点で示談が成立し、手続きが終了します。

多くの場合、相手方保険会社がセンターの斡旋案を尊重して受け入れますので、この段階で示談が成立することが大多数といえます。

この和解斡旋の手続きは、基本的に1回1時間とされており、1回で斡旋案を出すところまで行くケースもありますが、実務上の感覚では、だいたい2~3回で終わることが多い印象です。

1ヶ月程度間隔を空けて期日が入りますので、解決までに3~4ヶ月かかることが多いと思います。

ただ、この斡旋案には拘束力はありませんので、相手方保険会社も不満があれば断ることができます。もちろん、申立側が斡旋案を断ることもできます。

そして、斡旋が不調(不成立)となった場合には、申立側が審査会への移行を申し立てることができます。なお、この時点で紛争処理センターでの手続きを諦めて、審査会には進まずに裁判を起こすことも可能です。

⑵審査会

審査会の手続きでは、斡旋段階を担当した嘱託弁護士ではなく、別の3名の審査委員が事案を審査することになります。

審査会は、話し合いの場ではなく、紛争処理センターとして妥当と考える最終結果を「裁定」という形で提示する手続きですので、裁判の判決をもらうイメージです。

地域によって手続きに違いがありますが、東京本部の審査会は、まず双方から事情の聞き取りを行い、その日のうちに裁定を出しますので、基本的に1回で終わります。

そして、この裁定には片面的拘束力があり、相手方保険会社はこの裁定の内容に不満があっても断ることができません。

そのため、申立側が、審査会の裁定に同意すると、自動的に示談が成立します。

一方、申立側は断ることもできますが、断った場合もセンターでの手続きは終了になりますので、その後に裁判等の別の手続きで解決を目指すことになります。

⑶その他のルール

紛争処理センターの基本的な仕組みは上記のとおりですが、他にも独自の手続き、ルールがいくつかありますので、そのうち重要だと思われるものをいくつかご説明します。

①加害者が自動車(二輪車や原付自転車も含む)以外の場合は対象外

例えば、加害者が自転車などの場合には、対象外となり、申立てができません。

②一部の任意保険は対象外

一部の共済など、相手方が加入している任意保険によっては申立てができない場合があります。

③訴訟移行要請が出される場合がある

相手方保険会社が、紛争処理センターでの和解斡旋が適切ではないと考える場合、訴訟(裁判)に移行するよう申し立てることができます。

例えば、医学的な争いがあって高度な主張立証を必要とする事案などは、紛争処理センターの和解斡旋では限界がありますので、裁判所で争うべきといえます。

相手方から訴訟移行要請が出た場合には、センターの訴訟移行委員会でセンターでの手続きを継続するべきか否か判断がなされ、訴訟移行が妥当と判断された場合には、センターでの手続きは終了となってしまいます。

④双方過失物損事案の審査会移行には双方の同意が必要

双方に過失がある事故の物的損害の手続きでは、審査会に移行する際、双方が審査会の裁定に従うという同意をしなければ、審査会に移行できません。

そのため、双方に過失がある事故の物的損害については、審査会に進んだ場合、裁定の内容を双方が受け入れるしかありませんので、自動的に示談が成立することになります。

なお、同一事故でも人身損害は別扱いとなり、相手の同意がなくても人身損害だけを審査会に移行することは可能です。

その他、紛争処理センターでの手続きの詳細は、センターのホームページ(https://www.jcstad.or.jp/guidance/)もご参照ください。

5.本件の紛争処理センターでの手続き~審査会で10:90の裁定~

⑴和解斡旋の経過

今回の事例では、紛争処理センターでの和解斡旋の手続きでも、相手方はVさんに著しい過失があったとの主張にこだわり、ドライブレコーダーを提出して衝突直前のVさんの走行方法に問題があったと主張し続け、過失割合20:80から譲りませんでした。

一方、Vさんとしては、10:90であれば和解してもいいというお考えでしたので、相手方が10:90まで認めるのであれば、私たちは柔軟に対応するつもりでした。

しかし、相手方が態度を変えなかったため、私たちも、相手方のドライブレコーダーの映像を基に、Vさんの走行方法に問題はないことを指摘しつつ、むしろ相手方が右折開始から衝突まで減速していないことを主張して、相手方が前方を見ていなかったことは明らかなので、これが相手方の著しい過失に当たると基本過失割合から10%の修正を主張しました。

なお、相手方はこの前方不注視は基本過失割合に含まれる程度のものだ(著しい過失ではない)と反論していました。

そのため、斡旋担当の嘱託弁護士が、話し合いでの和解は難しいと判断して斡旋案を出すことになりました。

そして、その斡旋案は、過失割合10:90という内容でしたので、Vさんは応じることにしました。

しかし、相手方保険会社がこの斡旋案を断りましたので、審査会に進むことになりました。

⑵審査会の経過

Vさんは神奈川県在住でしたので、今回は紛争処理センターの東京本部に申立てをしていました。

東京本部の審査会では、基本的に申立側と相手方が入れ替わりで、それぞれ審査委員から聞き取りが行われますので、相手方がどのような主張をしたかは不明ですが、双方とも新しい主張や証拠は出しませんでしたので、おそらく斡旋段階までと同じくVさんの走行方法に問題があったと主張したものと思われます。

上でもご説明しましたが、東京本部の審査会は基本的に1回の手続きで裁定まで進みますので、そのまま裁定が出され、その内容は過失割合10:90が妥当というものでした。

また、慰謝料については裁判所基準の満額が認められました。

Vさんとしては、最低ラインと考えていた過失割合10:90が認められたため、この裁定に同意し、示談が成立しました。

6.まとめ

今回は、紛争処理センターでの手続きのご説明をしつつ、審査会の裁定で過失割合が10:90となったVさんの事例をご紹介しました。

Vさんの場合は、審査会まで進んだこともあり、申立てから示談成立までに5ヶ月程度かかりましたが、それでも裁判よりは早期に解決することができました。

どうしても裁判は時間がかかりますし、裁判をするというだけでも精神的に負担に感じる方もいらっしゃいますので、事案によっては、この紛争処理センターの手続きがとても有効な場合があります。

弁護士によって色々考え方の違いはあると思いますが、私たちの優誠法律事務所では、個々の事案に適した解決方法を検討してご提案したいと考えており、紛争処理センターでの手続きも積極的に行っています。

交通事故でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その3~

過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その4~

過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その5~

過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その6~

過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その7~

投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

裁判で車線変更時の交通事故の過失割合を修正できた事例

2024-04-28

今回のテーマは、車線変更の際の交通事故の過失割合です。

今回は、片側2車線の国道の第1車線を走行していた車が、第2車線に車線変更しようとした際に、第2車線を走行してきた車両と衝突した事例についてご紹介します。

過失割合の基本的なことは、当事務所のブログの記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~で説明してしますので、そちらもごご覧ください。

車線変更時の交通事故も、比較的よく発生する交通事故の類型ですので、当事務所でもよくご相談をお受けします。

ただ、今回ご紹介するUさんの事例は、少し特殊で、Uさんは第1車線から第2車線に車線変更しようとしたのですが、第2車線を走っていた相手方が、ちょうどそのタイミングで第1車線にはみ出してきて衝突してしまったという事例です。

しかし、相手方は、Uさんの車線にはみ出したことを認めず、Uさんに対して過失100%を認めるように迫ってくるなど、激しい争いになり、裁判所で判決が出るところまで至ってようやく解決しました。

今回は、交通事故の裁判の流れなどもご説明しますので、交通事故でお困りの方は参考にしていただけますと幸いです。

1.今回のご相談内容~車線変更時の交通事故~

今回の依頼者Uさんは、埼玉県在住で

・交通事故は片側2車線の国道上

・Uさんは第1車線を走行していた

・相手方は第2車線を走行していた

・道路がやや右に湾曲している

・Uさんが車線変更しようとしたタイミングで相手方が第2車線からはみ出してきて衝突

・Uさん車両の左前と相手方車両の右側面が衝突

・双方ドライブレコーダーはなし

・相手方に過失割合100:0を主張されている

・交通事故による怪我はなし

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故発生状況の図(車線変更時の事故)

上の図が本件の事故状況です。

Uさんは、この少し先の交差点で右折するつもりでしたので、第1車線から第2車線に車線変更するつもりでした。

Uさんは、サイドミラーで第2車線の後方を確認した際、後続車(相手方)が少し離れた位置にいましたので、第2車線に入れると思ってウインカーを出し、少し第2車線側にハンドルを切りました。

そうしたところ、相手方がかなりのスピードで走行していたようで、Uさんが相手方に気付いたときにはすぐ右隣にいて、Uさんの方にはみ出してきたため、そのまま衝突してしまいました。

Uさんとしては、右後方を確認した際には、相手方がかなり後方にいたことから、第2車線に入る余裕があると思ってハンドルを右に切りましたが、まだ第2車線に入る前のタイミングで衝突されてしまい、とても驚いたそうです。

車線変更時の事故の場合、基本的には車線変更しようとした側(Uさん側)の過失が大きくなります。

Uさんは、ご自身の保険会社からもそのような説明を受け、車線変更をしようとしていたことは事実でしたので、ご自身の過失が大きいと言われても仕方がないと考えていました。

しかし、相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は90(Uさん):10(相手方)が妥当だと主張してきました。さらに、Uさんが現場で100%賠償する約束をしたなどと主張して、できれば100:0で解決したいと言ってきました。

Uさんは、早期解決を希望しており、70:30くらいなら受け入れるつもりでしたが、さすがに相手方の主張に納得できず、ご自身の保険会社に相談したところ、弁護士費用特約で弁護士に依頼できることを案内され、私たちに依頼したいとのことでご相談にいらっしゃいました。

2.基本過失割合と交渉の経過~相手方が過失割合90:10を譲らず~

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所のブログで説明していますから、こちらもご覧ください。)

車線変更時の交通事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの153図によって、70(進路変更車):30(後続直進車)とされています。

相手方保険会社は、今回の交通事故合は、この基本過失割合から20%Uさんに不利に修正して90(Uさん):10(相手方)が妥当であると主張していました。

判例タイムズ153図
基本過失割合 Ⓐ30:Ⓑ70

今回の交通事故の場合、仮に一般的な車線変更時の交通事故と考えるとしても、基本過失割合からUさんに不利に修正するような理由はないように思えました。

そして、私たちは、そもそもUさんが車線変更をしようとしていたのは事実ですが、実際には第2車線に入る前のタイミングで相手方の方がはみ出してきて衝突した訳ですから、判例タイムズ153図を基本に考えるような事例ではないと考えました。

そこで、むしろ相手方の過失の方が大きいと主張することも考えましたが、Uさんが70:30でもいいから早期に解決して欲しいと希望されたため、相手方保険会社に70:30なら応じると伝えました。

しかし、相手方本人が100:0の主張をしていて、譲歩しても90:10と言っているとのことで、全く交渉になりませんでした。

そうしたところ、相手方から裁判を起こされてしまい、裁判所で争わざるを得なくなりました。

3.一般的な交通事故裁判の流れ

通常、裁判は、訴える側(原告といいます)が裁判所に訴状を提出することで提起されます。

裁判所は、訴状が提出されると、原告と第1回期日の予定を決め、相手方(被告といいます)に訴状と呼出状を送って裁判が起こされたことを伝え、裁判への出席と反論書面(被告が最初に提出する反論書面を答弁書といいます)の提出を求めます。

その後は、1ヶ月~1ヶ月半くらいに1回のペースで裁判の期日が入り、しばらくは交互に書面で反論し合う期日が続きます。

そして、双方の主張が出尽くした後、裁判所がそれまでの双方の主張を前提に和解を促すことが一般的です。

この和解案は、裁判所が判決を書く場合に予想される内容をある程度開示して内容を決めますので、多くの場合、双方が和解案に応じて和解が成立します。

しかし、どちらかが裁判所の和解案に応じない場合には、最終的に判決を出す必要がありますので、一度当事者たちを裁判所に呼んで直接話を聞く機会を設けることが一般的です(これを本人尋問といいます)。

当事務所の依頼者の方にも、裁判と聞くと、毎回ご自身が裁判所に行かないといけないと考える方が多いですが、実際には、弁護士に依頼していれば、ほとんど弁護士が代理人として対応しますので、本人尋問のとき以外は出席する必要はありません。

そして、多くの場合、本人尋問までに行かずに和解で終わりますから、ほとんどのケースで当事者が裁判所に出席することはなく終わることになります。

逆に、和解が成立しない場合は、本人尋問を経て判決が出されることになりますが、その判決に一方または双方か不満がある場合には、上位の裁判所(簡易裁判所なら地方裁判所、地方裁判所なら高等裁判所)に控訴して、判決が妥当かどうか判断を求めることになります。

4.裁判の経過~双方が過失0主張で争う~

Uさんの場合、上記のように、相手方から裁判を起こされましたが、相手方は裁判ではUさんが100%悪いと過失割合100:0を主張しました。

これに対し、私たちは相手方がUさん側の車線にはみ出して衝突していることから、Uさんがそのような相手方の動きを予測することは不可能で回避できなかったと主張し、Uさんの過失はない(過失0:100)という前提で反訴(訴え返すこと)しました。

裁判では、通常、相手方保険会社も弁護士に依頼しますので、弁護士同士で争うことになりますが、今回の相手方の弁護士はあまり事案や証拠を検討していなかったようで、双方の車両の損傷状況からUさんが車線変更してきて衝突したことは明らかだと主張していました。

しかし、それでは過失割合70:30の主張をしているようなものですから、Uさんの過失が100%であるという主張とは噛み合わないと反論しました。

また、車両の損害確認などを専門にしているアジャスターのレポートによると、相手方の車両の損傷は時計の針の10時~11時の方向から衝突されたと記載されており、Uさんの車両の損傷は5時の方向から衝突されたと記載されていました。

双方車両の損傷状況

このような双方の損傷状況を考えると、下の図のような衝突になり、Uさんの主張する事故状況と一致しますし、相手方の車両が真っ直ぐ第2車線を走行しているところにUさんが車線変更して衝突したという相手方の主張はあり得ないと分析できました。

双方車両の損傷状況から考えられる事故状況の図

一方、もし、相手方が主張するように、Uさんが第2車線に進入して衝突したのであれば、下の図のような事故状況になり、相手方車両に7~8時の方向の入力、Uさん車両に1~2時の方向からの入力となりますので、実際の双方の車両の損傷箇所と異なります。

相手主張の事故状況であった場合の図

そこで、私たちは双方の車両の損傷状況から、相手方が第1車線にはみ出して衝突したことは明らかで、Uさんに過失はないと主張しました。

その後、双方の主張が一段落した段階で、裁判官は、過失割合50:50で和解をしてはどうか?と和解を勧めました。

Uさんとしては、もともと70:30でも仕方ないと考えていたこともあり、50:50の和解案を受け入れたいと考えましたが、相手方が拒否したため、和解は成立しませんでした。

そのため、裁判官が判決を書くために、双方の話を直接聞く、本人尋問を行うことになりましたが、明らかに相手方は準備不足の様子で、この本人尋問でいくつか相手方の嘘を暴くことができ、完全に相手方の主張を崩すことができました。

5.判決~過失割合50:50~

本人尋問終了後、双方が最終的な主張をまとめる書面を提出し、裁判所が判決を出しました。

その判決内容は、相手方の主張していたUさんが第2車線に進入した際の事故という点を否定し、Uさんが主張していたとおり、相手方がUさん側に寄って行ったことで衝突したと判断するものでした。

しかし、衝突位置はUさん側の第1車線の中ではなくちょうどライン上の可能性もあるとのことで、お互い様という判断の50:50という内容でした。

相手方はかなり強硬でしたので、控訴すると思っていましたが、控訴してもこれ以上相手方に有利になることはないと判断したのか、控訴は断念しました。

Uさんも、相手方が控訴してくれば、こちらも控訴して争うつもりでしたが、相手方が控訴を断念したことで、判決を受け入れて早期に終わらせたいと希望し、判決が確定しました。

6.まとめ

今回の交通事故では、相手方が対応に酷く、Uさんの過失が100%などと主張していましたが、結果的に裁判で50:50という結果で終わることができました。

もともとUさんとしては、早期解決のために70:30でもいいと思っていたところ、相手方が強硬で裁判に巻き込まれてしまいましたが、しっかりご自身の主張をすることができ、相手方の主張を跳ね返すことができましたので、大変喜んでいただけました。

人生で裁判を経験することはあまりありませんから、色々と不安を感じる方も多いですが、弁護士に依頼していただければ、しっかりサポートできますので、お困りの方は是非ご相談ください。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

信号のない丁字路交差点での右折車同士の交通事故で過失割合を修正できた事例

2024-03-31

皆様、こんにちは。優誠法律事務所です。

今回は、信号のない丁字路交差点で右折車同士が衝突した交通事故の事例についてご紹介します。

今回の事例は、信号のない丁字路交差点で、直進路から右折していた自動車に、突き当り路(停止線あり)から右折しようとした自動車が衝突した交通事故(右折車同士の交通事故)で、双方の過失割合が問題になりました。

当事務所の公式ブログの駐車場内の交通事故についてご紹介した記事で、

●過失割合とは?
●基本過失割合とは?
●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

など、過失割合の基本的なことを解説していますので、是非こちらの記事過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。

今回ご紹介する事例は、交差点での右折車同士の交通事故という比較的珍しい類型ですので、同じような事例がどのように処理されているか調べようとしても、なかなか参考になるものが見つからないかもしれません。

そこで、同じような交通事故でお困りの方の参考になればと思い、ご紹介させていただきます。

1.今回の依頼者~信号のない丁字路交差点で右折車同士の車VS車の交通事故~

今回の依頼者Uさんは、北海道在住で

・交通事故は信号のない丁字路交差点で発生

・Uさんは直進路(丁字路の突き当りではない方の道路)から右折、相手方は突き当り路から直進路に出るために右折しようとしていた

・相手には一時停止があり、一時停止後に右折を開始したと主張

・Uさんが先に右折を開始したところ、右折が終わるくらいのタイミングで相手方が右折してきて衝突

・Uさんの車両の右側面に相手方の右前部が衝突した

・相手方に過失割合30:70を主張されている

・交通事故による怪我は頚椎捻挫

・治療期間は約6ヶ月間で、治療後に後遺障害14級9号が認定された

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

依頼者から見た交通事故現場の丁字路交差点の写真

上の写真が本件の交通事故の現場となった丁字路交差点をUさん側から見たものです(事故当日の写真ではありません。)。

Uさんは、この丁字路交差点で右折しようとしており、写真中央の右折レーンを進んで右折を始めました。

この時、Uさんからも、右折先の道路に相手方の車両がいることが分かりましたが、相手方に停止線があり、明らかにUさんの方が優先であったことや、相手方が減速している様子だったこともあり、ご自身が右折するまで待っていてくれるだろうと考えて、そのまま右折しました。

ところが、相手方は、なぜかUさんが右折を完了しそうになったくらいのタイミングで右折を始めてしまい、Uさんの車両の右側面に衝突してしまいました。

Uさんとしては、ご自身が先に右折しているにもかかわらず、そのタイミングで相手方が交差点内に進入しようとするなどとは予測できず、衝突の瞬間は何が起きたか分からなかったとのことでした。

この事故でUさんは頚椎捻挫の怪我を負ってしまい、症状固定後に後遺障害14級9号が認定されました。

相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は30(Uさん):70(相手方)と主張してきました。

Uさんとしては、ご自身が先に右折を開始し、既に右折が完了するくらいのタイミングになって、相手方が交差点に進入してきて側面に衝突されており、この状況では衝突を避けることができなかったため、ご自身に過失があると言われたことに不満がありました。

また、相手方から見ると、目の前で右折してきているUさんの車両にあえて向かって行って衝突しているような状況ですから、Uさんとしては、なぜそんなことになったのか理解できませんでした。

それにもかかわらず、相手方保険会社にご自身の過失割合が30%もあると主張されたことに納得できず、ご自身の保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことでご相談いただきました。

Uさんとしては、双方が動いていたときの事故であったため、過失割合を0:100にするのは難しいとお考えでしたが、それでもご自身の過失は10%くらいだろうとお考えでした。

2.基本過失割合と修正要素(判例タイムズ145図)

では、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、以前の記事で説明していますから、こちらもご覧ください。)

今回のような信号のない丁字路交差点での右折車同士の事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの145図によって、30(直進路右折車):70(突き当り路右折車)とされています。

判例タイムズ145図
基本過失割合 Ⓐ30:Ⓑ70

相手方保険会社は、今回の交通事故の過失割合は、この基本過失割合の30(Uさん):70(相手方)が妥当だと主張していました。

しかし、今回の事故は、双方が交差点内で出会い頭に衝突した訳ではありません。

Uさんが目の前を右折して来ているにもかかわらず、相手方がそのタイミングで交差点内に進入してUさんの車両の側面に衝突したという事故態様ですので、この基本過失割合が想定している状況とは、だいぶ異なるように思います。

そこで、私たちとしては、まずは、そもそも今回の交通事故は判例タイムズ145図が想定している状況とは異なり、この基本過失割合30:70を基に検討する事例ではないと主張することにしました。

その上で、Uさんとしては右折完了目前で急に相手方が出て来て側面に衝突されており、相手方がそのタイミングで交差点内に進入することを予測することは難しく、自車の側面に衝突されていて回避可能性も低いことから、Uさんに過失が認められるとしても10%程度であると主張しました。

また、別冊判例タイムズの145図では、以下のような直進路右折車(Uさん側)に有利に過失割合を修正する修正要素が認められています。

著しい過失:10%

重過失:20%

 【著しい過失】

著しい過失の例としては、脇見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等を通話のために使用していた場合、画像を注視したりしながらの運転、時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転等が挙げられています。

 【重過失】

 重過失の例としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労・病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合等が挙げられています。

そこで、仮に、今回の事故に判例タイムズ145図が適用される場合には、この修正要素を主張して基本過失割合からUさんに有利に修正するべきと主張する必要がありました。

そのため、私たちは、判例タイムズ145図が適用されると判断されてしまった場合に備えて、刑事記録(実況見分調書)を取り寄せて、相手方の著しい過失や重過失の主張ができないかも検討しました。

3.交渉の経緯~争点は145図適用の有無・修正要素の有無~

上記のように、別冊判例タイムズ145図の基本過失割合30:70を主張していた保険会社に対して、私たちは、

① 判例タイムズ145図は、主に右折車同士が出会い頭で衝突したような事故を想定しており、今回の事故のように、直進路右折車(Uさん)の右折完了間際に、突き当り路右折車(相手方)が右折を開始して衝突するような状況は想定しておらず、判例タイムズ145図は適用されない

② 判例タイムズ145図が適用されるとしても、相手方の前方不注視が著しく、ハンドル・ブレーキ操作も著しく不適切で、Uさんとしては衝突を回避できない状況であったため、基本過失割合から15~20%は修正するべき

と主張しました。

これに対して、当初、相手方保険会社は、

① 判例タイムズ145図は、出会い頭の事故のみを想定している訳ではなく、本件にも適用される

② 相手方の前方不注視やハンドル・ブレーキ操作の不適切は、基本過失割合に含まれる程度のもので、修正要素には該当しない

③ むしろ、相手方が一時停止していることから、(実際には修正を主張しないものの)相手方に有利に15%修正すべきくらいである

と主張し、基本過失割合の30:70以上は譲れないと回答してきました。

その後、何度か交渉を重ねましたが、相手方が全く態度を変えませんでした。

Uさんとしては、相手方がしっかり前を向いていれば、ご自身が目の前を右折して来ることを認識できた訳で、この事故はほとんど相手方の過失で発生したとお考えでしたので、過失割合30%はどうしても納得できませんでした。

そこで、私たちは、交通事故紛争処理センターに斡旋の申立てをすることにしました。

そのとき、裁判を起こすということも選択肢になりましたが、裁判は1年近くかかることが多く、今回は過失割合以外には大きな争点がありませんでしたので、紛争処理センターの方が早期解決を見込めるという判断で、紛争処理センターへの申立てを選択しました。

4.交通事故紛争処理センターで示談成立

今回の事例は、上記の経緯で交渉が決裂してしまい、紛争処理センターに申立てをしました。

私たちは、申立ての際に刑事記録(実況見分調書)を提出し、刑事記録上、相手方がUさんの車両に気が付いたのが、衝突の直前であると記録されていることを指摘しました。

そして、下の写真のように、相手方からは前を向いていれば交差点内に進入する前の時点で、Uさんが右折して来ることは認識できるはずなので、衝突直前までUさんに気が付いていないのは、前を見ていなかったことの裏付けになると主張しました。

相手方から見た本件交通事故現場の丁字路交差点の写真

さらに、相手方は、Uさんが接近してくる状況で右折を開始しており、Uさんの車両に当たりに行ったようなものだと指摘し、ハンドル操作等も著しく不適切で、基本過失に含まれる過失を大きく上回る過失があると主張しました。

相手方は、紛争処理センターでの和解協議でも、30%:70%の主張を変えませんでした。

その結果、紛争処理センターの嘱託弁護士(斡旋を担当する弁護士)が双方の意見を聞いて、斡旋案を出すことになりました。

そして、今回の紛争処理センターの斡旋案は、今回の事故は、相手方が右折しようとした際に、相手方から見て右側だけを確認して、右側から車両が来ていなかったことから、左側(Uさんが走行してきた方向)を全く確認せずに交差点内に進入したことが主な原因であると認められ、過失割合は15%(Uさん):85%(相手方)が妥当であるとの内容でした。

Uさんとしては、本来過失10:90を主張したいというお気持ちでしたので、15:85で示談するか、斡旋案を断って審査会(紛争処理センターの最終的な手続きで、斡旋段階とは別の審査委員3名がセンターとしての裁定を出す手続きです。この裁定は、被害者側は断って裁判に進むことは可能ですが、相手方保険会社は断ることができません。ただし、物的損害については、双方に過失がある事案の場合、双方とも断ることができません。)に進むか、悩まれたようでした。

その後、結局、Uさんは、早期解決のために15:85の斡旋案を受け入れる選択をすることにしました。

5.まとめ

今回の交通事故では、紛争処理センターの斡旋で過失割合が30%:70%から15%:85%となりました。

今回の事例でもそうでしたが、保険会社は、杓子定規に判例タイムズに当てはめて主張しようとすることが多い印象があります。

今回の場合、第三者である紛争処理センターの嘱託弁護士も、判例タイムズの基本過失割合で解決するような事例ではないと認めてくれましたが、本来、交通事故はそれぞれに事案ごとに個別に考慮すべき事情がありますので、杓子定規に判例タイムズに当てはめればよいというものでもありません。

そうは言っても、一般の方がこのような個別の事情を検討して、保険会社と過失割合の交渉するのは難しいと思いますので、お困りの方は一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

駐車場内の交通事故の過失割合を逆転させた事例(80:20⇒10:90)

2023-12-10

今回は、駐車場内の交通事故で過失割合を争い、相手方の主張から逆転させることができた事案をご紹介します。

現在、当事務所では、駐車場内の交通事故に関するお問い合わせを多くいただいております。

その多くは過失割合に関するお問い合わせですが、駐車場内における事故は非定型で特有性の強い事故が多いということを感じます。

今回も、駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

事故当時、依頼者Tさんは、Tさん車両を運転して、前方を走行していた相手車両に続いて、道路から駐車場内に進入しました。

その後、相手車両が通路の交差部分を左に曲がったため、Tさん車両も続いて通路の交差部分に進入したところ、突然、相手車両がTさん車両に向かって後退を開始しました。

危険を感じたTさんは、Tさん車両を停止させた上でクラクションを鳴らしました。

しかしながら、その後も相手車両は減速することなく後退を継続したことにより、Tさん車両に衝突してしまいました。

幸いにして、Tさんも相手方も怪我をしていませんでした。

ただ、Tさんは、相手方保険会社から、Tさんの過失割合が80%であるという主張をされており、これに納得できなかったことから、当事務所にご相談いただくことになりました。

Tさんは弁護士特約が利用することができ、弁護士費用による費用倒れの心配はありませんでしたので、ご相談後、ご依頼いただくことになりました。

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

事故が起きたのは、画像中央にある通路の交差部分になります。この写真は、下の図で見ると上部の方から交差部分を撮影したもので、Tさんはこの写真の奥側から手前側に向かって進行してきました。

2.基本過失割合は?

ご相談いただいた際、今回の交通事故の基本過失割合について検討しました。

(「基本過失割合とは?」については、以前、当事務所ブログの記事でご説明していますので、こちらもご覧ください。)

今回の事故は、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故ですので、一見すると別冊判例タイムズの336図が基本になりますが、別冊判例タイムズ336図の基本過失割合は80(通路進行車):20(駐車区画進入車)になっています。

相手方保険会社が提示していた過失割合も80%:20%であったため、相手方保険会社は、この別冊判例タイムズ336図の基本過失割合を根拠に主張していることが推察されました。

3.別冊判例タイムズ336図が適用されるか否か

しかしながら、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故であれば、必ず別冊判例タイムズ336図の80%:20%が適用される訳ではありません。

実際、別冊判例タイムズにも、通路進行車において、駐車区画進入車の駐車区画への進入動作を事前に認識することが客観的に困難であった場合は、本基準によらず、具体的な事実関係に即して個別的に過失相殺率を検討すべきであるとの記載がなされています。

Tさんからご依頼いただいた後、本件事故は別冊判例タイムズ336図が適用されるケースであるか否かを検討するため、交通事故が発生した駐車場を訪れて、事故現場の確認を行いました。

その結果、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されるべきではないとの心証を抱きました。

その後、相手方保険会社に対しては、資料等を引用した上で、概ね以下の主張を展開しました。

・通常、駐車区画に進入する際は、当該駐車区画の傍で停車した後、当該駐車区画への進入動作を開始すること。

・それにもかかわらず、相手車両は、かなり距離の離れた場所から駐車区画への進入動作を開始しており、Tさんが事前に認識することが客観的に困難であったこと。

・以上より、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されないこと。

その上で、衝突時にはTさん車両が停止していたこともあり、Tさんの過失割合は10%を上回らないと主張しました。

4.交渉の結果~過失割合10:90で解決~

その後、相手方保険会社は、私たちの主張を受け入れ、当初提示していた過失割合から70%過失を修正し、10%(Tさん):90%(相手方)で了承すると回答しました。

Tさんとしても、想定以上に有利な過失割合であったため、裁判にならずに示談が成立しました。

5.まとめ

今回のTさんの場合、結果的に80:20から10:90に過失割合を修正することができました。

このように大幅に過失割合を修正することができたのは、交通事故が発生した場所を訪れて事故現場の確認を行ったことにより、当方に有利な主張内容を説得的に構成できたためであると感じました。

過失割合の交渉をするにあたっては、機械的に別冊判例タイムズの基準を当てはめるのではなく、駐車場内における事故の特殊性を踏まえて柔軟に主張内容を構成することが肝要です。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

片賠と評価損請求で物損事故を解決できた事例

2023-09-17

こんにちは、優誠法律事務所です。

以前、以下の記事で「別冊判例タイムズ38号」をそのまま参照できない類型の事故についてご紹介しました。

今回も、別冊判例タイムズ38号記載の類型にそのまま当てはめることができないのではと思われる類型の事故について、以前もご紹介した「片賠」や、「評価損」という方法をあわせて解決できた事例の物損の解決についてご紹介いたします。

1.事案の概要~青信号と赤色点滅信号の丁字路交差点での事故~

本件の事故は信号のある丁字路交差点での自動車同士の事故で、ご相談者は優先道路を直進、加害者は丁字路突き当りを左折しようとしました。

これだけであればよくある事故なのですが、少し特殊なのは、ご相談者の対面信号が青色、加害者の対面信号が赤色点滅だったことです。

このような事故状況について、ご相談者は物損について加害者側保険会社から1(被害者):9(加害者)の過失割合での解決を迫られており、不安に思われたため弊所弁護士にご相談の上、ご依頼になりました。

2.過失割合についての検討

信号のある交差点において、一方の信号が青色であれば交差道路の信号は赤色であるのが通常で、この場合の過失割合は0:10が基準になります。

では、本件のように一方の信号が青色であるにも関わらず、交差道路の信号が赤色点滅の場合はどのように考えるべきでしょうか。

道交法上、赤色点滅信号は一時停止と同様の扱いがなされています。

これをそのまま適用すれば、本件の事故は、「丁字路における優先道路直進車と一時停止規制側進行車両の接触事故」として整理されます。

そうすると、別冊判例タイムズ142図に従い、1:9という過失割合になります。

判例タイムズ142図
基本過失割合Ⓐ10:Ⓑ90

したがって、加害者側保険会社の1:9の過失割合の主張は、一応は法的な根拠のあるものだったと言えます。

3.交渉経緯

しかし、ご相談者としては、目の前の青信号に従って進行しただけですので、釈然としません。

上記のとおり、通常は一方の信号が青色であれば交差道路の信号は赤色で、青色に従って進行した自動車に過失はありません。

したがって、当方からは、まず、こちらは目の前の青色信号に従って進行しただけであるから、9割よりもさらに加害者側の過失が加重されるべきである、という主張を行いました。

しかし、加害者側保険会社は、加害者の過失9割での解決に固執してきました。

そこで、当方からは、加害者の過失9割は認めるが、以前もご紹介した片側賠償(片賠)という方法で、0:9で解決できないかという交渉を行いました。

併せて、こちらの評価損も損害として認めていただきたいと主張しました。

自動車が事故にあった場合、修理をしたとしても自動車の価値が下がってしまうことがあります。

この下がってしまう価値を「評価損」と言います。

評価損の請求はハードルが高いケースが多く、裁判であっても、登録から数年以内であり、走行距離も短いといったケースでないと認めさせるのは難しいです。

その他、損傷部位が車両の骨格部か否か、ということも重視されます。

そのため、示談交渉時に保険会社が評価損を認めることは、あまりないと言ってよいと思います。

しかし、今回は、過失割合について双方の言い分に食い違いがあり、こちらの主張もある程度根拠がある(と思われる)事例でした。

また、被害車両自体も初度登録から1年経過していないものでした。

そこで、妥協点の提案として、片賠の話とともに、評価損の請求も行いました。

「片賠」については以下の記事もご覧ください。

4.交渉結果~評価損2割弱も含めた片賠で示談~

上記のような交渉を行ったところ、加害者側保険会社も0:9の片賠での示談を受け入れました。

また、こちらの請求額満額ではなかったものの、修理費の2割弱である10万円程度の評価損を損害額に加えることも認めました。

このように、今回の事例では、修理費について過失1:9で1割分を妥協することになりましたが、修理費の2割弱の評価損を加算させることができ、片賠で加害者側の修理費の1割を負担する必要もなくなりました。

もちろん、評価損は過失を補うものでなく、全く別の話ですが、結果的には、むしろ評価損なしで修理費だけで0:10で示談した場合よりも少し高い金額を得ることができましたので、今回の依頼者も納得され、円満に物損について示談することができました。

5.まとめ

今回は、物損について、0:9の片賠と評価損の請求という方法で解決できた事例についてご説明しました。

評価損が請求できるケースは限られますので、このような解決できる事例は限定的ではありますが、物損事故の解決について、一つの参考としていただければと思います。

優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

片賠とは?物損事故を片賠で解決できた事例

2023-05-28

こんにちは、優誠法律事務所です。

これまで公式ブログなどで何度かご説明してきたとおり、交通事故の際に過失割合が争点となった場合には、実務上「別冊判例タイムズ38号」を参照します(基本過失割合についてのご説明はこちらの記事をご覧ください→「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~」)。

この書籍には数百の事故類型がまとめられていますが、実際に発生する交通事故は多種多様なため、ぴったり当てはまらないこともあります。

今回は、そのような別冊判例タイムズ38号の類型に当てはまらない態様の事故について、「片賠(片側賠償)」と呼ばれる方法で解決できた事例について、「片賠」とは何かという点も併せてご紹介いたします。

1.事案の概要~変則交差点での交通事故~

本件の交通事故は自動車同士の事故ですが、変わった交差点で発生したものでなかなか言葉で説明することが難しいです。

文字だとわかりづらいので、以下で図示します。

事故発生状況図

Bさんの右折先にはポールが立っており、そのまま進むと逆走してしまうことになります。

どうやらBさんはそのことに右折後に気づいて、慌てて進路を変えたところ、Aさんに衝突してしまったようでした。

不幸中の幸いですが、Aさんと同乗の方にはお怪我はありませんでした。

Aさんは、事故後のBさんの対応にご不満があったことや、Bさん加入の保険が使用できないかもしれないという話があったこと(結果的に使用できましたが)、当初0:100での解決を希望されておりご自身加入の保険会社が示談代行で介入することが難しかったこと、Aさんが弁護士費用特約に加入されていたことなどから、当事務所にご相談いただき、ご依頼を受けることになりました。

2.相手損保の主張と「片賠」をご提案した理由

私たちはご依頼後、早速相手損保と交渉に入りました。

争点は過失割合です。

そうしたところ、相手損保からは、当初、別冊判例タイムズ38号の153図や137図に則った解決を提案されました。

153図や137図は以下のような類型です。

判例タイムズ153図
判例タイムズ153図
基本過失割合 30(Ⓐ):70(Ⓑ)
判例タイムズ137図
判例タイムズ137図
基本過失割合 20(Ⓐ):80(Ⓑ)

ご覧いただければわかる通り、153図はそもそも交差点ではない場所での交通事故を想定しており、本件とはかなり類型が異なります。

また、137図は交差点での交通事故についての類型ではありますが、先行のBさんの異常な挙動を反映させたものとは言えません。

したがって、当方からは、別冊判例タイムズ38号のこれらの類型に無理やり当てはめて解決するのではなく、あくまで個別の事情に基づいて解決すべきであると主張しました。

その上で、依頼者Aさんとのお打合せを行いました。

そうしたところ、Aさんとしても当該交差点はわかりにくい交差点であることは従前からご存じであり、何が何でも0:100でなければ示談に応じないというわけではないとのことでした。

弁護士としても、交差点内の双方進行中の事故であり、裁判になったとしても0:100の解決となるとは言い切れないことから、可能であれば示談で終わらせることが望ましいと思われました。

ただ、Aさんにはご自身加入の対物賠償保険や車両保険を使いたくない(保険の等級を下げたくない)というご希望がありました。

そこで、0:10ではないにせよ、こちらの希望を最大限主張する0:95という「片賠」を提案することになりました。

3.「片賠」とは?

交通事故の過失割合は、0:100や、50:50、30:70等、合計で100%となるのが通常であり、理論的にはそうなるべきですし、実際、裁判ではそうなります。

例えば、被害者:加害者が10:90の物損事故の場合、被害者は、自身の車両損害の9割を加害者に請求でき、加害者の車両損害の1割を負担することになります。

他方で、示談交渉の実務では、0:90等の合計100%にならない形での解決が時々あります。

被害者:加害者を0:90で解決した場合、被害者が自身の車両損害の9割を加害者に請求できるのは10:90の場合と同様ですが、0:90の場合は、被害者側は加害者の車両損害の1割を負担する必要がありません

このような当事者の片方だけが賠償する形での解決(もう一方が賠償しないため、過失割合の合計が100%になりません)を実務上「片賠(片側賠償)」と呼んでいます。

このような取扱いには理論的な裏付けがあるわけではなく、あくまで示談交渉上の妥協の産物と言えます。

片賠となれば、被害者は加害者の車両損害を負担する必要がありません。

したがって、被害者が自身の対物賠償保険を使わずに済みます

さらに加害者の責任割合が大きければ、自身の車両損害について自己負担分が出たとしても、被害者加入の車両保険も使用せずに修理をできることもあります

この点は片賠の大きなメリットと言えます。

4.交渉結果(0:95で解決!)

片賠には以上のようなメリットがあり、今回のAさんの事例では特にそのメリットが活かされると思われたため、弁護士からAさんに0:95の片賠で相手損保へ提示することを提案したところ、了承いただきましたので、その内容で引き続き交渉を行いました。

そうしたところ、相手損保からはいくつかの主張がなされましたが、交渉を重ねたところ、最終的には0:95の片賠での解決で合意できました。

5.まとめ

今回は、判例タイムズの基準にしっかりと当てはまらない事案について、0:95の片賠で解決できた事例についてご説明しました。

片賠には理論的裏付けがあるわけではなく、必ずその内容で解決できるというものでもないですが、実現できれば被害者に大きなメリットがある示談方法です。

物損事故の解決について、参考としていただければと思います。

優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

駐車場内の交通事故の過失割合を修正できた事例

2023-03-27

今回のテーマは、駐車場内の交通事故の過失割合です。

当事務所の公式ブログ(身近な法律問題を解説!~弁護士法人優誠法律事務所からの情報発信ブログ~)で過去に駐車場内の交通事故の事例をいくつかご紹介したこともあり、当事務所には駐車場内の交通事故に関するお問合せを数多くいただいております。

駐車場内の交通事故は、道路上の交通事故と比べると大怪我を負うケースは少ないですが、過失割合については、道路上の交通事故と同様、問題となることが多いという印象です。

今回も、駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

今回の依頼者Mさんは、神奈川県在住で

・交通事故はショッピングセンターの広い駐車場の中

・相手方に過失割合5:5を主張されている

・交通事故による怪我はなし

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

事故が起きたのは、画像中央にある通路の交差部分になります。

Mさんは、駐車場から出るため、出口に向かって駐車場内を進行していました。

そうしたところ、Mさんが走行していた通路と交差する右側の通路から、同じく出口に向かうため、右折しようとして出てきた相手方に衝突されてしまいました。

過失割合については、双方の保険会社同士で話し合いが行われていましたが、Mさんは20%(Mさん):80%(相手方)を希望していたものの、相手方保険会社からは50%:50%の主張がなされているとのことでした。

Mさんとしては、相手方が一時停止規制を無視して交差部分に進入したとの認識であったため、50%:50%という過失割合に納得することができず、当事務所にご相談されました。

幸い自動車保険には弁護士費用特約が付いていましたので、弁護士費用のご負担なく弁護士に依頼できる状態でした。

2.基本過失割合は?

ご相談いただいた際、まずは今回の交通事故の基本過失割合について検討しました。

(「基本過失割合とは?」については、以前の公式ブログの記事で説明していますので、こちらもご覧ください。)

今回の事故は、駐車場の通路を走行している車両同士の交通事故ですので、別冊判例タイムズの334図が基本になりますが、別冊判例タイムズ334図の基本過失割合は50:50になっています(別冊判例タイムズ334図の基本過失割合については以前の公式ブログの記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その5~」でご説明していますので、そちらもご覧ください。)。

判例タイムズ334図
基本過失割合50(A):50(B)

一方、相手方保険会社が提示していた過失割合も50%:50%であったため、相手方保険会社は、この別冊判例タイムズ334図の基本過失割合を根拠に主張していることが推察されました。

3.基本過失割合からの修正要素

しかしながら、別冊判例タイムズ334図の50%:50%は、あくまでも基本的な過失割合であるため、修正要素がある場合にはその数値が増減することになります(別冊判例タイムズ334図の修正要素については以前の記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その5~」でご説明していますので、そちらもご覧ください。)。

Mさんからご依頼いただいた後、どのような修正要素があるか検討するため、交通事故が発生した駐車場を訪れて、事故現場の確認を行いました。

そうしたところ、下の写真のとおり、相手方が走行してきた通路には、「止まれ」との路面標示が描かれていたことに加えて、「合流注意」と記載された看板も置かれていたことが判明しました。

このことを踏まえ、相手方保険会社に対しては、以下の修正要素が存在することを主張しました。

・Mさんは、丁字路の直線路を直進していたこと

・相手方は、「止まれ」との路面標示があるにもかかわらず、これに従わなかったこと

・それに加えて、「合流注意」との看板が置かれて注意喚起もなされていたことから、相手方には著しい過失も認められること

その上で、Mさんの過失割合は20%を上回らないと主張しました。

4.交渉の結果~過失割合20:80で解決~

その後、相手方保険会社は、私たちの主張を受け入れ、基本過失割合から30%過失を修正し、20%(Mさん):80%(相手方)で了承すると回答しました。

Mさんとしても、当初の希望通りの過失割合であったため、裁判にならずに示談が成立しました。

5.まとめ

今回のMさんの場合、結果的に50:50から20:80に過失割合を修正することができました。

このように大幅に過失割合を修正することができたのは、交通事故が発生した場所を訪れて事故現場の確認を行ったことにより、当方に有利な主張内容を構成することができたためであると感じました。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

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