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交通事故でむち打ち被害!後遺症が残った時の慰謝料請求ポイント

2025-09-07

交通事故に遭って怪我をした被害者の多くが、むち打ち(むちうち)の症状を負っています。

むち打ちは、レントゲンやMRIでは異常が見つかりにくいことも多いですが、その症状や後遺症が深刻なケースもあります。

また、MRIなどで自覚症状の客観的裏付けとなる所見が得られることが少ないため、加害者の保険会社が早期に治療費を打ち切ることもあり、適切な補償(慰謝料など)を受け取るためには、正しい知識と手続きが不可欠です。

この記事では、むち打ちによる後遺症が残ってしまった場合に、どのように慰謝料を請求すれば良いのか、そのポイントを詳しく解説します。

今回の記事が、むち打ちの被害に遭われた方の助けになれば幸いです。

1.後遺障害認定と等級別の慰謝料・逸失利益

交通事故によるむち打ちで症状が長引き、後遺症として残ってしまった場合、適切な慰謝料や逸失利益を受け取るためには「後遺障害認定」を受けることが非常に重要になります。

後遺障害認定とは、交通事故によって負ってしまった症状が、これ以上治療しても改善の見込みがないと判断された場合に、その症状を「後遺障害」として認定する制度です。

この認定を受けることで、精神的苦痛に対する慰謝料(後遺障害慰謝料)や、後遺障害によって将来得られるはずだった収入の減少分(逸失利益)を請求できるようになります。

後遺障害には、その症状の重さによって1級から14級までの等級が定められており、それぞれの等級によって慰謝料の金額や逸失利益の算定方法が異なります。

むち打ちの場合、一般的には14級9号が認定されるケースが多いですが、症状によっては上位の12級13号の等級が認定されることもあります。

なお、症状が残っていれば必ず後遺障害等級が認定されるという訳ではなく、非該当と判断されるケースも多いです。

後遺障害認定を受けるためには、医師による適切な診断書やカルテ、検査画像などの医学的な証拠を揃えることが不可欠です。

また、医師に適切な診断書等を作成してもらうためには、治療期間中に自覚症状を具体的に、かつ、継続的に伝えることも重要になります。

後遺障害の申請手続きは複雑で、適切な証拠を揃えるためには専門的な知識が必要となるため、交通事故に詳しい弁護士に相談することを強くお勧めします。

弁護士は専門家として、適切なサポートと助言を行い、後遺障害申請の手続きだけでなく、示談交渉や訴訟においても、被害者が適切な賠償を受けられるよう尽力します。

2.後遺障害申請・認定の流れと症状固定のタイミング

後遺障害の申請・認定は、治療の経過と密接に関わっています。

ここでは、一般的な後遺障害申請・認定の流れと、「症状固定」という重要なタイミングについて解説します。

⑴ 治療の継続と症状の経過観察

交通事故後、まずは医療機関で適切な治療を受け、症状の改善に努めます。

この期間中は、定期的に医師の診察を受け、症状の変化や痛みの状態などを具体的に伝えることが重要です。

治療経過の記録は、後遺障害申請の際に重要な証拠となります。

また、症状によって整形外科でリハビリや投薬治療が行われますが、整形外科だけでなく、必要に応じて脳神経外科やペインクリニックの受診を検討すべき場合もあります。

病院での治療費は、通常、加害者側の任意保険会社が負担しますが(これを「一括対応」といいます)、保険会社が対応してくれない場合には、健康保険の利用も可能です。

⑵ 症状固定の判断

一定期間治療を継続した後、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断する時点を「症状固定」と言います(症状固定と判断された時点までが交通事故の賠償範囲となりますので、治療費や慰謝料の支払いはこの時点までとなります。)。

この症状固定の判断は、後遺障害申請において非常に重要なタイミングです。

症状固定と判断された時点で、残ってしまった痛み・しびれなどの症状が「後遺障害」として評価される対象となります。

むち打ちの場合、症状固定の時期には個人差がありますが、一般的には事故から6ヶ月程度が目安とされています。

しかし、改善が見込めるのであれば、無理に症状固定とせず、症状が改善するまで治療を続けるという判断もあり得ます。

医師と十分に話し合い、ご自身の症状を考慮して症状固定のタイミングを判断してもらうようにしましょう。

⑶ 後遺障害診断書の作成

症状固定後、医師に「後遺障害診断書」を作成してもらいます。

この診断書は、後遺障害の有無や等級を判断する上で最も重要な書類となります。

後遺障害診断書には、自覚症状、他覚所見(神経学的所見、画像所見など)、今後の緩解の見通しなどが詳細に記載されます。

医師には、ご自身の症状を正確に伝え、具体的な記載をお願いすることが重要です。

特に、神経症状の検査結果や治療経過が詳細に記されていることが望ましいです。

⑷ 後遺障害の申請手続き

後遺障害診断書が作成されたら、いよいよ後遺障害の申請を行います。

申請方法は大きく分けて以下の2種類があります。

  • 事前認定(加害者側の保険会社による申請): 加害者側の任意保険会社が、被害者に代わって自賠責保険に申請を行う方法です。手間はかかりませんが、保険会社が主体となるため、被害者にとって不利な認定になる可能性もゼロではありません。保険会社からの連絡や示談交渉は、この認定後に本格化します。
  • 被害者請求(被害者側による申請):被害者自身や代理人の弁護士が、自賠責保険に直接申請を行う方法です。必要な書類を全て被害者側で集める必要がありますが、ご自身で有利な証拠を提出できるため、より適切な認定を受けられる可能性が高まります。弁護士に依頼すれば、書類収集や申請手続きのサポートを受けられます。

⑸ 損害保険料率算出機構による審査

自賠責保険に提出された書類は、「損害保険料率算出機構」に送られ、専門家による審査が行われます。

審査では、提出された書類に基づき、場合によっては医療機関に医療照会を行うなどして、残存する症状が後遺障害に該当するか、該当するとして何級に相当するかを判断します。

機構は中立な立場で、提出された医学的資料から客観的に判断を行います。

⑹ 後遺障害等級の認定

審査の結果、後遺障害に該当すると判断されれば、後遺障害等級が認定されます。

認定された等級は、書面で被害者に通知されます。

もし、認定された等級に不服がある場合は、「異議申立て」を行うことも可能です。

そして、この後遺障害申請の結果通知を受けた後、加害者側の任意保険会社との本格的な示談交渉に入ります。

賠償金の計算もこの後遺障害等級を基に行われます。

この一連の流れの中で、特に重要なのが「症状固定のタイミング」と「後遺障害診断書の記載内容」です。

適切な後遺障害認定を受けるためには、これらの段階で慎重に対応し、必要であれば専門家である弁護士の助言を仰ぐことが賢明です。

3.等級(14級・12級)別の慰謝料金額と判例

後遺障害等級は、交通事故による精神的苦痛を金銭的に評価する際の重要な基準となります。

ここでは、むち打ちで認定される可能性のある主な等級(14級、12級)について、それぞれの慰謝料の目安と、関連する判例の傾向を解説します。

⑴ 後遺障害慰謝料の算定基準

後遺障害慰謝料には、主に以下の3つの算定基準があります。

  • 自賠責保険基準:自賠責保険が定める最低限の基準です。他の基準より低額ですが、被害者側に過失がある場合でも、7割未満であれば減額されることなく、被害者が全額を受け取れます。過失が7割以上になると、重過失減額が適用されます。
  • 任意保険基準:各任意保険会社が独自に定めている基準です。自賠責基準よりは高額になることが多いですが、保険会社によって金額に差があります。保険会社からの提示額は、この基準に基づいていることが多いです。
  • 弁護士基準(裁判基準):過去の裁判例に基づいて算定される基準で、最も高額になる傾向があります。弁護士が交渉する際や、裁判になった場合に適用される基準です。適正な賠償金を受け取るには、この基準を目指すことが重要です。

【後遺障害等級別の慰謝料目安(弁護士基準)】

以下に示す慰謝料額は、弁護士基準の目安です。
自賠責保険基準や任意保険基準では、これよりも低額になることが多い点にご留意ください。

後遺障害14級9号(局部に神経症状を残すもの)

  • 慰謝料目安:約110万円
  • 特徴:むち打ちでは多くの場合、この等級が認定されます。神経症状が残存していることが要件となり、客観的な画像所見などがない場合でも、医学的に説明がつく場合に認定されます。例えば、頚部や肩の痛み、しびれなどが断続的に続くケースなどが該当します。頚椎捻挫、腰椎捻挫といった診断名が多く、外傷性頚部症候群もこれに該当します。
  • 判例の傾向:14級9号の認定には、自覚症状の一貫性、治療経過、神経学的所見(例えば、ジャクソンテスト、スパーリングテストの陽性反応など)や画像所見(椎間板の変性など)などが考慮されます。明確な他覚所見がなくても、一貫した自覚症状と治療の継続性が認められれば認定される可能性があります。通院期間や通院頻度も重要な要素となります。

後遺障害12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

  • 慰謝料目安:約290万円
  • 特徴:14級9号よりも症状が重く、神経症状が「頑固」に残存していると認められる場合に認定されます。14級9号と異なり、画像所見や神経学的所見など、客観的な医学的所見による裏付けが求められます。
  • 判例の傾向:12級13号の認定には、MRIやCTなどの画像診断で神経根の圧迫や損傷が明確に確認できること、神経伝導速度検査(NCV)や針筋電図(EMG)などの検査で神経症状の裏付けがあること、あるいは神経学的な所見(筋力低下、反射異常、感覚障害など)が明確であることが重視されます。これらの客観的な証拠が不足している場合、12級の認定は極めて困難になります。

⑵ 判例から見る慰謝料額の傾向

慰謝料の金額は、上記目安をベースに、個別の事案によって増減することがあります。
例えば、以下のような要素が考慮されます。

  • 治療期間と内容:長期間の治療や、手術などの侵襲的な治療を受けた場合は、慰謝料が増額される可能性があります。
  • 症状の重篤性:痛みの程度や日常生活への影響が大きいほど、慰謝料は高額になる傾向があります。
  • 就労への影響:後遺障害によって仕事に大きな支障が出た場合、逸失利益とは別に慰謝料が増額されることがあります。
  • 過失割合:被害者にも過失がある場合、その過失割合に応じて慰謝料が減額されます。
  • 増額事由の有無:ひき逃げや飲酒運転など、加害者側に問題が大きい場合などは、慰謝料が通常よりも増額される傾向があります。

⑶ 慰謝料の種類と違い(通院・入院・後遺障害)

交通事故で請求できる慰謝料には、次の3種類があります。

入通院慰謝料(傷害慰謝料):治療のために通院・入院を強いられた精神的苦痛に対する補償

後遺障害慰謝料:治療後も症状が残った場合の精神的苦痛への補償

死亡事故慰謝料:被害者が亡くなった場合に支払われる慰謝料

これらの慰謝料は、治療期間や後遺障害の等級に応じて大きく異なります。

重要なのは、裁判所基準の慰謝料もあくまで目安・相場であり、個別の事案によって判断が異なるということです。

特に、高額な慰謝料を請求するためには、弁護士に依頼し、適切な証拠を揃え、交渉を進めることが非常に重要になります。

4.後遺症が残った場合の逸失利益の請求方法

後遺障害が残ってしまった場合、精神的苦痛に対する慰謝料だけでなく、「逸失利益」も請求することができます。

逸失利益とは、後遺障害によって、将来得られるはずだった収入が減少したことに対する補償のことです。

むち打ちの後遺症によって、仕事に支障が出たり、以前のように働けなくなったりした場合に重要となります。

⑴ 逸失利益の計算方法

逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

  • 基礎収入
    • 原則:事故前年の年収を基礎とします。源泉徴収票や確定申告書などで証明します。
    • 個人事業主:原則としては、事故前年の確定申告の所得額を基礎として算定されます。
    • 主婦・学生など:収入がない場合でも、賃金センサス(厚生労働省が発表する賃金に関する統計データ)の平均賃金を基礎収入とすることができます。主婦の場合、女性の全年齢平均賃金が用いられることが多いです。学生の場合、卒業後の就労状況を考慮して算定されます。休業損害の計算にもこの基礎収入の考え方が適用されます。
  • 労働能力喪失率
    後遺障害によって、どれだけ労働能力が失われたかを示す割合です。それぞれの後遺障害等級に応じて設定されます。むち打ちで認定される可能性のある等級の目安は以下の通りです。
    後遺障害14級9号:5%程度
    後遺障害12級13号:14%程度
    ※これはあくまで目安であり、実際の職業や業務内容、残存する症状が仕事に与える影響などを総合的に考慮して判断されることもあります。減収の実態を客観的に示すことも重要です。
  • 労働能力喪失期間
    後遺障害によって労働能力が喪失する期間です。原則として、症状固定時から67歳までの期間とされます。ただし、むち打ちによる後遺障害の場合、症状の経過や年齢によって、喪失期間が限定されるケースもあります。例えば、14級9号の場合、症状の継続期間が短いと判断され、5年間程度に限定されることが多いです。
  • ライプニッツ係数
    将来の収入減少分を現在の一括払いに換算するための係数です。将来受け取るはずだった金銭を前倒しで受け取るため、その期間の利息分を割り引くためのものです。労働能力喪失期間に応じて係数が決まっています。

⑵ 逸失利益請求のポイント

  • 正確な基礎収入の証明
    事故前年の収入を証明する書類を確実に準備しましょう。
    転職したばかりの場合や、個人事業主の場合は、複数年の収入実績を示すことでより正確な基礎収入を算定できます。
  • 労働能力喪失率の適正な主張
    労働能力喪失率は、等級によって目安はありますが、個々のケースで実際の労働への影響を具体的に主張することが重要です。
    医師の診断書や、仕事内容の詳細、実際に支障が出ている業務内容などを具体的に説明できるように準備しましょう。
  • 労働能力喪失期間の交渉
    むちうちのケースでは、将来にわたる症状の継続性について争われることがあります。
    医師の意見書や治療の継続状況、症状の一貫性などを示すことで、より長い期間の喪失期間を主張できる可能性があります。
  • 弁護士への相談
    逸失利益の計算は複雑であり、保険会社との交渉においても専門知識が不可欠です。
    特に、将来の収入減少をどのように評価するかは、個別の事情によって大きく異なります。
    弁護士に相談することで、適正な逸失利益の算定と、有利な交渉を進めることが可能になります。
    弁護士費用は着手金や報酬金などがありますが、多くの弁護士事務所で無料相談を行っており、弁護士費用特約がある場合は、自己負担なく依頼できることも多いです。

5.被害者請求による異議申立てで14級9号が認定された頚椎捻挫の事例

さて、ここからは当事務所にご依頼いただいた依頼者様の具体的な事例をご紹介します。

⑴ 事案の内容~事前認定で後遺障害を申請するも非該当~

Hさんは、地元の北海道で自動車を運転中、信号待ちで停車している際に、後方から走行してきた後続車に追突される事故に遭いました。

加害者は、よそ見をしていて衝突の直前まで赤信号に気が付いておらず、かなりのスピードで追突したため、Hさんの車両の後部は大きく損傷しました。

この交通事故で、Hさんはむち打ち(頚椎捻挫)の怪我を負い、整形外科と整骨院で治療をしていましたが、事故から6ヶ月で加害者側保険会社が治療費を打ち切ったため、主治医もそのタイミングで症状固定の診断をしました。

しかし、その時点でも首の痛みや手のしびれなどの症状が残っていました。

そのため、Hさんは、加害者側保険会社の説明を受けて、主治医に後遺障害診断書を作成してもらった上で、そのまま保険会社に任せて事前認定で後遺障害の申請をしました。

ところが、非該当の結果となり、それを前提に加害者側保険会社から示談金として約120万円を提示されました。

これに納得できなかったHさんは、インターネットで検索して、当ホームページの異議申立てで後遺障害等級が認定された事案の記事をご覧になったとのことで、当事務所にご相談のご連絡をいただきました。

⑵ 異議申立てで14級9号を獲得

Hさんからご依頼を受け、担当弁護士は、主治医にカルテ開示の依頼や医療照会を行って、Hさんの治療状況や症状経過に関する証拠を収集し、Hさんからも事故後からの症状の推移や残存している痛みやしびれの症状などについて聞き取りを行いました。

そして、自賠責保険に対して被害者請求で異議申立てをしました。

その結果、異議が認められ、頚椎捻挫について14級9号が認定されました。

⑶ 保険会社と裁判所基準で示談交渉

後遺障害等級の認定後は、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、逸失利益などを計算して、加害者側保険会社と示談交渉を行いました。

Hさんの症状固定までの治療期間は約6ヶ月でしたので、裁判所基準で入通院慰謝料は約89万円、後遺障害慰謝料は14級の110万円を請求しました。

逸失利益については、Hさんが専業主婦でしたので、平均賃金(賃金センサス)を基礎収入として、労働能力喪失率5%、労働能力喪失期間5年間の計算で、約91万円を請求しました。

そして、交渉の結果、通院交通費や家事従事者の休業損害なども加え、総額で約420万円(治療費を除く)での示談となりました。

この示談金約420万円のうち、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計約200万円は、後遺障害等級が認定されていなければ受け取ることができなかったものになります。

また、入通院慰謝料や休業損害などの後遺障害以外の部分についても、当事務所へのご依頼前に保険会社が提示していた金額は約120万円でしたので、弁護士が裁判所基準で交渉したことによって100万円ほど増額できたことになります。

このように、Hさんの事例は、後遺障害等級の認定と慰謝料を裁判所基準で交渉することで、最終的な示談金を大きく増額させることができました。

6.まとめ

むち打ちは、一見軽微に見えても、後遺症が残ると日常生活や仕事に大きな影響を与える可能性があります。

そして、適切な慰謝料や逸失利益を受け取るためには、適切な後遺障害認定を受ける必要があります。

そのためには、医師に治療段階から症状を正確に伝え、医師との連携を密にし、適切な書類を準備することが不可欠です。

また、交通事故の被害に遭い、むち打ちによる後遺症で悩まれている方は、決して一人で抱え込まず、交通事故問題に強い弁護士に早めに相談することをお勧めします。

弁護士は、後遺障害認定のサポートから保険会社との交渉、そして万が一の訴訟まで、あなたの権利を守るために最善を尽します。

結果的に、損害賠償額についても、弁護士が間に入ることで適正な金額(裁判所基準)での解決が期待できます。

当事務所では、交通事故のご相談を無料でお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

むち打ち慰謝料が低くなる理由と保険会社との交渉術まとめ

2025-08-03

交通事故でむちうち(頚椎捻挫・腰椎捻挫)と診断され、適切な治療を受けているにもかかわらず、治療途中で保険会社から治療の打切りを打診されたり、低い慰謝料が提示される場合があります。

むち打ちの慰謝料の計算は、その症状や治療期間、通院頻度などによって大きく変動します。

また、保険会社とどのように交渉するかという点も慰謝料の金額に影響を与える重要な要素です。

そこで、今回は、むち打ちの慰謝料が相場より低くなりがちな理由を解き明かし、さらに保険会社からの治療打切り打診への対応策、慰謝料や治療費の減額リスクを回避する方法、保険会社に治療・通院期間の延長を認めさせるための交渉術などについて詳しく解説します。

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1.治療打切りや減額への対処法と治療期間延長のコツ

交通事故によるむち打ち治療において、最も多くの被害者の方が直面するのが、保険会社からの治療打ち切り打診です。

保険会社は、治療が一定期間に達すると「症状固定」と判断し、治療費の支払いを打ち切ろうとすることがあります。

保険会社としては、早期に治療費を打ち切ることで治療費の支出を抑えることができるというメリットがある上に、通院慰謝料も低額で抑えることができます。

これは、通院慰謝料が治療期間や通院回数によって算定されることから、早めに治療費を打ち切って治療期間を短くできれば、その分慰謝料の支払いも少なくすることができるためです。

ですから、保険会社にとっては、賠償金を少なくするためには治療費の打切りは早ければ早い方が良いということにはなります。

逆に、被害者にとっては、症状が改善していないにもかかわらず治療を打ち切られてしまうと、後遺症として症状が残り、その後の治療費が自己負担となってしまいます。

さらに、慰謝料の算定期間も短くなってしまうため、結果的に受け取れる慰謝料が、一般的な期間の通院をした場合と比べて大幅に減額される可能性があります。

被害者側が適切な補償を受けるためには、このような場面でも冷静に対処し、必要な治療期間の治療費を確保することが重要となります。

また、治療終了後に保険会社から提示される入通院慰謝料は、入院・通院日数も考慮して算定されるため、通院頻度が少ないと同じ期間通院した場合でも減額される可能性がありますので、適切な通院頻度で通院することも重要となります。

以下では、治療費打切りの打診があった場合の基本的な考え方と、それにどう対処していくべきか、また治療期間の延長を認めさせるための具体的な方法・流れについて解説していきます。

2.保険会社からの治療打切り打診への対応策

保険会社から治療の打切りを打診された場合、まず焦らずにその理由を確認することが重要です。

一般的には、診断書の内容や通院頻度などを基に、任意保険の保険会社として「これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない」と判断した場合などに打診されます。

特に、事故態様が軽微な場合は、保険会社が事故の賠償としてはこれ以上払えないと判断してしまい、早期に打切りを打診されることが多いです。

しかし、まだ症状が残っている、または、まだ改善の余地があると感じる場合は、安易に打切りを受け入れてはいけません。以下の対応策を参考に、適切な治療継続を目指しましょう。

⑴ 医師との綿密な連携

担当医には、診察のたびに現在の症状や改善の具合などを具体的に説明しておきましょう。

そうすることによって、診断書に「治療の継続が必要」といった内容を記載してもらいやすくなります。

また、保険会社が医師に対して医療照会をすることもありますが、基本的に事前に被害者に対して医療照会をすることを予告してきますので、予告された場合には、予め医師に保険会社から医療照会があることを知らせて、治療を継続して症状を改善させたいという希望をしっかり伝え、回答書や意見書に「症状固定には至っていない」ことやまだ治療の必要性があることを記載してもらいやすくしておきましょう。

医師の医学的見解は、保険会社との交渉において最も重要な証拠となります。

加害者側の保険会社からの連絡があった際も、医師から説明されている内容・治療の見込みなどの医師の意見を伝えることも大切です。

⑵ 通院頻度の見直し

むち打ちの治療は継続が重要ですが、あまりにも通院頻度が少ないと、保険会社に「治療の必要性がない」と判断されることがあります。

また、治療途中で急に通院頻度が少なくなると、改善したと解釈される場合があります。

適切な通院頻度を医師と相談し、維持するようにしましょう。

⑶ 症状の詳細な記録

毎日の症状の変化や、日常生活での支障などを細かく記録しておくことで、治療の必要性を具体的に説明できます。

これは、後に損害賠償の示談交渉が決裂してしまって裁判になった際、加害者側に治療期間の妥当性などを争われることもありますので、これに反論する場面でも有効です。

特に、主婦の方は、家事に支障があったことに対して家事従事者としての休業損害を請求できますが、これについても、どの時期にどのような家事にどの程度の支障があったかという点は重要になりますので、記録を残しておくと良いでしょう。

⑷ 自賠責へ被害者請求

被害者や医師が治療の必要性を訴えているにもかかわらず、保険会社が一方的に治療打切りを決定し、強行することもあります。

そのような場合には、一旦打切り後の治療費を立て替えた上で、自賠責保険に被害者請求をして打切り後の治療費を回収することも可能です。

ただ、自賠責保険は120万円が上限になりますので、枠が残っていない場合には自賠責保険には請求できません。

⑸ 弁護士への相談

保険会社との交渉が難航する場合や、専門知識が必要となる場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、あなたの代理人として保険会社と交渉し、適切な治療期間の治療費や慰謝料を獲得するためのサポートをしてくれます。

弁護士費用特約が利用できる場合には、弁護士費用の心配もありませんから、積極的に依頼することを検討しましょう。

法律事務所によっては無料相談を行っている事務所もあり、全国から電話やメールで相談できる事務所もあります。

3.慰謝料や治療費の減額リスクを回避する方法

むち打ちの慰謝料や治療費が不当に減額されるリスクを回避するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

⑴ 適切な医療機関での受診と継続的な治療

事故後すぐに医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な治療を継続することが重要です。

自己判断で治療を中断したり、通院を怠ったりすると、治療の必要性が低いと判断され、早期に治療費を打ち切られたり、通院頻度が低いという理由で慰謝料が減額される可能性があります。

MRIの設備がない整形外科の場合、大きな病院を紹介されて検査を受ける場合もありますが、そのように新たな医療機関を受診する場合には、事前に保険会社に連絡しておく必要があります。

また、整形外科以外にも、接骨院や整骨院での治療費も検討してもらえることもありますが、医師の同意を得ておくことが大切です。

⑵ 診断書の正確な記載

診断書には、症状の内容、治療期間、今後の見込み、症状固定の目安などが正確に記載されていることが重要です。

特に、痛みや痺れなどの自覚症状は、できるだけ具体的に医師に伝え、診断書に反映してもらいましょう。

医師が作成するカルテも裁判になった場合には重要な証拠になります。

⑶ 後遺障害診断の検討

治療を続けても症状が改善しない場合、後遺障害に該当する可能性があります。

後遺障害と認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになり、受け取れる金額が大幅に増える可能性があります。

後遺障害の申請は、自賠責保険に対する請求となりますが、加害者側保険会社に任せて申請してもらう「事前認定」と被害者側で申請する「被害者請求」の方法があります。

基本的に、加害者側保険会社が後遺障害等級認定のために尽力してくれることは期待できませんので、被害者請求の方が望ましいですが、後遺障害の種類や等級は専門的な知識が必要なため、弁護士に相談しながら手続きを進めるのが賢明です。

⑷ 交通事故を得意とする弁護士への依頼

保険会社は営利企業であり、できるだけ支払う金額を抑えようとします。

弁護士は、法律の専門家としてあなたの正当な権利を主張し、過去の裁判例(判例)に基づいて適切な慰謝料額を算定しますので、被害者本人が交渉するよりも、保険会社との交渉を有利に進めることができます。

弁護士費用特約に加入している場合は、自己負担なく弁護士に依頼できるケースが多いです。

⑸ 示談交渉の知識を持つ

示談交渉は、一度成立すると原則としてやり直しができません。

提示された慰謝料の金額に納得できない場合は、安易に示談に応じず、内容を十分に検討し、ご自身のお怪我についていくらくらいが適切な金額か弁護士に相談するようにしましょう(例えば、むち打ちで治療期間が3ヶ月の場合、裁判所基準では慰謝料が53万円程度になります。)。

過失割合も慰謝料に影響する重要な要素ですので、安易に保険会社の提示を受け入れずに、妥当な過失割合か調べてみると良いでしょう。

4.治療・通院期間の延長を勝ち取るための交渉術

むち打ちの慰謝料は、治療・通院期間の長さに大きく影響されます。

そのため、適切な期間の治療と通院を継続することは、結果的に適正な慰謝料を獲得することにもつながります。

⑴ 医師との協力体制の構築

医師は治療の専門家であり、あなたの症状を最も理解している存在です。

現在の症状、治療の進捗、今後の治療方針について医師と密にコミュニケーションを取り、治療の必要性を客観的に示してもらいましょう。

診断の内容や検査の結果を確認することも大切です。

⑵ 症状の継続的な訴えと記録

痛みが残っているにもかかわらず、「もう大丈夫だろう」と我慢してしまうと、治療の必要性がないと判断されかねませんので注意が必要です。

医師や保険会社に対し、症状が続いていることを明確に伝え、日常生活における支障なども具体的に記録しておきましょう。

⑶ 通院の継続と頻度

むち打ちの治療は、継続的な通院が原則です。

適切な頻度で通院し、治療への意欲を示すことも重要です。

ただし、過剰な通院は不必要と判断される可能性もあるため、医師と相談して適切な頻度を保ちましょう。

加害者側の保険会社から通院や診察を促されるケースもあります。

⑷ 客観的証拠の収集

MRIやレントゲンなどの症状の原因の裏付けとなる画像診断の結果、神経学的所見、医師の診断書や意見書など、客観的な証拠は交渉において非常に強力な武器となります。

事故の状況を証明する書類として、交通事故証明書や実況見分調書も必要になる場合もあります。実況見分調書は、弁護士に依頼して取得してもらうと良いでしょう。

⑸ 現実的な治療期間の提示

保険会社から治療費打切りの打診があった場合、まだ治療を継続したいと伝えると、保険会社はあとどのくらい治療が必要か聞いてくることが多いですが、「あと1ヶ月続けたい」など具体的な期限を伝えると延長を認めてもらいやすい傾向があります。

もちろん、あとどのくらいで改善するかということは予想できない人も多いと思いますが、「治るまで治療したい」などと伝えてしまうと、保険会社としては対応しきれないと判断され、早期打切りの可能性が高まりますので、「もう1ヶ月様子を見て相談したい」などと現実的な期限を伝えて交渉するのもよいと思います。

⑹ 弁護士の活用

保険会社は、弁護士が介入することで、訴訟に発展するリスクを考慮し、より柔軟な対応をする傾向があります。

弁護士は、被害者のお怪我の症状や治療の実績に基づいて、保険会社基準より高額な裁判所基準に近いところで解決できるよう交渉を進めます。

また、難しい保険会社とのやり取りは弁護士に任せることができ、安心して治療に専念できるはずです。

弁護士費用特約がない場合でも、示談交渉で慰謝料を増額できて弁護士費用をカバーできる(弁護士費用をかけても増額メリットが大きい)可能性も高いですから、示談する前に一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

5.まとめ

むち打ちの治療と慰謝料に関する交渉は、専門知識が必要な場面が多く、精神的な負担も大きいものです。

一人で抱え込まず、信頼できる医療機関の医師や、交通事故に強い弁護士と連携しながら、ご自身の権利をしっかりと主張していきましょう。

適切な知識と準備があれば、適正な慰謝料を獲得できるはずです。

私たち弁護士法人優誠法律事務所は、全国から無料でご相談をお受けしておりますので、この記事をご覧になった方はぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故におけるむち打ちとその症状

2025-07-18

交通事故に遭われた際、身体には大きな衝撃が加わり、事故直後には自覚症状がなくても、時間が経ってから様々な不調が現れることがあります。

中でも「むちうち」は、交通事故被害者に特に多く見られる症状です。

むち打ちは、交通事故の衝撃で首に負担がかかることで生じる神経症状のことで、「外傷性頚部症候群」や「頚椎捻挫」とも呼ばれます。

主な症状は、首やその周辺の筋肉、靭帯、神経などの損傷によって引き起こされます。

被害者自身が軽傷だと考えていても、少し時間が経過してから症状が現れるケースも少なくないため、早めの受診と継続的な通院が非常に重要です。

この記事では、むち打ちの主な症状とその影響、慰謝料の種類と計算方法、そして診断書の重要性とその記載内容について詳しく解説します。

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1.むち打ちの主な症状と影響

むち打ちとは、交通事故などの衝撃により首に負担がかかって生じる神経症状のことを指します。

むち打ちの症状は多岐にわたり、人によって現れ方が異なります。

最も典型的な症状は、首や肩の痛み、こり、違和感です。

これは、事故の衝撃で首が前後左右に激しく揺さぶられ、頚部の筋肉や靭帯が過度に伸展したり、損傷したりすることによって生じます。

寝違えのような軽い症状から、頭を動かすことが困難になるほどの強い痛みまで、その程度は様々です。

また、痛みやこりだけでなく、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気といった症状を伴うことも珍しくありません。

これらは、頚部の損傷が自律神経に影響を与えたり、脳への血流に影響を及ぼしたりすることによって引き起こされると考えられています。

さらに、腕や指のしびれ、脱力感が生じることもあります。

これは、頚部から腕へと伸びる神経が圧迫されたり、損傷を受けたりすることによるものです。

場合によっては、集中力の低下や不眠といった精神的な症状が現れることもあり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

これらの症状は、事故直後には現れず、数時間後、あるいは数日経ってから徐々に現れるケースも少なくありません。

そのため、「事故に遭ったけれど、特に痛いところはないから大丈夫だろう」と自己判断してしまうのは非常に危険です。

被害者自身は軽傷だと思っても、後に症状が悪化することもあり、通院の継続や専門医による診断が重要です。

症状が軽いうちに適切な治療を開始しないと、慢性化して後遺症として残ってしまう可能性もあります。

また、事故直後に通院を行わないことによって、後の示談交渉の際に、事故と症状の因果関係を争われることにもなりかねません。

むち打ちは、レントゲン検査では異常が認められにくいことも多く、その診断が難しいとされています。

骨折や脱臼のように骨そのものに異常がないため、レントゲン画像では異常が見つかりにくいのです。そのため、症状の訴えと医師の診察が診断の重要な要素となります。

交通事故によるむち打ちは、単なる身体的な不調にとどまらず、精神的な苦痛や経済的な負担も伴います。

仕事に支障が出たり、趣味の活動ができなくなったりすることで、精神的なストレスも大きくなるでしょう。

また、治療費や休業による収入減など、経済的な負担も無視できません。

このような状況において、適切な治療を受けることはもちろんのこと、慰謝料や損害賠償といった法的な側面についても理解しておくことが重要です。

特にむち打ちの場合、その症状の特性から、適正な慰謝料の算定が争点となることも少なくありません。

2.慰謝料の種類と計算方法の違い

交通事故の慰謝料には、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料:治療のために入院・通院した期間・日数を元に計算
  • 後遺障害慰謝料:後遺症が残った場合に発生
  • 死亡慰謝料:死亡事故に該当する場合

慰謝料の計算方法には”基準の違い”がある

  • 自賠責基準(国の最低限保障)
  • 任意保険基準(各保険会社の独自基準)
  • 弁護士(裁判)基準(過去の裁判結果に基づく)

適正な金額を得るには、弁護士基準での請求が最も有利とされています。

慰謝料の内訳として「入通院慰謝料(入院・通院日数ベース)」や「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」があり、例えば【自賠責】では通院1日あたり4,300円(2023年4月以降の基準)、また弁護士基準では1ヶ月:約15〜20万円、3ヶ月:約53〜73万円、6ヶ月:約89〜116万円が目安です(すべて一例で、症状や日数、固定のタイミングにより増減)。

詳細な金額は表などで示されることも多く、被害者側の過失割合によって減額される場合があり、賠償金の計算には通院日数、症状固定日、後遺障害の有無など多くの要素が影響します。

また、保険ごとの対応の違いとして、

  • 【自賠責保険】:最低限の補償として入院・通院慰謝料、交通費、休業損害など
  • 【任意保険】:示談代行サービスや契約内容で補償範囲や金額に違いあり、自分に過失がある場合も一定額がもらえるケースあり
  • 【人身傷害特約】:自分が加害者でも一定の保険金を請求できる
    といった特徴があります。

「症状固定前の打切り」には注意が必要で、保険会社の治療費打切りの時点で通院をやめてしまうと、治療費や慰謝料などの賠償範囲がその時点までとなってしまいます。

適切な賠償金を得るためには、たとえ保険会社から打切りの打診があっても、医師が治療の必要性を認めている間は病院を継続受診し、医師が症状固定の診断をするまでの治療費の延長交渉が必要です。

交通事故の被害に遭った場合、弁護士への早期相談が勧められていますが、弁護士に相談すると、治療終了後の慰謝料や賠償金の増額交渉だけでなく、治療費の延長交渉や必要な診断書の取得の代行など多くのメリットがあります。

「弁護士費用特約」で弁護士費用が実質無料となる場合もありますし、着手金無料や成功報酬型の法律事務所も増えていますので、気軽に弁護士の活用を検討してみてください。

3.診断書の重要性と書き方

交通事故に遭い、むち打ちの症状が現れた場合、最も重要となるのが「診断書」です。

診断書は、ご自身の症状が交通事故によって引き起こされたことを医学的に証明する、場合によっては唯一の書類であり、加害者側や保険会社に対して損害賠償請求を行う上で不可欠な証拠となります。

⑴ 診断書の重要性

診断書の重要性は、以下の点に集約されます。

  • 因果関係の証明:診断書は、交通事故とご自身の症状との間に医学的な因果関係があることを証明します。これがなければ、「事故とは関係のない症状ではないか」と加害者側や保険会社に主張され、適切な補償を受けられない可能性があります。
  • 治療の必要性の証明:診断書には、医師が診断した傷病名や症状、それに対する治療方針が記載されます。これにより、行われる治療が交通事故による症状に対するものであることが明確になり、治療費の請求根拠となります。
  • 後遺障害認定の基礎:むち打ちの症状が長期化し、後遺症として残ってしまった場合、後遺障害の等級認定を申請することになります。その際、診断書の内容は後遺障害の有無や等級を判断する上で極めて重要な資料となります。症状の推移や治療経過が詳細に記載されていることが、適切な等級認定につながります。
  • 慰謝料算定の根拠:交通事故における慰謝料は、入通院期間や症状の程度によって算定されます。診断書に記載された傷病名、症状、治療期間などが、慰謝料の金額を決定する上で重要な要素となります。

⑵ 診断書に記載されるべき主要な項目

  • 傷病名:「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」など、医師が診断した具体的な病名が記載されます。
  • 初診日:交通事故後、初めて医療機関を受診した日が記載されます。事故発生から初診までの期間が短いほど、事故との因果関係が認められやすくなります。
  • 負傷の原因:「交通事故による」と明確に記載されていることが重要です。
  • 主要な症状:患者が訴える症状(首の痛み、頭痛、しびれなど)が具体的に記載されます。医師が客観的に確認できる所見(可動域制限、圧痛など)も記載されます。
  • 治療内容と期間:どのような治療が行われているか(投薬、リハビリ、物理療法など)や、今後の治療方針、治療期間の見込みなどが記載されます。
  • 全治の見込み:症状が完全に回復するまでの見込みが記載されます。症状が残存する可能性がある場合は、その旨も記載されます。

⑶ 医師への症状の伝え方と注意点

診断書の内容は、患者自身の訴えに基づいて医師が作成します。

特に、むち打ちの場合には、自覚症状が主となり、他覚的に確認できる可動域制限等の所見がないことも珍しくありません。

そのため、医師に正確かつ具体的に症状を伝えることが非常に重要です。

  • 発生時の状況を正確に伝える:交通事故がどのように発生し、ご自身の身体にどのような衝撃があったのかを具体的に伝えます。例えば、「追突されて首がガクンとなった」「横からぶつかられて身体が横に振られた」など、状況を詳細に説明しましょう。
  • すべての症状を具体的に伝える:痛みだけでなく、しびれ、めまい、吐き気、耳鳴り、不眠、集中力の低下など、自覚するすべての症状を具体的に伝えます。痛みの程度(ズキズキする、重い、ピリピリするなど)、頻度、症状が現れる時間帯なども詳しく伝えましょう。
  • 症状の変化を記録する:毎日、ご自身の症状の変化を記録することをお勧めします。痛みの強さ、症状が出た時間、改善したこと、悪化したことなどを記録し、診察時に医師に提示することで、医師はより正確な診断を下しやすくなります。
  • 遠慮せずに伝える:医師に遠慮して症状を軽めに伝えたり、伝え忘れてしまうことがないようにしましょう。ご自身の身体のことですから、気になる症状はすべて正直に伝えてください。
  • 既往歴や持病も伝える:以前からの持病や既往歴がある場合は、それがむち打ちの症状に影響を与える可能性もあるため、医師に伝えておきましょう。
  • 複数の医療機関を受診しない:原則として、診断書は一つの医療機関で作成されるべきです。複数の医療機関を受診すると、診断書の内容に矛盾が生じたり、治療の一貫性が失われたりして、保険会社から不当な評価を受ける可能性があります。ただし、専門医のセカンドオピニオンが必要な場合は、主治医と相談の上で検討しましょう。

⑷ 診断書が作成された後の確認

診断書が作成されたら、必ず内容を確認しましょう。

ご自身が訴えた症状がすべて記載されているか、病名や初診日、負傷の原因が正確に記載されているかなどを確認します。

もし、誤りや不足している点があれば、すぐに医師に申し出て訂正してもらいましょう。

交通事故の被害に遭われた方が、適切な慰謝料や補償や後遺障害等級の認定を受けるためには、正確で具体的な診断書が不可欠です。

4.弁護士に依頼するメリット

交通事故に関する手続きは、上でご説明した診断書の内容だけでなく、その後の示談交渉や後遺障害の申請など、非常に複雑で専門的な知識が求められます。

そして、多くの場合、加害者側の保険会社はできるだけ支払う慰謝料や賠償額を抑えようとします。

提示された金額が相場と比較して適切かどうか、ご自身で判断することは非常に困難です。

特にむち打ちの場合、自覚症状が中心となるため、その程度や慰謝料の相場を巡って争いになることも少なくありません。

そのような時に頼りになるのが、弁護士です。弁護士は、法律の専門家として、被害者の方の権利を守り、適正な慰謝料や賠償額を獲得できるようサポートします。

弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 示談交渉の代行:保険会社との煩雑な交渉を弁護士が全て代行します。これにより、精神的な負担が軽減され、治療に専念することができます。
  • 適切な慰謝料の算定:裁判例に基づく適切な慰謝料の相場を把握しているため、保険会社が提示する金額が不当に低い場合には、増額交渉を行います。弁護士基準といわれる高い基準で慰謝料を請求できます。
  • 後遺障害認定のサポート:後遺障害の等級認定は、非常に専門的な知識が必要です。弁護士は、適切な資料収集や申請手続きをサポートし、適正な等級認定が受けられるよう尽力します。
  • 訴訟対応:交渉が決裂した場合でも、民事訴訟を提起して適切な賠償を得られるよう尽力します。
  • 法律相談:疑問や不安な点をいつでも弁護士に相談できるため、安心して手続きを進めることができます。

5.まとめ

私たち弁護士法人優誠法律事務所は、これまで数多くのむち打ち事案を解決して参りました。

被害者の方々が抱える痛みや不安に寄り添い、適正な解決へと導きます。

もし、交通事故に遭われてむち打ちの症状でお悩みの場合、また、保険会社との交渉でお困りの場合は、一度、当法律事務所にご相談ください。

初回の相談は無料で行っております。

早期にご相談いただくことで、より有利な解決に繋がる可能性が高まります。

ご自身の権利を守り、事故の被害から一日も早く回復するためにも、弁護士のサポートをぜひご検討いただければと思います。

投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【弁護士が解説】むち打ち慰謝料の相場と交通事故後に取るべき正しい対応とは?(後遺症・通院・慰謝料増額のポイント)

2025-06-01

交通事故に遭い、むち打ち症(頚椎捻挫、頚部挫傷)と診断された場合、多くの方が気になるのは、今後どのように治療を進めたら良いかという点やその慰謝料の相場などでしょう。

後遺症が残る可能性や、通院にかかる負担への不安、そして被害に遭った訳ですから慰謝料を増額したいという思いは当然です。

慣れない交通事故の手続きや、今後への不安から、適切な判断ができずに悩んでしまう方も少なくありません。

本記事では、交通事故におけるむち打ちの慰謝料の相場について、多くの交通事故被害者の方のサポートをしてきた弁護士が詳しく解説いたします。

さらに、相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数や、交通事故後に取るべき正しい対応、そして慰謝料を増額するためのポイントについてもご紹介します。

むち打ちの症状にお悩みで、今後の対応に不安を感じている方は、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてください。

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1.むち打ちとは?|事故後すぐに症状が出ないケースも

「むちうち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)」とは、追突事故などで首がムチのようにしなることで起こる外傷です。主な症状は以下の通りです。

・首や肩の痛み

・頭痛、めまい、吐き気

・手足のしびれや脱力感

事故直後は症状が軽くても、数日後に悪化するケースもあります。

放置せず、事故後は速やかに整形外科などの病院を受診しましょう。

2.慰謝料とは?|精神的苦痛に対する金銭的補償

交通事故における慰謝料とは、怪我によって被った精神的な苦痛に対して支払われる金銭のことです。むち打ちの場合、以下の2つが主に該当します。

入通院慰謝料:通院期間や治療日数に応じて支払われる

後遺障害慰謝料:後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合に支払われる

3.むち打ち慰謝料の算定基準を理解する(自賠責基準・任意保険基準・裁判基準の違い)

交通事故によるむち打ちの慰謝料は、一律に決められているわけではありません。

慰謝料の金額は、交通事故の状況、被害者の負傷の程度、治療期間実通院日数など、様々な要素を基に検討します。

一般的に、慰謝料を算定する基準として、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」の3つが存在します。

それぞれの基準によって慰謝料の金額は大きく異なるため、その違いを理解しておくことが重要です。

(1)自賠責保険基準:最低限の補償

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。被害者の救済を目的としており、最低限の補償を行うための基準が定められています。

自賠責保険基準による慰謝料は、治療期間や実通院日数に応じて算出されますが、最低限の補償を目的にしていますので、その金額はどうしても低額になります。

具体的には、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×総治療期間」のいずれか少ない方が慰謝料として支払われます(2020年4月1日以降の事故の場合)。

なお、後遺障害等級が認定された場合には、別途後遺障害慰謝料(後遺障害保険金)が支払われます。

(2)任意保険基準:保険会社独自の基準

任意保険は、自賠責保険では賄えない部分を補填するために、自動車の所有者が任意で加入する保険です。

各保険会社が独自に慰謝料の算定基準(任意保険基準)を設けていますが、一般的には自賠責保険基準よりも高額になることが多いです。

ただし、その算定方法は公開されておらず、保険会社によって金額が異なる場合があります。

保険会社から提示される慰謝料は、この任意保険基準に基づくものですが(最低限の自賠責保険基準で提示してくる担当者もいます)、あくまで保険会社の都合で決められている基準ですから、被害者にとって適正な金額とは言えません。

被害者側が弁護士に依頼しなければ、保険会社は、この自社の基準である任意保険基準に基づいて示談交渉を進めてきます。

(3)裁判基準(弁護士基準):適正な賠償を目指す

裁判基準(弁護士基準)は、過去の裁判例に基づいて確立された慰謝料算定基準です。

3つの中で最も高額になる可能性が高い基準となります。交通事故に強い弁護士が示談交渉を行う際や、裁判になった場合に用いられます。

裁判基準では、基本的にむち打ちの症状の程度や治療期間に応じて慰謝料を算定しますが、慰謝料の目安としては、例えば、他覚所見のない神経症状の場合、3ヶ月の治療期間で53万円程度、6ヶ月の治療期間で89万円程度となります。

これはあくまで目安であり、個別の事案によって増減する可能性があります。

また、関西地方の裁判所では独自の基準があり、これより低い金額となることが多いなど、地方によっても若干の違いが出ることがあります。

後遺障害等級が認定された場合には、さらに後遺障害慰謝料が加算されます。

例えば、むち打ちで後遺障害等級14級9号が認定された場合、裁判基準の後遺障害慰謝料の相場は110万円、12級13号の場合は290万円となります。

このように、自賠責保険基準や任意保険基準よりも高額になりますので、慰謝料を増額するためには、この裁判基準で交渉することが重要になります。

ただし、弁護士に依頼せずに被害者ご自身が保険会社に裁判基準で慰謝料を要求しても、応じてもらえないことが多いようです。

4.慰謝料相場と相場程度の慰謝料を得るために必要な通院日数(適切な通院頻度と期間)

(1)むち打ち慰謝料の相場

交通事故被害者の方からご相談をお受けすると、「慰謝料の相場はどのくらいですか?」というご質問をよくお受けします。

交通事故の慰謝料は、お怪我の症状の程度や治療期間などを基に算定されますので、「慰謝料の相場」がどのくらいか?というのは一概には言えませんが、むち打ちの場合、一般的には治療期間が3ヶ月から6ヶ月の間の方が多いです。

そして、その場合の裁判基準の通院慰謝料(傷害慰謝料)は、53万円~89万円ですので、このくらいがむち打ちの慰謝料の相場と言えるかもしれません。

ご参考までに月10日程度通院した場合の自賠責基準と裁判基準の慰謝料の目安も載せておきます。

むち打ち慰謝料の金額例(目安)

通院期間通院日数自賠責基準の慰謝料裁判基準の慰謝料
1ヶ月10日8万6000円19万円
3ヶ月30日25万8000円53万円
6ヶ月60日51万6000円89万円

(2)必要な通院日数

自賠責保険基準の場合は、「4300円×実治療日数×2」、または「4300円×

一方、裁判基準で慰謝料を算定する場合、基本的には治療期間(通院期間)で算定します。

そのため、通院日数は慰謝料の計算にそれほど影響せず、週に2~3回通院した場合でも、週に4~5回通院した場合でも、慰謝料の金額は変わらないということになります。

なお、以前は、裁判基準でも、通院頻度が少ない場合、実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とするとされていました(「3倍ルール」などと呼ばれていました。)。

例えば、通院期間は6ヶ月間でも、週1回(月4回)程度の通院で、合計の実通院日数が24回だった場合、通常の裁判基準では通院6ヶ月で慰謝料89万円になりますが、実通院日数の3倍程度とされてしまうと、「実通院日数24回×3=72日」で2ヶ月半程度の通院という評価になり、慰謝料が約43万円になってしまいます。

このように、以前の基準では、通院頻度が週2回以下の場合には通常の裁判基準よりも慰謝料が減額されてしまうことがありました。

これは、加害者側の保険会社にとっては有利な基準ですので、未だに年配の担当者が、この3倍ルールを持ち出して慰謝料を減額させようとするケースもあります。

しかし、現在の基準では、この3倍ルールが適用されるのは、「通院が長期にわたる場合」(概ね1年以上)に限定されることになっており、例えば加害者側が6ヶ月程度の通院期間の場合に3倍ルールの主張をしても、基本的には裁判所が認めていない印象です。

このように、特に裁判基準では、慰謝料算定の上で、必要な通院日数というものはありません。

また、そもそも慰謝料のために通院する訳ではなく、治療の必要に応じて通院したことの結果として通院を強いられた慰謝料を算定するということですから、医師の指示の下で必要な治療を受けていただくということが原則になります。

ただ、むち打ちの場合、一般的に他覚所見がないことが多いため、適切な頻度での継続的な通院が、症状の存在や治療の必要性を客観的に示す要素になり得ますので、自己判断で通院を中断したり、回数を減らしたりすることは避けるべきです。

特に、急に通院頻度が減ると、症状が改善したと認識されてしまう場合もありますので、注意が必要です。

そして、上でご説明した3倍ルールなども考えると、一般論としては、週に2~3回程度の通院が適切と言えるように思います。

なお、整骨院や接骨院への通院も、慰謝料の算定においては整形外科への通院と同様に扱われますが、事前に医師に相談して指示(同意)を得ておくことが必要です。

5.慰謝料額が変動する要因

むちうち事故における慰謝料額は、以下の要因で大きく変わります。

  • 通院日数・通院期間:実際に通った期間や日数によって算定される
  • 通院頻度:毎月の通院回数も考慮される可能性がある
  • 後遺障害等級の認定有無:14級9号などに該当すれば増額
  • 事故の状況(過失割合):過失があれば減額される

6.交通事故後に取るべき正しい対応(初期対応が重要)

交通事故に遭ってしまった場合、適切な初期対応を取ることが、その後の慰謝料請求や損害賠償請求において非常に重要になります。以下の点に注意して、冷静に対応しましょう。

  • 警察への連絡:交通事故が発生した場合は、速やかに警察に連絡し、事故状況の確認と届け出を行いましょう。また、お怪我をされた場合は、診断書を提出して人身事故に切り替える手続きをした方が無難です。
  • 加入保険会社への連絡:ご自身が加入している自動車保険会社にも、事故の状況を速やかに報告しましょう。保険会社からのアドバイスやサポートを受けることができます。弁護士費用特約が付いている場合は、弁護士費用を保険でまかなうことができますので、弁護士特約の使用の可否も確認しましょう。
  • 医療機関での受診:事故直後は症状がなくても、後からむち打ちなどの症状が現れることがあります。速やかに医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。交通事故から時間が経過してしまうと事故との因果関係を争われる場合がありますから、とにかく早く受診することが重要です(原則として、事故から2週間以内に受診しないと自賠責保険が適用できません。)。また、通院の際には、医師に症状を詳しく伝え、適切な治療を受けるようにしてください。事故直後に医師に症状を伝えていないと、カルテや診断書に記載されません。診断書に記載のない症状は、事故との関連性を認めてもらえませんので、全ての症状を伝えることが重要です。治療期間中も、医師にはなるべく症状を詳しく伝えることが重要です。後遺障害認定や裁判でカルテが提出されることもありますが、日々の診察で症状を訴えていないと症状が改善されているなどと捉えられてしまうこともあります。
  • 弁護士への相談:交通事故後の手続きや、相手方との交渉に不安を感じた場合は、早めに交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

7.弁護士による交渉のメリット(慰謝料増額と手続きの負担軽減)

(1)専門知識と交渉力:慰謝料増額の可能性

交通事故の被害者が、保険会社と直接交渉を行う場合、提示される慰謝料の金額が自賠責保険基準や任意保険基準に基づいたものになりますから、裁判基準と比較して低額になります。

一方、弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士は裁判基準で慰謝料の交渉をしますので、慰謝料を増額できる可能性が高く、大きなメリットがあります。

特に、交通事故に強い弁護士は、交通事故に関する豊富な知識と経験がありますから、適正な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。

(2)手続きの負担軽減:治療に専念できる環境

交通事故後の手続きは煩雑で、精神的な負担も大きいものです。

弁護士に依頼することで、保険会社との連絡や書類作成、示談交渉など、一切の手続きを代理してもらうことができます。

これにより、被害者は治療に専念することができ、精神的な負担も軽減されます。

(3)後遺障害等級認定のサポート:適切な等級認定を目指して

むち打ちの症状が長期間にわたり、後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求することができます。

しかし、後遺障害等級の認定手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。医師に適切な内容で後遺障害診断書を作成してもらうことも重要です。

事前認定という手続きで加害者側の保険会社に手続きを任せることもできますが、交通事故に強い弁護士に依頼すれば、後遺障害等級の認定についてもサポートを受けることができ、保険会社に任せるよりも適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まるといえます。

(4)裁判になった場合の対応:適正な賠償金の獲得

示談交渉がうまくいかず、裁判になった場合でも、弁護士に依頼していれば、基本的に裁判所での主張・立証活動は弁護士が行いますので、被害者が裁判に出席する場面は少なく、弁護士に裁判対応を任せることができます。

逆に、保険会社としては、弁護士が付いていると、裁判を提起される可能性があることも考えて示談交渉を行わざるを得ず、慰謝料増額などの被害者側の要求を受け入れやすいという側面もあります。

弁護士に依頼する最大のメリットは、やはり適正な賠償金を獲得できる可能性が高まることです。

保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合や、今後の手続きに不安を感じている場合は、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。

無料相談を実施している法律事務所も多くありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

8.まとめ(弁護士への相談が解決への近道)

交通事故でむち打ち(頚椎捻挫)の怪我を負ってしまった場合、少しでも症状が改善するよう医師の指示の下で適切な頻度で通院して治療を行うことが重要です。

それが結果的に適正な慰謝料を得ることにもつながります。

後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害等級の認定を受けることも検討しましょう。

また、交通事故によるむち打ちの慰謝料は、算定基準によって大きく異なります。

適正な慰謝料を得るためには、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉をする必要があります。

保険会社から早期解決を促され、免責証書(示談書の代わりになるもの)が送られてくることがありますが、一度署名してしまうと示談のやり直しはできませんので、安易にサインしないよう注意してください。

もし、交通事故後の手続きに不安を感じている場合や保険会社から提示された慰謝料に納得がいかない場合は、迷わず弁護士にご相談ください。

当事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしております。

投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(4)右直事故~外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)~

2022-06-25

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

ここまで私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介してきましたが、今回は直進の原付バイクと右折の自動車の事故(いわゆる右直事故)で外傷性頚部症候群頚椎捻挫)の怪我を負った被害者のDさんの事例をご紹介します。

Dさん:非該当⇒頚椎14級9号

1.初回の申請は非該当

 Dさんは、原付バイクで走行中に信号のある交差点を直進しようとしたところ、対向車線から右折してきた相手方車両に衝突されてしまいました。

 事故現場となった交差点は、相手方側からは直進してくる車両が見えにくく、相手方は直進車に注意して右折する必要がありましたが、相手方は右折する先にある横断歩道に歩行者がいないか確認するために右方向を見ていて、対向車線を走ってくるDさんのバイクに気付くのが遅れて衝突してしまいました。

 Dさんのバイクは、相手方車両のフロント中央に衝突し、身体が投げ出されて地面に叩きつけられました。この時、Dさんは身体を地面に強く打ちつけてしまい、頚椎などを負傷してしまいました(外傷性頚部症候群、左膝打撲)。

 交通事故の直後、Dさんは救急搬送されて治療を受け、その後は整形外科で治療を続けていましたが、首や左膝の痛みがなかなか改善しませんでした。
 Dさんは、当時映像制作の専門学校の学生でしたが、首の痛みが強く、長時間PCで作業をすることが難しくなってしまったため、早く症状を改善させたいとの思いでリハビリを続けました。
 しかし、残念ながら、交通事故から約半年が経過した時点でも首の痛みが改善しませんでした。そして、相手方保険会社が、交通事故から半年以上は治療費を支払えないと主張して、一方的に治療費を打ち切られてしまいました。

 Dさんは、保険会社に治療費を打ち切られた後も健康保険に切り替えて治療を継続しましたが、さらに半年(交通事故から1年)が経過した時点でも症状が残ってしまい、主治医はそのタイミングで症状固定と診断しました。

 Dさんは、それまでの言動から相手方保険会社の担当者が信用できないと感じており、相手方保険会社に任せる「事前認定」ではなく、ご自身で方法を調べて被害者請求で後遺障害申請をしました。

 しかし、初回申請では、Dさんの外傷性頚部症候群に起因する首の痛みについて、「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」として非該当と判断されてしまいました。

 また、相手方保険会社からこの交通事故の過失割合について、15(Dさん):85(相手方)と主張されており、Dさんとしては過失割合についても不満がありました。

 そこで、後遺障害の異議申立てや示談交渉などの手続きを弁護士に任せたいというご希望で私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。 

2.異議申立ての結果、14級9号が認定

 以前ご紹介したAさんの記事(【速報】後遺障害等級認定事例(1)~頚椎捻挫~)でご説明しましたが、私たちの経験上、相手方保険会社から治療費を打ち切られた後にも、自費で通院を継続した被害者の方が痛み(神経症状)による後遺障害等級(14級9号)を認定されやすいという感覚があります。
 また、以前ご紹介したCさんの記事(【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~)でご説明しましたが、通院回数の多い人、通勤期間の長い人も、後遺障害等級(14級9号)が認定されやすいという感覚があります。

 今回のDさんは、治療費の支払いを打ち切られてから半年間に渡って自費で治療を続けており、交通事故から症状固定まで約1年間治療をしていましたので、私たちは、主治医からカルテを取り寄せ、首の痛みが交通事故から一貫して長期間に渡って続けていることを主張して異議申立てを行いました。

 また、相手方車両のフロント中央部分が大きく凹んでおり、今回の交通事故でDさんが身体に強い衝撃を受けたことの証拠になりそうでしたので、相手方車両の写真も異議申立書に添付しました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Dさんの外傷性頚部症候群に起因する首の痛みについて14級9号が認定されました。

3.示談交渉(過失割合の修正に成功)

 異議申立てで後遺障害14級9号が認定されましたので、私たちは後遺障害慰謝料逸失利益通院慰謝料などを計算して相手方保険会社と示談交渉を始めました。

 Dさんは過失割合について、相手方保険会社から15:85と言われていたことに強い不満がありましたので、私たちは弁護士会照会で刑事記録(実況見分調書)を取り寄せて、過失割合についても交渉しました。

 過失割合については、典型的な交通事故の場合、過去に同種の裁判例が多数あることから、裁判例を踏まえてそれぞれの事故状況ごとに何%:何%と基本となる過失割合が示されており、この基本過失割合を基に検討することになります。
 過失割合の交渉については、当事務所の公式ブログでも解説していますので、是非そちらもご覧ください(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~

 今回のDさんの交通事故のようなバイクと自動車の右直事故の場合、双方の信号が青であれば、基本過失割合は15:85になります。つまり、相手方保険会社としては、基本過失割合を根拠に15:85と主張していた訳です。

判例タイムズ175図 基本過失割合A15:B85

 しかし、実況見分調書によると、相手方はDさんに衝突する直前まで右折する先の横断歩道を見ていて、Dさんに気が付いたのは衝突とほぼ同時くらいだったことが分かりました。
 今回の交通事故現場は、坂の頂点のようになっていて、右折車(相手方側)から対向車線の直進車を確認しにくい状況でしたので、直進車の信号に赤になった後、右折矢印が出るようになっていました。相手方としては、青信号のうちに右折するのであれば、対向車の有無をしっかり確認してから右折を開始する必要がありましたが、相手方は対向車線の確認を怠って右折を開始した結果(著しい前方不注視)、Dさんに衝突してしまいました。

 さらに、実況見分調書によると、相手方はDさんがかなり近づいていたタイミングで右折を開始しており、「直近右折」に該当し得るのではないかと思われました。

 私たちとしては、これらの事情を根拠に過失割合を修正するべきだと主張して交渉しました。

 その結果、相手方保険会社も理解を示し、結局、過失割合は5(Dさん):95(相手方)まで修正することができました。

4 まとめ

 今回は、外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)で初回申請非該当から、異議申立てで14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のDさんのように、後遺障害申請について相手方保険会社の事前認定ではなく、ご自身で被害者請求をされる方は珍しいですが、この場合であっても異議申立てから弁護士に依頼することは可能です。

 Dさんの場合、私たちにご依頼いただいたことで、異議で後遺障害等級が認定され、過失割合についても修正できましたので、大変喜んでいただきました。

 ただ、異議申立てで結果が覆る可能性は高くないですから、弁護士の立場からお話しすると、初回申請の段階からご依頼いただいた方が、適切な等級が認定される可能性が高まりますので、早めにご相談いただきたいというのが本音ではあります。

私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしておりますので、是非お気軽にご相談ください。

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後遺障害診断書を作成してもらえず、裁判で後遺障害等級14級9号前提で和解できた事例

整骨院・接骨院で治療すると後遺障害等級が認定されないって本当?

投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

2022-05-03

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

前々回から私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介していますが、今回は頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負った被害者のCさんの事例をご紹介します。

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎14級9号・腰椎14級9号)

1.初回の申請は非該当

 Cさんは、ご家族が運転する自動車の後部座席に乗っていたところ、隣の車線を走っていた加害者車両が急に車線変更してきたため、Cさんの車両の運転手の方が、衝突を避けるために急ブレーキをかけました。幸い急ブレーキによって衝突を回避することはできたものの、後部座席に乗っていたCさんは、急ブレーキの反動で体が前方に大きく振られて、前の座席に顔面を強打してしまい、顔や頚椎、腰椎を負傷してしまいました(外傷性顎関節症・頚椎捻挫・腰椎捻挫)。

 その後、Cさんは整形外科と口腔外科で治療を続けていましたが、首や腰の痛みがなかなか改善しませんでした。Cさんは、前の仕事を辞めて転職活動をしているタイミングでしたが、首や腰の痛みもあって転職活動を中断せざるを得ず、早く症状を改善させたいとの思いでリハビリを続けました。しかし、交通事故から約1年が経過した時点でも首と腰の痛みが改善しませんでした。そうしたところ、相手方保険会社に治療費の打切りを通告され、主治医もそのタイミングで症状固定と診断しました。

 Cさんは、治療費を打ち切られて症状固定となったことで、その後の後遺障害申請や示談交渉などの手続きを弁護士に任せたいというお考えで私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。ご依頼いただいた後、私たちは必要な書類を揃え、被害者請求で後遺障害申請をしました。

 その結果、残念ながら初回の申請では首の痛みと腰の痛みについて、それぞれ「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」として非該当と判断されました。

 Cさんとしては、首も腰も痛みが残存していて日常生活に支障があるにもかかわらず、非該当という結果では納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

2.異議申立ての結果、併合14級が認定

 頚椎捻挫や腰椎捻挫の場合、交通事故から通常6ヶ月程度で症状固定と診断されることが多いですが、Cさんの場合は交通事故から約1年間も治療を続けており、リハビリの回数も通算170回以上にも上っていました。長年交通事故の後遺障害申請を担当してきた私たちの経験上、通院回数の多い人は痛み(神経症状)による後遺障害等級(14級9号)が認定されやすいという感覚があります。通院回数が多いということは、それだけ痛みが強かったことを推認する事情でもあると考えられるためではないかと思います。ただし、通院回数が多かったり、通院期間が長くても、症状が改善傾向にあったり、訴えている症状に一貫性がなかったりすると、後遺障害とは認定されにくくなります。

 そこで、私たちはCさんの異議申立てをするにあたり、主治医に頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移についての照会書の作成をお願いし、併せてカルテを取り寄せて、症状の経過や一貫性があるか否かを確認しました。その結果、Cさんは交通事故直後から症状固定まで一貫して首と腰の痛みを訴えて治療を続けていたことが分かり、主治医から症状が慢性化していて改善は見込めないとの回答を得ました。

 また、Cさんの交通事故は、急ブレーキで自動車同士の衝突を避けられており、非接触の交通事故であったため、自賠責保険は「後遺障害が残るほどの怪我が発生する事故ではない」と判断したのではないかと考えられました。

 そこで、私たちは、交通事故当時の状況をCさんから詳しく聞き取り、Cさんが靴を脱いで後部座席に座っていたこと、シートベルトをしていなかったこともあって急ブレーキで前方に押し出されて前の座席に顔面を強打したこと、この前方座席に強打した際に首や腰も負傷したことなど、自動車同士は非接触であっても後遺障害が残るほどの怪我を負っても不自然ではないことを細かく主張する異議申立書を作成して異議申立てを行いました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Cさんの頚椎捻挫後の首の痛みと腰椎捻挫後の腰の痛みについてそれぞれ14級9号が認定されて、併合14級の認定となりました。

3.まとめ

 今回は、頚椎捻挫・腰椎捻挫で初回申請非該当から、異議申立てでそれぞれ14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のCさんのように、交通事故の被害者の多くが頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負っていますが、首や腰の症状は回復するまで長い時間がかかることも多く、首や腰の痛みが残ってしまう方も少なくありません。

 その場合、多くの方は相手方保険会社に任せて後遺障害の申請を行いますが(この保険会社に任せる方法を「事前認定」といいます。)、この事前認定では必要最低限の書類を揃えて提出するという対応以上は期待できません。

また、少なくとも私たちの経験では、初回の事前認定が非該当だったケースで、相手方保険会社が異議申立てをしてくれて後遺障害等級が認定されたというケースは見たことがありません。

 ですから、やはり後遺障害の申請は弁護士に依頼した方が適切な等級が認定される可能性が高まるといえるのではないかと思います。

 Cさんと同じように首や腰の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。ぜひ、お気軽にお問合せください。

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後遺障害診断書を作成してもらえず、裁判で後遺障害等級14級9号前提で和解できた事例

整骨院・接骨院で治療すると後遺障害等級が認定されないって本当?

投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(1)~頚椎捻挫~

2022-03-28

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

これから何回に分けて、私が2021年に担当した交通事故事案のうち、後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介したいと思います。

2021年に私が担当した事案で異議申立てを行った事例は5件ありましたが、実は、以下のようにその5件とも異議が認められるという結果を得ました。

Aさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
⇒本記事

Bさん:併合14級(頚椎・右肩)⇒併合12級(頚椎14級9号・右肩12級13号)
【速報】後遺障害等級認定事例(2)~右肩腱板損傷~

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎・腰椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

Dさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(4)右直事故~外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)~

Eさん:12級14号⇒9級16号(外貌醜状)
【速報】後遺障害等級認定事例(5) ~外貌醜状(顔面の醜状痕)~

異議申立てが認められる確率はかなり低く、2020年の統計では15%程度とされています。ですから、成功率100%は本当に偶然ではありますが、それでも当事務所所属の弁護士たちの異議申立て成功率は通算で50%くらいですので、全体の統計よりもかなり高い確率で成功しています。

それでは、今回はAさんの事例をご紹介します。

1.初回の申請は非該当

 Aさんは、信号のない交差点で右側の道路から一時停止無視で進入して来た加害者車両と衝突してしまいました。加害者車両は、Aさんの車両の運転席付近に衝突し、Aさんの車両は大きく損傷しました。運転していたAさんはかなり強い衝撃を受け、頚椎を負傷してしまいました(頚椎捻挫)。

 その後、Aさんは整形外科で治療を続けていましたが、首から肩にかけての痛みや腕の痺れがなかなか改善しませんでした。ところが、相手方保険会社は、交通事故から8ヶ月が経過した時点で治療費を一方的に打ち切ってしまいました。Aさんとしては、もう少し治療を続けたいという希望があり、当事務所に相談にいらっしゃいました。

 私たちは、ご依頼いただいた直後、相手方保険会社にもう少し治療費の支払いを延ばすように交渉しました。しかし、もう8ヶ月経過しているということで治療費の延長には応じませんでした。そこで、Aさんには一旦健康保険に切り替えて治療を継続してもらいました。

 それから2ヶ月ほどしてもAさんの症状にほとんど変化が見られなかったことから、主治医も交通事故から10ヶ月経過した時点で症状固定の診断をしました。

 そして、当事務所にて被害者請求で後遺障害申請をしました。しかし、残念ながら初回の申請では後遺障害等級は認められず、非該当という結果が通知されました。

 Aさんは、その間も自費で治療を続けるほど症状が残っており、非該当という結果には納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

 そこで、私たちは主治医に医療照会を行い、Aさんの交通事故直後から症状固定までの症状の経過などを回答書に記載してもらいました。また、症状固定後に自費で治療を続けている状況やAさんの異議申立て時点での症状についても報告書を作成して、異議申立てを行いました。

2.異議申立ての結果、14級9号が認定

 上記のように、私たちがAさんの後遺障害非該当の認定に対して異議申立てを行ったところ、異議が認められ、Aさんの頚椎捻挫後の症状について14級9号が認定されました。

 14級9号の場合には、骨折や脱臼などのいわゆる器質的損傷がXPやMRIなどの画像で証明できなくても認定されますが、受傷状況(事故状況)や症状経過等から総合的に判断されることになります。

 具体的な認定の基準は公表されていませんので、ここからは私たちの私見にはなりますが、過去の私たちの経験上は、症状固定後も自費で治療を継続している被害者の方が、症状固定時点で治療をやめた被害者の方に比べて異議申立てが認められやすい傾向があるように思います。

 交通事故の加害者側が被害者の治療費を負担しなければならないのは症状固定までで、症状固定後は相手方保険会社が治療費を負担してくれることはありません。ですから、その時点で治療をやめる方も多いですが、症状固定の診断を受けたからといって治癒する訳ではなく、症状は残ります。治療費が自己負担になったとしても治療を続けているという事情は、それだけ症状が重いという裏付けと考えられているのかもしれません。

 今回のAさんも、症状固定後も数ヶ月間自費で治療を継続しており、これが有利に働いた可能性があります。また、主治医が作成してくれた回答書にしっかりAさんの症状が残存していることが記載されていた点も異議が認められた要因になったと思います。

3.後遺障害等級と示談金の関係

 後遺障害等級が認定されるか否か、認定されるとして何級が認定されるかは、最終的な示談金の金額に大きく関わります。

 例えば、首のムチウチ(「頚椎捻挫」の診断)で治療期間が交通事故から半年くらいだった過失割合0:100の被害者の方の場合、後遺障害等級非該当(もしくは申請しなかった場合)であれば、示談金は通院慰謝料の約90万円程度となることが多いですが、14級9号の後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料や逸失利益なども加わり、最終的な示談金は300万円以上になることが多いです。

 このように、後遺障害等級が認定されるかどうかは交通事故被害者の示談にとってかなり重要です。

 今回のAさんの場合は、初回の後遺障害申請も当事務所で行いましたが、相手方保険会社に初回申請を任せて(これを「事前認定」といいます)納得の行く結果にならなかった場合でも、弁護士に依頼して異議申立てをすることができます。

4.まとめ

 今回は、後遺障害非該当から異議申立てによって14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 統計では、交通事故被害者の半数以上の方が頸椎(首)を負傷しているというデータもあり、今回のAさんと同じように首の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が首の後遺障害でお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。お困りことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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