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進路変更事故の過失割合とは?車線変更事故の基本割合と裁判でのケース別判断ポイントを弁護士が解説

2026-03-29

「直進していただけなのに、急に割り込まれて衝突した」
「ウインカーも出さずに車線変更されたのに、自分にも過失があると言われた」

交通事故の中でも、進路変更(車線変更)に伴う事故は非常に多く、かつ当事者間での認識のズレが生じやすい類型です。

被害者であっても、「前方不注視」などを理由に思わぬ過失割合を提示されるケースが後を絶ちません。

本記事では、進路変更の過失割合についての判断基準と、有利な解決(0:100や慰謝料増額)を勝ち取るためのポイントを詳しく解説します。

進路変更による交通事故は、多くが車線変更時の安全確認不足やウインカーの遅れなどが原因となって発生しています。

特に、直進車と進路変更車両が接触する事故では、双方に過失が認められるケースが多く、保険会社から提示される過失割合に納得できないという相談も少なくありません。

本記事では、二輪車や自動車の交通事故における進路変更の過失割合について、弁護士が実務上の判断基準や修正要素をわかりやすく解説します。

進路変更事故の過失割合について、基本割合やケース別の判断基準を理解しておくことは、交通事故の示談交渉や損害賠償請求を進めるうえでも非常に重要です。

1 判例で分かる「進路変更 過失割合」の基本と本記事の読みどころ

⑴ 進路変更と車線変更の違い:用語と事故類型の整理

進路変更」には、同一方向に進行しながら隣の車線に移る「車線変更」が含まれますが、同一車線内において左右に進行方向を変えることも「進路変更」に含まれます。

道路交通法第26条の2では、みだりにその進路を変更してはならないとされ、後続車両の速度や方向を急変させる恐れがあるときの進路変更は禁止されています。

⑵ 過失割合の基本ルールと裁判で重視されるポイント

実務上、後続直進車(A)と進路変更車(B)の事故における基本過失割合は「A 30:B 70」です(別冊判例タイムズ153図)。

「ぶつけられた側」である直進車にも30%もの過失がつく理由は、運転者には「前方や周囲の状況を注視し、危険を回避する義務」があるからです。

しかし、これはあくまで基本過失割合です。

以下の要素によっては、修正要素が認められることにより、過失割合が変動することになります。

例えば、後方から接近していた後続車両との距離が近い状態で車線変更を行った場合や、後方確認を十分に行わずに進路変更した場合には、進路変更車両の過失が重く評価される可能性があります。

逆に、直進車が速度超過で走行していた場合や、安全運転義務を怠っていた場合には、直進車側の過失割合が修正されるケースもあります。

合図(ウインカー)の有無とタイミング

車線変更禁止場所(イエローカット等)かどうか

初心者マークや高齢者マークの有無

双方車両の速度超過の程度

⑶ この記事で解決する疑問(判例から学ぶ具体的判断基準)

「どうすればこちらの過失をゼロ(0:100)にできるのか?」
「保険会社の提示額は適正なのか?」

本記事では、抽象的な法律論だけでなく、ドライブレコーダーの活用法や弁護士介入による増額事例など、実務に即した解決策を提示します。

2 車線変更事故で過失0にするには?~判例と実務の要件

⑴ 車線変更事故で過失0:100にするには?(判例で認められる条件)

基本過失割合が「後続直進車30:進路変更車70」である以上、直進車の過失を0にするには、強力な立証が必要です。

判例で後続直進車の過失0が認められる可能性が出てくるのは、以下のようなケースです。

①至近距離への割り込み:直進車の目と鼻の先に急に割り込まれ、ブレーキを踏む間もなく衝突した場合(回避可能性がない)。

②合図なしの急ハンドル:ウインカーを出さず、あるいは出した瞬間に車線変更を開始した場合。

③進路変更禁止場所での強行:黄色い実線の区間等、進路変更禁止場所での車線変更。

④後方から車線変更:隣の車線の前方を走行していた他の車両を追い抜いた直後に車線変更した場合。

⑵ 車線変更事故で過失0にするには(真横・側面衝突の特殊ケース)

通常、車線変更事故は「変更車の後部」と「直進車の前部」が接触することが多いですが、「真横同士」が接触するケースでは,直進車の過失0の主張が認められる可能性が出てきます。

論理構成:直進車から見て、相手が側面から突っ込んできた場合、「前方を注視していても防ぎようがない(被追突に近い状況)」といえます。

証拠の重要性:ドライブレコーダー映像が一番良いですが、双方車両の損傷部位や刑事記録等からも、内容によっては相手が並走状態から幅寄せしてきたことの証明になり得ます。

⑶ 後ろから/追突と進路変更の区別

「追突(0:100)」なのか「進路変更(30:70)」なのかも、賠償額を左右する大きな分岐点です。

追突と進路変更の区別については、次のとおり整理できるものと思われます。

進路変更事故:車線変更動作の「最中」または変更直後に衝突。

追突事故:車線変更が完全に「終了」し、前走車として安定走行に入った後に衝突。

3 弊所における解決事例~進路変更の過失割合

⑴ 並走状態からの車線変更により発生した事故について0:100で示談解決

本件事故は、依頼者運転の当方車両が片側2車線直線道路の第1車線を直進走行していたところ、第2車線を直進走行していた相手車両が、当方車両とほぼ並走状態になった際に第1車線への車線変更を開始し、既にほぼ真横にいた当方車両に衝突したもの。

裁判例やドライブレコーダー映像を示しながら主張を行い、依頼者の過失が0%であることを前提とした示談を実現しました。

⑵ ドライブレコーダー映像がないにもかかわらず10: 90で訴訟解決

本件事故は、依頼者運転の当方車両が第2車線を直進走行していたところ、第3車線で渋滞のため停止していた相手車両が、当方車両とほぼ横並びで相当接近した状態で、突如第2車線に向けて車線変更を開始し、ほぼ真横にいた当方車両に衝突したもの。

もっとも、本件についてはドライブレコーダー映像がなかったことから、事実関係(事故状況)自体も主張が食い違い、争点となっていました。

実際、相手方からは、「余裕をもって車線変更したものの、直進車が猛スピードで進行していたから衝突した」旨の主張が展開されていました。

この後にも触れますが、ドライブレコーダー映像がない場合、そもそもの事故状況について水掛け論になってしまうケースは多いです。

そのような状況ではありましたが、双方車両の損傷状況、物件事故報告書及び裁判例等を示しながら懸命に主張・立証を行い、裁判所から当方寄りの心証を得ることができました。

その結果、ドライブレコーダー映像がないケースであったにもかかわらず、依頼者の過失が10%であることを前提とした訴訟による解決を実現しました。

⑶ 事前に合図を出していたにもかかわらず10:90で示談解決

本件事故は、依頼者運転の当方車両が第2車線を直進走行していたところ、当方車両の左前方で第1車線を直進走行していた相手車両が、合図を出した上で2車線への車線変更を開始し、当方車両に衝突したもの。

相手車両は合図を出していましたが、タイミングが遅く不十分なものでした。進路変更する場合は3秒前から合図をしなければなりません(道路交通法施行令第21条1項)。

そのため、たとえ合図を出していたとしても、これは修正要素である「合図なし」に該当するため、依頼者に20%の減算修正がなされるべきであるとの主張を展開しました。

その結果、当方主張が全面的に認められ、相手車両は合図を出していたにもかかわらず、依頼者の過失が10%であることを前提とした示談による解決を実現しました。

4 裁判で争点になりやすい要素と証拠の集め方

⑴ ウインカー・合図の有無と安全確認の記録(ドライブレコーダー映像の活用)

「ウインカーを出した・出していない」は水掛け論となる典型です。

これを決定的に解決するのがドライブレコーダー映像です。

映像の解析:相手の車両が線を超える何秒前にウインカーが点滅したか。

音声記録:事故直後の車内の会話や、相手との立ち話(「すいません、見てませんでした」等の発言)も重要な証拠になります。

⑵ 速度・並走・ゼブラゾーンなど道路状況が与える影響

裁判では、現場の道路状況も細かく分析されます。

ゼブラゾーン(導流帯):車両の運転者等の意識としても、ゼブラゾーンにみだりに進入すべきではないと考えているのが一般的であるため、事故当時、直進車がゼブラゾーンを進行していた場合は、修正要素として、直進車側に10〜20%の過失が加算される可能性があります。

速度超過:直進車が制限速度を15km以上超過していた場合、修正要素として、直進車側に10〜20%の過失が加算される可能性があります。

また、交差点付近や駐車場の出入口付近では、車線変更や進路変更による事故が発生しやすくなります。

こうした場所では車両や自転車などさまざまな交通主体が混在するため、通常よりも高い注意義務が求められます。

⑶ 目撃証言・車両の接触痕跡・修理見積など裁判で有効な証拠

ドライブレコーダー映像がない場合、以下の「物的証拠」が頼りになります。

車両の損傷部位:双方車両のどの部分が損傷しているかによって、衝突時の進入角度を割り出し得ます。

実況見分調書:警察が作成する書類。事故現場の図面とともに、事故状況に関する当事者の認識が記録されています。

修理見積書・写真:衝撃の強さを証明し、速度超過の推認に役立ちます。

5 保険交渉・示談での過失割合の変動と賠償金の取り扱い

⑴ 保険会社の主張パターンと示談で注意すべき点

保険会社は、『判例タイムズ』の「基本割合(30:70)」を機械的に適用してくる傾向にあります。

「今回のケースは基本通りですから」と言われても、すぐに示談書にサインしない方がいいかもしれません。修正要素が見落とされている可能性があるためです。

⑵ 弁護士に依頼すると過失割合や賠償金はどう変わるか(無料相談・弁護士費用特約)

弁護士が介入すると、以下の2点で金額が変わる可能性があります。

①過失割合の適正化:見落とされた修正要素等があった場合、これらの要素を過失割合に反映するよう主張します。

②賠償基準の変更:事故で怪我をされていた場合、保険会社基準ではなく、裁判所基準(弁護士基準)で慰謝料等を計算します。
これにより、賠償額が2倍〜3倍になることも珍しくありません。
※ご自身の保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、実質負担0円での依頼が可能です。

⑶ 示談で納得できないときの対応

交渉が決裂した場合、以下の手続を検討することになります。

交通事故紛争処理センター(ADR):第三者機関による斡旋。

訴訟(裁判):裁判所における終局的な解決手続。

6 過失割合を争うための実務対応チェックリスト

⑴ ドライブレコーダー保存・証拠収集の具体的手順

ドラレコのSDカードを抜く: 事故後そのまま走行すると、データが上書きされる恐れがあります。すぐにバックアップを取りましょう。

現場写真の撮影:道路の状況、停止位置、破片の散らばり方等を撮影。

⑵ 過失割合の修正主張に有利なポイントと裁判での立証方法

「相手が後方や真横から車線変更してきた」
「相手がウインカーを出さなかった(出していたとしてもタイミングが遅すぎた)」
といった相手方の動きや、事故現場が進路変更禁止場所であったことを、ドライブレコーダー映像や現場写真等で立証することが重要です。

⑶ 弁護士法人・法律事務所の選び方と費用(受付/相談の流れ)

交通事故に特化しているか:交通事故の解決には、法的知識はもちろんですが、医学的知識(後遺障害)や保険の知識も必要な場合が多いです。
HPなどで、どの程度交通事故案件の実績があるかはチェックして相談する弁護士を決めた方が良いでしょう。

弁護士特約での対応が可能か:弁護士特約が利用できる場合には、弁護士費用のご負担は実質ゼロになります。

無料相談の活用:まずは「この状況で過失割合はどうなるか」を問い合わせてみましょう。

7 Q&A:よくあるパターン別の目安と予防策

⑴ 車線変更でよく出る過失割合パターン一覧

事故状況基本過失割合(直進車:変更車備考
通常の車線変更30:70基本形。直進車にも前方注視義務あり。
直進車がゼブラゾーンを走行40〜50:60〜50直進車の過失が加算される。
進路変更禁止場所での車線変更10:90進路変更禁止場所での車線変更は変更車の過失大。

⑵ 高速道路・駐停車それぞれの注意点

高速道路での進路変更は速度域が高いため、一瞬の判断ミスが重大な事故に繋がります。

特に首都高は、左側だけでなく右側にも出口や合流が多数ある上、JCT(ジャンクション)も多いことから、特に慎重な運転が必要です。

駐停車車両の回避するための車線変更についても、安易に直進車が譲ってくれると思わずに、余裕をもって車線変更しましょう。

⑶ 日常でできる予防策と万一の対応手順

ウインカーは3秒前:周囲に意思を伝える時間を確保する。

死角チェック(目視):ミラーに映らない斜め後方を必ず目視確認する。

「かもしれない運転」:隣の車が急に入ってくるかもしれないと予測して構える。

交通事故の過失割合は、事故状況や道路環境、双方の運転行動など複数の要素を総合的に判断して決定されます。

そのため、保険会社から提示された過失割合が必ずしも適正とは限りません。

示談交渉や損害賠償請求を進める際には、交通事故に詳しい弁護士へ相談することで、過失割合の修正や賠償額の増額が認められる可能性があります。

8 過失割合・示談金に納得がいかない場合は弁護士にご相談を

進路変更事故は、少しの事実認定の違いで、過失割合が「30:70」にも「0:100」にもなり得るデリケートな案件です。

保険会社の提示する割合や示談金は、あくまで彼らの基準であり、法的に絶対正しい「最終回答」ではありません。

弊所では、交通事故の被害者救済に力を入れており、初回相談は無料で承っております。

弊所は、多くの保険会社の弁護士特約に対応していますので、弁護士特約が利用できる場合には、弁護士費用のご負担はありません。

まずはお手元の事故資料やドライブレコーダーの映像をご準備の上、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)

進路変更事故の過失割合は本当に30:70?直進車が0になるケースと修正要素を弁護士が解説

2026-02-22

今回のテーマは、「進路変更事故の過失割合」です。

進路変更事故の過失割合はなぜ「30:70」と言われるのか?

その根拠となる「判例タイムズ153図」を弁護士が徹底解説しつつ、直進車の過失が0になるケースや、ウインカーなし等の修正要素を具体例とともにご紹介します。

1.はじめに

進路変更(車線変更)事故の過失割合は、「30:70」と言われることが多いですが、すべてのケースで当てはまるわけではありません。

✔ 直進車の過失0になるケース

✔ 車線変更のタイミング次第で過失割合が修正されるケース

✔ 保険会社の説明が必ずしも正しいとは限らないケース

進路変更事故の過失割合は、事故の状況次第で大きく変わります。

本記事では、直進車と進路変更車との間で発生する交通事故について、

・進路変更事故の基本的な過失割合
・30:70が前提とする事故状況
・過失割合が修正される具体例
・保険会社との交渉で注意すべきポイント
・弁護士が介入すべき判断基準

を、交通事故実務の視点からわかりやすく解説します。

実際に、進路変更事故に遭った方の多くが、保険会社から「直進車が3割、進路変更した側が7割です」と説明を受け、「3割もこちらが悪いのだろうか?」と疑問を感じながらも、保険会社が言うなら「進路変更事故はそういうものなのだろう」とそのまま受け入れてしまっています。

しかし、交通事故実務の視点から見ると、進路変更事故だからといって一律に30:70と判断されるわけではありません。

進路変更事故における過失割合の考え方を正しく理解するためには、まず、なぜ「30:70」と言われることが多いのか、その根拠と前提となる事故状況を知る必要があります。

次では、進路変更事故の過失割合の根拠として、実務上参照されている「判例タイムズ」と基本過失割合について詳しく解説します。

2.進路変更事故の過失割合

進路変更事故における過失割合は、一般的には「後続直進車30%・進路変更車70%」とされることが多いです。

これは、進路変更を行う車両には、後方を十分に確認し、安全に進路変更を行う注意義務があるためです。

もっとも、この「30:70」はすべての進路変更事故に当てはまるものではなく、事故の状況によって過失割合が修正されるケースも少なくありません。

特に、以下のような場合には、直進車の過失が軽減されたり、過失なし(0%)と判断される可能性があります。

・進路変更車がウインカー(合図)を出さずに進路変更した場合 

・進路変更車が直進車の真横や後方から、急に車線変更してきた場合 

・進路変更車がゼブラゾーンをまたいで進入してきた場合 

・交差点付近で無理な進路変更が行われた場合 

・駐車場内での進路変更・接触事故の場合

なぜ進路変更事故で「30:70」と言われるのか、また、どのような事故状況を前提としているのかについて、次章で詳しく解説します。

3.なぜ「30:70」と言われるのか-判例タイムズと基本過失割合-

進路変更事故の基本的な過失割合は、道路交通法上の「進路変更時の安全確認義務」を前提に判断されます。

特に、

・ウインカー(合図)の有無

・進路変更開始時の位置関係や確認状況

・進路変更時の速度差

といった要素が、過失割合を左右します。

進路変更事故における30:70という過失割合の根拠として実務上参照されているのが、別冊判例タイムズ38号(以下「判例タイムズ」といいます。)という雑誌に掲載されている「153図」です。

判例タイムズは、日本国内で年間30万件を超える交通事故が発生している実情等を鑑み、これまでの交通事故過失割合に関する考え方を集積し、早期の解決・早期の被害者保護のために事故状況をデフォルメし、類型化したうえで、あらかじめ類型ごとの基本的な過失割合等を定めているものです。

裁判官や弁護士等の専門家も多くの場合、この判例タイムズを参考にして過失割合を議論・認定しています。

さて、判例タイムズ153図は、「車線変更車と後続直進車との事故」を類型化したもので、進路変更車70%、後続直進車30%という基本過失割合が示されています。

判例タイムズ153図
判例タイムズ153図

※基本過失割合(後続直進車Ⓐ30%:進路変更車Ⓑ70%)

保険会社が進路変更事故について「30:70です」と説明する場合、その多くは、この判例タイムズ153図を前提としています。

もっとも、判例タイムズは結論を自動的に導くものではありません。重要なのは、「153図」がどのような事故状況を前提としているのかを正確に理解することです。

4.判例タイムズ153図が前提としている進路変更事故の状況

判例タイムズ153図は、進路変更車70%、後続直進車30%という基本過失割合を示しています。

この点、「なぜ後続直進車に30%も過失があるのか」と疑問に思われる方も少なくないのではないでしょうか。

そこで、まず、判例タイムズ153図が前提としている事故状況及び後続直進車の基本過失の内容について解説します。

この点、判例タイムズは、153図について、「あらかじめ前方にある車両が適法に進路変更を行ったが、後方から直進してきた他の車両の進路と重なり、両車両が接触したという通常の態様の事故を想定している」と明確に記載しています。

ポイントとなるのは、その位置関係です。

すなわち、判例タイムズでは、「進路変更は、通常、後続直進車の速度又は方向を急に変更させることとなるから、基本的には後続直進車に有利に考えるべきであるが、後続直進車としても、進路変更車があらかじめ前方にいるのであるから、その合図等により、進路変更を察知して適宜、減速等の措置を講ずることにより衝突を回避することは、前車が進路変更と同時に急制動をかけたような場合でもない限り、一般にさほど困難ではない」としています。

簡単に言えば、後ろから走行してきたのだから、前方にいる車両の動向に注意を払い、その動向に合わせて危険を回避することは比較的容易なのであるから、それにもかかわらず漫然と直進走行した後続車には過失があり、その程度は30%ほどである、と言っているわけです。

ただ、逆にいえば、「進路変更」の態様にも種々あり、「合図等により、進路変更を察知して適宜、減速等の措置を講ずることにより衝突を回避する」ことが容易ではないという具体的な状況であれば、判例タイムズ153図が想定している30%の過失割合を後続直進車に負わせるべきではありません。

したがって、一律に「進路変更事故では後続直進車も3割の過失を負う」という理解は誤りであり、結局は具体的な事故状況によって判断されるのです。

5. 進路変更事故の過失割合が修正される代表的なケース

上でご説明したように、進路変更事故における過失割合は、基本的には「進路変更車70%・直進車30%」とされることが多いですが、事故の状況によっては、この割合が修正されるケースも少なくありません。

特に、進路変更の方法や場所、相手方との位置関係によっては、直進車の過失が軽減されたり、過失なし(0%)と判断されることもあります。

① ゼブラゾーンでの進路変更

ゼブラゾーンは、車両の進入が原則として想定されていない区画であり、そのゼブラゾーンを横断・進入して進路変更を行った場合には、進路変更車の過失が通常より重く評価される傾向があります。

このようなケースでは、直進車に結果予見可能性や回避可能性があったとは言い難く、直進車の過失が0%と判断される例もあります。

② 交差点直前での車線変更

交差点付近では、右左折車や信号の存在などにより、周囲の交通状況が複雑になります。

そのような場所で無理な車線変更や進路変更が行われた場合、進路変更車に高度な注意義務が課されるため、基本の「30:70」から進路変更車側の過失が加重されることがあります。

特に、交差点直前での急な車線変更は、直進車にとって回避が困難であるとして、過失割合が修正されやすい典型例です。

③ 駐車場内での接触事故

駐車場内で発生する進路変更・接触事故については、一般道路とは異なる注意義務が問題となります。

駐車場内では低速走行が前提となる一方で、車両の進行方向が定まっていないことも多く、一律に判例タイムズの基準が適用されるわけではありません。

そのため、駐車場内の事故では、事故状況次第で過失割合が大きく修正されることがあります。

④ 自転車との進路変更事故

進路変更事故の相手方が自転車である場合には、自動車同士の事故とは異なる評価がなされることがあります。

自転車は交通弱者として保護される側面がある一方で、自転車側の走行位置や進行方向、速度によっては、自転車側にも過失が認められるケースがあります。

このような事故では、単純に「進路変更=7割」とはならず、個別の事故状況に応じた判断が不可欠です。

このように、進路変更事故の過失割合は、事故の場所や進路変更の態様によって大きく左右されます。

過失割合を正しく判断するためには、単に事故類型を見るだけでなく、法律上の「過失」の考え方を理解することが重要です。

6.そもそも法律上の「過失」とは何か

過失割合を考えるうえで欠かせないのが、「過失」という概念の理解です。

それでは、「過失」とは何でしょうか?

過失とは、結果を予見することができたにもかかわらず、その結果を回避するための行動を取らなかったこと、すなわち、結果予見可能性を前提とした結果回避義務違反を意味します。

判例タイムズ153図が想定する進路変更事故では、進路変更車は、後続の車両の有無及び動向を確認すること(予見可能性)は容易であり、自らがその進路上に進入するわけですので、その回避(回避可能性)も通常容易にできるわけです。

その上で、判例タイムズ153図が想定する進路変更事故では、双方の速度に差のあることが前提となる(すなわち、後続直進車の速度が進路変更車より高速であるか、進路変更時に進路変更車が減速するか、又は後続直進車が加速中であるかのいずれか)ところ、このような進路変更は、通常、後続直進車の速度又は方向を急に変更させることとなる可能性が高いため、進路変更車により重い注意義務が課せられているのです。

他方で、後続直進車については、進路変更車の合図等により、進路変更を察知して(予見可能性)適宜、減速等の措置を講ずる(回避可能性)ことができるということです。

7.過失割合の争い方~過失割合は「事実」と「評価」の二段階で決まる~

⑴ まず問題となる「事実」の争い

進路変更事故の過失割合を検討する際、最初に問題となるのは、判例タイムズ153図の前提となる事実関係が本当に存在するのかという点です。

これが、過失割合における第一の争い、すなわち「事実レベルの争い」です。

実際のご相談であった事例ですが、直進車の運転手が「進路変更車が後方から近づいてきて、真横あたりで一時的に並走したかと思った直後、いきなり進路変更してきたため、回避できずに衝突された」と主張しました。

これに対し、進路変更車の運転手は、「すでに進路変更中であり、その最中に後方の直進車が衝突してきた」と主張していました。

ここで争われているのは、進路変更車が直進車の前方に位置していたのか、それとも真横付近だったのかという点です。

判例タイムズ153図は、進路変更車が直進車の前方に位置していることを前提に、直進車にも結果予見可能性・結果回避可能性があったとして3割の過失を認めています。

しかし、直進車の運転手の主張どおり、真横付近から突然進路を塞がれたのであれば、直進車について結果予見可能性や回避可能性が否定され、無過失と評価される可能性も十分にあります。

そのため、どちらの主張する事故状況であったのかは極めて重要なポイントでした。

このような事実の争いは、ドライブレコーダー、防犯カメラ、警察の実況見分調書などの証拠によって裏付けられるかどうかが大きなポイントです。

上記実際にあったご相談においても、被害車両(直進車)にドライブレコーダーが搭載されており、これを確認したところ、直進車運転手の主張のとおりであったことが確認され、0:100での交渉を行うことが出来ました。

反対に証拠によって立証できなければ、一般的な進路変更事故として30:70と評価されてしまう可能性もあります。

⑵ 事実に争いがなくても「評価」で争いになることがある

事故の事実関係が明確であっても、過失割合が争われるケースがあります。

これが、過失割合における第二の争い、すなわち「評価」の問題です。

こちらも実際にあったご相談ですが、直進車の前方に別の車両が存在し、直進車はその車両に追従して走行していました。

その状況下で、進路変更車が前方車両を追い抜いた直後、ほとんど間を置かずに直進車の前方へ進路変更し、衝突したという事故です。

この事例の場合、事故状況そのものに争いはありませんでした。

問題となるのは、直進車にどこまで結果予見可能性や回避可能性があったと評価すべきかという点です。

直進車は、前方車両に続いて走行できるという一定の信頼のもとで運転しており、その直後に第三の車両が割り込んでくることまで予測すべきか否かは評価が分かれます。

一方で、進路変更車については、後続車両の存在を十分に確認せずに進路変更を行っている点で、通常の過失を超える「著しい過失(脇見運転や酒気帯びなど通常想定される以上の不注意)」を問うべきかどうかが問題となります。

この点は、判例タイムズ等の事故類型から自動的に結論が導かれるものではなく、裁判例や過失概念に照らした法的評価に委ねられます。

この事例では、先行車が通過した直後に進路変更をしたことが進路変更車の過失を加重させる事由であるとして、後続直進車15:進路変更車85での解決となりました。

⑶ 小括~過失割合は「事実」と「評価」の二段階で決まる~

以上のとおり、進路変更事故を含む交通事故における過失割合の争いは、

① 判例タイムズ153図の前提となる事実が存在するのかという事実認定

② その事実をどのように法的に評価するのかという評価

という二段階のいずれの問題であるかをきちんと整理したうえで、証拠を収集しなければならないのか、法的評価を固めなければならないのか等方針を決めていく必要があるのです。

8.過失割合の交渉で弁護士が果たす役割

過失割合の交渉において、弁護士は法律のプロであると同時に、事実認定のプロでもあります。

法的判断には、事実の認定と法律への当てはめ(評価)があります。

どの事実が争点なのか、その立証のためにどの証拠が必要なのか、証拠を収集するためにどのような手続きが必要なのか。

弁護士であれば、ドライブレコーダーの開示請求、防犯カメラの確認、警察の実況見分調書の取得などを通じて、事実認定を補強できる場合があります。

他方で、このような主張の構成、証拠収集、法的評価までを、被害者ご本人が一人で行うことは現実的には極めて困難です。

だからこそ、交通事故、とりわけ過失割合に精通した弁護士の関与が重要になります。

9.交通事故は「誰に相談するか」で結果が大きく変わる

進路変更事故の過失割合については、保険会社の説明が必ずしも正しいとは限りません。

保険会社は、判例タイムズの基本過失割合を前提に「30:70」と説明することが多いですが、事故の具体的な状況や証拠次第では、過失割合が修正される可能性は十分にあります。

しかし、過失割合の判断や修正には、事故状況の整理、証拠の収集、法的評価が必要となるため、被害者ご本人が保険会社と対等に交渉することは簡単ではありません。

当事務所では、進路変更事故を含む交通事故について、

・過失割合に関する無料相談 

・弁護士費用の事前説明 

・保険会社との示談交渉の代行 

を通じて、事故状況に即した適正な過失割合の判断と、請求できる損害賠償額の最大化をサポートしています。

「進路変更事故だから過失割合は30:70で仕方がない」と諦めてしまう前に、一度、専門家に相談してみることをおすすめします。

ご相談の結果、必ずしもご依頼いただく必要はありません。

まずは、ご自身の事故状況がどのように評価されるのかを確認するだけでも構いません。

当事務所では、進路変更(車線変更)事故を含む交通事故のご相談は無料でお受けしております。

全国からご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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投稿者プロフィール

牧野孝二郎 弁護士

これまで、交通事故・離婚・相続・労働などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年3月 優誠法律事務所設立
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)

進路変更事故の過失割合はどう決まる?|車線変更時の交通事故の過失を弁護士がケース別に解説【交通事故の過失割合コラム】

2025-12-21

今回のテーマは、車線変更(進路変更)の交通事故の過失割合です。

進路変更中の交通事故では、「どちらにどれくらいの過失割合があるのか」が大きな争点になります。

特に、

・直進していただけなのに、保険会社から3割の過失を主張された 

・ウインカー(合図)を出していなかったと言われ、不利な判断をされた 

・車線変更のタイミングが問題にされた 

といったケースで、「この過失割合は本当に正しいのか」と疑問を持たれる方が非常に多くいらっしゃいます。

進路変更事故の過失割合は、事故の状況や道路環境、当事者の位置関係などによって判断が分かれ、保険会社の説明が必ずしも正しいとは限りません。

例えば、進路変更しようとした車両と後続の直進車が衝突した事故の基本過失割合は進路変更車70%:直進車30%ですが、ウインカー(合図)なしで進路変更した場合は、直進車側の過失が大きく減る、または0%と判断される可能性があります。

また、ほぼ並走状態で進路変更しようとして接触した事故であれば、直進車側で事故を回避することは難しく、進路変更車100%:直進車0%と判断されるケースもあります。

交通事故の分野で広く参照される最新版の「別冊判例タイムズ38号」(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)では、交通事故の事故態様・道路状況ごとに、事故当事者の過失割合の判断基準が提示されていますが、この中の【153】図は、「進路変更車と後続直進車の四輪車同士の事故」として、過失割合が設定されています。

本記事では、この【153】図を基に進路変更事故における基本的な過失割合の考え方や判断の流れを整理した上で、その基本過失割合に固執する相手方保険会社の主張を覆し、依頼者の過失を軽減した当事務所の具体的な解決事例をご紹介します。

1. 進路変更事故における過失割合の基本~判例タイムズ【153】図とは?~

判例タイムズ【153】図は、あらかじめ前方にある車両(進路変更車)が進路変更を行ったものの、後方から直進してきた他の車両(後続直進車)の進路と重なり、両車両が接触したという態様の事故について過失割合の基準を示したものです。

この図が定める基本の過失割合は、次のとおりです。

・進路変更車 70%

・後続直進車 30%

それではなぜ、このような割合になるのでしょうか?

まず、道路交通法上、進路変更車は、みだりにその進路を変更してはいけません(法26条の2第1項)。

また、進路変更車は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度または方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはなりません(法26条の2第2項)。

進路変更車にはこのような義務が課されているため、基本的には進路変更車の過失が大きくなるのです。

一方、後続直進車についても、道路交通法上、安全運転の義務(法70条)を負っています。

これは、車両の運転者は、当該車両のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し(安全操作履行義務)、かつ、道路、交通及び当該車両の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない(安全状態確認義務)というものです。

あらかじめ前方にいる進路変更車の進路変更は、進路変更と同時に急ブレーキを掛けたような場合でもない限り予測可能な運転行動であることもあり、後続直進車についても過失が問われることになるのです。

このように、判例タイムズ【153】図は、上記で示した進路変更車の過失と後続直進車の過失の割合を、7対3で評価したものといえます。

2.進路変更事故の過失割合はどのような流れで判断されるのか

進路変更事故における過失割合は、感覚や一方的な主張で決まるものではなく、一定の判断プロセスに沿って検討されます。 

一般的には、以下のような流れで判断されるのが基本です。

① どちらが進路変更を行った車両か 

② 相手車両は直進中であったか 

③ 進路変更の合図(ウインカー)が適切に出されていたか 

④ 前方・後方の位置関係や並走状態であったか 

⑤ 衝突時の速度や回避の可能性 

⑥ 道路交通法に違反する運転がなかったか 

これらの要素を総合的に検討したうえで、判例タイムズ【153】図などの基準を参考にしながら、過失割合が判断されます。

そのため、保険会社が示す過失割合が、必ずしも事故状況を正確に反映しているとは限りません。

3.過失割合を修正する「修正要素」の詳細

判例タイムズ【153】図の過失割合である30%(後続直進車):70%(進路変更車)は、あくまでも「基本の」過失割合です。

一方で、判例タイムズ【153】図では「修正要素」も定められており、個別の状況に応じて過失割合が修正されることになります。

このうち、進路変更車の運転に関する修正要素は次のとおりです。

①進路変更禁止場所 -20%

進路変更車が、進路変更禁止場所で進路変更をしていた場合、後続直進車について20%の減算修正がなされます。

②合図なし -20%

進路変更の合図は、後続直進車の前方注視義務違反の基礎として重要な意味を持つため、進路変更車が合図をしていなかった場合、後続直進車について20%の減算修正がなされます。

③著しい過失 -10%

例として、わき見運転や携帯電話の画像を注視しながらの運転などが挙げられます。進路変更車に著しい過失がある場合、後続直進車について10%の減算修正がなされます。

④重過失 -20%

重過失は、著しい過失よりもさらに重い、故意に比肩する重大な過失をいい、例として、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転が挙げられます。進路変更車に重過失がある場合、後続直進車について20%の減算修正がなされます。

例えば、進路変更車が、進路変更禁止場所で進路変更したことにより交通事故が発生した場合、後続直進車について20%の減算修正がなされることから、後続直進車の過失割合は10%(基本過失割合30%-修正要素20%)になります。

4.判例タイムズ【153】図の適用範囲

冒頭述べたとおり、判例タイムズ【153】図は、あらかじめ前方にある車両(進路変更車)が進路変更を行ったものの、後方から直進してきた他の車両(後続直進車)の進路と重なり、両車両が接触したという態様の事故について過失割合の基準を示したものです。

なお、進路変更事故といっても、すべての事故が必ずしも判例タイムズ【153】図に当てはまるわけではありません。

事故が発生した場所や当事者の交通手段によっては、過失割合を判断する際に重視される要素が大きく異なる場合があります。

例えば、

・交差点付近で進路変更を行った結果、事故が発生したケース 

・ゼブラゾーンへの進入中に進路変更して接触した事故 

・駐車場内での車両同士の接触事故 

・自転車と自動車との間で発生した進路変更事故 

などでは、車線の明確性や進行優先関係、安全確認義務の範囲などが問題となり、【153】図の基本的な過失割合がそのまま適用されないことも少なくありません。

そのため、例えば次の場合は本基準の対象外となり、具体的事情を考慮して過失割合を検討することになります。

①進路変更車が、隣の車線の前方を走行していた他の車両を追い抜いた直後、進路を変えて当該車両の進路前方に出たところ衝突した場合

②進路変更車が、進路を変更した後の車線における前車との車間距離が十分ではなかったため、車線を変更した後、前車への追突を避けるために直ちに急ブレーキを掛けたために衝突した場合

③進路変更を完了した後の進路変更車に対して、後続直進車が追突した場合。

5.保険会社が主張する過失30%を0%にした解決事例

ここでは、相手方保険会社が杓子定規に判例タイムズ【153】図の基本過失割合30%(後続直進車):70%(進路変更車)を主張してきたにもかかわらず、当事務所がそれを覆した具体的な解決事例をご紹介します。

⑴ 事案の概要と相手方の主張

当方車両(依頼者):後続直進車

相手車両:進路変更車

事故状況:当方車両が、片側2車線直線道路の第1車線を直進走行していたところ、第2車線を直進走行していた相手車両が第1車線への車線変更を開始し、当方車両に衝突したもの。

相手方の主張:判例タイムズ【153】図に基づき、基本過失割合である30%(後続直進車):70%(進路変更車)を主張。

⑵ 当事務所による反論と決定的な証拠の立証

当事務所は、基本過失割合の適用を安易に認めず、事故態様の詳細な立証に注力しました。

まず、当方車両に備え付けられていたドライブレコーダーの映像を分析しました。

その上で、本件事故当時、第2車線にいた相手車両が車線変更を開始したタイミングが、当方車両とほぼ並走状態のときであったこと、そのため相手車両はほぼ真横にいた当方車両に一方的に衝突したものであることを指摘しました。

また、当方車両を運転していた依頼者としても、ほぼ並走状態の相手車両が突然進路変更してくることなど予見することはできません。

そのため、依頼者には過失がないことも併せて主張しました。

その他にも、本件事故は判例タイムズ【153】図の適用範囲外であることを主張したり、同様の事故について直進車の過失を否認した裁判例を提示しました。

⑶ 解決結果と意義

このような主張立証活動の結果、相手方保険会社は、当事務所の主張を受け入れ、過失割合0%(当方車両):100%(相手車両)での解決をすることができました。

本事例は、判例タイムズ【153】図はあくまで「基準」であり、絶対ではないことを示しています。

保険会社が主張する基本過失割合に対して納得できない場合、客観的な証拠(特に車両の損傷状況やドラレコの映像)を踏まえて、基本過失割合からの修正を主張できるかどうかが結果を大きく左右します。

6.よくある質問(進路変更事故の過失割合)

Q.保険会社が提示する過失割合は、必ず従う必要がありますか?

A.いいえ、必ずしも従う必要はありません。 
示談が成立する前であれば、事故状況や証拠をもとに、過失割合の修正や交渉を行うことが可能です。
特に、進路変更事故では、ウインカーの有無や車両の位置関係、当時の速度などが十分に検討されていないまま、保険会社の杓子定規な考えだけで過失割合が提示されるケースも少なくありません。

Q.過失割合について弁護士に相談すると、費用はかかりますか? 

A.事務所によって異なりますが、交通事故については「無料相談」を実施している弁護士も多くいます。 当事務所でも、進路変更事故を含む交通事故のご相談は無料でお受けしています。

Q.どの段階で弁護士に依頼すべきでしょうか? 

A.保険会社から過失割合の提示を受けた段階、または示談書に署名する前にご相談いただくのが望ましいです。一度示談が成立すると、その後に過失割合を修正することは原則として困難になります。

7.まとめ

保険会社が提示する過失割合は、必ずしも正しいとは限りません。

交通事故の被害に遭われた際、相手方保険会社からは、保険会社側の視点に基づいた被害者にとって不利な過失割合を提示されることがあります。

また、判例タイムズ【153】図のように、後続直進車に基本的に30%の過失が課せられる類型の事故では、この30%をいかに減らすかが、最終的に手元に残る賠償額に直結します。

ご自身の過失割合に疑問や不満をお持ちでしたら、示談に応じる前に、交通事故の専門知識を持つ弁護士にご相談ください。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

交通事故の過失割合と慰謝料の関係とは? 弁護士が解説する対処法と無料相談

2025-10-27

交通事故で「過失割合」が争点になると、慰謝料の金額にも大きく影響します。

たとえば1割の過失修正で数十万円以上の違いが出ることも珍しくありません。

本記事では、過失割合と慰謝料の関係、保険会社との交渉の流れ、そして実際に過失割合を有利に修正し、慰謝料を獲得できた事例を解説します。

交通事故はいつ、どこで起こるかわかりません。特に、多くの車両や歩行者が行き交う駐車場内の事故は、誰もが遭遇する可能性があります。

公道とは異なり、明確なルールが定まっていないことが多い駐車場内での事故は、当事者同士の主張が食い違い、話し合いが難航する傾向もあります。

「バックしていたところ、その途中で相手が急に突っ込んできた」、「いや、私はずっと停車していた」等の水掛け論が続く中で、どのようにして正しい過失割合を導き出し、納得のいく解決を目指せば良いのでしょうか。

基本的に鍵となるのは客観的な証拠であり、その代表格はドライブレコーダー映像防犯カメラ映像です。

もっとも、本稿では、訴訟において相手方から提出された防犯カメラ映像と、それを基に作成された「鑑定書」の信用性を否定することに成功し、過失割合を有利に修正できた事例も紹介いたします。

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1.駐車場内の事故における過失割合の考え方

駐車場内の事故における過失割合を検討するにあたっては、東京地裁民事交通訴訟研究会が編集した別冊判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準【全訂第5版】)が重要な参考資料となります。

この判例タイムズには、様々な駐車場内の事故類型について、基本となる過失割合が示されています。

四輪車同士の事故については、3つの事故類型が定められています。

⑴ 通路の交差部分における四輪車同士の出会い頭事故【判例タイムズ334図】

基本過失割合は、直進又は右左折のために進入した車(Ⓐ)50%:直進又は右左折のため交差通路から進入した(Ⓑ)50%となります。

判例タイムズ334図

これは、交差部分に進入した四輪車同士の出会い頭の衝突事故が発生した場合、原則として、双方が同等の責任を負うとされているためです。

⑵ 通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故【判例タイムズ335図】

基本過失割合は、通路進行車30%(Ⓐ):駐車区画退出車(Ⓑ)70%となります。

判例タイムズ335図

これは、通路進行車の方が優先であり、駐車区画退出車の方が重い注意義務が課されているため、事故が発生した場合は、原則として駐車区画退出車が相対的に重い過失責任を負うとされているためです。

⑶ 通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との事故【判例タイムズ336図】

基本過失割合は、通路進行車80%(Ⓐ):駐車区画進入車(Ⓑ)20%となります。

判例タイムズ336図

これは、駐車場の特性上、駐車区画進入車が駐車行為に入っている場合には駐車区画進入車が優先となり、通路進行車の方が重い注意義務が課されているため、事故が発生した場合は、原則として通路進行車が相対的に重い過失責任を負うとされているためです。

もっとも、これらの基本過失割合は、あくまで「スタートライン」に過ぎません。

実際は、「修正要素」が加味されて最終的な過失割合が決定されるためです。

また、そもそも、これらの基本過失割合を適用すべきか否かが問題になることがあります。

例えば、通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故(【判例タイムズ335図】)であったとしても、通路進行車が急制動の措置をとっても停止できない距離に近づいた段階で駐車区画退出車が通路への進入を開始した場合は、基本過失割合(通路進行車30%:駐車区画退出車70%)によらず、通路進行車の過失は問われるべきではない(過失0%)とする考え方もあるところです。

2.過失割合が慰謝料に与える影響

過失割合が変わると、慰謝料・治療費・休業損害といった損害賠償額に直接影響します。

① 過失割合による金額差の具体例

例えば、慰謝料300万円が認定された場合でも、過失割合が20%であれば被害者が実際に受け取れる金額は240万円に減額されます。

さらに、過失割合が30%に上がると210万円となり、1割の違いで数十万円もの差が生じます。

このように、過失割合の修正は慰謝料の増減に直結するため、交渉や裁判において極めて重要な争点となります。

② 後遺障害・逸失利益がある場合の影響

後遺障害が認定された場合や逸失利益が発生するケースでは、過失割合の修正がさらに大きな金額差を生み出します。

例えば、後遺障害等級が認められた場合の賠償額は数百万円から数千万円に及ぶこともあり、過失割合が1割変わるだけで数百万円単位の増減となることもあります。

したがって、後遺障害や逸失利益が関わる事案では、弁護士の専門的な判断を得ながら適正な過失割合を主張することが極めて重要です。

3.保険会社との示談交渉の流れと注意点

交通事故後は、まず任意保険会社から示談金額が提示されます。

しかし、この提示額は適正な水準(裁判所基準)よりかなり低いことが多いのが実情です。

被害者側が正しい計算方法や基準を知らなければ、不当に低い金額で解決してしまう可能性があります。

弁護士に依頼すれば、交渉や裁判で適正な額を請求できるため、結果として大幅に増額されるケースも少なくありません。

4.弁護士に依頼するメリットと費用対効果

弁護士に依頼する最大のメリットは、損害賠償請求額を適正な水準に近づけられる点です。

多くの法律事務所では交通事故の相談を無料で受け付けており、着手金なし・成功報酬型で依頼できる場合もあります。

弁護士費用が発生しても、最終的な慰謝料や休業損害が増額されれば被害者にとって大きなメリットとなります。

5.客観的証拠の代表格であるドライブレコーダー映像・防犯カメラ映像

交通事故事件において、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像は非常に重要な資料です。

なぜなら、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像は、当事者の記憶や主観に頼ることなく、事故の状況が客観的に記録されているためです。

特に、以下のような場面でその真価を発揮します。

① 事故発生の瞬間

衝突時の映像は、接触の角度や衝撃の強さを正確に記録します。

② 当事者間の主張の食い違い

相手方から「急ブレーキをかけた」「猛スピードだった」など、事実と異なる主張をされた場合、ドライブレコーダー映像が反論の決定的な証拠となります。

③ 加害者特定の困難な事故

当て逃げ事故や、後方からの追突事故など、加害者の特定が難しい場合でも、ドライブレコーダー映像から車種やナンバープレートを特定できる可能性があります。

しかし、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像は万能ではありません。

映像が不鮮明であったり、複数の車両や歩行者が絡む複雑な状況では、映像解析なしで正確に分析することは困難です。

また、相手方から「映像だけでは速度はわからない」などと反論されるリスクもあります。

こうした事態を回避し、より説得力のある証拠を提示するために、専門業者による映像解析を依頼する方もいらっしゃいます。

6.専門業者による鑑定書

ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像の解析を専門とする業者は、単なる映像の再生・提示にとどまらず、以下のような分析を行います。

① フレームごとの詳細な解析

1秒間に数十コマという高速で記録された映像を、コマ送りで詳細に分析します。

これにより、事故発生の瞬間の車両の動きや、ブレーキランプの点灯タイミングなどを正確に把握しようとします。

② 速度の特定

映像内に映り込んでいる物体(道路標識、白線、隣の車両など)との相対的な動きを解析し、衝突時の正確な速度を算出します。

これは、相手方の「猛スピードだった」という主張を覆す上で重要な分析となります。

③ デジタル処理による映像補正

映像のブレやノイズを除去し、ナンバープレートや信号の色などを鮮明にします。

これにより、より正確な事実関係の確認が可能となります。

④ 専門的な意見書の作成

これらの分析結果を、詳細な図やグラフ、そして専門家の見解を添えた鑑定書としてまとめます。

この鑑定書は、裁判所や保険会社に対し、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像を補強するために提出されることがあります。

.鑑定書に基づく相手方主張を排斥し過失割合を有利に修正できた事例

⑴ はじめに

上で客観的証拠の重要性をご説明しましたが、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像の鑑定書も万能ではありません。

以下では、訴訟において、鑑定書に基づく相手方主張を排斥し、過失割合を有利に修正できた事例を紹介いたします。

⑵ 今回の依頼者

今回の依頼者は、コンビニの駐車場内において、自動車を運転して通路を進行していました。

前方では相手車両も通路を進行していましたが、通路左側の駐車区画に進入し、全ての車輪が駐車区画に収まりました。

そのため、依頼者は、引き続き通路を進行していたところ、駐車区画内にいた相手車両が後退を開始し、依頼者の車両と衝突するに至りました。

今回の事故は、先程紹介した3つの類型のうち、一見すると通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との事故【判例タイムズ336図】に該当します。

そのため、基本過失割合は、通路進行車である依頼者80%:駐車区画進入車である相手方20%になりそうです。

しかしながら、「・・駐車区画進入車の全ての車輪がいったん駐車区画内に収まった後に、駐車位置の修正等のため、再発進して通路に進入する場合は、本基準によらず、【335図】の基準を参考にして過失相殺率を検討すべきである。」との考え方があります。

【335図】の基準とは、先程紹介した3つの類型のうち(通路進行車30%:駐車区画退出車70%)を指します。

そのため、本件においては、【336図】の基本過失割合(80:20)を適用すべきではなく、【335図】の基本過失割合(30:70)を適用すべき旨の主張を展開しました。

⑶ 相手方の主張~判例タイムズ336図で過失割合80:20~

相手方は、「そもそも通路左側の駐車区画には進入していない」と主張し、その証拠として防犯カメラ映像と、解析業者が作成した鑑定書を証拠として提出しました。

たしかに、防犯カメラ映像に映っている車両は、通路左側の駐車区画には進入していないようにも見えました。

しかしながら、防犯カメラ映像に映っている車両は著しく不鮮明であったことから、そもそも本件事故の映像ではないとの反論を展開しました。

また、鑑定書に記載された事故状況には、相手車両が切り返しのために停車してから衝突するまで約40cmしか後退していなかったような記載がなされていました。

これは、相手車両の速度が殆ど出ていない状態で依頼者の車両に接触したことを示しますが、依頼者の車両の損傷箇所が大きく凹んでいることと明らかに矛盾する旨の反論も展開しました。

⑷ 訴訟の結果~過失割合が逆転~

裁判官からは、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との事故に関する基本過失割合(判例タイムズ336図。駐車区画進入車20:通路進行車80)を参考にするのは相当ではなく、相手車両の過失の方が大きいとの心証が示されました。

具体的には、過失割合を依頼者30%:相手方70%とする和解案が裁判官から示され、最終的に双方が了承したため、同和解案にて和解が成立しました。

この過失割合の修正により、依頼者が受け取れる慰謝料の金額は、当初保険会社から提示されていた額よりも約50万円増額されました。

過失割合の見直しが、最終的な損害賠償額に大きな影響を与える典型的な事例です。

通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との事故に関する基本過失割合(判例タイムズ336図)が、通路進行車80%:駐車区画進入車20%であることを踏まえると、依頼者に有利な形で過失割合の大小が逆転したことになります。

.まとめ

このように、ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像は、単なる記録に留まらず、専門家による解析を通じて強力な証拠になり得る一方、必ずそのとおりに認定される訳ではありません。

鑑定書を作成してもらうには費用が発生するため、弁護士と相談しながら、費用対効果を慎重に判断することが重要です。

また、安易に相手方の主張に妥協することなく、客観的な根拠を積み重ねていくことで、より公正で納得のいく解決に繋がる可能性が高まります。

ドライブレコーダー映像や防犯カメラ映像を「活かす」という視点が、交通事故の解決においてますます重要になっていると言えるでしょう。

交通事故の過失割合や慰謝料は、保険会社の提示をそのまま受け入れると大きな損をしてしまう可能性があります。

優誠法律事務所では交通事故被害者のご相談を【無料】で承っております。

全国対応ですので、お気軽にご相談ください。

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過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その7~

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

道路進行車と路外からの進入車の交通事故の過失割合を修正できた事例

2024-06-23

今回のテーマは、道路進行車と路外からの進入車との交通事故の過失割合です。

今回は、片側2車線の国道の第2車線を走行していた車と路外の飲食店の駐車場から直接第2車線に進入してきた車が衝突した事例についてご紹介します。

以前、当事務所のブログで、駐車場内の交通事故についてご紹介した記事で、

●過失割合とは?

●基本過失割合とは?

●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

など、過失割合の基本的なことを解説していますので、是非こちらの記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。

これまで全国の方々から、当交通事故専門サイトや当事務所のブログに掲載している事例と同じような事故の過失割合で困っているとのご相談をいただいておりますが、今回ご紹介するTさんの事例も、道路進行車と路外からの進入車の交通事故という意味では、比較的よく発生する交通事故の類型ですので、同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

1.今回のご相談内容~道路進行車と路外からの進入車の交通事故~

今回の依頼者Tさんは、東京都在住で

・交通事故は片側2車線の国道上

・Tさんは第2車線を走行していた

・相手方は路外の飲食店の駐車場から国道に左折で進入

・相手方は路外から直接第2車線に進入

・Tさんの車両の左前部に相手方の右前部が接触

・相手方に過失割合20:80を主張されている

・交通事故による怪我は頚椎捻挫・右手関節捻挫

・治療期間は約6ヶ月間

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

本件事故現場の写真

上の写真が本件の交通事故現場です(相手方は矢印の部分から道路に進入してきました。)。

Tさんが、この事故現場を通りかかった際、第1車線は比較的車が多かったものの、第2車線のTさんの前方は、先行車との距離が結構空いていました。

そのため、Tさんは第2車線を法定速度程度で走行していました。

一方、相手方は、左側の飲食店の駐車場から道路に進入しようとして、第1車線の車の流れが切れるのを待っていました。

そして、ちょうどTさんが通りかかる直前で少し第1車線の車の間隔が空いたため、道路に進入してきました。

この際、第1車線が比較的混んでいたことから、相手方は直接第2車線に進入してきました。

相手方は、このとき第1車線の自動車にばかり気を取られており、第2車線をTさんが走行してきていることに気が付いておらず、衝突して初めてTさんの車に気が付いた状態でした。

Tさんとしては、このような通行量の多い国道でいきなり路外から第2車線に進入してくる車がいるとは予想できず、しかも、第1車線が比較的車の多い状態で直前まで相手方が路外から道路に進入しようとしている様子が見えなかったこと、相手方の動きが第1車線に進入するような動きに見えたこともあり、全く避けることができませんでした。

この事故でTさんは頚椎捻挫・右手関節捻挫の怪我を負ってしまいました。

相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は20(Tさん):80(相手方)と主張してきました。

Tさんとしては、ただ国道を走行していただけであり、相手方が路外からいきなり第2車線に進入するという予測できない動きをし、しかも第2車線を全く確認していなかったことが今回の交通事故の原因と考えており、ご自身に過失があると主張されたことに強い不満がありました。

その後、Tさんはご自身で相手方保険会社と交渉しましたが、相手方が態度を変えず、話が進みませんでした。

そこで、ご自身の自動車保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことで、ご相談にいらっしゃいました。

2.基本過失割合は?(別冊判例タイムズ148図)

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所のブログで説明していますから、こちらもご覧ください。)

今回のような道路走行車と路外からの進入車が衝突した事故類型の基本過失割合は、別冊判例タイムズの148図によって、20(直進車):80(路外からの進入車)とされています。

相手方保険会社は、今回の交通事故合は、この基本過失割合の20(Tさん):80(相手方)が妥当であると主張していました。

判例タイムズ148図
基本過失割合Ⓐ20:Ⓑ80

確かに、今回の交通事故の場合、別冊判例タイムズの148図と同じく、道路進行車と路外からの進入車の交通事故ですので、基本過失割合が20:80になることはやむを得ないと考えられました。

しかし、別冊判例タイムズの148図では、以下のような道路進行車に有利に過失割合を修正する修正要素が認められています。

進入車徐行なし:10%

幹線道路:5%

その他の著しい過失:10%

その他の重過失:20%

今回の交通事故で、Tさんの過失を基本過失割合の20%から修正するためには、上記のようなTさんに有利な修正要素があることを主張する必要がありました。

また、今回の場合は、もともとTさんがご自身の過失0%を主張したいとお考えであったこともあり、私たちも極力ご希望に沿う主張ができないか検討しました。

そこで、私たちは、まず本件事故現場の道路を確認したところ、片側2車線の国道でしたので、明らかに幹線道路と評価できると考え、この点で5%の修正を主張しました。

また、Tさんの車両のドライブレコーダーの映像を確認したところ、相手方は、路外から道路に進入した後、第2車線内でTさんの車両に衝突するまで全く減速しておらず、その動きから第2車線の右方を確認せずに進入していることが明らかでした。

判例タイムズでは、著しい前方不注視は、「その他の著しい過失」として10%の修正要素になり得るとされていますが、本件は相手方が交通量の多い国道で路外から第2車線に直接進入するという危険な運転をしているにもかかわらず、その合流先の第2車線を確認していないという点は、著しい過失として10%の修正、もしくはそれ以上の修正要素になり得ると主張しました。

3.交渉の結果~過失割合5:95で解決~

上記のように、別冊判例タイムズ148図の基本過失割合20:80を主張していた保険会社に対して、私たちは、

幹線道路で5%修正すべき

相手方が、第2車線を確認せずに漫然と第2車線に進入しているから、著しい過失もしくは重過失で10~15%修正すべき

と2点の修正要素を主張しました。

これに対して、当初、相手方保険会社は、

①幹線道路であることは争わず、5%修正は認める

②路外から直接第2車線に進入してはいけないという法規制はなく、第2車線の確認不足も基本過失割合の80%の中に含まれているため、著しい過失については認められず、幹線道路修正後の15:85からは修正できない

と回答してきました。

そこで、私たちは、類似の裁判例を探したところ、「第1車線渋滞中に路外からの進入車が直接第2車線へ進入した交通事故」や、「路外からの進入車が直接第3車線へ進入した交通事故」で、それぞれ過失割合0:100と判断されている裁判例が見つかりましたので、相手方保険会社にこれらの裁判例も提示して、本件も過失割合0:100が妥当であると再反論しました。

その結果、相手方保険会社は、私たちが提示した裁判例はTさんの交通事故とは多少状況が異なり、そのまま0:100を受け入れることはできないものの、著しい過失での10%の修正は認め、5(Tさん):95(相手方)であれば示談に応じると回答してきました。

そこで、私たちがTさんに相談したところ、Tさんとしては、ただ第2車線を走っていただけのご自身に過失はないと主張したいお気持ちが強かったものの、Tさんの車両修理費が高額で裁判になって解決まで長期化すると一旦立て替える必要があって負担が大きいことや、双方が動いていた交通事故では0:100の判決を得るのは難しいと周囲に助言を受けたとのことで、5%ならば仕方ないとのお考えになり、5:95での示談を了承されました。

4.まとめ

今回の交通事故では、交渉の結果、過失割合が

20:80→5:95

となり、当初Tさんが希望されていた0:100までは修正できませんでしたが、Tさんも相手方保険会社の担当者と直接お話になっていて、態度が強硬であったことは認識されていましたので、当初の相手方の主張から15%も修正できた点については、ご自身だけではこのような結果にはならなかったと喜んでいただけました。

今回のような道路進行車と路外からの進入車の交通事故は、よくある事故類型ですので、Tさんと同じように過失割合でお困りの方も多いと思います。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

交通事故紛争処理センターで過失割合を争った事例~路外進出車と直進二輪車の交通事故~

2024-05-18

今回のテーマは、路外進出車と直進車の交通事故の過失割合と「公益財団法人交通事故紛争処理センター」(通称「紛セ」)の手続きについてです。

今回は、路外のマンションの敷地(路外)に向かって右折しようとしたタクシーと対向車線を直進してきたバイクが衝突した交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介します。

この事案では、交渉が決裂してしまい、交通事故紛争処理センターでの解決を目指して申立てを行い、最終的に紛争処理センターの審査会の裁定で解決しました。

紛争処理センターは、裁判よりも比較的早期の解決が期待できるため、交通事故の示談交渉がうまく進まないときに解決方法として用いられます。

しかし、一般の方にはあまり馴染みがないと思いますので、今回の記事では紛争処理センターでの手続きやルールについても詳しくご説明します。

交通事故の示談交渉がなかなかうまく進まないというお悩みをお持ちの方は、ご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~路外進出車(右折車)と対向直進車の自動車VS二輪車の交通事故~

今回の依頼者Vさんは、神奈川県在住で

・交通事故は片側1車線道路で発生

・Vさんは事故現場の道路を二輪車で直進していた

・相手(タクシー)は、乗客の指示で相手から見て右側のマンション敷地に入るために右折を開始した

・Vさんは、直前に路上駐車していた車を避けてセンターライン付近まで膨らんで走行し、衝突時には道路左側に寄っていた

・相手方にはドライブレコーダーがあり、対向直進二輪車(Vさん)の姿がはっきり映っているが、相手方は右折開始から衝突まで減速した様子がない

・相手方に過失割合30:70を主張されている

・交通事故によるVさんの怪我は頚椎捻挫・左肘打撲

・治療期間は約3ヶ月間

弁護士費用特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故発生状況図(路外進出車と直進二輪車の事故)

上の図が本件の交通事故発生状況です。

Vさんは、この直前に路上駐車の自動車を避けるためにセンターライン側に膨らんで走行しましたが、衝突の際には道路左側に寄って走行していました。

この時、Vさんによると、対向車のタクシー(相手方)が急にウインカーを出して右折しようとしているのは分かったものの、当然相手は自分が通り過ぎるまで待つだろうと思って減速しなかったそうです。

ところが、相手方がそのまま右折してきたため、避けられずに衝突してしまったとのことでした。

一方、相手方は、事故直後は、乗客に急に右のマンションに入るように言われて慌てて右折してしまい、前方をよく確認できていなかったと述べていたとのことでした。

この事故でVさんは左側に転倒して左肘などを負傷してしまい、3ヶ月ほど整形外科に通院しました。

そして、Vさんは、通院中もバイクの賠償について相手方保険会社と交渉していましたが、相手方がこの交通事故の過失割合は30(Vさん):70(相手方)と主張しており、全く交渉が進みませんでした。

Vさんとしては、道路を直進走行していただけで、相手方が前方の安全確認が不十分なまま右折を開始し、しかもそのまま減速しなかったことで本件事故が起きたという認識でしたので、ご自身に過失があるとしても10%くらいと考えており、相手方の過失割合の主張には不満がありました。

その後、Vさんは治療終了後にもお怪我の通院慰謝料も併せて相手方保険会社と交渉をしましたが、相手方が過失割合30:70を譲らず、交渉が進みませんでしたので、ご自身の保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことでご相談いただきました。

2.基本過失割合と修正要素(判例タイムズ220図)

では、まず今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所の公式ブログの記事で説明していますから、こちら(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。)

今回のような路外進出車と直進二輪車の交通事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの220図によって、10(直進二輪車):90(路外進出車)とされています。

判例タイムズ220図
基本過失割合Ⓐ10:Ⓑ90

相手方保険会社は、今回の交通事故の過失割合は、この基本過失割合の10(Vさん):90(相手方)から、Vさんの速度違反で10%著しい過失で10%、併せて20%修正し、30:70が妥当だと主張していました。

しかし、資料を見る限り、相手方保険会社の主張する修正要素はいずれも妥当ではないと考えられました。

まず、判例タイムズ220図は、直進二輪車に時速15km以上の速度違反があった場合に10%、30km以上の速度違反があった場合に20%修正するとしています

本件の事故現場の道路の制限速度は時速30kmでしたので、Vさんがそこから時速15km以上の速度違反、つまり時速45km以上で走行していなければ、修正要素にはなりません。

そこで、私たちは、相手方にVさんが時速45km以上で走行していたことの証拠が何かあるのか聞いたところ、何もないということでこの点はあっさり撤回しました。

また、併せて、どのような点が著しい過失だと主張するのか聞いたところ、Vさんが路上駐車の車両を避けるためにセンターラインを越えて対向車線にはみ出して走行したことが蛇行運転で著しい過失だと主張していました。

この点に対しては、私たちは、直前に路上駐車の車を避けただけで、センターラインは超えておらず、衝突時には道路左側に寄って走行していた訳なので、著しい過失には該当しないと主張しました。

しかし、相手方がこれについては譲りませんでした。

私たちは、逆に、相手方のドライブレコーダーを見る限り、相手方が右折を開始してから衝突するまで減速していないため、衝突直前までVさん車両に気が付いていないと考えられましたので、この点が著しい前方不注視にあたり、むしろVさんに有利に10%修正するべきと反論しました。

3.交渉の経過と交通事故紛争処理センターへの申立ての決断

上記のように、過失割合30:70を主張していた相手方保険会社に対して、私たちは、Vさんに不利に修正する修正要素はなく、逆に相手方の著しい過失でVさんに有利に10%すべき(これが認められると0:100になります)と主張しました。

これに対して、相手方は20:80までは認めたものの、それ以上は譲らないと主張したため、交渉で示談することは困難になりました。

そこで、裁判を提起することも考えましたが、裁判の場合には解決まで1年程度かかることもあり、Vさんとしては、できれば裁判は避けたいというご希望でした。

また、今回は、争点が過失割合と慰謝料の金額(相手方保険会社は裁判所基準の通院慰謝料の90%~95%までしか出せないと主張していましたが、これは単に裁判ではないから満額は出せないという主張で、保険会社としては通常の対応です。)のみで、複雑な争点はありませんでしたので、裁判より早期解決が望める交通事故紛争処理センターでの解決を目指すことにしました。

4.交通事故紛争処理センターの手続き

交通事故紛争処理センターでの手続きは、和解斡旋審査会という2段階になります(弁護士に依頼せずに被害者自身が申立てをする場合には、基本的に初回は被害者のみの相談面談が行われます。)。

⑴和解斡旋

和解斡旋の手続きでは、まずは、センター側の担当弁護士(嘱託弁護士)が、申立側と相手側の双方から事情を聞き、話し合いで和解ができないか協議することが一般的です。

この手続きは、裁判所の民事調停と似たような流れといえます。

そして、嘱託弁護士を交えた協議によって和解が成立すれば、その時点で示談成立となり、手続きが終了します。

協議だけでは和解が成立しない場合には、センターとして妥当と思われる内容で「斡旋案」を作成し、双方に提示することになります。

双方がこの斡旋案に合意すれば、この時点で示談が成立し、手続きが終了します。

多くの場合、相手方保険会社がセンターの斡旋案を尊重して受け入れますので、この段階で示談が成立することが大多数といえます。

この和解斡旋の手続きは、基本的に1回1時間とされており、1回で斡旋案を出すところまで行くケースもありますが、実務上の感覚では、だいたい2~3回で終わることが多い印象です。

1ヶ月程度間隔を空けて期日が入りますので、解決までに3~4ヶ月かかることが多いと思います。

ただ、この斡旋案には拘束力はありませんので、相手方保険会社も不満があれば断ることができます。もちろん、申立側が斡旋案を断ることもできます。

そして、斡旋が不調(不成立)となった場合には、申立側が審査会への移行を申し立てることができます。なお、この時点で紛争処理センターでの手続きを諦めて、審査会には進まずに裁判を起こすことも可能です。

⑵審査会

審査会の手続きでは、斡旋段階を担当した嘱託弁護士ではなく、別の3名の審査委員が事案を審査することになります。

審査会は、話し合いの場ではなく、紛争処理センターとして妥当と考える最終結果を「裁定」という形で提示する手続きですので、裁判の判決をもらうイメージです。

地域によって手続きに違いがありますが、東京本部の審査会は、まず双方から事情の聞き取りを行い、その日のうちに裁定を出しますので、基本的に1回で終わります。

そして、この裁定には片面的拘束力があり、相手方保険会社はこの裁定の内容に不満があっても断ることができません。

そのため、申立側が、審査会の裁定に同意すると、自動的に示談が成立します。

一方、申立側は断ることもできますが、断った場合もセンターでの手続きは終了になりますので、その後に裁判等の別の手続きで解決を目指すことになります。

⑶その他のルール

紛争処理センターの基本的な仕組みは上記のとおりですが、他にも独自の手続き、ルールがいくつかありますので、そのうち重要だと思われるものをいくつかご説明します。

①加害者が自動車(二輪車や原付自転車も含む)以外の場合は対象外

例えば、加害者が自転車などの場合には、対象外となり、申立てができません。

②一部の任意保険は対象外

一部の共済など、相手方が加入している任意保険によっては申立てができない場合があります。

③訴訟移行要請が出される場合がある

相手方保険会社が、紛争処理センターでの和解斡旋が適切ではないと考える場合、訴訟(裁判)に移行するよう申し立てることができます。

例えば、医学的な争いがあって高度な主張立証を必要とする事案などは、紛争処理センターの和解斡旋では限界がありますので、裁判所で争うべきといえます。

相手方から訴訟移行要請が出た場合には、センターの訴訟移行委員会でセンターでの手続きを継続するべきか否か判断がなされ、訴訟移行が妥当と判断された場合には、センターでの手続きは終了となってしまいます。

④双方過失物損事案の審査会移行には双方の同意が必要

双方に過失がある事故の物的損害の手続きでは、審査会に移行する際、双方が審査会の裁定に従うという同意をしなければ、審査会に移行できません。

そのため、双方に過失がある事故の物的損害については、審査会に進んだ場合、裁定の内容を双方が受け入れるしかありませんので、自動的に示談が成立することになります。

なお、同一事故でも人身損害は別扱いとなり、相手の同意がなくても人身損害だけを審査会に移行することは可能です。

その他、紛争処理センターでの手続きの詳細は、センターのホームページ(https://www.jcstad.or.jp/guidance/)もご参照ください。

5.本件の紛争処理センターでの手続き~審査会で10:90の裁定~

⑴和解斡旋の経過

今回の事例では、紛争処理センターでの和解斡旋の手続きでも、相手方はVさんに著しい過失があったとの主張にこだわり、ドライブレコーダーを提出して衝突直前のVさんの走行方法に問題があったと主張し続け、過失割合20:80から譲りませんでした。

一方、Vさんとしては、10:90であれば和解してもいいというお考えでしたので、相手方が10:90まで認めるのであれば、私たちは柔軟に対応するつもりでした。

しかし、相手方が態度を変えなかったため、私たちも、相手方のドライブレコーダーの映像を基に、Vさんの走行方法に問題はないことを指摘しつつ、むしろ相手方が右折開始から衝突まで減速していないことを主張して、相手方が前方を見ていなかったことは明らかなので、これが相手方の著しい過失に当たると基本過失割合から10%の修正を主張しました。

なお、相手方はこの前方不注視は基本過失割合に含まれる程度のものだ(著しい過失ではない)と反論していました。

そのため、斡旋担当の嘱託弁護士が、話し合いでの和解は難しいと判断して斡旋案を出すことになりました。

そして、その斡旋案は、過失割合10:90という内容でしたので、Vさんは応じることにしました。

しかし、相手方保険会社がこの斡旋案を断りましたので、審査会に進むことになりました。

⑵審査会の経過

Vさんは神奈川県在住でしたので、今回は紛争処理センターの東京本部に申立てをしていました。

東京本部の審査会では、基本的に申立側と相手方が入れ替わりで、それぞれ審査委員から聞き取りが行われますので、相手方がどのような主張をしたかは不明ですが、双方とも新しい主張や証拠は出しませんでしたので、おそらく斡旋段階までと同じくVさんの走行方法に問題があったと主張したものと思われます。

上でもご説明しましたが、東京本部の審査会は基本的に1回の手続きで裁定まで進みますので、そのまま裁定が出され、その内容は過失割合10:90が妥当というものでした。

また、慰謝料については裁判所基準の満額が認められました。

Vさんとしては、最低ラインと考えていた過失割合10:90が認められたため、この裁定に同意し、示談が成立しました。

6.まとめ

今回は、紛争処理センターでの手続きのご説明をしつつ、審査会の裁定で過失割合が10:90となったVさんの事例をご紹介しました。

Vさんの場合は、審査会まで進んだこともあり、申立てから示談成立までに5ヶ月程度かかりましたが、それでも裁判よりは早期に解決することができました。

どうしても裁判は時間がかかりますし、裁判をするというだけでも精神的に負担に感じる方もいらっしゃいますので、事案によっては、この紛争処理センターの手続きがとても有効な場合があります。

弁護士によって色々考え方の違いはあると思いますが、私たちの優誠法律事務所では、個々の事案に適した解決方法を検討してご提案したいと考えており、紛争処理センターでの手続きも積極的に行っています。

交通事故でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

裁判で車線変更時の交通事故の過失割合を修正できた事例

2024-04-28

今回のテーマは、車線変更の際の交通事故の過失割合です。

今回は、片側2車線の国道の第1車線を走行していた車が、第2車線に車線変更しようとした際に、第2車線を走行してきた車両と衝突した事例についてご紹介します。

過失割合の基本的なことは、当事務所のブログの記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~で説明してしますので、そちらもごご覧ください。

車線変更時の交通事故も、比較的よく発生する交通事故の類型ですので、当事務所でもよくご相談をお受けします。

ただ、今回ご紹介するUさんの事例は、少し特殊で、Uさんは第1車線から第2車線に車線変更しようとしたのですが、第2車線を走っていた相手方が、ちょうどそのタイミングで第1車線にはみ出してきて衝突してしまったという事例です。

しかし、相手方は、Uさんの車線にはみ出したことを認めず、Uさんに対して過失100%を認めるように迫ってくるなど、激しい争いになり、裁判所で判決が出るところまで至ってようやく解決しました。

今回は、交通事故の裁判の流れなどもご説明しますので、交通事故でお困りの方は参考にしていただけますと幸いです。

1.今回のご相談内容~車線変更時の交通事故~

今回の依頼者Uさんは、埼玉県在住で

・交通事故は片側2車線の国道上

・Uさんは第1車線を走行していた

・相手方は第2車線を走行していた

・道路がやや右に湾曲している

・Uさんが車線変更しようとしたタイミングで相手方が第2車線からはみ出してきて衝突

・Uさん車両の左前と相手方車両の右側面が衝突

・双方ドライブレコーダーはなし

・相手方に過失割合100:0を主張されている

・交通事故による怪我はなし

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故発生状況の図(車線変更時の事故)

上の図が本件の事故状況です。

Uさんは、この少し先の交差点で右折するつもりでしたので、第1車線から第2車線に車線変更するつもりでした。

Uさんは、サイドミラーで第2車線の後方を確認した際、後続車(相手方)が少し離れた位置にいましたので、第2車線に入れると思ってウインカーを出し、少し第2車線側にハンドルを切りました。

そうしたところ、相手方がかなりのスピードで走行していたようで、Uさんが相手方に気付いたときにはすぐ右隣にいて、Uさんの方にはみ出してきたため、そのまま衝突してしまいました。

Uさんとしては、右後方を確認した際には、相手方がかなり後方にいたことから、第2車線に入る余裕があると思ってハンドルを右に切りましたが、まだ第2車線に入る前のタイミングで衝突されてしまい、とても驚いたそうです。

車線変更時の事故の場合、基本的には車線変更しようとした側(Uさん側)の過失が大きくなります。

Uさんは、ご自身の保険会社からもそのような説明を受け、車線変更をしようとしていたことは事実でしたので、ご自身の過失が大きいと言われても仕方がないと考えていました。

しかし、相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は90(Uさん):10(相手方)が妥当だと主張してきました。さらに、Uさんが現場で100%賠償する約束をしたなどと主張して、できれば100:0で解決したいと言ってきました。

Uさんは、早期解決を希望しており、70:30くらいなら受け入れるつもりでしたが、さすがに相手方の主張に納得できず、ご自身の保険会社に相談したところ、弁護士費用特約で弁護士に依頼できることを案内され、私たちに依頼したいとのことでご相談にいらっしゃいました。

2.基本過失割合と交渉の経過~相手方が過失割合90:10を譲らず~

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、当事務所のブログで説明していますから、こちらもご覧ください。)

車線変更時の交通事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの153図によって、70(進路変更車):30(後続直進車)とされています。

相手方保険会社は、今回の交通事故合は、この基本過失割合から20%Uさんに不利に修正して90(Uさん):10(相手方)が妥当であると主張していました。

判例タイムズ153図
基本過失割合 Ⓐ30:Ⓑ70

今回の交通事故の場合、仮に一般的な車線変更時の交通事故と考えるとしても、基本過失割合からUさんに不利に修正するような理由はないように思えました。

そして、私たちは、そもそもUさんが車線変更をしようとしていたのは事実ですが、実際には第2車線に入る前のタイミングで相手方の方がはみ出してきて衝突した訳ですから、判例タイムズ153図を基本に考えるような事例ではないと考えました。

そこで、むしろ相手方の過失の方が大きいと主張することも考えましたが、Uさんが70:30でもいいから早期に解決して欲しいと希望されたため、相手方保険会社に70:30なら応じると伝えました。

しかし、相手方本人が100:0の主張をしていて、譲歩しても90:10と言っているとのことで、全く交渉になりませんでした。

そうしたところ、相手方から裁判を起こされてしまい、裁判所で争わざるを得なくなりました。

3.一般的な交通事故裁判の流れ

通常、裁判は、訴える側(原告といいます)が裁判所に訴状を提出することで提起されます。

裁判所は、訴状が提出されると、原告と第1回期日の予定を決め、相手方(被告といいます)に訴状と呼出状を送って裁判が起こされたことを伝え、裁判への出席と反論書面(被告が最初に提出する反論書面を答弁書といいます)の提出を求めます。

その後は、1ヶ月~1ヶ月半くらいに1回のペースで裁判の期日が入り、しばらくは交互に書面で反論し合う期日が続きます。

そして、双方の主張が出尽くした後、裁判所がそれまでの双方の主張を前提に和解を促すことが一般的です。

この和解案は、裁判所が判決を書く場合に予想される内容をある程度開示して内容を決めますので、多くの場合、双方が和解案に応じて和解が成立します。

しかし、どちらかが裁判所の和解案に応じない場合には、最終的に判決を出す必要がありますので、一度当事者たちを裁判所に呼んで直接話を聞く機会を設けることが一般的です(これを本人尋問といいます)。

当事務所の依頼者の方にも、裁判と聞くと、毎回ご自身が裁判所に行かないといけないと考える方が多いですが、実際には、弁護士に依頼していれば、ほとんど弁護士が代理人として対応しますので、本人尋問のとき以外は出席する必要はありません。

そして、多くの場合、本人尋問までに行かずに和解で終わりますから、ほとんどのケースで当事者が裁判所に出席することはなく終わることになります。

逆に、和解が成立しない場合は、本人尋問を経て判決が出されることになりますが、その判決に一方または双方か不満がある場合には、上位の裁判所(簡易裁判所なら地方裁判所、地方裁判所なら高等裁判所)に控訴して、判決が妥当かどうか判断を求めることになります。

4.裁判の経過~双方が過失0主張で争う~

Uさんの場合、上記のように、相手方から裁判を起こされましたが、相手方は裁判ではUさんが100%悪いと過失割合100:0を主張しました。

これに対し、私たちは相手方がUさん側の車線にはみ出して衝突していることから、Uさんがそのような相手方の動きを予測することは不可能で回避できなかったと主張し、Uさんの過失はない(過失0:100)という前提で反訴(訴え返すこと)しました。

裁判では、通常、相手方保険会社も弁護士に依頼しますので、弁護士同士で争うことになりますが、今回の相手方の弁護士はあまり事案や証拠を検討していなかったようで、双方の車両の損傷状況からUさんが車線変更してきて衝突したことは明らかだと主張していました。

しかし、それでは過失割合70:30の主張をしているようなものですから、Uさんの過失が100%であるという主張とは噛み合わないと反論しました。

また、車両の損害確認などを専門にしているアジャスターのレポートによると、相手方の車両の損傷は時計の針の10時~11時の方向から衝突されたと記載されており、Uさんの車両の損傷は5時の方向から衝突されたと記載されていました。

双方車両の損傷状況

このような双方の損傷状況を考えると、下の図のような衝突になり、Uさんの主張する事故状況と一致しますし、相手方の車両が真っ直ぐ第2車線を走行しているところにUさんが車線変更して衝突したという相手方の主張はあり得ないと分析できました。

双方車両の損傷状況から考えられる事故状況の図

一方、もし、相手方が主張するように、Uさんが第2車線に進入して衝突したのであれば、下の図のような事故状況になり、相手方車両に7~8時の方向の入力、Uさん車両に1~2時の方向からの入力となりますので、実際の双方の車両の損傷箇所と異なります。

相手主張の事故状況であった場合の図

そこで、私たちは双方の車両の損傷状況から、相手方が第1車線にはみ出して衝突したことは明らかで、Uさんに過失はないと主張しました。

その後、双方の主張が一段落した段階で、裁判官は、過失割合50:50で和解をしてはどうか?と和解を勧めました。

Uさんとしては、もともと70:30でも仕方ないと考えていたこともあり、50:50の和解案を受け入れたいと考えましたが、相手方が拒否したため、和解は成立しませんでした。

そのため、裁判官が判決を書くために、双方の話を直接聞く、本人尋問を行うことになりましたが、明らかに相手方は準備不足の様子で、この本人尋問でいくつか相手方の嘘を暴くことができ、完全に相手方の主張を崩すことができました。

5.判決~過失割合50:50~

本人尋問終了後、双方が最終的な主張をまとめる書面を提出し、裁判所が判決を出しました。

その判決内容は、相手方の主張していたUさんが第2車線に進入した際の事故という点を否定し、Uさんが主張していたとおり、相手方がUさん側に寄って行ったことで衝突したと判断するものでした。

しかし、衝突位置はUさん側の第1車線の中ではなくちょうどライン上の可能性もあるとのことで、お互い様という判断の50:50という内容でした。

相手方はかなり強硬でしたので、控訴すると思っていましたが、控訴してもこれ以上相手方に有利になることはないと判断したのか、控訴は断念しました。

Uさんも、相手方が控訴してくれば、こちらも控訴して争うつもりでしたが、相手方が控訴を断念したことで、判決を受け入れて早期に終わらせたいと希望し、判決が確定しました。

6.まとめ

今回の交通事故では、相手方が対応に酷く、Uさんの過失が100%などと主張していましたが、結果的に裁判で50:50という結果で終わることができました。

もともとUさんとしては、早期解決のために70:30でもいいと思っていたところ、相手方が強硬で裁判に巻き込まれてしまいましたが、しっかりご自身の主張をすることができ、相手方の主張を跳ね返すことができましたので、大変喜んでいただけました。

人生で裁判を経験することはあまりありませんから、色々と不安を感じる方も多いですが、弁護士に依頼していただければ、しっかりサポートできますので、お困りの方は是非ご相談ください。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

0120-570-670

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投稿者プロフィール

弁護士甘利禎康の写真
 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

信号のない丁字路交差点での右折車同士の交通事故で過失割合を修正できた事例

2024-03-31

皆様、こんにちは。優誠法律事務所です。

今回は、信号のない丁字路交差点で右折車同士が衝突した交通事故の事例についてご紹介します。

今回の事例は、信号のない丁字路交差点で、直進路から右折していた自動車に、突き当り路(停止線あり)から右折しようとした自動車が衝突した交通事故(右折車同士の交通事故)で、双方の過失割合が問題になりました。

当事務所の公式ブログの駐車場内の交通事故についてご紹介した記事で、

●過失割合とは?
●基本過失割合とは?
●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

など、過失割合の基本的なことを解説していますので、是非こちらの記事過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~もご覧ください。

今回ご紹介する事例は、交差点での右折車同士の交通事故という比較的珍しい類型ですので、同じような事例がどのように処理されているか調べようとしても、なかなか参考になるものが見つからないかもしれません。

そこで、同じような交通事故でお困りの方の参考になればと思い、ご紹介させていただきます。

1.今回の依頼者~信号のない丁字路交差点で右折車同士の車VS車の交通事故~

今回の依頼者Uさんは、北海道在住で

・交通事故は信号のない丁字路交差点で発生

・Uさんは直進路(丁字路の突き当りではない方の道路)から右折、相手方は突き当り路から直進路に出るために右折しようとしていた

・相手には一時停止があり、一時停止後に右折を開始したと主張

・Uさんが先に右折を開始したところ、右折が終わるくらいのタイミングで相手方が右折してきて衝突

・Uさんの車両の右側面に相手方の右前部が衝突した

・相手方に過失割合30:70を主張されている

・交通事故による怪我は頚椎捻挫

・治療期間は約6ヶ月間で、治療後に後遺障害14級9号が認定された

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

依頼者から見た交通事故現場の丁字路交差点の写真

上の写真が本件の交通事故の現場となった丁字路交差点をUさん側から見たものです(事故当日の写真ではありません。)。

Uさんは、この丁字路交差点で右折しようとしており、写真中央の右折レーンを進んで右折を始めました。

この時、Uさんからも、右折先の道路に相手方の車両がいることが分かりましたが、相手方に停止線があり、明らかにUさんの方が優先であったことや、相手方が減速している様子だったこともあり、ご自身が右折するまで待っていてくれるだろうと考えて、そのまま右折しました。

ところが、相手方は、なぜかUさんが右折を完了しそうになったくらいのタイミングで右折を始めてしまい、Uさんの車両の右側面に衝突してしまいました。

Uさんとしては、ご自身が先に右折しているにもかかわらず、そのタイミングで相手方が交差点内に進入しようとするなどとは予測できず、衝突の瞬間は何が起きたか分からなかったとのことでした。

この事故でUさんは頚椎捻挫の怪我を負ってしまい、症状固定後に後遺障害14級9号が認定されました。

相手方保険会社は、この交通事故の過失割合は30(Uさん):70(相手方)と主張してきました。

Uさんとしては、ご自身が先に右折を開始し、既に右折が完了するくらいのタイミングになって、相手方が交差点に進入してきて側面に衝突されており、この状況では衝突を避けることができなかったため、ご自身に過失があると言われたことに不満がありました。

また、相手方から見ると、目の前で右折してきているUさんの車両にあえて向かって行って衝突しているような状況ですから、Uさんとしては、なぜそんなことになったのか理解できませんでした。

それにもかかわらず、相手方保険会社にご自身の過失割合が30%もあると主張されたことに納得できず、ご自身の保険の弁護士費用特約を使って私たちに交渉を依頼したいとのことでご相談いただきました。

Uさんとしては、双方が動いていたときの事故であったため、過失割合を0:100にするのは難しいとお考えでしたが、それでもご自身の過失は10%くらいだろうとお考えでした。

2.基本過失割合と修正要素(判例タイムズ145図)

では、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、以前の記事で説明していますから、こちらもご覧ください。)

今回のような信号のない丁字路交差点での右折車同士の事故の基本過失割合は、別冊判例タイムズの145図によって、30(直進路右折車):70(突き当り路右折車)とされています。

判例タイムズ145図
基本過失割合 Ⓐ30:Ⓑ70

相手方保険会社は、今回の交通事故の過失割合は、この基本過失割合の30(Uさん):70(相手方)が妥当だと主張していました。

しかし、今回の事故は、双方が交差点内で出会い頭に衝突した訳ではありません。

Uさんが目の前を右折して来ているにもかかわらず、相手方がそのタイミングで交差点内に進入してUさんの車両の側面に衝突したという事故態様ですので、この基本過失割合が想定している状況とは、だいぶ異なるように思います。

そこで、私たちとしては、まずは、そもそも今回の交通事故は判例タイムズ145図が想定している状況とは異なり、この基本過失割合30:70を基に検討する事例ではないと主張することにしました。

その上で、Uさんとしては右折完了目前で急に相手方が出て来て側面に衝突されており、相手方がそのタイミングで交差点内に進入することを予測することは難しく、自車の側面に衝突されていて回避可能性も低いことから、Uさんに過失が認められるとしても10%程度であると主張しました。

また、別冊判例タイムズの145図では、以下のような直進路右折車(Uさん側)に有利に過失割合を修正する修正要素が認められています。

著しい過失:10%

重過失:20%

 【著しい過失】

著しい過失の例としては、脇見運転等著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話等を通話のために使用していた場合、画像を注視したりしながらの運転、時速15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転等が挙げられています。

 【重過失】

 重過失の例としては、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、過労・病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合等が挙げられています。

そこで、仮に、今回の事故に判例タイムズ145図が適用される場合には、この修正要素を主張して基本過失割合からUさんに有利に修正するべきと主張する必要がありました。

そのため、私たちは、判例タイムズ145図が適用されると判断されてしまった場合に備えて、刑事記録(実況見分調書)を取り寄せて、相手方の著しい過失や重過失の主張ができないかも検討しました。

3.交渉の経緯~争点は145図適用の有無・修正要素の有無~

上記のように、別冊判例タイムズ145図の基本過失割合30:70を主張していた保険会社に対して、私たちは、

① 判例タイムズ145図は、主に右折車同士が出会い頭で衝突したような事故を想定しており、今回の事故のように、直進路右折車(Uさん)の右折完了間際に、突き当り路右折車(相手方)が右折を開始して衝突するような状況は想定しておらず、判例タイムズ145図は適用されない

② 判例タイムズ145図が適用されるとしても、相手方の前方不注視が著しく、ハンドル・ブレーキ操作も著しく不適切で、Uさんとしては衝突を回避できない状況であったため、基本過失割合から15~20%は修正するべき

と主張しました。

これに対して、当初、相手方保険会社は、

① 判例タイムズ145図は、出会い頭の事故のみを想定している訳ではなく、本件にも適用される

② 相手方の前方不注視やハンドル・ブレーキ操作の不適切は、基本過失割合に含まれる程度のもので、修正要素には該当しない

③ むしろ、相手方が一時停止していることから、(実際には修正を主張しないものの)相手方に有利に15%修正すべきくらいである

と主張し、基本過失割合の30:70以上は譲れないと回答してきました。

その後、何度か交渉を重ねましたが、相手方が全く態度を変えませんでした。

Uさんとしては、相手方がしっかり前を向いていれば、ご自身が目の前を右折して来ることを認識できた訳で、この事故はほとんど相手方の過失で発生したとお考えでしたので、過失割合30%はどうしても納得できませんでした。

そこで、私たちは、交通事故紛争処理センターに斡旋の申立てをすることにしました。

そのとき、裁判を起こすということも選択肢になりましたが、裁判は1年近くかかることが多く、今回は過失割合以外には大きな争点がありませんでしたので、紛争処理センターの方が早期解決を見込めるという判断で、紛争処理センターへの申立てを選択しました。

4.交通事故紛争処理センターで示談成立

今回の事例は、上記の経緯で交渉が決裂してしまい、紛争処理センターに申立てをしました。

私たちは、申立ての際に刑事記録(実況見分調書)を提出し、刑事記録上、相手方がUさんの車両に気が付いたのが、衝突の直前であると記録されていることを指摘しました。

そして、下の写真のように、相手方からは前を向いていれば交差点内に進入する前の時点で、Uさんが右折して来ることは認識できるはずなので、衝突直前までUさんに気が付いていないのは、前を見ていなかったことの裏付けになると主張しました。

相手方から見た本件交通事故現場の丁字路交差点の写真

さらに、相手方は、Uさんが接近してくる状況で右折を開始しており、Uさんの車両に当たりに行ったようなものだと指摘し、ハンドル操作等も著しく不適切で、基本過失に含まれる過失を大きく上回る過失があると主張しました。

相手方は、紛争処理センターでの和解協議でも、30%:70%の主張を変えませんでした。

その結果、紛争処理センターの嘱託弁護士(斡旋を担当する弁護士)が双方の意見を聞いて、斡旋案を出すことになりました。

そして、今回の紛争処理センターの斡旋案は、今回の事故は、相手方が右折しようとした際に、相手方から見て右側だけを確認して、右側から車両が来ていなかったことから、左側(Uさんが走行してきた方向)を全く確認せずに交差点内に進入したことが主な原因であると認められ、過失割合は15%(Uさん):85%(相手方)が妥当であるとの内容でした。

Uさんとしては、本来過失10:90を主張したいというお気持ちでしたので、15:85で示談するか、斡旋案を断って審査会(紛争処理センターの最終的な手続きで、斡旋段階とは別の審査委員3名がセンターとしての裁定を出す手続きです。この裁定は、被害者側は断って裁判に進むことは可能ですが、相手方保険会社は断ることができません。ただし、物的損害については、双方に過失がある事案の場合、双方とも断ることができません。)に進むか、悩まれたようでした。

その後、結局、Uさんは、早期解決のために15:85の斡旋案を受け入れる選択をすることにしました。

5.まとめ

今回の交通事故では、紛争処理センターの斡旋で過失割合が30%:70%から15%:85%となりました。

今回の事例でもそうでしたが、保険会社は、杓子定規に判例タイムズに当てはめて主張しようとすることが多い印象があります。

今回の場合、第三者である紛争処理センターの嘱託弁護士も、判例タイムズの基本過失割合で解決するような事例ではないと認めてくれましたが、本来、交通事故はそれぞれに事案ごとに個別に考慮すべき事情がありますので、杓子定規に判例タイムズに当てはめればよいというものでもありません。

そうは言っても、一般の方がこのような個別の事情を検討して、保険会社と過失割合の交渉するのは難しいと思いますので、お困りの方は一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

全国からご相談いただいております。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

駐車場内の交通事故の過失割合を逆転させた事例(80:20⇒10:90)

2023-12-10

今回は、駐車場内の交通事故で過失割合を争い、相手方の主張から逆転させることができた事案をご紹介します。

現在、当事務所では、駐車場内の交通事故に関するお問い合わせを多くいただいております。

その多くは過失割合に関するお問い合わせですが、駐車場内における事故は非定型で特有性の強い事故が多いということを感じます。

今回も、駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。

1.今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

事故当時、依頼者Tさんは、Tさん車両を運転して、前方を走行していた相手車両に続いて、道路から駐車場内に進入しました。

その後、相手車両が通路の交差部分を左に曲がったため、Tさん車両も続いて通路の交差部分に進入したところ、突然、相手車両がTさん車両に向かって後退を開始しました。

危険を感じたTさんは、Tさん車両を停止させた上でクラクションを鳴らしました。

しかしながら、その後も相手車両は減速することなく後退を継続したことにより、Tさん車両に衝突してしまいました。

幸いにして、Tさんも相手方も怪我をしていませんでした。

ただ、Tさんは、相手方保険会社から、Tさんの過失割合が80%であるという主張をされており、これに納得できなかったことから、当事務所にご相談いただくことになりました。

Tさんは弁護士特約が利用することができ、弁護士費用による費用倒れの心配はありませんでしたので、ご相談後、ご依頼いただくことになりました。

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

事故が起きたのは、画像中央にある通路の交差部分になります。この写真は、下の図で見ると上部の方から交差部分を撮影したもので、Tさんはこの写真の奥側から手前側に向かって進行してきました。

2.基本過失割合は?

ご相談いただいた際、今回の交通事故の基本過失割合について検討しました。

(「基本過失割合とは?」については、以前、当事務所ブログの記事でご説明していますので、こちらもご覧ください。)

今回の事故は、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故ですので、一見すると別冊判例タイムズの336図が基本になりますが、別冊判例タイムズ336図の基本過失割合は80(通路進行車):20(駐車区画進入車)になっています。

相手方保険会社が提示していた過失割合も80%:20%であったため、相手方保険会社は、この別冊判例タイムズ336図の基本過失割合を根拠に主張していることが推察されました。

3.別冊判例タイムズ336図が適用されるか否か

しかしながら、通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との交通事故であれば、必ず別冊判例タイムズ336図の80%:20%が適用される訳ではありません。

実際、別冊判例タイムズにも、通路進行車において、駐車区画進入車の駐車区画への進入動作を事前に認識することが客観的に困難であった場合は、本基準によらず、具体的な事実関係に即して個別的に過失相殺率を検討すべきであるとの記載がなされています。

Tさんからご依頼いただいた後、本件事故は別冊判例タイムズ336図が適用されるケースであるか否かを検討するため、交通事故が発生した駐車場を訪れて、事故現場の確認を行いました。

その結果、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されるべきではないとの心証を抱きました。

その後、相手方保険会社に対しては、資料等を引用した上で、概ね以下の主張を展開しました。

・通常、駐車区画に進入する際は、当該駐車区画の傍で停車した後、当該駐車区画への進入動作を開始すること。

・それにもかかわらず、相手車両は、かなり距離の離れた場所から駐車区画への進入動作を開始しており、Tさんが事前に認識することが客観的に困難であったこと。

・以上より、本件事故において、別冊判例タイムズ336図は適用されないこと。

その上で、衝突時にはTさん車両が停止していたこともあり、Tさんの過失割合は10%を上回らないと主張しました。

4.交渉の結果~過失割合10:90で解決~

その後、相手方保険会社は、私たちの主張を受け入れ、当初提示していた過失割合から70%過失を修正し、10%(Tさん):90%(相手方)で了承すると回答しました。

Tさんとしても、想定以上に有利な過失割合であったため、裁判にならずに示談が成立しました。

5.まとめ

今回のTさんの場合、結果的に80:20から10:90に過失割合を修正することができました。

このように大幅に過失割合を修正することができたのは、交通事故が発生した場所を訪れて事故現場の確認を行ったことにより、当方に有利な主張内容を説得的に構成できたためであると感じました。

過失割合の交渉をするにあたっては、機械的に別冊判例タイムズの基準を当てはめるのではなく、駐車場内における事故の特殊性を踏まえて柔軟に主張内容を構成することが肝要です。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

全国からご相談いただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

片賠と評価損請求で物損事故を解決できた事例

2023-09-17

こんにちは、優誠法律事務所です。

以前、以下の記事で「別冊判例タイムズ38号」をそのまま参照できない類型の事故についてご紹介しました。

今回も、別冊判例タイムズ38号記載の類型にそのまま当てはめることができないのではと思われる類型の事故について、以前もご紹介した「片賠」や、「評価損」という方法をあわせて解決できた事例の物損の解決についてご紹介いたします。

1.事案の概要~青信号と赤色点滅信号の丁字路交差点での事故~

本件の事故は信号のある丁字路交差点での自動車同士の事故で、ご相談者は優先道路を直進、加害者は丁字路突き当りを左折しようとしました。

これだけであればよくある事故なのですが、少し特殊なのは、ご相談者の対面信号が青色、加害者の対面信号が赤色点滅だったことです。

このような事故状況について、ご相談者は物損について加害者側保険会社から1(被害者):9(加害者)の過失割合での解決を迫られており、不安に思われたため弊所弁護士にご相談の上、ご依頼になりました。

2.過失割合についての検討

信号のある交差点において、一方の信号が青色であれば交差道路の信号は赤色であるのが通常で、この場合の過失割合は0:10が基準になります。

では、本件のように一方の信号が青色であるにも関わらず、交差道路の信号が赤色点滅の場合はどのように考えるべきでしょうか。

道交法上、赤色点滅信号は一時停止と同様の扱いがなされています。

これをそのまま適用すれば、本件の事故は、「丁字路における優先道路直進車と一時停止規制側進行車両の接触事故」として整理されます。

そうすると、別冊判例タイムズ142図に従い、1:9という過失割合になります。

判例タイムズ142図
基本過失割合Ⓐ10:Ⓑ90

したがって、加害者側保険会社の1:9の過失割合の主張は、一応は法的な根拠のあるものだったと言えます。

3.交渉経緯

しかし、ご相談者としては、目の前の青信号に従って進行しただけですので、釈然としません。

上記のとおり、通常は一方の信号が青色であれば交差道路の信号は赤色で、青色に従って進行した自動車に過失はありません。

したがって、当方からは、まず、こちらは目の前の青色信号に従って進行しただけであるから、9割よりもさらに加害者側の過失が加重されるべきである、という主張を行いました。

しかし、加害者側保険会社は、加害者の過失9割での解決に固執してきました。

そこで、当方からは、加害者の過失9割は認めるが、以前もご紹介した片側賠償(片賠)という方法で、0:9で解決できないかという交渉を行いました。

併せて、こちらの評価損も損害として認めていただきたいと主張しました。

自動車が事故にあった場合、修理をしたとしても自動車の価値が下がってしまうことがあります。

この下がってしまう価値を「評価損」と言います。

評価損の請求はハードルが高いケースが多く、裁判であっても、登録から数年以内であり、走行距離も短いといったケースでないと認めさせるのは難しいです。

その他、損傷部位が車両の骨格部か否か、ということも重視されます。

そのため、示談交渉時に保険会社が評価損を認めることは、あまりないと言ってよいと思います。

しかし、今回は、過失割合について双方の言い分に食い違いがあり、こちらの主張もある程度根拠がある(と思われる)事例でした。

また、被害車両自体も初度登録から1年経過していないものでした。

そこで、妥協点の提案として、片賠の話とともに、評価損の請求も行いました。

「片賠」については以下の記事もご覧ください。

4.交渉結果~評価損2割弱も含めた片賠で示談~

上記のような交渉を行ったところ、加害者側保険会社も0:9の片賠での示談を受け入れました。

また、こちらの請求額満額ではなかったものの、修理費の2割弱である10万円程度の評価損を損害額に加えることも認めました。

このように、今回の事例では、修理費について過失1:9で1割分を妥協することになりましたが、修理費の2割弱の評価損を加算させることができ、片賠で加害者側の修理費の1割を負担する必要もなくなりました。

もちろん、評価損は過失を補うものでなく、全く別の話ですが、結果的には、むしろ評価損なしで修理費だけで0:10で示談した場合よりも少し高い金額を得ることができましたので、今回の依頼者も納得され、円満に物損について示談することができました。

5.まとめ

今回は、物損について、0:9の片賠と評価損の請求という方法で解決できた事例についてご説明しました。

評価損が請求できるケースは限られますので、このような解決できる事例は限定的ではありますが、物損事故の解決について、一つの参考としていただければと思います。

優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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