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サイドミラー(ドアミラー)同士の接触事故で受傷前提の解決ができた事例

2023-02-11

交通事故のご相談を多数お受けしていると、サイドミラー(ドアミラー)同士の接触事故を扱うことがあります。

しかし、この交通事故類型では、怪我をしたという主張に対して、「サイドミラー同士が接触したに過ぎないのだから、それで怪我をする訳がない」と相手方保険会社から言われ、そもそも怪我をしたことが争われるとともに,交通事故と怪我との因果関係も争われることが多いです。

今回は、サイドミラー同士の接触事故であるにもかかわらず、訴訟において怪我との因果関係が存在することを前提とした解決ができた事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。

1.サイドミラー同士の接触事故の特徴

そもそも、サイドミラー同士の接触事故の場合、どうして受傷の事実や怪我との因果関係が争われることが多いのでしょうか。

その理由は、サイドミラーの構造にあります。
道路運送車両の保安基準44条2項では、サイドミラーの構造に関して、「・・乗車人員、歩行者等に傷害を与えるおそれの少ないものとして、当該後写鏡による運転者の視野、乗車人員等の保護に係る性能等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と定められ、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示では、「衝撃緩和式後写鏡の技術基準」を満たさなければならない旨の定めがなされています。

そのため、仮にサイドミラーに衝撃が加わった場合でも、サイドミラーが衝撃を吸収し、車両本体には衝撃が及ばないと考えられることが多いのです。

したがって、相手方からは、車両本体に衝撃が及ばない以上、当該車両に乗車していた人が怪我をする訳がないという主張がなされます。

2.事例の紹介~サイドミラー同士の接触事故~

今回の依頼者Sさんは、Sさん車両を運転中、信号待ちにより停車していたところ、対向車線を走行していた相手車両が、前方から向かってきました。
その後、相手車両がすれ違う際に、相手車両のサイドミラーが、Sさん車両のサイドミラーに接触してしまいました。

この事故でSさんは頚椎捻挫や腰部挫傷等の怪我を負い、約10ヶ月通院しました。

しかしながら、相手方保険会社は、サイドミラー同士の接触事故であることを理由に、受傷の事実はないとして賠償義務を否定しました。

その後、相手方は、Sさんに対して、債務不存在確認訴訟を提起しました。
債務不存在確認訴訟とは、債務が存在しないことを裁判所に確認してもらうための訴訟です。
本件では、相手方は、Sさんに対する交通事故(不法行為)に基づく損害賠償債務が存在しないことを主張していました。

3.本件訴訟における争点

債務不存在確認訴訟では、Sさんの受傷の有無が争点となりました。

相手方代理人からは、仮にサイドミラーに強度の衝撃が加わった場合、サイドミラーから車体本体に衝撃が伝わるのではなく、サイドミラーが入力方向に沿って倒れるか脱落し、サイドミラーが衝撃を受け止める構造となっていることから、Sさんは受傷していないとの主張がなされました。

この主張に対し、以下の反論を行いました。

・一口に「サイドミラー同士の接触事故」と言っても、その態様は様々であること。

・当初、相手方保険会社は、Sさんが受傷したことを前提とする対応をしていたこと。

・衝突したSさん車両のサイドミラーは、Sさんが座っていた運転席側に付いていたこともあり、Sさんは接触時の凄まじい衝撃音を聞いて自身の身体が跳ね上がったこと。

・仮に賠償金目的の詐病であれば、Sさんにとって、相手方保険会社から受傷事実はないと言われた後も通院を継続するメリットはないこと。

また、文献や裁判例を証拠として提示した上で、以下の反論も行いました。

・低速度車両衝突等の軽微事故であっても、それに起因する頚椎捻挫及び腰椎捻挫等が十分発生しうること。

受傷機転が物理的な衝撃によるものではないと認定したサイドミラー同士接触の交通事故であっても、事故と傷害との間の相当因果関係を認めた裁判例が存在すること。

4.本件訴訟の結果

本件では、上記のような双方からの主張が一段落した後、裁判所が、こちらの主張を認め、本件事故によってSさんが受傷したことを前提とする和解案が提示されました。

そして、これはSさんとしても納得できる金額であったため、裁判所和解案の内容で訴訟上の和解が成立するに至りました。

5.まとめ

このように、サイドミラー同士の接触事故であるにもかかわらず、交通事故によって受傷したことを前提とする和解を成立させることができました。

サイドミラー同士の接触事故は、他の事故類型と比較して損害額は少ない傾向にありますが、争点や主張内容については奥深く難しいものです。

そのため、弁護士費用特約を利用することができ、弁護士費用の心配がない方の場合は、交通事故を専門とする弁護士に依頼するべきであるといえます(なお、当事務所ではSBI損害保険とアクサ損害保険の弁護士費用特約については、保険会社側が弁護士会の報酬基準に従わない場合、お取り扱いができない場合がございます。)。

私たちの優誠法律事務所では、全国から交通事故のご相談を多数お受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

 市川雅人 弁護士

これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。
これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務) 
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」

人身傷害保険から保険金を受け取った後にも慰謝料請求できる?

2023-02-08

交通事故の被害者の方の中には、交通事故で怪我をしてしまったものの、過失割合に争いがあるためにご自身で加入されている人身傷害保険を使って通院している、という方もいらっしゃると思います。

そこで、今回は、人身傷害保険を使用している場合に加害者の保険会社に対して慰謝料等を請求できないのか、事例を交えて説明していきます。

1.人身傷害保険、対人賠償保険とは

まず、ここで登場する保険の種類について説明しておきましょう。

対人賠償保険とは、交通事故で他人を死傷させた場合に、治療費や慰謝料等の賠償額について保険金が支払われる保険です。

例えば、被害者側の過失がない事故などでは、通院中の治療費を加害者加入の対人賠償保険が負担し(これを「一括対応」と言います。)、治療が終わった段階で慰謝料等を支払ってもらって示談するケースがほとんどです。

他方で人身傷害保険とは、交通事故によるご自身の治療費や慰謝料等の損害について補償を受けることのできる保険です。

例えば、自損事故など加害者が存在しない場合に使ったり、加害者が対人賠償保険に加入していない場合に使ったりすることが多いです。

加害者が対人賠償保険に加入している場合でも、被害者側の過失割合が大きい場合は、加害者加入の対人賠償保険が治療費の一括対応を拒むことがあります。

この場合も、被害者の方が人身傷害保険に加入していれば、人身傷害保険に治療費の一括対応をお願いすることが可能です。

2.人身傷害保険の支払額は約款で決められた額

ただし、人身傷害保険の慰謝料額の基準は、いわゆる裁判所・弁護士基準ではなく、あくまでも約款で決められた金額に留まります

したがって、人身傷害保険を受け取った後は、加害者側に対して裁判所・弁護士基準との差額が請求できることになります。

例えば、被害者側に過失は0だったものの、加害者が対人賠償保険に加入していないためにやむを得ず人身傷害保険を使った場合は、人身傷害保険から治療費や慰謝料を受け取った後、加害者に対し、受け取った人身傷害保険金と裁判所・弁護士基準の賠償額との差額を請求できます。

3.過失がある場合の注意点‐訴訟基準差額説

ただ、被害者側にも過失がある場合は差額の請求について1つ問題があります。

わかりやすく単純な事例で説明すると、

・裁判所・弁護士基準の治療費や慰謝料等の損害合計が100万円

・過失割合は5:5

・加害者加入の対人賠償保険が治療費一括対応を拒んだため、被害者は人身傷害保険を使用

・被害者は人身傷害保険から60万円を受け取ったのち、加害者加入の対人賠償保険に対して差額を請求した

という場合で考えてみます。

このとき、加害者加入の対人賠償保険会社は、

「うちからあなたに支払うことのできる金額上限は100万円の50%の50万円で、

今回あなたは50万円を超える60万円を人身傷害保険から受け取っているので、うちから追加で払えるものはありません。」

というような説明をして、支払いを免れようとします。

しかし、この説明は間違っています

少し難しい話になりますが、この問題は、人身傷害保険金を加害者と被害者どちらの過失分から先に充当するかという論点になります。

上記の対人賠償保険の主張は、人身傷害保険金は加害者の過失分から充当すべき、との主張です。

しかし、そもそも人身傷害保険は、被害者の過失が大きいようなケースでも、被害者が治療費や慰謝料の補償を受けられるようになるために加入する保険のはずです。

そうであれば、人身傷害保険金は、被害者側の過失分から充当されるべきです。

最高裁判所もそのように考えています(最高裁平成24年2月20日参照)。

このような考え方を、訴訟基準差額説と言います。

上記の例を判例である訴訟基準差額説で説明すると、被害者が受け取った人身傷害保険金60万円は、被害者の過失分50万円から充当されることになります。

そうすると、人身傷害保険金から加害者過失分(50万円)に充当される金額は、残りの10万円(人身傷害保険金60万円-被害者過失分50万円)ということになります。

したがって、被害者は50万円-10万円の40万円を加害者加入の対人賠償保険会社に対して請求することができ、人身傷害保険金と合わせると、損害額合計100万円の全額を受領することができます。

計算はややこしいのですが、誤解を恐れずにいうと、訴訟基準差額説では、「人身傷害保険金を受領した後に加害者加入の対人賠償保険に差額を請求した場合、多くのケースで人身傷害保険金と賠償金併せて損害額100%の補償を受けることができる」ということになります。

4.現場の視点

弊所でも、人身傷害保険金受領後に加害者の対人賠償保険に対して差額請求をするケースは多くあります。

ただ、対人賠償保険会社からは、「訴訟基準差額説は裁判にならないと採用できない」と言われるケースが非常に多いです(理屈は全く通っていません)。

言い換えると、「裁判にしなければお金を払うつもりはない」ということになるので、加害者側対人賠償保険会社がこのような主張に固執するのであれば、裁判を起こすことになります。

もっとも、対人賠償保険会社への請求は人身傷害保険金を受領した後の差額請求となり、請求額がそこまで大きくないケースも多いです。

そのような弁護士費用を支払うと費用倒れになってしまうようなケースにも対応できるようにするため、弁護士費用特約に加入されることが非常に有用と思われます。

また、被害者の方が人身傷害保険金を受領しているケースは、加害者側から治療費の支払いを拒否されているケース、もっと言えば「被害者側の過失の方が大きい」と言われているケースが多いです。

したがって、過失割合をどうするかということで争いがあることもあり、物損が未解決のままということもあります。

そのような場合は、裁判で過失割合を決め、物損も同時に解決することになります。

5.まとめ

今回は、人身傷害保険を使った後に加害者加入の対人賠償保険に対して賠償請求するケースについてご説明しました。

ご相談いただいた方から、他の弁護士に相談した際は訴訟基準差額説について説明がなかったと伺うこともあります。

少しマニアックな知識かもしれませんが、被害者の方の損害を少しでも回復するためには必要な知識だと考えています。

優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

高齢者の死亡交通事故で家族が請求できるもの~示談金の相場~

2023-02-05

死亡交通事故でご家族を亡くされた方からのご相談をお受けすると、多くの場合、示談金が少ないのではないかとのご質問をいただきます。

特に、年金で生活されている高齢者が交通事故で亡くなった場合、死亡逸失利益というものが少なくなりますので、死亡事故なのに示談金が少ないという印象を受ける方が多いのだと思います。

これまで私たちがご依頼やご相談をお受けしてきた死亡交通事故の中では、圧倒的に被害者が高齢者(年金生活者)である場合が多いのですが、これは死亡交通事故の被害者が高齢者である場合が多いということに加えて、現役世代と比べて「人が亡くなっているのに示談金が少ない!」というご不満を感じて、弁護士に相談しようと思う方が多いからではないかと思います。

そこで、今回は、高齢者の死亡交通事故で被害者家族が請求できるものや示談金の相場などについてご説明します。

1.死亡交通事故で請求できるもの

死亡交通事故で被害者家族が、加害者側に請求できるものとしては、以下の3つのものがあります。

・死亡慰謝料

・死亡逸失利益

・葬儀費用

これらに加えて、即死ではなく、事故から数日後に被害者が亡くなった場合には、亡くなるまでの期間の治療費・休業損害・入院慰謝料なども請求できることになります。

以下、それぞれご説明します。

⑴死亡慰謝料

①被害者本人の死亡慰謝料

これは、文字通り、亡くなった方の交通事故で死亡したことによる精神的苦痛に対する慰謝料ですが、被害者ご本人は亡くなっていますので、ご家族がこの慰謝料請求権を相続して請求するということになります。

死亡交通事故の慰謝料には、自賠責保険基準と任意保険会社基準、裁判所基準の3つがあります

自賠責保険基準は、最低限の補償ということで一番低く、任意保険会社の基準は、自賠責基準より少し高いか同じくらいの水準になります。
被害者のご家族が、弁護士に依頼せずに加害者側保険会社と示談する場合は、この自賠責保険基準か任意保険会社基準で示談することになります。
裁判所の基準は、裁判所が妥当な慰謝料として考えている基準で3つの基準中で一番高くなります。
弁護士は、裁判前の示談交渉の段階でもこの裁判所基準で加害者側保険会社に慰謝料を請求します。

・自賠責保険基準

死亡交通事故の被害者本人の慰謝料:400万円

(※2020年3月31日以前の事故は350万円)

・任意保険会社基準

社内基準のため非公開。自賠責基準より少し高い程度。

・裁判所基準(近親者の慰謝料も含んだ総額)

被害者が一家の支柱の場合:2800万円

被害者が母親・配偶者の場合:2500万円

被害者がその他の場合:2000~2500万円

(※その他とは、独身の男女、子供、高齢者などとされています。)

②近親者の慰謝料

死亡交通事故の場合、亡くなった被害者本人の他に、被害者のご家族にもご家族としての慰謝料が認められます。

これは、近親者を亡くしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料で、被害者本人の死亡慰謝料とは別のものですが、相手方保険会社から慰謝料を提示される際には、特に区別されずに、「死亡慰謝料:2000万円」などと被害者本人の死亡慰謝料と合計した金額で提示されることが多いと思います。

この近親者の慰謝料は、必ずしも民法上の相続人に限られる訳ではなく、自賠責保険では被害者の配偶者、被害者の子、被害者の父母となっていますし、裁判例では、生前の被害者との関係性などによって、兄弟姉妹や祖父母などにも近親者としての慰謝料が認められているものもあります。

なお、死亡交通事故で損害賠償請求ができる相続人や死亡慰謝料の相場については、こちらの記事(死亡事故で損害賠償できる相続人について)でも説明していますので、よろしければご覧ください。

⑵死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、被害者が交通事故で死亡しなければ、得られたはずの収入のことをいいます。

死亡逸失利益は、以下の計算で算出されます。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

基礎収入とは、被害者の年収額で、基本的には交通事故の前年の年収額を基に計算されます。

生活費控除とは、被害者が交通事故で死亡しなければ、その後も収入から生活費を支払って生活するため、将来の収入の全てが手元に残る訳ではないので、その生活費分は将来得られたはずの収入額から差し引くということです。

被害者が負担する生活費は、被害者の家族構成や性別、年齢などによって違いますので、それぞれの状況から収入に対する生活費の割合を出しますが、この割合を生活費控除率といいます。

具体的には、被害者が一家の支柱の場合、扶養家族が一人なら生活費控除率40%、扶養家族が二人以上なら30%とされており、独身男性の場合は50%、独身女性や主婦の場合は30%とされています。

就労可能年数は、裁判所は基本的に67歳まで就労可能としていますので、死亡時の年齢から67歳までの年数で計算します。
ただし、高齢者の場合は、簡易生命表で定められているその年齢の平均余命の半分を就労可能年数とします。
また、67歳以下でも、67歳までの年数よりその年齢の平均余命の半分の方が長い場合には、平均余命の半分の年数で計算します。

簡易生命表〈男性〉
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life18-06.pdf

簡易生命表〈女性〉
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life18-07.pdf

ライプニッツ係数や生活控除率については、他の記事(死亡事故は早期に弁護士へご相談ください)でもご説明していますので、こちらも併せてご覧ください。

⑶葬儀費用

葬儀費用については、基本的に150万円が上限とされています。

実際に支出した費用が150万円未満の場合には、実費での賠償となります。

ただ、過去の裁判例では、亡くなった被害者の個別事情によって150万円を超える葬儀費用が認められている事例もあります。

2.高齢者(年金生活者)の死亡逸失利益の計算方法

⑴有職者の場合

高齢者であっても有職者の場合は、基本的に交通事故前年の収入を基礎収入として計算します。
なお、事故当時は無職であっても、就労の蓋然性があれば、平均賃金などを基礎収入として計算できる場合もあります。

例えば、死亡した被害者が70歳男性で、交通事故前年の年収が250万円、扶養しているのが奥さん一人であった場合、以下の計算になります。

基礎収入250万円×(1-生活費控除率40%)×平均余命の半分の8年のライプニッツ係数(7.0197)=1052万9550円

⑵主婦(家事従事者)の場合

主婦の場合、家で家事をしてもお金をもらえるわけではありませんが、家政婦さんなど別の人に家事を頼めば当然費用がかかりますから、主婦の家事労働も経済的価値があるものと考えられており、その金額は女性の平均賃金とされています。

ただし、誰かのために家事をしていることが前提になりますので、一人暮らしの高齢者の場合は家事をやっていても家事従事者にはなりません。

例えば、死亡した被害者が70歳の主婦だった場合、以下の計算になります。

基礎収入388万0100円×(1-生活費控除率30%)×平均余命の半分の11年のライプニッツ係数(9.2526)=2513万0709円

⑶年金について

年金収入については、その内容によって逸失利益として考えられるかという点に争いがあります。

老齢年金や恩給については、逸失利益として認められている裁判例がある一方で、遺族年金などは、受給者の生存中の生計の維持を目的とするものという考え方で逸失利益性を否定されている裁判例があります。特に、受給者が年金保険料を拠出していない無拠出制のものについては逸失利益性を否定されています。

3.高齢者の死亡交通事故の示談金の相場

上記でご説明したとおり、死亡交通事故の示談金は、基本的に死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用を合計した金額となりますが、死亡慰謝料や死亡逸失利益については、弁護士に依頼するかしないかで大きな差が出ることが多いといえます。

これは、弁護士が死亡慰謝料について裁判所基準で交渉することが大きな理由です。

ご家族が加害者側保険会社と交渉する場合は、保険会社は裁判所基準よりもかなり低額な任意保険基準で示談金を支払いますので、この慰謝料の基準による違いが大きな差となります。

また、弁護士は、死亡逸失利益についても、裁判例を参考にして、基礎収入や生活費控除率、喪失期間(就労可能年数)が適正なものになるよう交渉します。

その結果、弁護士に死亡交通事故の示談を依頼した場合、依頼せずにご家族が示談するより示談金が高額になります。

そして、弁護士に依頼した場合、高齢者の死亡交通事故の示談金の相場がどのくらいの金額になるかという点についてですが、私たちが過去にご依頼いただいて示談交渉をしてきた事例を考えると、総額で4000万円前後(3500万円~4500万円)くらいが目安ではないかと思います(過失割合0:100の場合)。

直近の死亡当時73歳の女性(主婦)のケースでも、最終的な示談金がちょうど4000万円になりました。

もちろん、示談金は、亡くなった被害者の年齢や性別、収入によって大きく異なりますので、これは参考程度とご理解ください。

4.まとめ

今回は、被害者が高齢者である事例を中心に死亡交通事故で被害者のご家族が請求できるものやその基準などについてご説明しました。

特に、高齢者が被害者のケースでは、死亡慰謝料や死亡逸失利益の金額次第で最終的な示談金は大きく変わります。

一度示談してしまうと、もうやり直すことはできませんので、示談する前に一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

私たち優誠法律事務所では、死亡交通事故に関するご相談も初回無料でお受けしております。是非お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(5) ~外貌醜状(顔面の醜状痕)~

2022-07-18

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

ここまで私が2021年に担当して後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介してきましたが、最後は頭部挫傷の怪我を負い、顔面に醜状痕外貌醜状)が残ってしまった被害者のEさん(小学生)の事例をご紹介します。

Eさん:12級14号⇒外貌醜状9級16号

1.初回の申請は12級14号

 小学生のEさんは、自宅マンションの敷地で近所の子どもたちと遊んでいたところ、マンションの前の道路を走行してきた相手方車両が、対向車とすれ違うためにマンションの敷地内に入ってきて衝突されてしまいました。

 相手方は、道路幅が狭いことから、スムーズに対向車とすれ違うためにマンションの敷地に乗り入れましたが、そのマンションの敷地で子どもたちが遊んでいることに気が付かず、おもちゃの車に乗って遊んでいたEさんに衝突してしまいました。Eさんは地面に顔面を撃ちつけるなどして、救急搬送され、搬送先の病院で頭部挫傷と診断されました。

 幸いなことに、Eさんは頭部に異常はなかったため、しばらく経過観察となりました。そして、その後も頭部の異常はなく、特に症状も出なかったため、交通事故から約半年が経過した時点で主治医が症状固定の診断をしました。

 しかし、残念ながら、交通事故の際に顔面を地面に撃ちつけたことで、Eさんの額(おでこ)の右側と眉間から右眉にかけて、複数の線状の傷痕(線状痕)や瘢痕が残ってしまいました。これらの傷痕は、交通事故直後よりは改善したものの、症状固定となった交通事故から約半年後の時点でもさほど変わりませんでした。

 Eさんのお父さんは、保険会社から送られてきた後遺障害診断書を主治医に書いてもらいましたが、出来上がってきた診断書の記載を確認したところ、傷跡の長さや面積が書かれておらず、図も適当に書かれてしまっていると感じ、これでは適切な後遺障害等級が認定されないのではないかと不安を感じたため、私たちの事務所に相談にいらっしゃいました。Eさんのお父さんとしては、相手方保険会社の担当者にも不信感があったため、保険会社とのやり取りも全て弁護士に任せたいというご希望でご依頼いただきました。

 ご依頼後、私たちは、Eさんの主治医に後遺障害診断書の修正をお願いしたところ、直接説明に来て欲しいと言われたため、病院まで医師面談に伺い、診断書の書き方を説明して修正・加筆をお願いしました。このように、記載が不十分なままで申請してしまうと、そもそも後遺障害の審査対象にしてもらえない場合もありますので、適切に記載してもらうことは重要です。

 Eさんの後遺障害診断書の修正後、私たちは被害者請求で後遺障害申請をしました。そして、初回の申請では、右前額部の線状痕について、隣接する複数の線状痕の長さを合算することで長さ3センチメール以上の線状痕があるものと評価できるとして、「外貌に醜状を残すもの」として12級14号が認定されました。

2.異議申立ての結果、9級16号が認定

 Eさんの場合、初回申請で額の線状痕について12級14号が認定されましたが、外貌醜状の場合、長さが5センチメートル以上の線状痕であれば、9級16号が認定されます。つまり、初回申請で12級14号の認定にとどまったのは、人目につく程度の線状痕の長さが、3センチメートル以上5センチメートル未満だと判断されたためだと考えられました。

 しかし、後遺障害診断書に記載してもらった額の線状痕と眉間から右眉にかけての線状痕の長さを合算すると、8センチメートル以上にはなっていたため、Eさんのお父さんとしては、12級14号の認定には納得できませんでした。なお、外貌醜状の場合はサイズだけではなく、「人目につく程度以上のもの」でなければなりませんので、Eさんの顔の写真から、この要件で線状痕としてカウントされなかった傷痕もあったのではないかと推測されました。

 外貌醜状の後遺障害の場合、コロナ禍になる前は、基本的に自賠責保険の調査事務所において面接を行い、傷痕のサイズをメジャー等で測定して、等級認定が行われていました。しかし、コロナの感染防止の観点もあり、最近ではあまり面接は行われず、傷痕のサイズが記載された診断書と写真のみで認定が行われることが多くなっており、今回のEさんも初回申請では面接は行われませんでした。

 そこで、私たちは、異議申立書において、複数の線状痕の長さを合算すると5センチメートル以上になることを主張し、加えて、人目につくものであるから、実際に面接をして確認して欲しいと申し入れました。

 そうしたところ、自賠責調査事務所での面接が行われることとなり、私(弁護士)も同席して、該当する傷痕を指摘しながら長さの測定を行いました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Eさんの顔面の線状痕について、5センチメートル以上であるとして9級16号が認定されました。

3.まとめ

 今回は、外貌醜状(顔面の醜状痕)で初回申請12級14号から、異議申立てで9級16号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のEさんの場合、お父さんご自身で相手方保険会社とやり取りして進めていた場合、不十分な後遺障害診断書で後遺障害申請を進めることになっていましたから、後遺障害は非該当だったかもしれません。9級になると、後遺障害慰謝料だけでも裁判所基準で690万円になりますから、非該当だった場合と比べると最終的な示談額にはかなり大きな差が出ます。

 この記事をご覧になっている方も、医師であればしっかり診断書を作成してくれると思っている方が多いと思いますが、実は、今回のEさんの主治医のように後遺障害診断書の記載方法についてしっかり理解していない医師もいます。医師としても、保険会社が後遺障害診断書の書き方をレクチャーしてくれる訳ではありませんから、交通事故の患者さんの対応経験が少ない場合は仕方がないのかもしれません。そのためか、私たちが記載例などを持っていくと喜ばれることもあります(逆に、弁護士に指図されたくないと怒り出す医師もいますが・・・)。

 今回、私たちは医師面談にも自賠責調査事務所での面談にも同席しましたが、おそらくここまで対応する弁護士はかなり少数派だと思います。私たちの過去の経験上、調査事務所の面接でも、こちらから指摘しないと一部の傷痕を測ってもらえない場合もありましたので、私たちはできる限り同席するようにしています。

 ここまで読んでいただくとお分かりになるかもしれませんが、正直、交通事故は、弁護士に依頼するかしないかによっても示談額が変わりますが、依頼する弁護士によっても結果が変わってしまうことがあると思います。だからこそ、私たちはご依頼者様のためにベストを尽くすよう努めております。

 当事務所では、交通事故のご相談は無料でお受けしておりますので、お困りのこと、お悩みのことなどがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(4)右直事故~外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)~

2022-06-25

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

ここまで私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介してきましたが、今回は直進の原付バイクと右折の自動車の事故(いわゆる右直事故)で外傷性頚部症候群頚椎捻挫)の怪我を負った被害者のDさんの事例をご紹介します。

Dさん:非該当⇒頚椎14級9号

1.初回の申請は非該当

 Dさんは、原付バイクで走行中に信号のある交差点を直進しようとしたところ、対向車線から右折してきた相手方車両に衝突されてしまいました。

 事故現場となった交差点は、相手方側からは直進してくる車両が見えにくく、相手方は直進車に注意して右折する必要がありましたが、相手方は右折する先にある横断歩道に歩行者がいないか確認するために右方向を見ていて、対向車線を走ってくるDさんのバイクに気付くのが遅れて衝突してしまいました。

 Dさんのバイクは、相手方車両のフロント中央に衝突し、身体が投げ出されて地面に叩きつけられました。この時、Dさんは身体を地面に強く打ちつけてしまい、頚椎などを負傷してしまいました(外傷性頚部症候群、左膝打撲)。

 交通事故の直後、Dさんは救急搬送されて治療を受け、その後は整形外科で治療を続けていましたが、首や左膝の痛みがなかなか改善しませんでした。
 Dさんは、当時映像制作の専門学校の学生でしたが、首の痛みが強く、長時間PCで作業をすることが難しくなってしまったため、早く症状を改善させたいとの思いでリハビリを続けました。
 しかし、残念ながら、交通事故から約半年が経過した時点でも首の痛みが改善しませんでした。そして、相手方保険会社が、交通事故から半年以上は治療費を支払えないと主張して、一方的に治療費を打ち切られてしまいました。

 Dさんは、保険会社に治療費を打ち切られた後も健康保険に切り替えて治療を継続しましたが、さらに半年(交通事故から1年)が経過した時点でも症状が残ってしまい、主治医はそのタイミングで症状固定と診断しました。

 Dさんは、それまでの言動から相手方保険会社の担当者が信用できないと感じており、相手方保険会社に任せる「事前認定」ではなく、ご自身で方法を調べて被害者請求で後遺障害申請をしました。

 しかし、初回申請では、Dさんの外傷性頚部症候群に起因する首の痛みについて、「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」として非該当と判断されてしまいました。

 また、相手方保険会社からこの交通事故の過失割合について、15(Dさん):85(相手方)と主張されており、Dさんとしては過失割合についても不満がありました。

 そこで、後遺障害の異議申立てや示談交渉などの手続きを弁護士に任せたいというご希望で私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。 

2.異議申立ての結果、14級9号が認定

 以前ご紹介したAさんの記事(【速報】後遺障害等級認定事例(1)~頚椎捻挫~)でご説明しましたが、私たちの経験上、相手方保険会社から治療費を打ち切られた後にも、自費で通院を継続した被害者の方が痛み(神経症状)による後遺障害等級(14級9号)を認定されやすいという感覚があります。
 また、以前ご紹介したCさんの記事(【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~)でご説明しましたが、通院回数の多い人、通勤期間の長い人も、後遺障害等級(14級9号)が認定されやすいという感覚があります。

 今回のDさんは、治療費の支払いを打ち切られてから半年間に渡って自費で治療を続けており、交通事故から症状固定まで約1年間治療をしていましたので、私たちは、主治医からカルテを取り寄せ、首の痛みが交通事故から一貫して長期間に渡って続けていることを主張して異議申立てを行いました。

 また、相手方車両のフロント中央部分が大きく凹んでおり、今回の交通事故でDさんが身体に強い衝撃を受けたことの証拠になりそうでしたので、相手方車両の写真も異議申立書に添付しました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Dさんの外傷性頚部症候群に起因する首の痛みについて14級9号が認定されました。

3.示談交渉(過失割合の修正に成功)

 異議申立てで後遺障害14級9号が認定されましたので、私たちは後遺障害慰謝料逸失利益通院慰謝料などを計算して相手方保険会社と示談交渉を始めました。

 Dさんは過失割合について、相手方保険会社から15:85と言われていたことに強い不満がありましたので、私たちは弁護士会照会で刑事記録(実況見分調書)を取り寄せて、過失割合についても交渉しました。

 過失割合については、典型的な交通事故の場合、過去に同種の裁判例が多数あることから、裁判例を踏まえてそれぞれの事故状況ごとに何%:何%と基本となる過失割合が示されており、この基本過失割合を基に検討することになります。
 過失割合の交渉については、当事務所の公式ブログでも解説していますので、是非そちらもご覧ください(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~

 今回のDさんの交通事故のようなバイクと自動車の右直事故の場合、双方の信号が青であれば、基本過失割合は15:85になります。つまり、相手方保険会社としては、基本過失割合を根拠に15:85と主張していた訳です。

判例タイムズ175図 基本過失割合A15:B85

 しかし、実況見分調書によると、相手方はDさんに衝突する直前まで右折する先の横断歩道を見ていて、Dさんに気が付いたのは衝突とほぼ同時くらいだったことが分かりました。
 今回の交通事故現場は、坂の頂点のようになっていて、右折車(相手方側)から対向車線の直進車を確認しにくい状況でしたので、直進車の信号に赤になった後、右折矢印が出るようになっていました。相手方としては、青信号のうちに右折するのであれば、対向車の有無をしっかり確認してから右折を開始する必要がありましたが、相手方は対向車線の確認を怠って右折を開始した結果(著しい前方不注視)、Dさんに衝突してしまいました。

 さらに、実況見分調書によると、相手方はDさんがかなり近づいていたタイミングで右折を開始しており、「直近右折」に該当し得るのではないかと思われました。

 私たちとしては、これらの事情を根拠に過失割合を修正するべきだと主張して交渉しました。

 その結果、相手方保険会社も理解を示し、結局、過失割合は5(Dさん):95(相手方)まで修正することができました。

4 まとめ

 今回は、外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)で初回申請非該当から、異議申立てで14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のDさんのように、後遺障害申請について相手方保険会社の事前認定ではなく、ご自身で被害者請求をされる方は珍しいですが、この場合であっても異議申立てから弁護士に依頼することは可能です。

 Dさんの場合、私たちにご依頼いただいたことで、異議で後遺障害等級が認定され、過失割合についても修正できましたので、大変喜んでいただきました。

 ただ、異議申立てで結果が覆る可能性は高くないですから、弁護士の立場からお話しすると、初回申請の段階からご依頼いただいた方が、適切な等級が認定される可能性が高まりますので、早めにご相談いただきたいというのが本音ではあります。

私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしておりますので、是非お気軽にご相談ください。

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整骨院・接骨院で治療すると後遺障害等級が認定されないって本当?

投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

2022-05-03

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

前々回から私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介していますが、今回は頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負った被害者のCさんの事例をご紹介します。

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎14級9号・腰椎14級9号)

1.初回の申請は非該当

 Cさんは、ご家族が運転する自動車の後部座席に乗っていたところ、隣の車線を走っていた加害者車両が急に車線変更してきたため、Cさんの車両の運転手の方が、衝突を避けるために急ブレーキをかけました。幸い急ブレーキによって衝突を回避することはできたものの、後部座席に乗っていたCさんは、急ブレーキの反動で体が前方に大きく振られて、前の座席に顔面を強打してしまい、顔や頚椎、腰椎を負傷してしまいました(外傷性顎関節症・頚椎捻挫・腰椎捻挫)。

 その後、Cさんは整形外科と口腔外科で治療を続けていましたが、首や腰の痛みがなかなか改善しませんでした。Cさんは、前の仕事を辞めて転職活動をしているタイミングでしたが、首や腰の痛みもあって転職活動を中断せざるを得ず、早く症状を改善させたいとの思いでリハビリを続けました。しかし、交通事故から約1年が経過した時点でも首と腰の痛みが改善しませんでした。そうしたところ、相手方保険会社に治療費の打切りを通告され、主治医もそのタイミングで症状固定と診断しました。

 Cさんは、治療費を打ち切られて症状固定となったことで、その後の後遺障害申請や示談交渉などの手続きを弁護士に任せたいというお考えで私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。ご依頼いただいた後、私たちは必要な書類を揃え、被害者請求で後遺障害申請をしました。

 その結果、残念ながら初回の申請では首の痛みと腰の痛みについて、それぞれ「将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難い」として非該当と判断されました。

 Cさんとしては、首も腰も痛みが残存していて日常生活に支障があるにもかかわらず、非該当という結果では納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

2.異議申立ての結果、併合14級が認定

 頚椎捻挫や腰椎捻挫の場合、交通事故から通常6ヶ月程度で症状固定と診断されることが多いですが、Cさんの場合は交通事故から約1年間も治療を続けており、リハビリの回数も通算170回以上にも上っていました。長年交通事故の後遺障害申請を担当してきた私たちの経験上、通院回数の多い人は痛み(神経症状)による後遺障害等級(14級9号)が認定されやすいという感覚があります。通院回数が多いということは、それだけ痛みが強かったことを推認する事情でもあると考えられるためではないかと思います。ただし、通院回数が多かったり、通院期間が長くても、症状が改善傾向にあったり、訴えている症状に一貫性がなかったりすると、後遺障害とは認定されにくくなります。

 そこで、私たちはCさんの異議申立てをするにあたり、主治医に頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移についての照会書の作成をお願いし、併せてカルテを取り寄せて、症状の経過や一貫性があるか否かを確認しました。その結果、Cさんは交通事故直後から症状固定まで一貫して首と腰の痛みを訴えて治療を続けていたことが分かり、主治医から症状が慢性化していて改善は見込めないとの回答を得ました。

 また、Cさんの交通事故は、急ブレーキで自動車同士の衝突を避けられており、非接触の交通事故であったため、自賠責保険は「後遺障害が残るほどの怪我が発生する事故ではない」と判断したのではないかと考えられました。

 そこで、私たちは、交通事故当時の状況をCさんから詳しく聞き取り、Cさんが靴を脱いで後部座席に座っていたこと、シートベルトをしていなかったこともあって急ブレーキで前方に押し出されて前の座席に顔面を強打したこと、この前方座席に強打した際に首や腰も負傷したことなど、自動車同士は非接触であっても後遺障害が残るほどの怪我を負っても不自然ではないことを細かく主張する異議申立書を作成して異議申立てを行いました。

 その結果、私たちの主張が認められ、Cさんの頚椎捻挫後の首の痛みと腰椎捻挫後の腰の痛みについてそれぞれ14級9号が認定されて、併合14級の認定となりました。

3.まとめ

 今回は、頚椎捻挫・腰椎捻挫で初回申請非該当から、異議申立てでそれぞれ14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 今回のCさんのように、交通事故の被害者の多くが頚椎捻挫・腰椎捻挫の怪我を負っていますが、首や腰の症状は回復するまで長い時間がかかることも多く、首や腰の痛みが残ってしまう方も少なくありません。

 その場合、多くの方は相手方保険会社に任せて後遺障害の申請を行いますが(この保険会社に任せる方法を「事前認定」といいます。)、この事前認定では必要最低限の書類を揃えて提出するという対応以上は期待できません。

また、少なくとも私たちの経験では、初回の事前認定が非該当だったケースで、相手方保険会社が異議申立てをしてくれて後遺障害等級が認定されたというケースは見たことがありません。

 ですから、やはり後遺障害の申請は弁護士に依頼した方が適切な等級が認定される可能性が高まるといえるのではないかと思います。

 Cさんと同じように首や腰の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。ぜひ、お気軽にお問合せください。

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後遺障害診断書を作成してもらえず、裁判で後遺障害等級14級9号前提で和解できた事例

整骨院・接骨院で治療すると後遺障害等級が認定されないって本当?

投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(2)~右肩腱板損傷~

2022-04-18

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

前回から私が2021年に後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介していますが、今回は頚椎捻挫・右肩腱板損傷の怪我を負った被害者のBさんの事例をご紹介します。

Bさん:併合14級(頚椎・右肩)⇒併合12級(頚椎14級9号・右肩12級13号)

1.初回の申請は併合14級(頚椎・右肩)

 Bさんは、自転車を運転していて、信号のある交差点が赤信号だったため、自転車から降りて信号待ちをしていました。その際に、その交差点のBさんが立っていた角を左折しようした加害者車両が、内回りし過ぎて信号待ちをしていたBさんの自転車に衝突してしまいました。Bさんはそのまま自転車ごと転倒して、頚椎や右肩などを負傷してしまいました(頚椎捻挫・右肩腱板損傷)。

 その後、Bさんは整形外科で治療を続けていましたが、首の痛みや右肩の痛みがなかなか改善しませんでした。しかも、右肩の痛みが強く、事故直後から肩が90度(水平)以上上がらない状態が続いていました。Bさんとしては、特に右肩の可動域制限が仕事にも日常生活にも大きな支障があり、少しでも改善しようとリハビリを続けましたが、交通事故から6ヶ月が経過した時点でも改善せず、主治医が症状固定と診断しました。

 Bさんとしては、適切な損害賠償を求めたいということで、この時点で私たちの事務所にご相談にいらっしゃいました。私たちは、ご依頼いただいた後、後遺障害申請に必要な書類を揃え、被害者請求で後遺障害申請をしました。

 その結果、初回の申請では首の痛みと右肩の痛みについて、それぞれ14級9号の後遺障害等級が認定されて、併合14級の結果が通知されました。しかし、右肩の腱板損傷については、腱板損傷自体を否定するのか、腱板損傷自体は認めるものの今回の交通事故で損傷したことを否定するのか、どちらか理由は分からないものの、「本件事故による腱板損傷は認められない」との判断となり、右肩の可動域制限は後遺障害として認められませんでした。

 Bさんとしては、右肩の可動域制限が残り、その当時でも90度(水平)から少し上くらいまでしか肩が上がらない状態でしたので、右肩腱板損傷が認定されなかった結果には納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

2.異議申立ての結果、右肩に12級13号が認定

 私たちは、異議申立てをするにあたり、まずBさんが右肩のMRI撮影をした画像診断専門のクリニックの読影レポートを取り寄せました。この読影レポートを確認したところ、右肩の画像上に腱板損傷があるとの読影結果が明確に記載されていました。

 ただ、MRI撮影が行われたのが今回の交通事故から約2ヶ月後であったため、おそらく初回の申請では自賠責調査事務所が交通事故以外による損傷の可能性も否定できないという判断をして、腱板損傷と交通事故の因果関係を認めなかったのではないかと考えられました。

 そこで、私たちは、主治医からカルテを寄り寄せ、交通事故直後のBさんの右肩の症状について、腫れなどの外傷を裏付けるような症状の記載がないか確認しました。そうしたところ、カルテに明確な外傷所見についての記載はなかったものの、事故直後の診察の際に、「腕神経叢引き抜き損傷の疑いあり」との記載と「右肩の可動域制限あり」との記載を見つけました。

 この腕神経叢引き抜き損傷は、バイクの転倒事故などで生じることがあり、上肢のしびれや肩が上がらないなどの症状が生じます。主治医がカルテにそのような記載をするということは、交通事故直後にBさんの右肩に外傷による所見が見られたことを裏付けるものと考えられました。また、交通事故直後に既に可動域制限があったことも裏付けられました。

 そこで、私たちは、MRIの読影レポートと主治医のカルテを添付して、Bさんの右肩腱板損傷は、交通事故によるものであることを強く主張する異議申立書を作成して異議申立てをしました。

 その結果、右肩腱板損傷が今回の交通事故によるものと認められ、Bさんの右肩腱板損傷後の痛みについて12級13号が認定されました。

 しかし、MRI画像上の腱板損傷の程度が軽く、肩の可動域制限が生じるほどではないと判断され、可動域制限については等級が認定されませんでした(可動域制限についても等級が認定される場合には、12級6号が認定されます。)。

 この結果に対して、Bさんは、可動域制限の等級は認められなかったものの、右肩腱板損傷が交通事故によるものと判断されて、同じ12級が取れたということで結果を受け入れ、首の14級9号と合わせて併合12級で示談交渉をするということになりました。

3.可動域制限と神経症状の後遺障害等級と示談金の関係

 今回のBさんは、右肩腱板損傷による痛み(神経症状)で12級13号が認定されましたが、右肩の可動域が4分の3以下に制限された場合に認定される12級6号は認定されませんでした。

 12級6号と12級13号は、同じ12級ですから、裁判所基準の後遺障害慰謝料は同じ290万円となり、違いがないようにも思えますが、後遺障害を負ったことによる将来の減収部分の補償である「逸失利益」の算定では大きな違いが発生します。

逸失利益は、「基礎年収×後遺障害等級ごとの喪失率×喪失期間」で計算され、

通常、12級の後遺障害の逸失利益は、

被害者の交通事故前年の年収×14%×67歳まで年数のライプニッツ係数

で計算されますが、神経症状の12級13号の場合には、喪失期間が67歳までではなく、10年間程度に制限されるのが一般的です。

 例えば、症状固定の時に47歳だった被害者の場合、一般的な後遺障害では喪失期間が20年間とされるのに対し、12級13号の場合には10年間に制限されることが多いです。そのため、この被害者の交通事故前年の年収が500万円だったとすると、喪失期間が20年間の場合には、

 500万円×14%×14.877(20年のライプニッツ係数)=1041万3900円

喪失期間が10年間の場合には、

 500万円×14%×8.530(10年のライプニッツ係数)=597万1000円

となり、逸失利益で大きな差が出る場合があります。

 ですから、同じ12級でも可動域制限での後遺障害等級が認定されるか、神経症状での後遺障害等級が認定されるかは重要です。

 今回のBさんの場合は、実際に可動域制限も残っていたため、再度の異議申立てを行うか、紛争処理機構に審査してもらうよう申立てをするという選択肢もありましたが、画像から腱板損傷が軽微と判断されたのであれば、もう仕方ないと結果を受け入れることにしましたので、後遺障害等級については併合12級で確定させ、示談交渉を開始することになりました。

4.まとめ

 今回は、右肩の腱板損傷で14級9号の認定から、異議申立てで12級13号が認定された事例をご紹介しました。

 実は、今回のBさんの初回申請の結果のように、腱板損傷の事例では、交通事故から時間が経ってからMRIを撮影したケースで、交通事故と腱板損傷の関係性が否定されるという例は珍しくありません。そのため、私たちは腱板損傷を負った被害者の方には、なるべく早期にMRI撮影をするように勧めています。同じように肩の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が同じようなことでお困りの方の参考になれば幸いです。

 そして、そのようなアドバイスをするためには、交通事故後なるべく早い段階でご相談いただく必要がありますから、交通事故に遭ったら早期に弁護士にご相談いただくことを強くオススメしています。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしておりますので、お気軽にお問合せください。

 また、当事務所のブログでも、異議申立てで肩腱板損傷について後遺障害12級が認定された事例(弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~右肩腱板損傷・異議申立て・後遺障害12級13号~)や逆に残念ながら肩腱板損傷で後遺障害が認定されなかった事例(後遺障害等級が認定されなかった事例~左肩腱板損傷~)をご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。

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肩腱板損傷の後遺障害 12級・14級・非該当の事例の比較

神経症状の後遺障害(12級13号・14級9号)の逸失利益~労働能力喪失期間の相場~

投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

【速報】後遺障害等級認定事例(1)~頚椎捻挫~

2022-03-28

皆さん、こんにちは。弁護士の甘利禎康です。

これから何回に分けて、私が2021年に担当した交通事故事案のうち、後遺障害の異議申立てを行った事例をご紹介したいと思います。

2021年に私が担当した事案で異議申立てを行った事例は5件ありましたが、実は、以下のようにその5件とも異議が認められるという結果を得ました。

Aさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
⇒本記事

Bさん:併合14級(頚椎・右肩)⇒併合12級(頚椎14級9号・右肩12級13号)
【速報】後遺障害等級認定事例(2)~右肩腱板損傷~

Cさん:非該当⇒併合14級(頚椎・腰椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(3)非接触事故~頚椎捻挫・腰椎捻挫~

Dさん:非該当⇒14級9号(頚椎)
【速報】後遺障害等級認定事例(4)右直事故~外傷性頚部症候群(頚椎捻挫)~

Eさん:12級14号⇒9級16号(外貌醜状)
【速報】後遺障害等級認定事例(5) ~外貌醜状(顔面の醜状痕)~

異議申立てが認められる確率はかなり低く、2020年の統計では15%程度とされています。ですから、成功率100%は本当に偶然ではありますが、それでも当事務所所属の弁護士たちの異議申立て成功率は通算で50%くらいですので、全体の統計よりもかなり高い確率で成功しています。

それでは、今回はAさんの事例をご紹介します。

1.初回の申請は非該当

 Aさんは、信号のない交差点で右側の道路から一時停止無視で進入して来た加害者車両と衝突してしまいました。加害者車両は、Aさんの車両の運転席付近に衝突し、Aさんの車両は大きく損傷しました。運転していたAさんはかなり強い衝撃を受け、頚椎を負傷してしまいました(頚椎捻挫)。

 その後、Aさんは整形外科で治療を続けていましたが、首から肩にかけての痛みや腕の痺れがなかなか改善しませんでした。ところが、相手方保険会社は、交通事故から8ヶ月が経過した時点で治療費を一方的に打ち切ってしまいました。Aさんとしては、もう少し治療を続けたいという希望があり、当事務所に相談にいらっしゃいました。

 私たちは、ご依頼いただいた直後、相手方保険会社にもう少し治療費の支払いを延ばすように交渉しました。しかし、もう8ヶ月経過しているということで治療費の延長には応じませんでした。そこで、Aさんには一旦健康保険に切り替えて治療を継続してもらいました。

 それから2ヶ月ほどしてもAさんの症状にほとんど変化が見られなかったことから、主治医も交通事故から10ヶ月経過した時点で症状固定の診断をしました。

 そして、当事務所にて被害者請求で後遺障害申請をしました。しかし、残念ながら初回の申請では後遺障害等級は認められず、非該当という結果が通知されました。

 Aさんは、その間も自費で治療を続けるほど症状が残っており、非該当という結果には納得できないということで、異議申立てを行うことになりました。

 そこで、私たちは主治医に医療照会を行い、Aさんの交通事故直後から症状固定までの症状の経過などを回答書に記載してもらいました。また、症状固定後に自費で治療を続けている状況やAさんの異議申立て時点での症状についても報告書を作成して、異議申立てを行いました。

2.異議申立ての結果、14級9号が認定

 上記のように、私たちがAさんの後遺障害非該当の認定に対して異議申立てを行ったところ、異議が認められ、Aさんの頚椎捻挫後の症状について14級9号が認定されました。

 14級9号の場合には、骨折や脱臼などのいわゆる器質的損傷がXPやMRIなどの画像で証明できなくても認定されますが、受傷状況(事故状況)や症状経過等から総合的に判断されることになります。

 具体的な認定の基準は公表されていませんので、ここからは私たちの私見にはなりますが、過去の私たちの経験上は、症状固定後も自費で治療を継続している被害者の方が、症状固定時点で治療をやめた被害者の方に比べて異議申立てが認められやすい傾向があるように思います。

 交通事故の加害者側が被害者の治療費を負担しなければならないのは症状固定までで、症状固定後は相手方保険会社が治療費を負担してくれることはありません。ですから、その時点で治療をやめる方も多いですが、症状固定の診断を受けたからといって治癒する訳ではなく、症状は残ります。治療費が自己負担になったとしても治療を続けているという事情は、それだけ症状が重いという裏付けと考えられているのかもしれません。

 今回のAさんも、症状固定後も数ヶ月間自費で治療を継続しており、これが有利に働いた可能性があります。また、主治医が作成してくれた回答書にしっかりAさんの症状が残存していることが記載されていた点も異議が認められた要因になったと思います。

3.後遺障害等級と示談金の関係

 後遺障害等級が認定されるか否か、認定されるとして何級が認定されるかは、最終的な示談金の金額に大きく関わります。

 例えば、首のムチウチ(「頚椎捻挫」の診断)で治療期間が交通事故から半年くらいだった過失割合0:100の被害者の方の場合、後遺障害等級非該当(もしくは申請しなかった場合)であれば、示談金は通院慰謝料の約90万円程度となることが多いですが、14級9号の後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料や逸失利益なども加わり、最終的な示談金は300万円以上になることが多いです。

 このように、後遺障害等級が認定されるかどうかは交通事故被害者の示談にとってかなり重要です。

 今回のAさんの場合は、初回の後遺障害申請も当事務所で行いましたが、相手方保険会社に初回申請を任せて(これを「事前認定」といいます)納得の行く結果にならなかった場合でも、弁護士に依頼して異議申立てをすることができます。

4.まとめ

 今回は、後遺障害非該当から異議申立てによって14級9号が認定された事例をご紹介しました。

 統計では、交通事故被害者の半数以上の方が頸椎(首)を負傷しているというデータもあり、今回のAさんと同じように首の後遺障害で困っている方も多いと思いますので、今回の記事が首の後遺障害でお困りの方の参考になれば幸いです。

 私たち優誠法律事務所では、交通事故に関するご相談は無料でお受けしております。お困りことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)

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